2011年9月20日火曜日

「ファンタジー・ロック・フェス」 2011 9/18(日) @川崎クラブチッタ ライヴレポート



 久々のライヴレポート、久々のブログ更新。私も行ってきましたよ。ゲーム・ミュージックとプログレッシヴ・ロックの繋がりを前々からずっと追求している自分にとっては夢のようなフェスです。震災による公演延期もあったとはいえ、無事に開催されたことを嬉しく思います。全4アーティスト、トータル約4時間ちょっと、たっぷり堪能いたしました。第2回、第3回と、今後も是非続いていって欲しいフェスですね。  

  

●黒沢ダイスケ PROGRESSIVE BAND
 オープニング・アクトは、コナミのBEMANIシリーズへの楽曲提供で知られ、また自身が率いるプログレッシヴ・メタル・バンド「軌道共鳴」のギタリストでもある黒沢ダイスケ氏率いるバンド。ラインナップも、上田哲也(b)、藤田良介(key)、渡部正人(dr)と、近年の軌道共鳴ライヴメンバーでした。かねてからアナウンスされていた通り、1曲目はKING CRIMSONの「RED」のカヴァーでまずはドカンと一発。黒沢氏曰く「NIACIN(ビリー・シーン率いるインスト・トリオ)のカヴァー・ヴァージョンに自分たちのカラーを加えた」アレンジということで、渡部氏によるバキバキのドラムスと疾走感も交え、ヘヴィ・プログレを通り越して圧殺メタルと化したサウンドでした。続いて、ギターフリークス/ドラムマニアに黒沢氏が提供した、氏を代表する1曲である「恐怖の右脳改革」。若干、ギターやキーボードのフレーズが聴こえづらい場面もあったものの、スリリングな爽快感に溢れるスピーディーなプログレッシヴ・メタル・チューンとしてやはり素晴らしい楽曲であります。3曲目は、近年のライヴでも何度もプレイされている、上田氏のペンによる「Agharta」。ゲーム・ミュージックのキャッチーさと、90年代以降のアメリカン・プログレ・メタル(MAGNA CARTAレーベルあたりの)を思わせる構成が合わさったような力作です。ラストは、小野秀幸氏がギターフリークス/ドラムマニアに提供した「Over there」のカヴァー。弾きまくりのギターが映える、メロウなプログレッシヴ・フュージョン・ナンバーで綺麗にシメ。国産プログレ・メタル・バンドのフロントマンとしても、プログレ寄りのゲーム・ミュージック・コンポーザーとしても、今後の黒沢氏の活動に大いに期待したいですね。  


●遊佐未森
 2番手は、日本の幻想系ポップスを代表する存在の一人と言っても過言ではない遊佐未森さん。岩本晃市郎氏のMCによると、フェスの企画時から遊佐さんの出演は構想にあったということで、早くから打診していたそうですが、当初予定されていた3月の公演には彼女のスケジュールの関係で参加できなかったそうです。しかしながら震災の影響によりフェスが延期となったことで、改めて出演の運びとなったとのこと。遊佐さんが敬愛するケイト・ブッシュのカヴァーを3曲(「Moving」「少年の瞳を持った男」「嵐が丘」)と、オリジナルを3曲(「潮見表」「ROKA」「Tell Me Why」)披露されました。個人的に、5拍子が印象的な名曲「ROKA」が演奏されたのは非常に嬉しかったです。また、身振りも交え思い入れたっぷりに歌い上げられるケイトのカヴァーの中でも、ラストの「嵐が丘」での熱唱は、今なおこの曲に魅了されてやまない者としてはグッとくることこの上なかったです。また、バックバンドが今堀恒雄(g)、中原信雄(b)、BaNaNa-UG(key)、佐野康夫(dr)というラインナップだったということも見逃せないポイントでしょう。今回のフェスのための特別編成というのもうなづける、ハンパじゃないメンツです。言うまでもなく、安定感と安心感は折り紙つきでありました。  


●桜庭統トリオ
 そして、今回のフェスのメイン・イベンターの一角である桜庭トリオが登場。三方を鍵盤類で固めたセッティングも存在感十分です。過去の3度のライヴでプレイしていた長谷川敦氏(GERARD~Sound Horizon)は今回参加されておらず、代役として、セッション・ベーシストの のまぐちひろし氏がプレイ。赤いスーツで決めた貴公子風ルックスののまぐち氏は、トリオのヴィジュアル面も担当していました。ドラムスはおなじみの中村俊彦氏。鋭く手数で攻める中村氏のドラム、エフェクトを多用しつつもヘヴィなベースを刻むのまぐち氏、そしてとにかく鍵盤類を弾き倒し、押しに押しまくる桜庭氏と、三者三様のプレイで魅せてくれます。各パートの長いソロ・タイムもあり、技巧派キーボード・トリオという面を存分にアピールしていました。会場限定で販売された桜庭氏のミニアルバム『After All...』からの楽曲を中心としたセットリストということで、初めて聴く楽曲が続いたのですが、やはりDEJA-VU時代から氏の作風にはブレがないですね。時にGERARDを凌ぐかと思えるほどの高いテンションはもちろん、テクニカルながらもキャッチーな落としどころがあるというのが桜庭サウンドの大きな魅力だと改めて感じました。ラストはトライエース作品から人気の高い2曲「未確認神闘シンドローム」と「The Incantation Of Devel」を続けて披露。終始最高潮のテンションで駆け抜けたパフォーマンスに、ただただ圧倒されました。  


●植松伸夫/EARTHBOUND PAPAS
 トリは御大 植松氏率いるEARTHBOUND PAPAS。ステージ左から、魔道士ルックスでキメた植松伸夫(key)、弘田佳孝(b)、羽入田新(dr)、岡宮道生(g)、成田勤(kbd/g)のバンドメンバーに加え、アルバムでもコーラスを担当したCHiCO、馬場宏美、佐々井康雄、木村圭児の4人も参加し、1stアルバムの楽曲をほぼ全曲プレイ。YESの「Changes」を思わせる変拍子フレーズが印象的なオリジナル曲「Metal Hypnotized」では2人のベリー・ダンサーがステージに登場したり、森林化計画のテーマソングとして提供した「Forest Of Thousand Years」では、アルバムでNip-Nop語のモノローグを担当されていたエミ・エヴァンスさんがチェロで参加するなど、ライヴならではの趣向も。何よりメンバーの皆さんがスキあらばしきりに観客を煽るので、盛り上がる場面も多々あり、エンターテインメントな面でも魅せる内容でした。アルバムだとやや物足りなかった「Liberi Fatali」や「One Winged Angel」は、ライヴだと結構印象変わるもんだなあと。そして「Eternity」はライヴでもやっぱり凄かった!ARK STORMなど、数々のメタル・バンドやセッションに参加する生粋のメタル・シンガーである佐々井氏のシャウトとハイトーンはライヴでますますパワフルに増幅され、抜群のインパクトを誇っておりました。気になるカヴァー曲はQUEENの「Bohemian Rhapsody」。楽曲の知名度はもちろんですが、4人のコーラス隊を含んだ編成と、ハイトーン・ヴォーカリストの佐々井氏の存在を活かすという点でも、なるほど納得の選曲です。アンコール曲は、THE BLACK MAGESが2ndアルバムでカヴァーした「Maybe I'm A Lion」。アレンジもTBM版準拠です。この曲のソロパートはやっぱりDEEP PURPLE(というかジョン・ロード)からの影響大だよなあと改めて思ったりしつつ、興奮のうちにライヴは幕を閉じました。