2009年12月31日木曜日

2009年 極私的20曲選

09年ももう終わり、今年は非常にあわただしい年末でございました(主にコミケで)
とりあえずちょっと前にTwitterに投下してた20選ネタ&8tracksをブログにて再利用。
気の利いたコメントのひとつでも入れたかったのですが…もう年明けまで時間がねえ!
ので、ひとまず曲目と8tracksへのリンクだけでも。

8tracks:2009 BEST 20 TUNES Part.1 http://8tracks.com/camelletgo/2009-best-20-tunes-part-1

1:Converge「Dark Horse」
2:FIRE BOMBER「弾丸ソウル」
3:Rekion「その闇と生き抜くため」
4:LIGHT BRINGER「Closed Sister~雪待月の妹~」
5:GRAPEVINE「疾走」
6:MEW「Repeater Beater」
7:Base Ball Bear「LOVE MATHEMATICS」
8:rega「VIP」
9:Animals As Leaders「Song of Solomon」
10:sasakure.UK「ぼくらの16bit戦争」

8tracks:2009 BEST 20 TUNES Part.2 http://8tracks.com/camelletgo/2009-best-20-tunes-part-2

11:TinySymphony「レトロスペクト feat.初音ミク」
12:筋肉少女帯「ゴッドアングル Part.2」
13:ストロベリーソングオーケストラ「狂れた埋葬虫、電波、赤マント! 」
14:Diablo Swing Orchestra「A Tap Dancer's Dilemma」
15:Alamaailman Vasarat「Tujuhuju」
16:Native Window「Money」
17:Andre Matos「The Myriad」
18:ASTRA「Never Say Goodbye」
19:Sonata Arctica「Deathaura」
20:Fairyland「Score To A New Beginning」

それでは良いお年を!

2009年12月7日月曜日

ELECTRIC ASTURIAS 2009/12/5 江古田Buddy ライブレポート

 この日が来るのを随分と楽しみにしていました。エレクトリック・アストゥーリアスお披露目ライヴ!天気は生憎のどしゃ降りでしたが、Buddyの前はたくさんのお客さんでギッシリ満員御礼。会場のイスも予備含めて全部埋まり、立ち見の人もかなりおりました。やはり久々のエレクトリック編成ライヴということで、皆さんの期待の高さも伺えます。ステージ左から右にかけて川越好博 (key)、大山曜 (Ba)、田辺清貴 (Dr/後)/テイセナ (Violin/前)、平田聡 (Gr)といった並びにて、19:30ちょっと過ぎに開演。

 1曲目はFate/Zeroのイメージアルバムから「The Lancer」、いきなりエレクトリック・アストゥーリアスのキャラというものをまざまざと感じさせる、さながら熱風が吹き付けるようなテンションに溢れた楽曲。軽いMCとメンバー紹介を挟みつつ、続く「闇からの声」は、シンセの煌びやかなバッキングに導かれるエレクトリック・チェンバーロックとでも言うような妖しく屈折するパッセージがこれまた"掴み"をたっぷり含んだ曲。「アコースティック・アストゥーリアスでは演奏する方も観る方もある種の緊張感があるのですが、今回はエレクトリックなので、細かいことは気にせず、ロックで行きましょう。」との大山氏のMC通り、エレアスのサウンドは実にロック。ハードかつしなやかさを兼ね備えた刺激的なキャラクターは確かにマルチ・アスともアコ・アスとも違うと早速実感した次第。また、ベースを演奏するのは久々でブランクがあると大山さんは言っておりましたが、全然ブランクを感じない流暢なプレイを披露していて実にキマっておりました。

 3曲目は93年発表の3rd『Cryptogam Illusion』より「Phoenix」、スタイリッシュに燃え盛る情熱的楽曲の姿は十数年経っても変わっておらず、思わずグッとくるものが。続く4曲目は大曲「Castle In The Mist」、静から動、動から静へと移り変わる展開がまさに霧を抜けてその先に聳え立つ城を眼前に捉えるがごときイメージを喚起させる勇壮雄大な仕上がり。続いては「3人で演奏する楽曲を今回用意してきました」ということで、まずはアコースティック・アストゥーリアスでも演奏されていた川越氏の楽曲「雪舞う」をベース、キーボード、ヴァイオリンのトリオ編成にて演奏。5拍子のパッセージが優雅に流れていくこの曲でクールダウンが図られ、第一部は終了、15分のしばしの休憩を挟みます。
 第二部では、ドラムス、ギター、ヴァイオリンというトリオ編成にて「Synapse」。「せっかくですしStella Lee Jones(平田氏、田辺氏、テイ嬢の3人も参加している7人編成バンド)の曲をやりましょうよ」→「7人編成で演る曲を3人で演るの!?」→「結局、新曲を書いてくれました」というエピソードもなんとも微笑ましい楽曲で、優雅な雰囲気でありながらぐねぐねとうねる妖しさも兼ね備えており、これからどう成長していくのか、そしてStella Lee Jonesのライヴでどう生まれ変わるのか、期待感の持てる内容でしたね。

 7曲目はシャマナシャマナより「Moondawn」、印象的なパッセージが何度も訪れ、"より格調高くなったマハヴィシュヌ・オーケストラ"という形容もできそうな骨太かつキレ味抜群のジャズ・ロック・アンサンブルを展開するという、かなりインパクトのあるアレンジ、個人的には今回のライヴで一番気に入った曲、ストレートにシビました。テイ嬢のヴァイオリンプレイは予想以上にキレ味鋭く、今後が気になるヴァイオリニストと強烈に印象付けた感があります。平田氏のギターサウンドとの相乗はこれからエレアスの重要な要になっていくでしょうね。8曲目は塵骸魔京「聲無キ涙」と、先ほどの「Phoenix」と同様、3rdアルバムからの楽曲「Cyber Transmission」をメドレー形式にて展開、キーボードのバッキングを下地に、クッキリと浮かび上がる平田氏の泣きのギター、そして続くテイ嬢の切なげなヴァイオリンへと繋がる澱みないスムーズな流れに唸らされます。

