2007年2月20日火曜日

「ベルセルク」にリスペクトを捧げる、イタリアのパワーメタルバンドのデビューアルバム ― BEJELIT『Hellgate』(2004)

Hellgate
Hellgate
posted with amazlet at 15.12.20
Bejelit
(2005-03-15)


 イタリアのヘヴィメタルバンド「ベヘリット」の1stフルアルバム。三浦建太郎氏の長編ファンタジーコミック「ベルセルク」に心酔しているバンドであります。このアルバムのコンセプトは原作単行本12~13巻あたりの"蝕"にのっとっているようで、ガッツの憎悪・葛藤、眼前に広がる地獄絵図…とかそんな感じの血生臭いイメージを楽曲で表現しております。もちろん、曲名や詞にも「血の刻印(Bloodsign)」「髑髏の騎士(Skull Knight」「ゴッド・ハンド(God's Hand)」「ドラゴン殺し(Dragonslayer)」「ベヘリット(Bejelith)」といったワードがチラホラと出てきます。ガッツのセリフじゃないですが「こりゃヤバイものだ」。音楽性は正統派を地で行くメロディック・パワー・メタル。突進力にも長けたハイトーン・ヴォーカル(ちょっと危ない)や、要所で泣きも込みのコッテリとしたフレーズをキメていくツインリードはなかなかのもの。原作のヴァイオレンスとドス黒さを表現出来ているかはともかくとして、こういうバンドは応援したくなります。B級メタル好きの諸兄は是非。



 ちなみに、去年(2006年)に2ndフルアルバム『Age of Wars』を発表しているのですが、ヴォーカルのFabio Privitera(ファビオ・プリヴィテラ)は、その2005年に既に脱退してたみたいです。バンドは新ヴォーカルとしてFabio Privitera(ティベリオ・ナタリ)なる、野趣溢れる声質の人材を加入させてアルバムを仕上げたとのこと。



BEJELIT - Encyclopedia Metallum

2007年2月15日木曜日

植松伸夫&光田康典(仲野順也・浜渦正志)『フロントミッションシリーズ ガンハザード オリジナルサウンドトラック』(1996)

ガンハザード ― オリジナル・サウンドトラック
ゲーム・ミュージック
ポリスター (1996-02-25)
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 '96年に発表された、フロント・ミッション・シリーズ「ガンハザード」のサウンドトラック。2枚組。ジャンルがシミュレーションRPGではなくアクションRPGであったことと、本シリーズとはパラレルな世界観ということで、FMシリーズの中では今ひとつ評価の低い本作ですが、まごうことなき名作です。主人公のアルベルトを始めとしたキャラクターの味のある(ありすぎる)セリフ回しの魅力にとり憑かれた者も多く、今なお根強い(一部カルト的な)人気を誇っております。また、個人的なことを言わせてもらうと、FMシリーズで一番やりこんだのが本作でした。武器&機体の熟練度システムには熱を上げましたし、ラスボスが厄介過ぎてクリアするのに足掛け6年ほど掛かりましたが、今となってはいい思い出です(笑) さて本サントラですが、メインコンポーザーは植松伸夫氏と光田康典氏のお二人。また、仲野順也氏と浜渦正志氏が数曲担当されており、メイン・コンポーザー、サブ・コンポーザー共に豪華な顔ぶれのもとに制作されております。楽曲はゲームの内容を反映して、ヴァンツァーをイメージした硬質なもの、シナリオに沿ったシリアス&渋めなものが多く、ファイナルファンタジーやクロノトリガーと比べると華やかさはないのですが、楽曲の充実度はその二作に全く引けをとっていないと思います。ウネウネとしたリズムを無機質に展開してゆく植松曲、クリアなサウンドを押し出し、前向きに切り拓いていくような光田曲、両者の作風の違いを味わうことができるのはファンにとってはウレシイのではないでしょうか。

 また、植松曲の一部は、97年(翌年)に発表されるFFVIIの楽曲の雰囲気に繋がるものがあります(のどかな村落のテーマ「Centkrich」や、焦燥感を煽る「Warning Two」あたりを聴くとそれがよく伺えます)。一方の光田氏の楽曲も、ファンファーレ調のテーマ「Emotion」や、他の楽曲の旋律のモチーフを重ねて徐々に盛り上がっていく「Trial Zone」は、95年(前年)に発表されたクロノトリガーに、イベント戦闘などで流れる「A Running Fight」は96年(同年)にサテラビューで配信されたラジカルドリーマーズの楽曲を髣髴とさせる雰囲気を持っています。各氏の作風の変遷を知る、という意味でも興味深いものがあるのではないかと。

