ナムコの
『サンダーセプター』『源平討魔伝』『超絶倫人ベラボーマン』『未来忍者』などの楽曲に携わり、メルダックが遺した稀代のエキサイテングなバカゲー
『暴れん坊天狗』ではサウンドのみならずディレクターも手がけ、現在はゲームソフトの企画・開発を行っている
有限会社デジフロイドの代表取締役として活躍されている
中潟憲雄氏。氏は'83年にナムコに入社されるのですが、それ以前から
「AQUAPOLIS(アクアポリス)」というプログレッシヴ・ロック・バンドで活動をしておりました。今回はそのアクアポリスについて書いていきたいと思います。
アクアポリスが結成されたのは'80年の7月。現在も存続している早稲田大学のプログレッシヴ・ロック・サークル
「イオロス」の中で結成されたブリティッシュ・プログレ系のコピーバンドが母体となり、翌'81年から吉祥寺のシルバーエレファントを拠点にライヴ活動を行うようになります。初期のラインナップは、
中潟憲雄(kbd)、
桑原聡(b)、
渡辺幸一(g)、
竹迫一郎(ds)の4名。当初はYESやKING CRIMSON、BRUFORDのレパートリーを演奏していたそうですが、次第にオリジナル曲の演奏も行うようになり、同年8月にはバンドの代表曲である
"アクアポリス組曲"がスタジオ録音されます。この楽曲は'94年にマーキー/ベル・アンティークからリリースされた、80年代国内プログレッシヴ・ロック・バンドの秘蔵音源オムニバス・アルバム
『伝説の彼方~東京シンフォニック・シンドローム』に収録されることになります(ちなみに、アクアポリスの音源でCD化されているのはこの曲のみであります)。16分を越える大曲で、中潟氏によるシンフォニックな広がりを持ったシンセサイザー・アレンジの上を、ジャズ・ロック的な軽やかさのあるバンドアンサンブルがテクニカルに押していく、組曲の名もふさわしい力作です。
また、この頃にKENSOと対バンも行っており、親交を深めていたそうです。フロントマンの清水氏と中潟氏はすぐに意気投合し、互いの音楽観について夜通し熱く語り合うほどだったとか。そういった縁もあって、KENSOが'83年に発表したアルバム
『KENSO II』が後に再発された際のライナーノーツには、中潟氏がコメントを寄稿されておりました。ちなみに、清水氏のブログの過去のエントリには、80年代初頭にバンドの活動を初めて間もない頃、清水氏が中潟氏から"メロトロンを持ってる人"を紹介してもらう話が載っていたりします。気になる人は過去ログを辿ってみてください。'82年以降のアクアポリスはメンバーが流動的になり。新月の
高橋直哉氏(ds)や、HALの
桜井良行氏(b)、カレイドスコープの
判田宏氏(b)などがバンドを出入りするようになります。この頃に録音された楽曲
"El Dorado"は、国内外のアンダーグラウンドなバンドやプログレッシヴ・ロック/ユーロ・ロック作品を紹介していた音楽雑誌「マーキー・ムーン」(後の「MARQUEE」「EURO-ROCK PRESS」の前身的存在)の付録ソノシートに収録されたもの。シンセサイザーによるスペイシーなバッキングとアラン・ホールズワース風のギタープレイがフィーチャーされた1曲で、初期のKENSOにも通じるプログレッシヴ・フュージョンといった仕上がりになっています。前述の『KENSO II』の中潟氏の寄稿コメントによると、アクアポリスはフュージョンのスタイルや技法をプログレと融合させることを目指していたとのこと。
ソノシート3枚組というフォーマットで、モノリスコミュニケーションから'85年にリリースされた関東・関西の6バンドの楽曲を収録したオムニバスアルバム
『Progressives' Battle From East/West』に、ページェントやアウターリミッツの音源と共に収録された
"ノルウェイの印象"は、先に述べた2曲とはまた趣が変わり、よりシンセサイザーを前面に押し出した情緒的なシンフォニック曲となっています。氏のゲーム・ミュージック作品に繋がるものも見て取れるのがまた興味深いところです(ちなみにこのオムニバスがリリースされた'85年は、中潟氏がナムコで『モトス』『バラデューク』の楽曲を手がけられた年でもあります。そして翌年にはあの『源平討魔伝』が控えています)。'87年7月にギタリストが
三苫裕文氏にチェンジするものの、中潟氏の仕事が忙しくなったため、その後しばらくしてバンドは活動を休止することになります。メンバーの竹迫氏と三苫氏はこの後「NOA」というジャズ・ロック・バンドを結成して活動を続けていきます。
『源平討魔伝』関係で、興味深い音源をご紹介したいと思います。'88年の7月27日に聖蹟桜ヶ丘のショッピングセンターで行われた、ラジアメ(TBSのラジオ番組
「ラジオはアメリカン」)のイベントでのナムコ・ゲーム・ミュージックのミニコンサートで演奏されたという、源平討魔伝の楽曲のアレンジ・ヴァージョン2曲であります。シンセサイザー中心のアレンジということもあって、後期アクアポリスからの繋がり的な意味でも実に興味深いものではないかと私は思っています。この音源はカセットテープに収録され、ラジアメの応募者プレゼントとなったそうです。
「ラジアメ 1988年7月24日放送分」
http://www.d1.dion.ne.jp/~hi_chan/Golden_arch8807.htm#ra880724
「ラジアメスーパーライブ 組曲 源平討魔伝(VGMdb)」
http://vgmdb.net/album/18335
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近年は会社社長としてのお仕事が忙しいためか、コンポーザーとしては殆ど活動されておりませんが、4月に頒布されるゲーム・ミュージック・コンポーザーの人達によるチャリティ・アルバム企画
『Game Music Prayer』の第二弾に、中潟氏も参加されるというアナウンスが先ごろされました。中潟氏のオリジナル曲がコンピレーションアルバムに収録されるのは、'93年の8月に
トルバドールレコードからリリースされた
『Great Wall』の
"Star Falsion"以来、約20年ぶりとなります。
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中潟憲雄 - Wikipedia