 9曲目は、これまたFate/Zeroのイメージサントラからの楽曲を組み込んだ「組曲"Fate"」。「嘆きのフーガ」のパイプオルガンサウンドと泣きのギタートーンが重厚に鳴り響くバロック調のインストから、一転してスパッとシャープな疾走感に溢れる「アーガス最後の戦い」へとアグレッシヴに繋がる2部で構成される大曲で、こちらも今後さらに肉付けされてヴォリュームUPが図られそうな感じ。ラストはエレ・アスのMyspaceで先行試聴音源が公開され、また、リハーサルにおいて非常に難航したという"アストゥーリアス史上最大の難曲"「Double Helix」で締め括り。そのタイトル通り、DNAの二重螺旋をイメージして作ったというだけあって、各パートが複雑に絡み合い、さらに変拍子もガンガン交わり聴き応え十分。相当のリハーサルを積んだのがしっかりと伝わってくる、本当に素晴らしい演奏で完奏されました。

 いやはや脱帽です。1回目のアンコールはハードなアレンジがなかなか新鮮に響く「Distance」、2回目のアンコールは1番最初に演った「The Lancer」をもう一度演奏し、2時間に及ぶ大満足&大充実のライヴは幕を閉じました。今日のライヴで披露してくれた楽曲だけでも既にフルアルバム1枚分が出来上がってしまうくらいなので、音源としてのリリースにもますます期待が膨らむところですね!とりとめもなく書いてしまいましたが、いやはやまだまだ興奮冷めやらぬ状態であります。また、来年2月にはアコ・アスで、3月にはエレ・アスでKBBとのジョイントライヴが決定しており、さらに各メンバーのソロ/バンドの活動も…と、ますます今後の活動から目が離せません。ともあれ、皆さんお疲れ様でした!

≪member≫
川越好博(Key)
大山曜 (Ba)
田辺清貴(Dr)
テイセナ(Violin)
平田聡(Gr)

20091207.jpg

≪SETLIST≫
第一部
1:The Lancer
2:闇からの声
3:Phoenix
4:Castle In The Mist
5:雪舞う(Ba.Key.Violinトリオ)

休憩(15分)

第二部
6:Synapse(Gr.Violin.Drトリオ)
7:Moondawn
8:聲無キ涙~Cyber Transmission
9:組曲"Fate"
(I) 嘆きのフーガ
(II)アーガス最後の戦い
10.Double Helix

アンコール1
11:Distance

アンコール2
12:The Lancer

2009年11月13日金曜日

FIRE BOMBER『Re.FIRE!!』(2009)

Re.FIRE!!
Re.FIRE!!
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Fire Bomber
flying DOG (2009-10-14)
売り上げランキング: 64,458


 「マクロス7」放映15周年記念アルバム。アニメの関連アルバムはドラマCDやら編集盤やらオムニバスや らでかなりの数が出ましたが、FIRE BOMBER名義のフルアルバムとしては、98年の『Dynamite Fire!』を勘定に数えるなら実に11年ぶり(マクロス7の設定上では13年ぶり)となる通産4thアルバム。マクロスFが出た今となってはマクロスシ リーズの中では異色の存在として扱われることもなくなった(?)本作ですが、こちらも歌モノや楽曲に本編以上に力が入っていたのは言うまでもなく、 1st~3rdアルバムの頃のFIRE BOMBERの作編曲はKAI FIVEの田中裕千氏やKUWATA BANDの河内淳貴氏、子供ばんどの湯川トーベン氏といった手練の方々が関わっておりました。楽曲の80年代歌謡ハードロック的な雰囲気も 彼らに因るところが大きかったと思います。本作『Re.FIRE!!』には彼らの名前がクレジットされていないのは残念ですが、元CORE OF SOULや、JAZZIDA GRANDEのメンバー等を起用して新味が伺えます。

 アルバムのオープニングを飾る「弾丸ソウル」のヘヴィメタリックな勢いや、続く「Burning Fire」のメロディック・パンクめいた明快な爽快感は、FIRE BOMBERにおいてこれまでになかった曲調で、良い意味で期待を裏切られたという感じ。福山芳樹氏もチエ・カジウラ氏も十数年前と変わらぬ健在ぶりを見せていますが、特に福山氏のヴォーカルはこの十数年でかなりパワーアップしているのを強烈に実感した次第。より煽情的で熱の込もったヴォーカルで突き抜ける「ビッグバン」 を聴いていると特にそう思います。年月の経過もあってか、彼の声はかつての「歌バサラ」のソレというよりはもはや「福山芳樹そのもの」になってしまってい るのですが、これも嬉しいご愛嬌というところでしょうかね。 「LOVE IT」「突撃ラブハート」のリメイクヴァー ジョンの編曲にはレピッシュの杉本恭一氏やトルネード竜巻の曽我淳一氏が参加、また、外人部隊の永井ルイ氏とACKO氏の参加は(「トップをねらえ2」の ED曲起用という前例がありますが)まさかといったところで、提供曲「MAGIC RHAPSODY」は実にストレートな正統派ハードロックに仕上がっています。

2009年11月1日日曜日

Diablo Swing Orchestra『Sing-Along Songs For The Damned And Delirious』(2009)

Sing-Along Songs for the Damned & DeliriousSing-Along Songs for the Damned & Delirious
(2009/09/22)
Diablo Swing Orchestra

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 スウェーデンのアヴァンギャルド・メタル・バンド、ディアブロ・スウィング・オーケストラの2ndアルバム。怪しくうねるチェロや喧しいブラスサウンドが大々的にフィーチャーされ、ヘヴィなリフの疾走と共に非常に愉快にスウィングしまくるハイブリッドなメタルサウンドが特徴。楽曲のひねくれぶりもさることながら、ドスの効いた男性ヴォーカルと女性ソプラノヴォーカルがやたらとオペラティックかつ大袈裟な歌い回しで、脅かしにかかるかのようにズンズン迫ってくるという子供が泣くようなタチの悪さも兼ね備えていると言う有様。ラテンミュージック的な陽気さやムーディーなジプシーサウンド、チープなサーフィンサウンドも随所で顔を覗かせ、さながらサーカスの舞台にガンマンやらサーファーやらストリップダンサーが入り乱れて大道芸を繰り広げているような、どうしようもなく猥雑でカオティックな印象を抱かせてくれます。横ノリのビッグバンドサウンドと縦ノリのメタルサウンドがいかがわしくもクールに融合したハイテンションなオープニングナンバーの「A Tapdancer's Dilema」や、さながらミュージカルのようにヴォーカルの息もつかせぬ応酬が繰り広げられる「A Rancid Romance」「Bedlam Sticks」、実にストレートなタイトル通りの愉快なスラッシュ・ポルカ「Vodka Inferno」などの楽曲は実に単純明快なインパクト。変態的なハッタリ感ではカナダのUNEXPECTやアメリカのMr.Bungle、ユーモラスさではフィンランドのALAMAAILMAN VASARAT、おバカさ加減では日本の赤犬に相通ずる、といった感じ。これらのバンドが好きな人にはもちろん、B級フォークメタル好きにもかなり引っ掛かりまくるところがあるんじゃないでしょうかね。キワモノではありますがゲテモノにはならない絶妙なラインをキープしているのも面白い。肩肘張らずにゲラゲラ笑いながら聴ける抱腹絶倒な一枚。