 光田曲でのオススメは、重苦しいベースラインがプレッシャーを与える「A・R・K」、否応なくテンションを高めさせてくれる「追撃」「Final Mission」、そしてエンディング関連の2曲「Emotion」「Trial Zone」。対する植松曲では、「Genoce」や「Escape」といったイベントバトル絡みのハイテンションな楽曲や、場末のムードを持った「Richard Millman」(こういう曲調の楽曲をひとつのゲームタイトルに必ず1曲入れるのが植松さんらしい)、最終ステージに使用されたバロック調の荘厳な楽曲「Atlas」(FFVIの「妖星乱舞」のコンパクト版といった印象もします)あたりが聴きものかと。仲野&浜渦の両氏も、出番は少ないながらも「敵襲」「Edel Ritter」「Approach To A Shrine」「焦燥」といった、淀んだ空間や張り詰めた緊張感を演出した曲を提供しており、水準が高いです。スクウェア黄金期の充実ぶりも感じられる1枚です。


GUNHAZARD:Wikipedia
SQUAREENIX:ガンハザード
植松伸夫:Wikipedia
光田康典:Wikipedia
仲野順也:Wikipedia
浜渦正志:Wikipedia
https://twitter.com/gunhazard_bot

2007年2月9日金曜日

Clammbon『JP』(1999)

JPJP
(1999/10/06)
クラムボン

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 クラムボンの1stアルバム。アルバムタイトルのJPとは、3人が通っていた音楽専門学校のジャズ・ポピュラーミュージック・コースの略称なんだそうな。原田郁子さんによる、言葉遊びを織り交ぜた歌詞とヴォーカルは矢野顕子さんからの影響が伺え(声質も似てます)、中心人物であるミト氏はソフト・マシーンなどのプログレッシヴ・ロックやジャズ・ロック、CANなどのクラウト・ロック、YMOなどのテクノ・ポップから影響を受けているとあって、随所にそれっぽさがチラリ。基本はポップなジャズ・ロックのフォーマットを取っていますが、ニューウェーヴのフィルタを通ったような感触もあり、そして時にポスト・ロックにも、純粋なJ-POPにも聴こえます。プログレッシヴな匂いを漂わせつつ、愉快にふわふわと渡り歩いていく器用さとつかみどころのなさ、正直、クラムボンの音楽性は一言で例えられませんが、同時にそれはクラムボンの大きな魅力でもあります。この1stはまだ大胆な実験性は薄く、レゲエやフォークといった他ジャンルを軽く組み込みつつヒネリも入れたニューウェーヴ・ポップ・ロックという趣ですが、ブヨブヨしたシンセにヴォーカルが載る「ORENZI」「GLAMMBON」や、薄く引き伸ばされるようなバッキングが魅力的に響く「トレモロ」など、PSY'SやFAIRCHILDあたりの80'sテクノポップスを思わせる曲が多いので、その辺が好きな方にも訴えかけるものがありそうですね。グっとアクセントが効いたソフトなジャズ・ロック・ナンバー「はなれ ばなれ」「いたくない いたくない」、インディーズ時代の楽曲のリメイク「パンと蜜をめしあがれ」、波音やハンドクラップ等を組み込み、アコギの心地よいカッティングが響くフォーク「波は」は何度もリピートしたくなります。


クラムボン - 公式

2007年2月1日木曜日

HÖYRY-KONE『Huono Parturi』(1997)

Huono ParturiHuono Parturi
(2014/01/02)
Hoyry-Kone

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 フィンランドのチンドン・プログレ・バンド ALAMAAILMAN VASARATのTeemu Hanninen(ds)とJarno Sarkula(b)がかつて在籍していた8人編成のバンド「ホイリー・コーン」(「蒸気機関」を意味するそうです)の2ndアルバム。かつてマーキーから国内盤が出た時についていた邦題は「偽理髪師」。音楽性はヴァサラットと同じくヘヴィ・チェンバー・ロックで、ヴァイオリンの鋭利な音色やホーンセクションの淫靡な音色にただならぬ異様さを孕んでいるのはこちらも同様。ただ、こちらはデスメタル系の爆音ヘヴィネスというよりもKING CRIMSON/MAGMA系の軋んだ重量級ヘヴィネスをコミカルな曲調を交えつつ叩きつけるように押し出していて、さらにヴォーカルがところどころでコバイア語歌唱のMAGMAよろしく芝居がかったオペラチックな歌い回しを披露したりもするので、悪意とユーモアの入り混じった妖しげな雰囲気はヴァサラット以上に充満しています。聴いてていつ胡散臭い儀式をおっぱじめるのかもわかったものじゃないアヴァンギャルドな演奏のクネクネ感がたまりません。



ALMAAILMAN VASARAT - Wikipedia