2014年6月27日金曜日

ドイツが誇る五色のスーパーヒーローメタルバンド、起死回生の(?)1枚 ― Grailknights『Calling the Choir』(2014)

Calling the ChoirCalling the Choir
(2014/04/11)
Grailknights

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https://itunes.apple.com/jp/album/calling-the-choir/id840857573

  Grailknightsが今年に入って6年ぶりのニューアルバムを出していたと少し前に知り、iTunesでポチりました(Amazon MP3だともうちょっと安い)。「Grailknightsとは何ぞや?」と、知らない人に説明いたしますと、ドイツの誇るスーパーヒーローバンドです。Sir Optimus Prime(vo.g)、Lord Lightbringer(g.vo)、Duke of Drumington(ds)、Mac Death(b.vo)の4人で2002年に結成。当初は「Galactic Grailknights」という長めのバンド名でした。ちなみにDuke of DrumingtonMac DeathA COLOUR COLD BLACKというスラッシュ・メタル・バンドのメンバーとしても活動されていたようです(1995年結成/2005年解散)。

  Grailknightsは2004年に初のフルアルバム『Across the Galaxy』、2006年に2ndフルアルバム『Return to Castle Grailskull』を発表。後者に収録された楽曲"Moonlit Masquerade"のPVがどこを切ってもツッコミどころ満載な内容だったため、【珍メタル】の一つとして日本の一部のメタラーの間でも話題となります。ヴォーカルのグロウルや、楽曲のアコースティカルな展開も多いため、音楽性はメロディック・デスメタルともフォーク・メタルとも言われたりしますが、基本的には正統派のヘヴィ・メタルです。見た目はともあれ音楽的には非常にまっとうなものなので、ネタとして見ているうちにその音楽性の虜になり、[Battlechoir] (Grailknightsのファンの総称)の一員となってしまった人も数知れず。アルバムはもちろん、ライヴでも正義と悪の戦いというコンセプトを前面に押し出したパフォーマンスを繰り広げる首尾一貫した姿勢を貫いているので、そういうところにもまた惹かれるものがあります。





  2008年に3rdフルアルバム『Alliance』を発表後、Duke of Drumingtonが脱退、後任にBaron van der Blastを迎えます。彼は本名をMatthias Liebetruthというのですが、ヘヴィメタル界では著名なプロデューサーの一人であるトミー・ニュートンが在籍していたことで知られるジャーマン・メタル・バンド VICTORYの元メンバーであり、Grailknightsに加入する前にはSCORPIONSやRUNNING WILDのサポートメンバーでもあったというヴェテランです。バンドは2010年には初のライヴDVD『Live at the Gates of Grailham City』を発表。このまま順調な活動を続けるかと思いきや、2011年に入って今度はLord Lightbringerが脱退。残ったメンバー3人で4月に3曲入りのEP『Non Omnis Moriar』を発表するものの、7月にはとうとうMac Deathまでもが脱退してしまいます。オリジナルメンバーはもうSir Optimus Primeただ一人、すわピンチか? …と思いきや、後任メンバーは意外とすぐに見つかったようで、同年にCount Cranium(b)、Sovereign Storm(g)、Earl Quake(g)の3人が加入。2013年にはBaron van der Blastに代わってLord Drumculesを迎え、ここに新生Grailknightsのラインナップが固まります。

                         




  そして満を持して発表されたのが、今回ご紹介する『Calling the Choir』。メンバーが殆ど入れ替わってしまったのだから、音楽性も劇的に変化してしまうだろうと思っていたのですが……なんと、何も変わっていませんでした。イモ臭い疾走感、吐き捨て気味のヴォーカル、ムサ苦しいコーラスワークと掛け合い、垢抜けない泣きを聴かせるギター、やたら秀逸なバラードナンバー…良い意味でのB級ヘヴィメタルのアレコレが詰まっておりました。それだけSir Optimus Prime氏が楽曲面で大きなイニシアチブを握っていたということなんでしょうが、それでもここまでブレがないというのは一目に値するのではないかと。もっさりしたフォークメタルチューン"Calling the Choir"でいきなり始まった時の微笑ましさといったら。疾走チューンと思わせて、結局ミドルテンポでタメの効いた展開になってしまう、このボンクラ感がたまりません。ロシア民謡めいた曲調で奔放なコーラスが目立つ"Morning Dew" "Sea Song"や、ある意味本領を発揮した(?)アコースティック・バラード"Anna Lee"、往年のジャーマン・メタル的な様式美を感じさせる"End of the World"と、曲調のヴァリエーションは決して広いものではないのですが、数曲聴くうちに細かいことはどうでもよくなります。