Diablo Swing Orchestra:公式

2009年10月1日木曜日

INDUKTI『Idmen』(2009)

IdmenIdmen
(2010/05/25)
Indukti

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UnSunのドラマーや、紅一点のヴァイオリン奏者らも在籍しているポーランドのプログレ・メタル・バンド インダクティの2ndアルバム。前作ではヘヴィなリフや乾いたアルペジオに淫靡にゆらめき絡み付いていくヴァイオリンがなんとも呪術的な趣すら感じさせるヘヴィ・シンフォニック・サウンドを展開しておりましたが、今回はツインギターのへヴィネスがさらに前面に出ており、RED期KING CRIMSONやTOOLからの影響が色濃いヘヴィなリフ構築をさらにグレードアップさせたという印象を感じます。北欧ヘヴィ・プログレ勢とは異なる、湿り気のないただひたすらに乾いた感触、曲によって孕みこんでくるエスニックな要素も相変わらず健在の、妖しげなねじ伏せ系ヘヴィ・プログレ・メタル。前作には同郷のバンドRIVERSIDEのベース&ヴォーカルであるマリウス・デューダがゲスト参加しておりましたが、本作ではアメリカのレコメン系プログレ・バンド SLEEPYTIME GORILLA MUSEUMのニルス・フリクダールが、3人のゲストヴォーカルの中の一人として2曲目で狂えるデスヴォイスを披露、サウンドのアグレッションの増幅に貢献しているのも見逃せないところではないかと。ツインギターの押しもさることながら、曲の尺も前作以上に伸びており、恐ろしく濃密な仕上がりになっているのですが、やや冗長な面も感じるのでこれは賛否が分かれるところ。しかしながら変拍子とヘヴィネスを両手に携え全てを無慈悲にねじ伏せんと言わんばかりのずっしりと切れ込む彼らのアグレッションはやはり白眉。初期サイレントヒルのテーマ曲のような荒涼とした雰囲気にアてられた方なんかには非常に琴線に触れるバンドではないかと思います。



INDUKTI:公式

2009年9月3日木曜日

ANDRE MATOS『Mentalize』(2009)

メンタライズ(SHM-CD)メンタライズ(SHM-CD)
(2009/08/26)
アンドレ・マトス

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 ブラジルを代表するメタル・シンガー:アンドレ・マトスの2ndアルバム。押しまくるアンドレのハイトーン歌唱と近年のANGRAを思わせるプログレメタルがかったサウンドで非常にテンションが高かった前作ですが、今回はミドルテンポのメロディックメタルに重点を置いた作風。前作と同様、SHAMAN時代の作風をベースにしているのは変わりません。また、今回のアルバムはタイトルからも伺えるように人間の内なる精神世界をテーマにしているためか、アルバムの中盤からギアが入るような構成になっており、「Mirror Of Me」「Powerstream」といった疾走曲(どちらも素晴らしいキラーチューン)は終盤に集中しております。前作では随所でANGRAやVIPERを意識しているところが伺えましたが、今回は一切そういうのはなし。過去のアレコレのしがらみは前作で完全に振り払ったのかなと考えてもいいのでしょうかね。かつてよりはるかにマイルド味を増したアンドレの今の声質はスピードメタルナンバーはもとより、ミドルテンポのナンバーやバラードで非常に映えるようになってきており、メロディアスハードロックとしても十分に聴ける「I Will Return」や、ダイナミックな力強さを感じさせる中盤の「The Myriad」「When The Sun Cried Out」の2曲の流れは秀逸。適度な厚みのあるオケアレンジやクワイアパートなど、長年の盟友であるサシャ&ミロの、マトスの特性をよく理解したアレンジがここぞというところでしっかりとキマってます。2曲のボーナストラックは正統派疾走チューンの「Forever Is Too Long」と、メンバーのアイデアによりQUEENの「手をとりあって」がカヴァーされており、マトスの日本のファンへの思い入れが十分に伺える嬉しいボーナストラック。しかしながら、前作のJOURNEYの「Separate Ways」といい、ANGRA時代にカヴァーしていたケイト・ブッシュ「嵐が丘」といい、マトスのカヴァーする曲は毎度毎度選曲が絶妙ですね。





Andre Matos:Myspace
Andre Matos:Wikipedia
Andre Matos:公式

2009年8月6日木曜日

GRAPEVINE『TWANGS』(2009)

Twangs
Twangs
posted with amazlet at 15.10.31
GRAPEVINE
ポニーキャニオン (2009-07-15)
売り上げランキング: 15,681



 アメリカへのライヴ遠征をレコーディングの間に挟み完成した、グレイプバインの10thアルバム。前作『Sing』、前々作『From a smalltown』はわりあいストレートさを感じさせるアルバムだったように思いますが、本作はひねくれ、気だるさ、その他色々なものが詰まっています。一聴した感じでは'03年の『イデアの水槽』のプログレッシヴなムード、'05年の『Deracine』の内省的な作風を織り交ぜたようにも思えますが、何度も聴いているとそれだけにはとどまらない諸々の要素が所々から顔をのぞかせるようになってくる。恐らく全編から滲み出している60~70'sのブリティッシュロック的なサイケデリック&ブルージーなニュアンスに因るところが大きいのでしょう。また、渡米前に前半曲を録り、渡米後に後半曲を録ったというズバッと大胆なレコーディングプロセスを経たことも、本作の雑多寸前のバラエティの豊かさを生み出した一因だと思います(向こうのオーディエンスを意識した楽曲作りも念頭に置いていたのかもしれませんね)。





