2007年7月24日火曜日

SxOxB 『Gate Of Doom』(1993)

Gate of Doom
Gate of Doom
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Sob
Blackend (2004-03-08)
売り上げランキング: 1,093,913


 イノヴェイターとしてグラインドコアシーンにその名を刻むバンド SxOxBの3rdアルバム。当時NAPALM DEATHやCARCASS、BRUTAL TRUTHなどとの仕事で知られていたコリン・リチャードソンをミキシング&マスタリングエンジニアに迎え、これまでのパンク色の濃いファストコアから一転し、メタル色の濃いグラインドコアへと移行したのが本作。ついでにSxOxBファンが真っ二つに分かれる契機となったのも本作からです。早口でハイテンションにまくし立てるトッツァンの日本語ヴォーカルと、どこまでもスピード重視の一寸刻みなハードコアパンクサウンドが共に初期衝動で玉砕せんばかりの勢いで展開され、「速い・五月蝿い・鋭い」以上に言葉を尽くす必要もないヒッチャカメッチャカぶりだった初期の作風を考えると、重厚重圧になった上、整合性も出てきたというこの変貌振りは強烈な新陳代謝という印象を感じるので、初期のファンが難色を示すのもやむなしといったところですが、一方で問答無用の重圧殺ぶりがヘヴィメタル/デスメタル方面に強烈にアピールすることとなり、そっち方面から新たなファンを獲得することに成功。かく言う自分も、重いドスが効いててかつわかりやすくグネグネしている髭剃りのようなジョリジョリしたリフまみれの本作の作風の方が好みです。次作『Vicious World』ではもう一段スピードを落としたことでより整合性を強めたサウンドを展開しましたが、その翌年バンドの核を成していたトッツァンの突然の死によりバンドは未曾有の危機に直面。YASUE氏によりなんとか建て直しは図られ、99年にはダブ要素を取り入れた5th『Dub Grind』、03年には新ヴォーカリストを迎えてセルフカヴァーベスト盤である『Still Grind Attitude』が発表され、現在も活動を続けているものの、やはりカリスマ不在の穴は大きく、かつての勢いを取り戻すには厳しいものがあるというのが何とも寂しく思えます。

2007年7月20日金曜日

ASHADA『Circulation』(2006)

CirculationCirculation
(2006/09/12)
Ashada

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 妙(vo.p.mandolin)、(p.accordion)の二人の女性を中心としたファンタジックなポップス・ユニット アシャダの1stアルバム。数名のサポート・ミュージシャンを迎えてレコーディングされ、その中にはKBBの壺井彰久氏(vln)とDani氏(b)の名前も見られます。妙嬢、緑嬢の二人は大きな影響を受けたアーティストとしてZABADAK(と新居昭乃)を挙げており、ユニットのサウンドにも色濃く反映されております。若干翳りのある妙嬢のヴォーカルと、トラディショナルな要素を取り入れたシンフォニックな趣の楽曲は、繊細で透明感のある仕上がり。ときにプログレ的な構築も見られますが、あくまでスパイス的といったところで、そこまで深入りはしていません。メロディーの際立ちや展開の複雑性よりも淡い雰囲気に重点を置いた楽曲が多いので、もう一押し何かが欲しいなと感じる場面もなきにしもあらずですが、6曲目の「Neji」はアルバムの楽曲の中でも出色の出来だと思います。仄暗くゆったりとした雰囲気から熱のこもったギターソロの盛り上がりへと繋がる終盤の展開は力強く、印象付けられました。


【後記】
 残念ながらASHADAは2007年の夏に解散してしまいましたが、翌年、妙嬢は新たなバンド taikaを結成し、現在も活動を行っております。



2007年7月9日月曜日

COALTAR OF THE DEEPERS『Yukari Telepath』(2007)

YUKARI TELEPATHYUKARI TELEPATH
(2007/07/04)
コールター・オブ・ザ・ディーパーズ

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 オーケン率いる特撮でも重要な役割を担っているNARASAKI率いるシューゲイザーメタルポップスエレクトロミクスチャーバンド コールター・オブ・ザ・ディーパーズの5年ぶりとなる5thフルアルバム。アルバムを重ねるごとに闇鍋式に新要素をポンポン投入しておきながら、ゲテモノにならないところへ必ず落ち着くというバランス感覚の冴えはやはりこのバンドならではの強烈な個性。前々作『No Thank You』はヘヴィネスの渦で痛快に巻き上げ、前作『Newave』はエレクトロの緩やかな波にたゆたう作品だったのですが、本作はエレクトロとヘヴィネスのバランスが取れていることから、過去二作のちょうど中間に位置しているのではないかと思います。さらに楽曲にはニューウェイヴ的なシーケンスがフィーチュアされ、展開にクッキリとした筋を通されているためか、有り余るほどの物量となんでもアリの多彩さで勝負を仕掛けてことごとく優勢に持っていくバンドのスタンスとの噛み合せもすこぶる良好。「Ribbon No Kishi」「Deepless」と繋がるエンディングへの程よい流れもいいですが、中盤における流線型に煌くデジロックナンバー「Aquarian Age」(ちなみにこの曲は03年に発表されたOVA「アクエリアンエイジ Saga II」のエンディング曲のリメイクです)、「Automation Structures」の近未来的なスピード感を持った展開には胸がときめかざるを得ませんでした。曲調がめまぐるしく移り変わるので聴き通すと幾度となくアップダウンを味わうことになりますが、トータルバランスは絶品。

2007年7月6日金曜日

Clive Nolan&Oliver Wakeman『Jabberwocky』(1999)

JabberwockyJabberwocky
(2003/01/01)
Clive Nolan、Oliver Wakeman's 他

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 PENDRAGONのクライヴ・ノーランと、リック・ウェイクマンの息子 オリヴァー・ウェイクマンのコンビによる、ルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」に登場する化け物ジャバーウォッキーをモチーフにしたストーリー・コンセプトアルバム。いわゆるロックオペラプロジェクトということで、ピーター・バンクス(Gr/YES)、ボブ・カトレイ(Vo/MAGNUM)、ピート・ギー(B/PENDRAGON)、トレイシー・ヒッチング(Vo/LANDMARQ)、ジョン・ジャーリー(Gr/THRESHOLD)、イアン・サルモン(Gr&Ba/SHADOWLAND)と、両者とゆかりのあるミュージシャンが多数ゲスト参加。オリヴァーの親父であるリック・ウェイクマンもナレーターとしてクレジットされています。楽曲についてはそれなりに壮大で品の良いポンプロックという以外に語りドコロがないので、良い意味でも悪い意味でもソツがなく、ゲストの面子でしかゲタを履かせようがないというありがちなロックオペラプロジェクト作品の域を出てませんが、ビックリするほど親父譲りなクラシカルぶりを見せるオリヴァーのキーボードフレージングと、クライヴのソングライティングの安定感を伺うアルバムということでまあとりあえずひとつ。ASIAやMAGNUMのアルバムジャケでお馴染みのロドニー・マシューズによるファンタジックなジャケットに見合う内容に仕上がっています。