イタリアはナポリ出身のヴァイオリニスト、リノ・カンナバッチュオロの2010年作品。この人のアルバムを聴くのは今回が初めてですが、本国で活躍するカンタトゥーレであるペッペ・バーラのバックバンドのいちメンバーとして活動しつつ、これまでに何枚か自身のソロ作品を発表している御仁。いわずもがなのヴェテラン・ミュージシャン/コンポーザーの一人です。本アルバムはサルデーニャの女性歌手エレーナ・レッダや、ジャズ・ピアニストのリタ・マルコトゥッリ、KING CRIMSONなどで知られるベーシストのトニー・レヴィン、GOBLINのドラマーであるアゴスティーノ・マランゴーロら、20名以上のゲストミュージシャンを交えて制作しています。バッキングトラックは基本的に打ち込みで軽めなのですが、そこに載る上モノが非常に豪華絢爛。オーケストラやコーラス/ヴォーカルを交えつつ、喜怒哀楽の表情を孕んで躍るリノ氏のヴァイオリン・プレイがたまりません。
オリエンタルなムードと躍動的なアイリッシュ・トラッドのエッセンスを併せ持った「Pieta Di Me」、広大な大地の広がりを想起させる、さながら大河的一大作品のテーマ曲のような「Rachel」など、楽曲の趣向も多様な要素を孕んでおり、フォーク/トラッド、ヒーリング/ニューエイジ、サウンドトラック的な趣を消化しつつ、大河的な壮大さと泣きでドラマティックに纏め上げられた楽曲はどれも素晴らしい魅力を持っております。ハイライトには鬼気迫るヴァイオリンプレイを存分にフィーチャーした7分の大曲「Cry」、そしてラストは「Rachel」のリプライズ的楽曲「I'Te Sento」で歓喜のムードの中アルバムの幕を閉じます。作風的に同傾向にあるということで、マルクス・ヴィアナ(ブラジル最高峰のシンフォニック・バンド SAGRADO CORACAO DA TERRAのヴァイオリニスト)が引き合いに出されるのも納得の、スケールの大きなヴァイオリニスト。素晴らしい才能の持ち主です。日本で言えば葉加瀬太郎氏や久石譲氏の作風が好きなら確実にハマるのではないでしょうか。
ちなみに、近年イタリアで制作されたHONDAの企業ストーリー・アニメーション・ムービー「The Power of Dreams」のテーマ音楽を担当したのがリノ氏。粛々とした雰囲気を持った、映像との相乗効果たっぷりの見事な劇伴楽曲を提供しております。YouTubeに映像が上がっているので、こちらも是非観て聴いて欲しい作品(その舞台裏の映像も上がっております)。
●Lino Cannavacciuolo:myspace
●Lino Cannavacciuolo:Official
○whitescreen.jp:「続々登場する創業史アニメ、ニューフェイスはホンダ!イタリア製の「The Power of Dreams」」