 オルガンやメロトロン、スティールギターやストリングスのフィーチャー度がいつになく高いのも聴き逃せません。シングルカットもされた1曲目の「疾走」は本作を象徴するナンバーでもあり、楽曲自体のテンションの高さもさることながら、サビの前後でじんわりと力強さを与えるように鳴り響くメロトロンサウンドが堪らない。バンドにとって初めてとなる全編英語詞で仕上げられた「Vex」や、アコースティック弾き語りのタイトル曲「Twangs」におけるストリングスの溶け込み具合は実にさりげないし、ゆるやかな流れながらも起伏に富んだ展開を7分間に渡って聴かせる「Pity on the boulveard」は、元々アルバムの1曲目にするはずだったそうで、幾重にも折り重ねる厚みを帯びたバッキングにとろけるようなスティールギターの音色がよく馴染む、これまたアルバムを象徴するシンフォニックな力作。「Turd and swine」の乾いたドライヴ感、シンプルながらもグッとくる詞で聴かせる「小宇宙」、言葉遊びのような詞、日本語と英語の境界線をうろついているかのような田中氏の歌い回し、フィードバックでぐわんぐわんに揺れる中、端々から感じさせるひねくれっぷりにある種の小気味良さすら感じさせる「NOS」、ファニーにファズったギターや、淡いメロトロンが親しみやすさすら覚えるレトロなムードを醸し出す、〆の「She comes(in colors)」など、本作は溢れんばかりの自由度の高さで華やかな色合いが出ており、まだまだ尽きることない彼らの飽くなき向上心や意欲的な伸びしろをたっぷりと感じられるのではないでしょうか。

2009年7月31日金曜日

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009.07.31

 インドアのライヴばかり行っていて、こういう野外フェスには一度も行ったことがなかったので、とりあえず行ってみようかしらんということで、 ROCK IN JAPAN FESTIVAL、一日目だけ参戦してきました。前日の予報だと終日曇りだという話だったので、絶妙な天気が続くのかしらと一抹の不安めいたものを感じて いましたが、実際は昼ごろから日差しが射し始めてからナイスな晴れ模様が続くようになり、絶好のフェス日和になったんじゃないかなあと(おかげで後日日焼けのヒリヒリ感に苛まれたけど)。


●THE BACK HORN
【LAKE STAGE】

「無限の荒野」
「声」
「刃」
「白夜」
「罠」
「涙がこぼれたら」
「上海狂騒曲」
「コバルトブルー」

 ロック・イン・ジャパンフェスは今年で10年目を迎えるそうですが、バックホーンも既に10年選手となるバンド、そして彼らのフェス参加は3年ぶ りということで、このオープニングアクトはなかなかにメモリアルなものを感じさせてくれました。しょっぱなから「無限の荒野」「声」「刃」と、いずれも男 臭く疾走するアッパーチューンを立て続けにぶちかまし、いきなりなんとも景気の良い流れでスタート。その後も「白夜」「涙がこぼれたら」といったグッとく るナンバーも挟みつつ、「罠」「上海狂騒曲」そして〆の「コバルトブルー」と、 ガッツリ聴かせつつハイテンションで一気に突っ切った満足と貫禄のセットリストでした。実際に見てみると本当にストレートにガツンとくるバンドなんだなあ と感慨もひとしお。ラストの「コバルトブルー」はやはり大盛り上がりで、オーディエンスの熱気で一気に周囲の気温がブワっと上がってたなあと。…終了後、 各STAGE間をうろうろして遠巻きにLOW IQ 01 & MASTER LOWや100s、プリングミンなどの演奏を見る聴くなどして約3時間くらいひたすらだらだらと過ごす。この陽気の中で演奏を聴きながら寝そべるってのは なんともラグジュアリィな行為ですね。あと炎天下でのバドワイザーのなんとうまいことか。食い物ともども高かったけど、こういうところで食い物に文句を言っちゃあいけないぜ(井之頭五郎風に)


●Scoobie Do
【PARK STAGE】

「トラウマティックガール」
「DRUNK BEAT」
「MIGHTY SWING」
「真夜中のダンスホール」
「Back On」
「夕焼けのメロディ」

 今日見た中で強烈に印象に残ったのが彼ら。入念なサウンドチェックの後、紺、白、茶、黒のスーツでバシっとキメた4人組が颯爽と登場。コヤマ シュウ氏のMCはとにかく熱い名言のオンパレードというか、「ギターでしか語れない男、いや、あえてギターでしか語りたくない男、マツキタイジロウが問い かけます!」という口上から続けて「ロックンロールやめますか?それとも人間やめますか?」、「こんな真昼間からロック聴きに集まってるやつらが、ロック ンロールやめるわけがねえ、ならば人間やめちまえ!」「主役はみなさんってことでいいですか!」などなど、客のハートをガシっと掴んでスウィングさせるの がすこぶるうまい。コール&レスポンスやハイジャンプ、タオルをぶん回すといった行為を次々と促しているのも相まって、オーディエンスのボルテージは天井 知らずにひたすら上昇する一方。いつの間にやらPARK STAGEにはギッシリの人が(それを見てコヤマ氏「音楽バカの引力に惹かれて人が集まってきたぜ!」とこれまた熱いコメント)。また、コヤマ氏はMCも さることながら、猥雑なジェスチャーを交えつつセクシーに動き回るわ、かと思えばステージの左右はおろか柱にまでよじ上るわ、パフォーマンスもやったらハ イテンションで終始停滞知らず。しかも一挙手一投足、何やっても様になってるんだからホントもう惚れちまうほどにナイスガイとしか言いようがなかったで す。もちろん楽曲やバンドサウンドも極上で、こってりしたファンクグルーヴはライヴで何倍も魅力を増しててぶっ放されていて非常にホットでした。めちゃく ちゃアツい野郎共による短いながらも濃密な数十分間、素晴らしかったです。


●GRAPEVINE
【LAKE STAGE】

「疾走」
「超える」
「NOS」
「Pity on the boulevard」
「白日」
「FLY」
「Glare」

 やはり先ごろ出た新譜『TWANGS』の曲がメイン。「疾走」「NOS」「Pity on the boulevard」の3曲をプレイ。「疾走」は確実に演るだろうなあと思っていましたが、まさか7分に及ぶ力作「Pity on the boulevard」をこのフェスで演ってくれるとは思わなかった(ちなみに18日の野音でのライヴでもプレイしていたそうです)。この曲のゆったりとし ながらもなかなかに起伏に富んだ展開や、「疾走」「NOS」の端々からにじみ出るかのようなレトロな味わいのあるムードなどを聴いていると、 『TWANGS』は03年の『イデアの水槽』とは違うベクトルでプログレッシヴなもの(あるいはブリティッシュロック的なモノ)を感じさせるのある作品だよなあと改めて思ったり。「超える」「FLY」という近年のシングル曲の間に、"懐かシングル"曲として98年の「白日」を挟むあたりもなんともニクイ。


