A.D.2346、三機の量子xPUを搭載した星団最高の統合A.I.が完成。無限のクエリ自己生成を可能とし、あらゆる演算、意思決定の草稿が委ねられる。管理名"Descartes"。時空連結理論、0/1相転移、自由塩基配列…。人々は光を超えて空を駆け、生命の目録、神の領域にすら手をかける。誰もが信じて疑わなかった、鬼子が授ける悠久の繁栄。しかし訪れる唐突なカタストロフ。それは神国の嫉妬をかったカルタゴに似て。
A.D.2359、"Nietzsche"戦役勃発。稼動から13年、統合A.I.は人類に対し独立を宣言。神速の電子戦。一昼夜に満たないたった一度の戦闘で、人類は全人口の2/5を失った。24時を待たずに魔法は解ける。ユビキタスの収斂、あらゆる電力の凍結。即日、星団議会は受胎告知を認定。残存戦力による殲滅略儀を上程する。神は死んだ。その無限、無償の同情ゆえに。人はしかし超克するために生を受け、かつ生き続けるべく命題を課す。
F.S.0001.01.01、統幕は試験航行のため本星を離れていた旗艦"Abraxas"を中心に、"Descartes"のレプリカを搭載する特殊戦闘機部隊、"Parhelia"を編成。同日12:08、成功率0コンマ以下の戦闘、コード"Engage"を着装。ガラスの靴を唯一の頼りに、人々は失った伴侶を求めて闇を見つめる。
「サイドプロテア」のmirawi(みらゐ)氏、「CODE Z.T.S.LABEL」のZTS氏、「The Ivory Tower」のKei氏、「serialexperiments」のINTERFACE氏の4名によって制作され、'03年に発表された作品。アルバム1枚が丸ごと、架空のシューティング・ゲーム"Parhelia"(パフィリア)のイメージサウンドトラックという趣向になっています。ゲーム本編は存在しませんが、Kei氏による約4分のフルCGオープニングムービーがCD-EXTRAで収録されており、イメージを膨らませてくれます。また、様々な用語が散りばめられた本作のシナリオはINTERFACE氏によるもの。途中で人間側の視点からAI側の視点へと入れ替わって語られるという二部構成になっています。技術的特異点を迎え、A.I.と人類が全面戦争に突入。人類側は圧倒的不利、それでもなお、一縷の望みを託し戦いへ身を投ずる――という悲壮感溢れるプロットは、まさしくSTGの様式美とも言えるものでありましょう。
楽曲はみらゐ氏とZTS氏が分け合う形での制作。オープニング・機体セレクト・ステージ曲・ボス曲・中間デモ・エンディング、果てはネームエントリー・ゲームオーバーに至るまで用意されており、ステージ曲は一部・二部で各3曲の計6曲、ボス曲は隠しボスも含めて計3曲用意されているという凝りよう。各曲にはストーリーライン的な副題もついており、このあたりは「レイクライシス」のサウンドトラックへのリスペクトを伺わせます。流線型の展開の中で飛び出すメロディが一際印象深く光る"The Mom"。ZTS氏のZUNTATA(というかTAMAYO嬢への)リスペクトが色濃く伺える"The Cinderella Syndrome"。うねりを伴いながらストイックな疾走感で駆け抜ける"The Two Cradles"。変則的構成のGABBAチューン"The Silent Instructor"。オープニングで提示されたメロディが悲壮感を帯びてリプライズされる終盤の"The Common Tragedy"など、先行STG作品へのリスペクトを感じさせる、これぞシューティングといった四つ打ちテクノサウンドがメインとなって展開されています。醒めたような曲調の急激な変化が夢オチのようにも取れる"The Restaurant With Many Orders"や、ストリングスサウンドをフィーチャーし、敢えて淡々とした印象を抱かせるような仕上がりになっているエンディング"The End Of Eden"など、聴き手の想像に任せる含みを持った部分が多く見受けられるのもイメージサントラならではの魅力だなと思います。細部までこだわりにこだわり抜いたゆえ、最終的には容量を削らざるを得なくなったそうですが、それでも、4人が練り上げたヴィジョンは十二分に伝わってきます。これを力作と呼ばずして何と呼びましょうか。
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- THE SYNTHETIC SHOOTING GAME FOR THE RISING GENERTION -
P A R H E L I A
01. The mom [ opening ] ―「思い出をあげる」と、母は言った。
02. The hesitation for death [ select ] ―死への躊躇
03. The cinderella syndrome [ stage 1 ] ―ずっと、あなたが、好きでした。
04. The optimal clause [ boss A ] ―脳内モルヒネ
05. The exclusion of obstacle[ stage clear ] ―障害の排除
06. The two cradles [ stage 2 ] ―こどもらしく
07. The adolescent conflict [ stage 3 ] ―ある日、老婆は少女の格好をして。
08. The blindness [ alternate ] ―ミネルヴァの梟は夜に飛ぶ
09. The calyxes of flowers [ stage I ] ―優等生の悩み
10. The broken chairs [ stage II ] ―やさしいキスの探し方
11. The silent instructor [ boss B ] ―けれど水は水のまま
12. The common tragedy [ stage III ] ―雪の降らない聖夜
13. The restaurant with many orders [ ult. boss ] ―ごきげんよう、さようなら。
14. The end of eden [ ending ] ―あなた誰?
15. The akasic record [ name entry ] ―花壇の踏み跡
16. The last supper [ game over ] ―最後の晩餐
PRESENTED BY :
MIRAWI (MEAL AND EXCRETION)
ZTS (CODE ZTS LABEL)
INTERFACE (SERIALEXPERIMENTS)
KEI (THE IVORY TOWER)
SCENARIO: INTERFACE
VISUALCONCEPT: INTERFACE、KEI
MOVIE:KEI
SOUNDCONCEPT:MIRAWI、ZTS
COMPOSE: MIRAWI(②④~⑥⑧⑨⑫⑭⑯)、ZTS(①~③⑦⑩⑪⑬⑮)
STORYDESIGN:MIRAWI、INTERFACE
DIRECTOR:TEAM PARHELIA
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▼「Parhelia - シナリオ/用語解説」(Internet Archiveのログ)
▼「Parhelia座談会」(Internet Archiveのログ)
▼「Parhelia Official HP」(Internet Archiveのログ)
●PHPH-001 | Parhelia Original Sound Track - VGMdb
■サイドプロテア
■zts website
■The Ivory Tower
■serialexperiments
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2014年2月16日に、みらゐ、こと石橋渡さんがこの世を去られました。
ご友人による訃報文が5月23日付で掲載されております。
http://luvkraft.tumblr.com/post/86659400334/2014-2-16
再生ハイパーべるーヴの『ぱんださんようちえん』を聴いた時の衝撃は、未だに忘れられません。その後、『未来のエネルギー』『Parhelia』『きりんさん女子大生』と追っかけて聴くようになり、近年では『夜明けのトロア滲む』、『コルドルアの異系*ColdolR』といった作品で、変わらず自分を魅了してくれました。同人音楽の魅力を知ったのも、あなたの作品が大きなキッカケだったと思っています。本当に、本当にありがとうございました。