▼2014年
▼2016年
▼2017年
「2018年ベストコミック20選」
▼マージョリー・リュウ[作]/サナ・タケダ[画]/椎名ゆかり[訳]『モンストレス』
▼水上悟志 『水上悟志短編集「放浪世界」』
▼徳弘正也『もっこり半兵衛』
▼篠原健太『彼方のアストラ』(全5巻)
▼高橋寛行『キャプテンハンゾーモン』(全2巻)
▼榎本俊二『アンダー3』
▼崇山崇『恐怖の口が目女』
▼原田重光[原作]/初嘉屋一生[漫画]/清水茜[監修]『はたらく細胞BLACK』
▼オガツカヅオ『魔法はつづく』
▼黄島点心『黄色い円盤』
▼友美イチロウ『號鉄のジョニー』
▼阿部洋一『それはただの先輩のチンコ』
▼BLZ『カリオストロの魔女』
▼丸岡九蔵『陋巷酒家』
▼斎藤潤一郎『死都調布』
▼施川ユウキ『銀河の死なない子供たちへ』(上下)
▼福島鉄平『ボクらは魔法少年』
▼窓『カニバリズム!』
▼成田芋虫『IT'S MY LIFE』(全11巻)
▼カルロ・ゼン[原作]/石田点[漫画]『テロール教授の怪しい授業』
マージョリー リュウ サナ・タケダ
G‐NOVELS
売り上げランキング: 57,334
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水上 悟志
マッグガーデン (2018-01-10)
売り上げランキング: 9,490
マッグガーデン (2018-01-10)
売り上げランキング: 9,490
マージョリー・リュウ&サナ・タケダ『モンストレス』は、美麗にしてグロテスク、そして緻密なグラフィックで亜人種と魔女の抗争を軸に多種族が入り乱れる世界を描き出し、最初から容赦なくハードモードで展開されるヘヴィなハイブリッド異世界ファンタジー。自らの内に魔神を宿すマイカ・ハーフウルフに安寧は訪れるのか。モブ顔双子姉妹、頭の上の宇宙人、中年ファンタジー、バケモノ喰い稼業などバラエティに富む、水上悟志 『水上悟志短編集「放浪世界」』。収録作の中でも、クローン、珪素生命体、AIの三つ巴の関係を移民船型巨大団地ロボを舞台に描く中編「虚無をゆく」は渾身の傑作。水上氏が原作・ネームを描き下ろし、今年の1クールロボット群像劇アニメの見事な傑作だった「プラネット・ウィズ」とも共鳴するものがあります。
集英社 (2018-01-19)
売り上げランキング: 10,791
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集英社 (2018-12-11)
売り上げランキング: 10,408
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高橋 寛行
ヒーローズ (2018-04-05)
売り上げランキング: 50,468
ヒーローズ (2018-04-05)
売り上げランキング: 50,468
徳弘正也『もっこり半兵衛』は抜群のチンポ、もといテンポの良さ。元・無双の人斬りで、今は夜回り稼業をしながら日々袴に夢精しまくる主人公といい、スキあらば滑り込むギャグといい、かなり稀有な読み味なのにしっかり人情ものに着地する。徳弘氏の長年の持ち味が最良のかたちで滲み出ております。篠原健太『彼方のアストラ』はあまりにも鮮やかな完結でした。5巻というヴォリュームでこれだけの謎と伏線と冒険を盛りこみ、鮮やかな大団円として畳んだお点前。新機軸に挑戦した篠原氏は、同時に金字塔を打ち立ててしまった。とにかく事前情報すら一切入れずに全巻一気読みを薦めます。高橋寛行『キャプテンハンゾーモン』。昨年は第1巻をベストに挙げたのですが、完結を迎えた第2巻も文句なしのベストです。変身回数が残すところ数回しかない、最初からクライマックス状態の老齢のスーパーヒーローが、内外の危機にどう立ち向かうのか。高密度の画力をぶつけ、必殺の大技ともども真っ向から描き切っています。お約束、王道の力強さ。キャプテンハンゾーモンはガチ。ガチなんだ。
講談社 (2018-06-22)
売り上げランキング: 36,021
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崇山祟
リイド社
売り上げランキング: 122,737