●ACIDMAN
【GRASS STAGE】

「CARVE WITH THE SENSE」
「アイソトープ」
「FREE STAR」
「ファンタジア」
「リピート」
「赤燈」
「Under the rain」
「ある証明」
「Your Song」

 全部見るつもりでしたが、体力的にちょいとキツかったのと、混雑が予想されるので早めに会場を出ようと思い、「赤橙」のあたりで後ろ髪を引か れつつ離脱。2日前に新譜を出したばかりということで、1曲目は早速新譜からの曲でした。3人ともやはり確固たる存在感を放っていたのでそれを生で見れた だけでも十分満足だったかなと。…とまあ、思い返してみるともうちょい予習しとけばよかったなあとか、いまひとつ回りきれてないなあとか、思うところは 色々ありますが、前からライヴで見たいなあと思っていた4バンドは全部見れたのと、楽しかったのでとにかくよし。以上であります。

2009年7月22日水曜日

奥井亜紀『Wind Climbing』(1995)

Wind Climbing
Wind Climbing
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奥井亜紀
ダブリューイーエー・ジャパン (1995-03-25)
売り上げランキング: 116,638


 シンガーソングライター 奥井亜紀の95年発表の2ndアルバム。魔方陣グルグルのエンディング曲となり、その染み入るような内容から十数年経った今でも衰えぬ人気を誇る「Wind Climbing~風にあそばれて~」が収録されているのが本作ですが、同じく「風」をテーマにしたそのほかの楽曲も、朗らかなポップスからしっとり系~壮大なバラードまで、タイトル曲に勝るとも劣らぬ内容。大村雅朗氏や小野寺明敏氏らによるアレンジはいずれも彼女の歌唱力を十二分に生かしたもので、遺憾なく魅力が味わえます。シンフォニックなAORとでも形容したくなるアレンジが彼女の声質と相まって非常に鮮烈にオープニングを印象付ける「Speed Of Love」。彼女のヴォーカルのエネルギッシュな側面を見せるパワーチューン「Win Win Wind」。ZABADAKにも通ずる民族色溢れる雰囲気に満ちた「風になりたい」。粛々とした中で力強く歌われる、シンプルながらも壮大な構成が白眉な「フィーヨルディー(北の港に住む精霊)」は、渡辺等氏と中原信雄氏によるマンドリンプレイも素晴らしい。そこから自然に繋がる「Wind Climbing」。T-SQUAREの本田雅人氏がウィンドシンセで参加したシリアスなバラード「三日月夜」。と、ズラリと並んだ楽曲の充実度は目を見張るものがあります。ちなみに、本作がリリースされてわずか7ヶ月後に3rdアルバム『Voice Of Hallelujah』が発表され、95年に彼女は2枚のアルバムを発表することになります。

2009年7月15日水曜日

The Barque Of Dante『Final Victory』(2009)

中国のHR/HMバンドといったら十数年ほど前は黒豹(BLACK PANTHER)や唐朝(TANG DYNASTY)といったバンドくらいしかなかなか名前が挙がらなかったものですが、ここ10年で中国のHR/HM事情も大分様変わりしたようで、Youtubeを見ているとハードロックからプログレメタル、ハードコア、デスメタル/メロデス、果てはグラインドコアまで、数多くのバンドが登場してきている模様。今回紹介するこのバンドもその一つ、中国は重慶のメロディックスピードメタルバンド バークー・オブ・ダンテ(但丁之舟)の1stアルバム。バンド結成は05年、女性ヴォーカルとヴァイオリン担当のメンバーを擁する5人組。ウォーターハウスの「シャーロットの乙女」を使ったジャケットはいささかメロスピとミスマッチな感がありますが、05年のデモ音源ではバンド名の由来となったドラクロワの「ダンテの小舟」を使っているので彼らなりのこだわりがあるのかもしれません。

 サウンドのほうはSONATA ARCTICAやNIGHTWISH、HEAVENLYといったバンドから影響を受けているのがよくわかるいかにもなメロスピっぷりで、東洋的メロディを織り込んだ「Intro」からタイトル曲の疾走チューン「Final Victory」へと雪崩れ込む流れはホントもう王道。男性ヴォーカルはお世辞にも線が太いというタイプじゃないので危なっかしいのですが、その辺はクワイアコーラスで補強しているのであんまり気にならないです。選任キーボーディストやドラマーがいないので、煽りまくるギターソロに比べてキーボードソロがショボかったり、リズム隊が打ち込み臭かったりするのは流石にどうにもならんのですが、楽曲の勢いが勝ってるんでこれも無問題かなと。バラードナンバーはヴァイオリンパートと女性ヴォーカルを生かしたしっとりしたつくりで、男性ヴォーカルとのいい感じのデュエットを展開しております。しかしながらこのアルバムのハイライトはラストに収録されているDRAGONFORCE「My Spirit Will Go On」のカヴァーかなあと。カヴァー曲がハイライトってのもなんだか妙なものですが、かなりの健闘ぶりを見せるカヴァーなので驚きました(さすがに原曲の超速ギターソロパートはちょっと誤魔化してますが)。というかこのバンドの曲をカヴァーしようと思うあたりが豪快というか何というか(笑)。DRAGONFORCEにとっては良い弟分バンドが出来たんじゃないでしょうかね。





The Barque Of Dante:Myspace
CHINESE ROCK DATABASE:但丁之舟楽隊 THE BARQUE OF DANTE
The Barque Of Dante:Encyclopaedia Metallum

2009年7月11日土曜日

FAIRYLAND『Score To A New Beginning』(2009)