  アルバムの最後を飾るのは、日本では麻倉未稀の歌唱でTVドラマ「スクール☆ウォーズ」の主題歌にもなったことでもお馴染み、ボニー・タイラーの"Holding Out For A Hero"のカヴァーです。実は3年前にリリースされたEPで既にカヴァーされているのですが、このバンドらしい選曲だと思います。カヴァーといえば、こちらもご紹介しておきましょう。Grailknightsによる、スーパーヒーローもののテーマのカヴァーメドレー。ちなみに「Saber Rider」は「星銃士ビスマルク」の海外タイトルです。ユーモアを散りばめつつ、愛のあるアレンジも忘れない、非常にナイスなカヴァーなので、必見であります。





  現在もヨーロッパツアーで各地を精力的に回っており、ビッグネームも名を連ねるメタル系フェスにも度々参加しているGrailknights。いろいろありましたが、今、再び充実の時を迎えているのではないでしょうか 。

Grailknights - Official Site
Grailknights - facebook
Grailknights - Youtube
Grailknights - Encyclopedia Metallum
Grailknightsとは - ニコニコ大百科
Grailknights - Wikipedia

2014年6月21日土曜日

「ゴーメンガースト」に因む、英国のブラス・ジャズ・ロック・バンドが残した唯一の作品 ― TITUS GROAN『Titus Groan』(1970)

タイタス・アウェイクス (ゴーメンガースト4) (創元推理文庫)タイタス・アウェイクス (ゴーメンガースト4) (創元推理文庫)
(2014/06/21)
マーヴィン・ピーク&メーヴ・ギルモア

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  イギリスの作家 マーヴィン・ピーク「ゴーメンガースト」シリーズは、広大さと無秩序さを誇る巨大建造物ゴーメンガースト城を舞台に、グローン伯爵家の幼い跡継ぎタイタスや、彼を取り巻く人々を描いたゴシック・ファンタジー作品。ピーク氏の逝去により未完に終わってしまうものの、生前に発表された『タイタス・グローン』『ゴーメンガースト』『タイタス・アローン』の三作品は、今なおファンタジーノベル界に屹立する、重厚極まる大作であります。先ごろ、東京創元社からシリーズ三部作が全てカヴァーを新装して復刊されたことに加え、遺されたわずかな断片をもとにメーヴ・ギルモア夫人が書き継いだ幻のシリーズ四作目『タイタス・アウェイクス』も刊行され、改めて注目が集まっております。

Titus GroanTitus Groan
(2010/11/01)
Titus Groan

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  というわけで、今回はそんなゴーメンガーストに因んだバンドについて取り上げたいと思います。マーヴィン・ピークは1968年に亡くなるのですが、その翌年 ― 1969年に、イギリスでTITUS GROANな るバンドが誕生します。さながら『タイタス・グローン』で、父セパルクレイヴの死により当主の座を引き継ぐ幼きタイタスのように。サイケデリック・ロック 界隈で活動していたメンバーたちによる四人編成のブラス・ジャズ・ロック・バンドであり、サックス/フルート/オーボエを担当するTony Priestlandとドラムス担当のJim Toomeyの二人は、ショック・ロックの祖 アーサー・ブラウンがThe Crazy World Of Arthur Brownの結成以前に率いていたブラス・ロック・バンドでもプレイしていたという経歴の持ち主であります。そして、今なおカルト的なファンの多いイギリスのDawn Recordsから1970年にリリースされたアルバムが、この『Titus Groan』。プロデュースは、同レーベルの筆頭だったポップ/ロック・バンド MUNGO JERRYを手がけていたBarry Murray。ちなみに彼は翌年、アシッド・フォーク・バンド COMUSの怪作『First Utterance』のプロデュースも手がけます。オリジナル盤の収録曲は全5曲で、後にシングル盤に収録されていた3曲(うち1曲はボブ・ディラン"Open The Door Homer"のカヴァー)が追加収録されます。