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榎本俊二『アンダー3』は、数年分の性欲(連載)がついに単行本として精……電子化。電子化オンリー作品なれど、コンドームの精液だまりが肛門から出てくる揺るぎない性教育マンガが読めるのは榎本先生だけだぞ! ジャスティスジャスティス。出たとこ勝負のグルーヴ感の一年十ヶ月分の集積と爆発がみられるのが、崇山崇『恐怖の口が目女』。しょっぱなの異様な「すずめ新聞」からフルカラーのラスト数ページまで一気読みすると、気分が宇宙までブチアガることうけあい。巻末の崇山氏と天久聖一氏との対談も面白く。2chのスレに約3年間、誰に求められるわけでもなくひたすらポプリが香るようなポエムを投稿し続けたというくだりは、これはもう修験道ではないかと感銘を受けました。
初嘉屋 一生
講談社 (2018-07-09)
売り上げランキング: 5,840
講談社 (2018-07-09)
売り上げランキング: 5,840
オガツ カヅオ
リイド社
売り上げランキング: 64,074
リイド社
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『はたらく細胞』スピンオフコミックの一つながら本家より容赦がない『はたらく細胞BLACK』(原作:原田重光/漫画:初嘉屋一生/監修:清水茜)。こっちもぜひアニメ化してほしいと思うんですけど……無理ですかね。原作は『ユリア100式』『ゆりキャン』などで知られる原田氏ですが、エロコメディを期待すると内臓に一撃を喰らいます。第3話の勃起不全回からの第4話の淋菌回の苛烈な流れは冷汗がドバーッと出る。ところで、月刊ヤングマガジンで連載中の原田氏原作の『女神のスプリンター』は射精管理トレーニング漫画なので、先に挙げたエピソードを読んでいると味わい深いものがあるのではないかと思います。オガツカヅオ『魔法はつづく』は、待望の短編集。雑誌(シンカン Vol.1/2009年)→WEB(エクストリームマンガ学園/2016年)→雑誌(ネムキプラス/2017年)という珍しい掲載(再録)歴を経てついに単行本に収録された「よふさぎさま」は、純粋さという怖さを描く傑作。登場人物と読み手にとっての「ひっかけ」になるポイントが交わったり交わらなかったりするのも絶妙です。三角関係の顛末、からの……というゴースト(生霊)ストーリー「しあわせになりましょう」。奇妙なラブコメ関係を描き、ラストのセリフが実にエモい「こくりまくり」は、じわりとくる“してやられた感”が味わえる――などなど、ぐるりと転回する瞬間の〈魔法〉にゾワッと戦慄、あるいはじわりと染み入る9編+α。
黄島 点心
リイド社
売り上げランキング: 118,948
リイド社
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友美イチロウ
リイド社 (2018-07-05)
売り上げランキング: 235,734
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売り上げランキング: 235,734
黄島点心『黄色い円盤』は奇想短編集第二弾。やはり黄島氏の奇想とストーリーテリングのうまさに舌を巻いてしまう、そしてちぎれてしまう。「円盤」はトンデモな傑作で、双子の宇宙論とDJの二枚使いをダブらせ、A面B面と北半球南半球と物質反物質がごっちゃになるという超極大スケールのブッこみが炸裂、破滅的なカタルシスを爆笑とともに味わわせてくれる。友美イチロウ『號鉄のジョニー』は戦後闇市系アーティフィシャル・ヴァイオレンス。股間がチェーンソーで真っ二つになった瞬間、傑作だと確信しました。しかも2回! 蛇原は1話で死ぬには惜しいくらいのいいキャラだなあ。おちんちんが真っ二つになる傑作漫画といえば、山本英夫『殺し屋1』(タテに真っ二つになる)ですが、阿部洋一『それはただの先輩のチンコ』はヨコに真っ二つになる傑作おちんちん漫画です。だが本作はグロではない。ポップで、切ないのだ……。ところで、ボーイフレンドの切り離されたちんこに寄生される、というのもTSにカテゴライズしていいんでしょうか。
「カリオストロの魔女(書籍版)」(Booth)
https://blz.booth.pm/items/908900