Score to a New BeginningScore to a New Beginning
(2009/05/19)
Fairyland

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 フランスのシンフォニック・メタル・バンド、フェアリーランドの3rdアルバム。前作リリース後、キーボーディストのフィリップ・ジョルダナ以外のメンバーが全員脱退し、バンド形態から一転してフィリップ主導のソロ・プロジェクト形態へと相成り、HeavenlyやSerenity、Pathosrayのメンバー等、外部から総勢16名のミュージシャンを招集して制作されたのが三部作の完結編にあたる本作。初期のバンドは終始疾走しまくりのクサメタルサウンドでしたが、ここにきてもはやどこを切っても完全なるシンフォニック・エピック・メタルへとグレードアップ。メンバーが殆ど脱退してもなんのそのな奮起ぶりで、ストリングスやクワイア・コーラスの重厚なバッキングとキーボードソロを軸にドラマティックに煽りまくる内容は、ヒロイック極まりないジャケット・イラストに全く引けをとってないです…その一方で、全体的に枠にはまっててなかなか踏み込めなくなってるというか、小奇麗にまとまっちゃってる気もします。一発目のキラーチューン「Across The Endless Sea Part II」でさえもどこか一歩引いているような印象がするのは前作以上にアルバム構成や楽曲構築にこだわったからなのか、バンドからゲスト召集型のソロ・プロジェクト形態になったからなのか、意欲的なのになんだかジレンマめいたものを感じて少々もどかしい部分もありました。その辺は今後の活動で解消されていくことに期待したいところ。と、アレコレ言ったものの、終盤の9分に及ぶタイトル曲は3~4曲分のアイデアをガッツリ放り込んだであろう練り込みに次ぐ練り込みで非常に濃密な9分間を構築しており、素晴らしいの一言。身も蓋もないことをぶっちゃけしまうとこの1曲でアルバムの眼目は凝縮されてると言い切りたいです。何はともあれラストのこの曲でドカンとキメてくれたのはデカかった。



FAIRYLAND:Wikipedia

2009年7月7日火曜日

THE ALFEE『Nouvelle Vague』(1998)

70年代半ばにALFIEでデビュー。フォークから出発し、時代の流れと共にニュー・ロック、ハード・ロック、プログレッシヴ・ロック、デジロック、テクノ、AOR、パンク、ビート・ポップと、多様な音楽性を血肉として取り入れ、今なお変化し続けているTHE ALFEE。坂崎幸之助氏のアコースティック/フォークのエッセンスと高見沢俊彦氏のハードロック/プログレ的なエッセンスが混ざり合った音楽性はプログレ的な視点から見ても興味深いものがあります。80年代中盤からのアルバムには叙情的で大作志向な曲が1~2曲は入っているのですが、90年代に発表された『ARCADIA』『夢幻の果てに…』『LIVE IN PROGRESS』『Nouvelle Vague』の4枚のアルバムは、ALFEEのプログレ的な方向性が非常に高まっていた時期の作品であり、アルフィーのプログレ的側面を語る上ではいずれも外すことの出来ないものです。今年、デビュー35周年記念で彼らの全カタログが再発されましたし、この機会に是非とも聴いてみてはいかがでしょうか。

ポニーキャニオン|THE ALFEE 35周年記念完全限定生産!!
http://www.ponycanyon.co.jp/alfee/alfee.htm

Nouvelle Vague【SHM-CD】(紙ジャケット仕様)Nouvelle Vague【SHM-CD】(紙ジャケット仕様)
(2009/03/18)
THE ALFEE

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 '96年のアルバム『LOVE』からバンドはストリングスサウンドを導入し始めるのですが、'98年リリースの『Nouvelle Vague』は、前作での試行を踏まえてよりインパクトのあるサウンドを目指した作品。先に挙げた『ARCADIA』『夢幻の果てに』と比べるとトータルとしてのプログレ度は低いのですが、冒頭を飾る「Crisis Game~世紀末の危険な遊戯」「Nouvelle Vague」の2曲の存在感は一際大きく光っています。後者は、革命・革新をテーマにした「幻夜祭」の姉妹編とも言える1曲で、QUEEN風のコーラスワークも交えたド派手なシンフォニック・メタルを聴かせます。『銀河鉄道999~エターナル・ファンタジー』『ウルトラマンダイナ』の主題歌タイアップである「Brave Love~Galaxy Express 999」「Save Your Heart~君だけを守りたい」の2曲はキャッチーなシンフォニック・ハード・ロック曲(時期が近いせいかサビのメロディラインが似ているのはご愛嬌と言うべきか)。「Save Your Heart~」は他アーティストへの提供曲でもあり、提供版はヴォーカルを際立たせるためにギターが完全にバッキングに徹しているのですが、セルフカヴァー版はギターサウンドが前面に押し出されていて、なんだかDerek & The Dominosの「いとしのレイラ」のプログレハード版という印象も感じます。以降の楽曲には押さず引かずの程よいバランスを保った佳曲「Beyond The Win」、イカしたブギーロックナンバー「Good Times Boogie」や、壮大なラストを飾る長尺フォークロックナンバー「明日の鐘」があるものの、前半のインパクトがあまりに強いために後半の楽曲はどうしても水をあけられている感がしてしまうのが惜しい。



2009年7月6日月曜日

THE ALFEE『夢幻の果てに』『LIVE IN PROGRESS』(1995)

 70年代半ばにALFIEでデビュー。フォークから出発し、時代の流れと共にニュー・ロック、ハード・ロック、プログレッシヴ・ロック、デジロック、テクノ、AOR、パンク、ビート・ポップと、多様な音楽性を血肉として取り入れ、今なお変化し続けているTHE ALFEE。坂崎幸之助氏のアコースティック/フォークのエッセンスと高見沢俊彦氏のハードロック/プログレ的なエッセンスが混ざり合った音楽性はプログレ的な視点から見ても興味深いものがあります。80年代中盤からのアルバムには叙情的で大作志向な曲が1~2曲は入っているのですが、90年代に発表された『ARCADIA』『夢幻の果てに…』『LIVE IN PROGRESS』『Nouvelle Vague』の4枚のアルバムは、ALFEEのプログレ的な方向性が非常に高まっていた時期の作品であり、アルフィーのプログレ的側面を語る上ではいずれも外すことの出来ないものです。今年、デビュー35周年記念で彼らの全カタログが再発されましたし、この機会に是非とも聴いてみてはいかがでしょうか。

ポニーキャニオン|THE ALFEE 35周年記念完全限定生産!!
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夢幻の果てに夢幻の果てに
(2009/03/18)
THE ALFEE