  "It Wasn't For You"のようなブルージーなギターとサックスが絡む小粋なサイケデリック・ロックや、10分を越えるフォーク・ロック組曲"Hall Of Bright Carvings"、厚いコーラスワークを聴かせるビート・ロック/ポップ"Fuschia"と いった楽曲を、管楽器の素朴な響きやバタバタしたリズムセクションも交えて、どこを切ってもいなたいサウンドで聴かせます。基本的に軽快なので、原作のイ メージをダブらせて聴くのはちょっと難しいかもしれませんね。これをシブくて味わい深いと感じるか、ゴッタ煮でまとまりがないと感じるかというところも意 見が分かれるところでしょうが、未分化の魅力とでも言いましょうか、そういうものを強く感じます。バンドとしての活動期間はごくごく短く、結局アルバムを 1枚出して解散してしまうのですが、アート・ロックからプログレッシヴ・ロックへという、過渡期にあったブリティッシュ・ロック・シーンにひっそりと痕跡 を残したカタログとして、今なお愛される作品なのは間違いありません。海外では幾度となく再発が繰り返されていることからも、それが伺えましょう。ちなみ に最新のリイシューは、英国のESOTERIC RECORDINGSから2010年に出たリマスター盤です。日本国内では、1999年にビクター、2007年にストレンジデイズレーベルからそれぞれ紙 ジャケット仕様で出ていました。

  TITUS GROAN解散後、メンバーはそれぞれセッション・ミュージシャンとしての活動にシフト。ギタリストのStuart Cowellはオーストラリアで音楽活動を続けた後、現在はアイルランドのKinvara Area Musicという音楽系プロダクションに携わっているようですし、Jim Toomeyは70年代後半にTHE TOURISTS (アニー・レノックスとデイヴ・スチュワートがEURHYTHMICSを結成する前に活動していたバンド) に参加したことで成功を収めます。



Titus Groan | 60s/70s英国ロック・データベース:
ゴーメンガースト - Wikipedia
Dawn Records - Wikipedia

「究極の幻想文学。読書人必読の書〈ゴーメンガースト〉三部作復活!2014年6月刊行」 ‐ 東京創元社

タイタス・グローン―ゴーメンガースト三部作 1 (創元推理文庫 (534‐1))タイタス・グローン―ゴーメンガースト三部作 1 (創元推理文庫 (534‐1))
(1985/04)
マーヴィン・ピーク

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ゴーメンガースト (創元推理文庫―ゴーメンガースト3部作)ゴーメンガースト (創元推理文庫―ゴーメンガースト3部作)
(1987/02)
マーヴィン ピーク

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タイタス・アローン (創元推理文庫―ゴーメンガースト三部作)タイタス・アローン (創元推理文庫―ゴーメンガースト三部作)
(1988/01)
マーヴィン ピーク

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2014年6月19日木曜日

能天気だけど実力派、スペイン生まれのミクスチャー・プログレ ― Cheeto's Magazine『Boiling Fowls』(2014)


スペインはバルセロナのプログレッシヴ・ロック・バンド Cheeto's Magazineのデビューアルバム。bandcampにてname your priceでダウンロード可能な作品です。バンド自体の活動歴はまだ浅く、結成は恐らく'00年代後半頃(公式facebookアカウントを開設したのは2009年)と思われます。また、影響を受けたバンド/アーティストにQUEEN、SPOCK'S BEARD、TRANSATLANTIC (Neal Morse)、DREAM THEATER (Jordan Rudess)、IT BITES、KINO、FROST*の名前を挙げています。スペインのプログレ勢にはクセのあるバンドが多いイメージだったのですが、このバンドはネオ・プログレッシヴ・ロック以降の英米バンドから強く影響を受けているためか抜けが良く、また、暖色系の音をふんだんに聴かせてくれるので人懐っこさも十分です。ポップでキュートなジャケットのイメージに違わず、能天気かつマイペースなスタイルを遠慮なく貫いているのが、このバンドの大きな魅力でしょう。