今年4月から9月にかけて放送されたアニメ最新シリーズ「ルパン三世 PART5」は集大成的で感慨深い内容でしたが、2014年10月末から2018年6月末にかけて発表され、8月に300ページの漆黒の造本でまとめられた、BLZによる「カリオストロの城」二次創作アフターストーリー『カリオストロの魔女』にも大いにシビれさせられました。35年の間にルパン三世とクラリスが歩んだそれぞれの道が再び交わり、カリオストロ公国の戦いの歴史にひとつの節目が刻まれるストーリーを、これでもかとキメと見開き構図のオンパレード&イカしたセリフ回しがシブく染めあげる。
「陋巷酒家 うらまちさかば」(Booth)
https://booth.pm/ja/items/966489
コミティア125で初頒布された、丸岡九蔵『陋巷酒家(うらまちさかば)』は、現在2巻まで刊行されている、近未来終末バイオメカニカル人情立ち飲み屋連作コミック。まさに看板メニューの煮込みのように、世界観もキャラクターもじっくりと丁寧につくりあげられており、細かな描きこみも含めて楽しい。ポストアポカリプスな日常が活き活きと描き出されています。現在1巻は在庫切れ中であり、重版・通販再開は1月末~2月予定とのこと。
斎藤 潤一郎
リイド社
売り上げランキング: 23,092
リイド社
売り上げランキング: 23,092
斎藤潤一郎『死都調布』は、今年の夏のサグい真打ち。ストーリーは女陰を晒す女で動き出し、女陰を晒す女で締めくくられる。全貌が見えてきたかと思いきや、依然として迷宮の中にいるような異物感にガツンとやられてしまった。「ケツはちゃんと拭け」から始まる男と女の、そしてビーフタコスを介した父と子の、どこまでも擦り切れ切って乾き切ったやりとりを描く「CHAPTER.8 ILLSTREET」は一つの短篇としても完成されていて、決定的に素晴らしい。施川ユウキ『銀河の死なない子供たちへ』は、不死の存在である子供たち(と、その母親)の長い長い歴史の中の日常、変わる者と変わらない者の邂逅と別離、死を選んだ者と死を選ばなかった者の物語を、家族愛とヒップホップ『最後にして最初の人類』『スターメイカー』(オラフ・ステープルドン)や『火の鳥』のような大いなるスケール感を交えて描いた上下巻。どこまでも澄んでいて、どこまでも胸に迫る。
福島 鉄平
集英社 (2018-09-19)
売り上げランキング: 18,298
集英社 (2018-09-19)
売り上げランキング: 18,298
「アマリリス」で切ない少年同士の友情話を描いた福島鉄平が、そのポップでフェティッシュな作家性を余すところなく全力で叩きつけてきた『ボクらは魔法少年』。「We Gotta Power」の歌詞じゃないですが、夢中になれるモノが いつか君をすげぇ奴にするんだ――そんな内容です。KAWAIIが押し寄せて来る 泣いてる場合じゃない。サイボーグご飯マンガ「サイバネ飯」、そして現在、ギャルがバディを組んでヴァイオレンスなアクションを景気よくブッ放す『東京入星管理局』をCOMIC MeDuで連載中の窓口基が、同人誌でこれまで発表したウェルメイドな人肉食漫画の再録&商業単行本化が、窓『カニバリズム!』。淡々と、マニュアル的に、手際よく、人の肉を解体し、喰らう、あくまで淡々と。それが素晴らしくいい。余すところなく「人間味」にあふれている。
成田 芋虫
小学館 (2018-10-19)
売り上げランキング: 28,736
小学館 (2018-10-19)
売り上げランキング: 28,736
講談社 (2018-12-21)
売り上げランキング: 80
売り上げランキング: 80
裏サンデー、マンガワンで2014年12月から足掛け4年に渡って連載された、成田芋虫『IT'S MY LIFE』が全11巻で完結。全てのキャラクターと物語を有機的に描き切った万感のアットホームファンタジーでありました。キャラクターといいストーリーといい、成田氏は「積み重ねていく」のが本当にうまい人だなと思います。現在別冊ドラゴンエイジにて連載中の『KILLING ME /KILLING YOU』で描かれるメインキャラクター2人の旅路と積み重ねの行方にも期待です。カルロ・ゼン&石田点『テロール教授の怪しい授業』は画期的切り口のテロ&カルト論コミック。白熱教室ならぬ爆熱教室。これは10巻分くらい回を重ねていけばすごいものになりそうな予感がする。モリモリと重ねていっていただきたい。