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『夢幻の果てに』は通産15枚目となるオリジナルアルバムであり、『ARCADIA』と双璧を成すプログレ/メタル色の濃厚な作品です。トータルアルバムとしては『ARCADIA』に軍配が上がりますが、テクニカルな要素や、個々の楽曲の強烈なインパクトではこちらに軍配が上がります。楽曲もよりパワフルにグレードアップしており、80年代後期からアルフィーの4人目・5人目のメンバーとして参加してきた長谷川浩二氏(ds)、菊地圭介氏(kbd)が、それぞれ派手なドラミングと味のあるオルガン&キーボードプレイで貢献されています。しっかり地を踏みしめるように堂々たる展開が力強いシンフォニック・ロック「孤独の影」、一転してスリリングな変拍子でゴリゴリと押し込んでいくプログレッシヴ・メタル「幻夜祭」、得意の厚いコーラスワークとこれでもかとキャッチーな曲調でグイグイ引っ張っていくプログレ・ハード「LIBERTY BELL」「罪人たちの舟」(イントロがBOSTONの「More Than a Feeling」ぽい)、ジャパメタバンド顔負けのヘヴィや疾走感さを歌謡曲的キャッチーさと共に遺憾なく押し出した「殉愛」「悲劇受胎」と、怒涛の流れが続きます。特に「幻夜祭」はハイテンションに極まったコーラスワークや国産プログレ特有の垢抜けないカッコ良さも含めて秀逸な楽曲ですし(高見沢氏主導の楽曲展開ながら、やはりドラマティックなアコギパートがしっかり入るあたりは坂崎氏の面目躍如といったところ)、「悲劇受胎」での高見沢氏のヴォーカルのテンションは楽曲の疾走感と相まって非常に極まっております。後半にはタイアップ曲3曲を含むクセの少ないポップな曲が中心、前半と比べると若干散漫な印象はあるものの、「冒険者たち」「まだ見ぬ君への愛の詩」「WILD BAHN!」など、花のある楽曲が揃っています。






LIVE IN PROGRESSLIVE IN PROGRESS
(2009/03/18)
THE ALFEE

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『夢幻の果てに…』リリース後に行われたNHKホールでのライヴを収録した2枚組ライヴ盤。『LIVE IN PROGRESS』というタイトルの通り、セットリストは『夢幻の果てに…』からの曲を中心としたプログレ系の選曲となっており、澱みない曲の流れや2枚組のヴォリュームもあって非常に聴き応えのある作品。名曲「メリーアン」シングルのB面曲「ラジカル・ティーンエイジャー」や、横浜フリューゲルスのオフィシャルソング「Victory」のシングルB面曲「Time Spirit」、'88年のドラマ挿入歌だった「見つめていたい」といったマイナーな曲も収録。10分にも及ぶ「哀愁は黄昏の果てに…」、そして「トラベリング・バンド」への繋ぎ、「Saved By The Love Song」における壮大なアレンジ等、アルフィーのプログレ的側面を味わうならまずこれから聴くのがいいと思います。2枚目ラストに収録されている「JUMP'95」はふくしま国体テーマソング「JUMP!」の別アレンジヴァージョン(この曲のみスタジオ音源)。カラっとした明快なロックナンバーであります。

2009年7月5日日曜日

THE ALFEE『ARCADIA』(1990)

 70年代半ばにALFIEでデビュー。フォークから出発し、時代の流れと共にニュー・ロック、ハード・ロック、プログレッシヴ・ロック、デジロック、テクノ、AOR、パンク、ビート・ポップと、多様な音楽性を血肉として取り入れ、今なお変化し続けているTHE ALFEE。坂崎幸之助氏のアコースティック/フォークのエッセンスと高見沢俊彦氏のハードロック/プログレ的なエッセンスが混ざり合った音楽性はプログレ的な視点から見ても興味深いものがあります。80年代中盤からのアルバムには叙情的で大作志向な曲が1~2曲は入っているのですが、90年代に発表された『ARCADIA』『夢幻の果てに…』『LIVE IN PROGRESS』『Nouvelle Vague』の4枚のアルバムは、ALFEEのプログレ的な方向性が非常に高まっていた時期の作品であり、アルフィーのプログレ的側面を語る上ではいずれも外すことの出来ないものです。今年、デビュー35周年記念で彼らの全カタログが再発されましたし、この機会に是非とも聴いてみてはいかがでしょうか。

ポニーキャニオン|THE ALFEE 35周年記念完全限定生産!!
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ARCADIAARCADIA
(2009/03/18)
THE ALFEE

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 1990年リリースの『ARCADIA』は、当時のFENCE OF DEFENSEの作風にも通じるエキゾチックな雰囲気を織り込んだタイトル曲「Arcadia」に始まり、アコースティック・ギターのアクセントが劇的さを引き立てるメタルチューン「Masquerade Love」、曲調やコーラスのハーモニーに当時活動中だったAnderson Bruford Wakeman Howeっぽさも少々感じさせるパワーバラード「Rainbow In The Rain」、叙情的なイントロから一気に加速していくジャパメタ風味の「Count Down 1999」(PVにおける高見沢氏の派手なヴィジュアル系メイクとギラギラな格好を見るに、当時デビューしたばかりのX-JAPANを思いっきり意識していたんだろうなと)、と、ハードなキラーチューンがガンガン続いていくアルバム前半は本当にスキがない仕上がりで、この充実ぶりは実に素晴らしいものがあります。後半はストレートなメッセージのロックチューンを挟みつつ、印象的なコーラスを織り込んだアコースティック曲「流砂のように」、徐々に盛り上がるダイナミズムで展開するシンフォニックバラード「Mind Revolution」「On The Border」などの壮大な曲がメイン。アルバム全体を通して楽曲にしっかりとした統一感があり、コンセプチュアルなプログレ・ハード作品としてもダントツの内容です。





2009年6月27日土曜日

Martin Orford『The Old Road』(2008)

The Old RoadThe Old Road
(2008/10/28)
Martin Orford

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 音楽活動からの引退を表明した元JADIS~IQのキーボーディスト マーティン・オーフォードの2ndソロアルバム。ソロアルバムとしても、シンフォニック・プログレとしても見事な快作と呼べる内容で、ここ最近かなりのヘヴィローテーションに陥ってしまいました。本作にはIQのマイク・ホルムス(g)、アンディ・エドワーズ(dr)をはじめ、SPOCK'S BEARDのニック・ディヴァリージオ(dr)&デイヴ・メロス(b)、IT BITESのジョン・ミッチェル(g)、JADISのゲイリー・チャンドラー(g)/スティーヴ・ソーン(g)、現Big Big Trainのデヴィッド・ロングドン(vo)、GRYPHONのデイヴ・オベール(backing vo)、そしてマーティンがJohn Wetton Bandのメンバーであった縁から、ジョン・ウェットン(vo.b)までもが参加メンバーとして名を連ねており、人脈を総動員したラインナップで手厚く固められております。