1曲目でいきなり25分を超える大曲"Nova America"を持ってくるという暴挙もなんのその、手を変え品を変え、さらには随所にユーモアを織り交ぜつつ、最後まで聴かせるテクニックとパワーをこの曲で見事に実証してくれます。バンドメンバー5人全員+2人のゲストヴォーカルを迎えて作り上げられたコーラスワークがもたらす奇妙な美しさ(?)は聴きもので、時にヒネくれの度合いが強まってGENTLE GIANTを彷彿とさせるのがまた微笑ましいのです。この曲以降はコンパクトな楽曲をバラエティ豊かに展開。EDM要素も加味したダンサブルなエレクトロ・チューン("The Driver And The Cat")を聴かせたかと思えば、シンセサイザーを基調にした躍動感溢れるインストゥルメンタル("Volcano Burger")を聴かせ、コーラスハーモニーの絡みを活かしたQUEENばりのポップ・ロック("Teddy Bears")を聴かせたかと思えば、悪ノリ気味のロックンロール("Four Guitars")を聴かせる…という具合。時にニューウェイヴ・パンクにも接近するのですが、それでもプログレ的なツボは外さないのがミソ。終盤の"Octopus Soup" "Fat Frosties"は、そんな彼らのミクスチャー感覚とユーモアが最大限に発揮された絶品の楽曲です。最後はエフェクトをかけたヴォーカルをフィーチャーした、DAFT PUNKばりのエレクトロ・ロック・チューン"Driver French"で、好き放題やらかしたアルバムをキャッチーに締めくくります。それにしても振れ幅の広いことだなあと思います。この節操のなさと能天気さは失わないで欲しいですね。

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2014年6月16日月曜日

クルト・ラスヴィッツに想を得た、イタリアの新鋭の意欲作 ― FORZA ELETTRO MOTRICE『Sulla Bolla Di Sapnone』 (2014)

バブルソープにバブルソープに
(2014/05/25)
フォルツァ・エレットロ・モトリーチェ

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https://itunes.apple.com/jp/album/sulla-bolla-di-sapone/id853961195

  イタリアの新鋭プログレッシヴ・ロック・バンド FORZA ELETTRO MOTRICEの、2012年に発表された4曲入りEP『Epsilon』に続く1stフルアルバム。FORZA ELETTRO MOTRICEとは「起電力」の意。キーボーディストのAlberto CitterioとギタリストのPaolo Colomboを 中心としてバンドが結成されたのは2007年頃で、当初はPFM、BANCO、LE ORMEといったイタリアン・ロックのカヴァーを中心としていたそうです。その後、幾度かのメンバーチェンジを経て、現在のラインナップとなります。本作 は黎明期SFの父とも呼ばれるドイツの作家 Kurd Lasswitz (クルト・ラスヴィッツ 1848-1910)「Auf cler Seifen blase (シャボン玉の世界で)」を 基にしたコンセプトアルバムであります。同作は十数ページほどの短篇であり、あらすじを説明すると、主人公とマッド気味な科学者が、《ミクロゲン》なる発 明機械により身体を限りなく微細なサイズに縮小し、多数の住人が存在し、地球とはまた別の時間が流れているシャボン玉の世界を探検するというメルヘンチッ クなお話です。エドモンド・ハミルトンの「フェッセンデンの宇宙」に通じるものもありますが、それより50年も前に書かれたのが本作なのです。

  ぶ厚いシンセサイザー/キーボードとフュージョン・タッチで滑らかなフレーズを弾きこなすギターにのせて、ヴォーカルが熱っぽく、しなやかに歌い上げるシン フォニック・ロックを得意としております。近年のバンドにありがちなプログレッシヴ・メタル的な要素は全くなく、70年代プログレッシヴ・ロックへのリス ペクトと共に人懐っこさを感じさせるサウンド。2~6分とコンパクトな楽曲を、疾走感を失うことなく淀みなく可変するバンドアンサンブルで巧みに魅せてく れます。作曲の殆どはAlbelto氏によるもので、スケール感のある楽曲作りに彼の非凡なセンスを伺わせます。モーグ・シンセサイザーをバリバリに弾き 倒す"Microgen (Parte 1&2)" "Incontro Con I Saponiani" から、アルバム中盤 "Il Mondo Bianco Opaco" "Riflessioni"ではAlberto氏のクラシック/ジャズの素養を遺憾なく発揮した上品なタッチのピアノ・インストゥルメンタルを聞かせてくれます。アルバムのハイライトはフュージョン/ジャズ・ロック寄りの"Nella Citta"で、細やかなリズムセクションをバックに朗々としたヴォーカル、後半のソロ合戦など、爽快感を味わえる場面も多いです。コーラスワークに力の入った暑苦しいオルガン・ハードロック"Processo Alla Verita"も面白い1曲。昨年デビューアルバムをリリースし、華麗でクラシカルなキーボード・プログレを聴かせてくれたPROGENESIと共に、今後の活動に大いに期待したいバンドです。


  FEMの公式サイトでは「シャボン玉の世界で」のPFDファイルが伊、独、英の三ヶ国語でダウンロード出来ます。邦訳で読みたいのであれば、ハヤカワSFマガジンの1980年3月号(第258号)か、国書刊行会から2001年に刊行された『独逸怪奇小説集成』と いうアンソロジーに前川道介氏の訳によるものが収録されているので、そちらをあたると良いでしょう。また、バンドのサイトは日本のファンも視野に入れてい るのか、日本語にも言語対応してるという親切設計。バイオグラフィやメンバープロフィールもしっかり訳されており、マメな人たちだなあと感心してしまいま した。FEMのメンバーにはカヴァーバンド出身者が多いのですが、ドラムスのEmanuele BorsatiはEL&Pのカヴァーバンドの他にTigerbandなるアニソンのコピーバンドもやってるそうで、同バンドが"TOUGH BOY"を演奏してる動画がYouTubeにありました。しかしながら、HIGHLORDといいDGMといい、イタリア人はホント北斗の拳が好きですなあ。

独逸怪奇小説集成独逸怪奇小説集成
(2001/09)
不明

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FEM PROG BAND - Official Site
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クルト・ラスヴィッツ - Wikipedia

2014年6月15日日曜日

アメリカのデカルチャーなアメリカのプログレッシヴ・メタル・バンド ― ZENTRAEDI『Seven Medley Sins』 (2014)


「マクロス」シリーズに登場する巨人型異星人であるゼントラーディをバンド名に冠した、アメリカはテキサスの4人組プログレッシヴ・メタル・バンド ZENTRAEDI。'00年代の中ごろにレコーディングされたものの、何らかの事情により当時は発表されることのなかったアルバムが、今年の1月にbandcampで配信リリース(name your price)されました。こうしてリリースされた経緯は全く不明であり、バンドの経歴、現在も活動しているのかといった情報も皆無ということで、謎に包まれたバンドです。作詞・作曲はヴォーカリスト兼キーボーディストのJon Beal、ミキシングはベーシストであるJason Harveyがそれぞれ担当しており、恐らく彼らがバンドの核であったと思います。ドラマーのDavid Beckは、検索すると同名のセッション・ドラマーが引っかかるのですが、同一人物なのかは不明。ギタリストのMohadevは、イギリスのチェンバー・ロック・ユニット KARDA ESTRAが2013年に発表したアルバム『Mondo Profondo』の一部楽曲にクレジットされています。楽曲はミドルテンポを基調としていて、8~11分とそこそこ長尺なのですが、細かい起伏に富んでおり、テンポ良く聴かせてくれます。派手さは控えめですが、勘所をしっかりと押さえていて巧い。やはりDREAM THEATERからの影響は強く感じるのですが、クリーンなトーンのヴォーカルということもあってか、Coheed And CambriaやENCHANTあたりにも通じるなという印象です。曲によってはゲストでタブラやシタール奏者も迎えてエキゾチックな味付けも施すなど、なかなか見所は少なくないバンドだと思います。じっくりタイプのプログレッシヴ・メタルが聴きたいという手合いには強くオススメしたいアルバム。

ゼントラーディ - Wikipedia
「第1回 君ならわかる、ゼントラーディ語講座」

2014年6月6日金曜日

みらゐ(mirawi) WORKS [1998~2014]

今年2月に若くしてこの世を去られた、みらゐさんを偲んで。 みらゐさんが生前に発表された作品や参加された作品を以下にまとめました。

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【オリジナル】
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再生ハイパーべるーヴ 『ぱんださんようちえん』(2002)

 同人音楽、電波ソングの金字塔的作品。みらゐ氏とbermei氏による楽曲。TOx2RO氏による詞。Sakuraさん、園田まひる(Rita)さん、茶太さん、霜月はるかさんをはじめとした多数のヴォイス/ヴォーカルが、三位一体となってぱんださんワールドへいざないます。異常に激しい楽曲のギャップといい、ふざけてるのに作り込みはマジというスタイルといい、聴き手を煙に巻きっぱなし。心地良く脳みそを蕩かせてくれることウケアイの1枚。ハッピーで愛すべきユニークな名作であり、怪作であり、迷作。それがぱんださんようちえんなのです。なお、2013年1月からダウンロード版が販売されております