 程よい厚みのあるバッキングのうねりで展開されるオープニングの「Grand Design」は、まるで90年代のゲームミュージックのような懐かしさとを感じさせるゆったりとしながらも力強いナンバー。続く「Power And Speed」は清々しいピアノの旋律に導かれるようにして突き進む気持ちの良いミドルテンポのシンフォニックなインスト。「The Old Road」は曲の清涼感やアクセントにフィドルが一役買っているナンバー。ちなみに先の「Grand Design」やこの曲では、マーティン自身がリード・ヴォーカルも執っております。一方、ウェットンがヴォーカルをとっている曲は2曲あり、「Take it to the Sun」は現在のASIAがやりそうな(というかまんまASIA)キャッチーなAORナンバーで、なんとも微笑ましさを感じさせる1曲。もう一方の「The Time And The Season」もカラっとしたプログレ・ハード色を押し出した、長尺をものともしない起伏に富んだ内容。終盤のシンセによるフレーズのリフレインが堂々たるラストを演出していてたまらないものがあります。ラストの「Endgame」はマーティン氏の音楽に対しての切なる願望、率直なメッセージも込められたストレートなミドルバラード。彼が音楽活動の引退に至った苦悩や苦労が偲ばれます。IQの諸作にも勝るとも劣らないジェントルな魅力が本作には詰まっていると言えますし、マーティン氏の音楽活動の有終の美を飾るにはこれ以上ないほどの傑作アルバムです。それだけに、引退があまりにも惜しまれます…。





Martin Orford:Wikpiedia
IQ:Wikipedia

2009年6月4日木曜日

Tim Follin「Sky Shark [飛翔鮫]」(NES/1989)

 東亜プランから1987年に登場したシューティングゲーム「飛翔鮫」。国内では、上村建也弓削雅稔の両氏が楽曲を担当されているわけですが、NESに移植されて1989年に発表された海外版「Flying Shark / Sky Shark」では、Tim Follin氏が楽曲を担当しております。バリバリに男臭さ溢れる東亜節がたまらない飛翔鮫と、NES音源でアーケードのFM音源に負けず劣らずの鮮やかなサウンドを聴かせるスカイシャーク、聴き比べてみると、それぞれに違った魅力があって面白いです。


●飛翔鮫 - level 1 music
http://www.youtube.com/watch?v=8OcWmKdrV2U

◆Sky Shark Stage 1 BGM
http://www.youtube.com/watch?v=NLobQt9i33g

●飛翔鮫 - level 2 music
http://www.youtube.com/watch?v=rXJNFqREeMc

◆Sky Shark Stage 2 BGM
http://www.youtube.com/watch?v=yHZVxN4TwkQ

●飛翔鮫 - level 3 music
http://www.youtube.com/watch?v=6brLKXvjlCU

◆Sky Shark Stage 3 BGM
http://www.youtube.com/watch?v=jeDyzAjex6I

●飛翔鮫 - level 4 music
http://www.youtube.com/watch?v=wb3ivDn0Fm0

◆Sky Shark Stage 4 BGM
http://www.youtube.com/watch?v=rif-aPlBqOk

●飛翔鮫 - level 5 music
http://www.youtube.com/watch?v=bYcMDiP2dC0

◆スカイシャークの5面では1面の曲が再度流れるだけです。


飛翔鮫:Wikipedia

2009年5月22日金曜日

筋肉少女帯『シーズン2』(2009)

シーズン2
シーズン2
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筋肉少女帯
トイズファクトリー (2009-05-20)
売り上げランキング: 6,083



 筋肉少女帯の14thアルバム。アルバムジャケットはKISS『地獄の軍団(Destroyer)』のオマージュ。再結成一発目の意気込みで燃え盛った勢いと再結成したことでの和気藹々とした緩さとを同時にぶつけていた前作『新人』と比べると本作は一定の落ち着きがあり、荒々しさ、スリリングさと引き換えに余裕と頼もしさが溢れております。「心の折れたエンジェル」「ドナドナ」の2曲を皮切りに、本城氏の楽曲がアルバム全体をリードしており、メロディックメタル色よりハード・ロック(プログレ・ハード)色が強く、じっくりと腰を据えた内容。アルバムによって賛否両論ある本城曲ですが、本作では男臭さをプンプン撒き散らして突き進んだものが多くハズレなし。中でもひねくれなしのストレートなメッセージを厚いコーラスと共に送る「世界中のラブソングが君を」は今の筋少の姿が伝わる秀逸なミドルバラードです。





 橘高曲は少なめになったとは言え、前作の「トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く」同様、後期筋少の流れを汲んだ狂おしいまでにドラマティックな曲「1000年の監視者」は激しさを抑えながらもキラーチューンとしての風格は十分だし、ノリの良い疾走ハード・ロック・ナンバー「ツアーファイナル」は打ち上げ大団円的なラストを演出しており、しっかり目立っております。また、内田曲は相変わらず絶妙(奇妙?)な存在感を放っており、三柴氏の瑞々しくもひんやりとしたピアノが躍り暴れ狂う「ゴッドアングル Part.2」(Part.1はいずこへ?)から漂うプログレチックな妖しさは、「夜歩く」「夜歩くプラネタリウム人間」の系列でしょう。セルフカヴァーである「踊る赤ちゃん人間」は若干テンポを落とした以外はさして変わったところは見受けられない手堅い仕上がりですが、一方「ノーマンベイツ'09」は鋭くメタリックなアレンジで『仏陀L』の頃より何倍もプログレッシヴな印象を研ぎ澄ませたリメイクになっており、単なるファンサービスで終わっていない、新たな魅力が加わった素晴らしい仕上がり。J・ガイルズ・バンドの「堕ちた天使(Centerfold)」っぽいノリの「人間嫌いの歌」は3分にも満たない曲ですが、ネガティヴなのにポジティヴな詞からオーケンののほほんスタンスがしっかり伝わってくる微笑ましい曲、思わず口ずさみたくなります。同じくオーケン作詞作曲の「プライド・オブ・アンダーグラウンド」は、伊福部崇氏と鷲崎健氏のユニット ポアロへの提供曲をセルフカヴァーしたもの、かの「ノゾミ・カナエ・タマエ」と歌メロが似ているのはやはり企画モノへの提供曲だったからでしょうか。アルバム全体の雰囲気は後期筋少のソレに近いものの、後期筋少が孕んでいた危なっかしさは今の筋少には皆無。のほほんとしつつもしっかりと地を踏みしめたバンドのエネルギーをたっぷり感じさせてくれる一枚です。