Team Parhelia(みらゐ×ZTS×Kei×INTERFACE) 『Parhelia - Original Sound Track -』(2003)
架空のシューティング・ゲーム「Parhelia(パフィリア)」のイメージサウンドトラックという趣向で制作されたアルバム。フルCGの美麗なオープニングムービー、様々な用語が散りばめられた設定、人間側の視点からAI側の視点へと入れ替わって語られるという二部構成のシナリオと、ゲーム本編は存在しないものの、存分にイメージを膨らませてくれます。また、オープニング/エンディング、ステージ曲のみならず、機体セレクトや中間デモ曲、隠しボス曲までしっかりと用意されております。シューティングゲームの様式美を踏襲したつくりもさることながら、みらゐ氏、ZTS氏、Kei氏、INTERFACE氏の4名が作り上げた、STGへのリスペクトにも溢れた世界観に圧倒される力作です。





サイドプロテア 『未来のエネルギー』(2004)

キャッチコピーは「オサレを目指していたらオサルになっていた」「渋谷とフランスと秋葉原を、絶妙なバランスでブレンド」。コンセプトは「明るい未来」と「Capsuleの二次創作」。Capsuleのアルバム『Cutie Cinema Replay』『phony phonic』の空気感をさらにキュートにしたような、フレンチ・ポップス&フューチャー・ポップス路線のインスト&ヴォーカルアルバムです。茶太さんによる可愛らしいヴォーカルナンバーと、インストナンバーが交互に配され、TextToSpeachの使い方が絶妙な"チョウフプラスチック"や、ラストの"インターネット"など、ポップネスと心地良さのバランスが取れた空間が味わえます。





サイドプロテア 『きりんさん女子大生』(2008)
『ぱんださんようちえん』から6年…満を持して(?)姿を現した続編的アルバム。盟友bermei.inazawa氏、柳英一郎氏、interface氏、在藤銀氏や、霜月はるかさん、茶太さん、片霧烈火さんといったお馴染みのメンバー、その他多数の人達が参加して繰り広げられる「変態CD」。全97曲、ブックレットは120ページ(!)という特大ヴォリュームですが、そのうちヴォーカル・トラックは11曲。アルバムの殆どが他愛もない超絶脱力モノのコント、寸劇、ネタであり、全体的に混沌とした構成で最後までハチャメチャかつハイテンションに繰り広げられます。自分は未だにアルバムの全貌をちゃんと掴め切れていません。思わずお口あんぐりであります。






みらゐ 『夜明けのトロア滲む』(2012)


"夜明けの空が滲んで、朝焼けから青空へ広がりゆく風景。" 全8曲のファンタジックなエレクトロ/ヒーリング/ニューエイジ インストゥルメンタル作品。時に煌びやかに、時に静謐に、時に郷愁を漂わせる各曲が見せる風景や色彩は様々なれど、根底には共通したものが流れており、アルバムそれ自体が一つの世界を成しております。『Parhelia』『未来のエネルギー』の作風を思わせるようなスタイリッシュな疾走チューンや躍動感溢れるポップチューンもあり、ある種の総決算的な内容とも言えます。

iTunes / Amazon MP3

■INTERFACE氏による『夜明けのトロア滲む』作品解説 https://docs.google.com/file/d/0B7M1Tk_HdGR-Q3BOUEVUeWRHNEE/edit


みらゐ 『コルドルアの異系*ColdolR』(2012)



林美登利さんの人形を題材にとり、テーマに"異形・変容"を掲げて制作された全5曲収録の作品。シンセサイザーを基調としたダーク・アンビエント/エレクトロ テイストのインストゥルメンタルで構成され、鳥のさえずりや水音といった環境音、時計やオルゴール、赤子の声なども織り込まれ、意識の深層に訴えかけるかのようなイマジネーションで満たされた仕上がり。心地の良いポップなミニマリズムも顔を覗かせています。

iTunesAmazon MP3 ※『夜明けのトロア滲む』『コルドルアの異系*ColdolR』は、iTunes StoreやAmazon MP3等で配信リリースされております。


みらゐ 『太鼓の達人』(2009-2014)

バンダイナムコの音楽ゲーム「太鼓の達人」に、みらゐさんはオリジナル曲を提供されておりました。bermei.inazawa氏、在藤銀氏、茶太さんといったお馴染みのメンバーと共に制作された、ポップでカラフルな内容です。

「友情ぽっぷ」(2009/太鼓の達人12 ド~ン!と増量版)
(作詞・在藤銀/作曲・みらゐ/歌・茶太/収録&ミックス・bermei.inazawa)
http://taiko.namco-ch.net/taiko12_zoryo/

「DreamTide -夢の潮流-」(2010/太鼓の達人Wiiみんなでパーティ3代目)
(作詞・在藤銀/作曲・みらゐ/歌・茶太/収録&ミックス・bermei.inazawa)
http://taikowii3.namco-ch.net/

「mulberry」(2010/太鼓の達人14)
(作詞・在藤銀/作曲・みらゐ/歌・茶太/収録&ミックス・bermei.inazawa)
http://taiko.namco-ch.net/taiko14/

「白猫きゃらめる夢幻のわたあめ」(2010/太鼓の達人ぽーたぶるDX)
(作詞・作曲・みらゐ/歌・愛原圭織(スタジオギウ)/収録&ミックス・bermei.inazawa)
http://taikopsp3.namco-ch.net/

「駄々っ子モンスター」(2011/太鼓の達人Wii決定版)
(作詞・作曲・みらゐ/歌・茶太/収録&ミックス・bermei.inazawa)
http://taikowii-ketteiban.namco-ch.net/

「想いを手に願いを込めて」(2011/太鼓の達人 新筐体)
(作詞・作曲・みらゐ/歌・愛原圭織(スタジオギウ)/収録&ミックス・bermei.inazawa)

「リバイバー」(2011/太鼓の達人 新筐体)
(作詞・在藤銀/作曲・みらゐ/歌・茶太/収録&ミックス・bermei.inazawa)

「ファミレスウォーズ」(2012/太鼓の達人 新筐体KATSU-DON)
(作詞・作曲・みらゐ/歌・愛原圭織(スタジオギウ)/Eギター・増渕裕二/収録&ミックス・bermei.inazawa)

「魔法の喫茶店」(2014/太鼓の達人 新筐体モモイロVer)
(作詞・作曲・みらゐ/歌・愛原圭織(スタジオギウ))



太鼓の達人 オリジナルサウンドトラック「ドンダフル!」太鼓の達人 オリジナルサウンドトラック「ドンダフル!」
(2011/12/21)
ゲーム・ミュージック、下田麻美 他

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太鼓の達人オリジナルサウンドトラック 「フルコンボ!」太鼓の達人オリジナルサウンドトラック 「フルコンボ!」
(2012/03/21)
(ゲーム・ミュージック)

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【楽曲提供作品】
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AST『excrete beat』(1999)
音楽制作サークル「AST(Angel Studios Tokyo)」による、テクノ・ミュージック・コンピレーション シリーズの第三弾。同年に開催された第3回M3と第56回コミックマーケットで頒布されたそうです。みらゐさんは"CYaN SLeep" "MeRGe" "無気力製造工場"という3曲の楽曲を提供されております。


激団紫季『夢神楽』(2002)
文章、楽曲、歌、絵、そして映像と、30人以上に及ぶ豪華な顔ぶれが存分にクリエイティビティを発揮した「和」がテーマの一大企画コンピレーションアルバム。bermei氏や来兎氏、たくまる(加藤恒太)氏、ヴォーカルには片霧烈火さん、霜月はるかさん、茶太さん、園田まひる(Rita)さんの名前もあります。みらゐさんは3曲目の"漁火"、14曲目の"口寄せ"、18曲目の"潮騒"で参加。 http://www.studio-campanella.com/gekidanshiki/gekidanshiki.htm


みずさわゆうき『PASTEL』(2004)
ヴォーカリスト みずさわゆうきさんの1stアルバム。みらゐさんは2曲目"ほしくず"を作曲されています。同アルバムには天門(白川篤史)氏や、テクノポップバンド メテオールの山田カズミ氏も作詞や作曲で参加されております。








CLOSED/UNDERGROUND (片霧烈火)『トイショップ』(2008)
コミックマーケット75で頒布された、片霧烈火さんのミニアルバム。コンセプトは「らぶらぶオサレポップ」。Morrigan氏、カシダユウスケ氏、bermei.inazawa氏、たくまる氏と共に、みらゐさんもコンポーザーとして参加されており、2曲目"くるくるレコード"、5曲目"リモートコントローラー"を提供されております。





Voltage of Imagination『空想活劇・弐』(2011)

インディペンデント・レーベル「Voltage of Imagination」の企画による、"架空のアニメソングのヒットチャート"をテーマに、コンポーザーとイラストレーターがコラボレーションした楽曲を収めたコンピレーションアルバムシリーズの第二弾。みらゐさんは茶太さん(ヴォーカル)ときぬてんさん(イラスト)とコラボした4曲目の"ネオロマンサー"で参加。
http://www.voltagenation.com/katsugeki/02/#



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【二次創作/アレンジなど】
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■ハイパーべるーヴ合衆国『絆 -kizuna-』(1998)
※「To Heart」「WHITE ALBUM」のアレンジアルバム。

■ハイパーべるーヴ合衆国『real season』(1999)
■ハイパーみらーヴ合衆国『White Wind -Real Season 2-』(2000)

※「Kanon」「ONE~輝く季節へ~」のアレンジアルバム。

■APPLE project『Eternal Wind』(2000)
※「ONE~輝く季節へ~」のアレンジ・コンピレーションアルバム。
http://appleproject.kirie.net/?p=123

■APPLE project『天使のお仕事』(2000)
※「Kanon」の二次創作アルバム。
http://appleproject.kirie.net/?p=124

■ハイパーみらーヴ合衆国『Earth Like』(2001)
※「AIR」のアレンジアルバム。

■APPLE project『APPLE Tree』(2002)
※ヴォーカルアレンジ・コンピレーションアルバム。
http://appleproject.kirie.net/?p=128

■Providence Feather『朔ノ比−サクノコロ−』(2002)
※「月姫」の二次創作サウンドドラマ&アレンジCD

■Triumphal Records桃組『裏ROSS CD Vol.0?』(2002)
※「ラグナロクオンライン」二次創作ラジオ&ドラマCD。

■Code ZTS Label『VAGUE2』(2003)
※二次創作&オリジナル・コンピレーションアルバム。
http://www.codeztslabel.com/liner/l009.html

■studioCampanella『SoulS - Bermei.Inazawa Works 2001-2003』(2004)
※bermei.inazawa氏のベストアルバム。"Blue Plastic Resistance"再録。
http://www.studio-campanella.com/campanella/cpnl0006/

■studioCampanella『berpop melodies & Remixies』(2005)
※bermei.inazawa氏の楽曲集&リミックス集。"メロディ (mirawi mix)"収録。2009年にリマスター再販版リリース。
http://www.studio-campanella.com/web/index-campanella.htm

■フランスパン 『CHOCOLATE☆NIGHT ラグナロクバトルオフライン オリジナルサウンドトラック下巻完結編』(2006)
※「ラグナロクオンライン」二次創作ゲーム「RAGNAROK BATTLE OFFLINE」のサントラ。
http://www13.plala.or.jp/french/rbo.htm

■RAPID FIRE『Guardian Heroines Final Original Soundtrack』(2006)
※「ガーディアンヒーローズ」ほかの二次創作ゲーム「ガーディアンヒロインズ」のサントラ。
http://nrf-game.sakura.ne.jp/NRF/Products/ghfostt/ghfost.htm

■5/4TAKEPOD『Dead Ball Project VOL.4』(2010)
※デッドボールPの4thアルバム。
http://takepod.accela.jp/contents/dbp4.html

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【その他】
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ニコニコ動画「みらゐの自作曲」マイリスト【 http://www.nicovideo.jp/mylist/13075346 】より。

■みそねこ
みらゐさんの学生時代の作品。横川理彦氏が選評を務められていた、MSX専門誌「MSX・FAN」の投稿コーナーで取り上げられた楽曲がまとめられています。


■Tenori-Plus 7237
アンビエント・テクノなオリジナル曲。アップロードは2009年6月。なお、この音源がアップロードされてから数時間後に、"Eden of the Tenori 7237"というタイトルで、school food punishmentの"Futuristic Imagination"(「東のエデン」エンディングテーマ)のブレイクビーツ・リミックスもアップロードされていたのですが、こちらは既に権利者削除されており、聴くことが出来ません。


■Share the world (耳コピ)
アップロードは2009年11月。東方神起"Share the world”(作曲:前山田健一[ヒャダイン])の耳コピ&VOCALOID(鏡音レン)カヴァー。


■電脳戯話 (アレンジ)
アップロードは2009年11月。坂本龍一氏のソロアルバム『Smoochy』(1995)の収録曲"電脳戯話"(作詞:高野寛)を、アレンジ&VOCALOID(鏡音リン)カヴァー。


■はじまりの道
アップロードは2010年7月。みらゐさんの「自作曲」マイリストには登録されていない楽曲。オーケストラ調のサウンドをフィーチャーした、往年のRPGを彷彿とさせるオリジナル・インストゥルメンタルです。


■幻惑のレプリカ
アップロードは2010年7月。こちらもみらゐさんの「自作曲」マイリストには登録されていない楽曲。ガムランのテイストも交えた、ポリリズミックで神秘的なムードのオリジナル・インストゥルメンタルです。