2015年10月29日木曜日

瀟洒で蟲惑的なディスコ・ファンクの世界 ― 高田弘、成田由多可、羽田健太郎『金田一耕助の冒険【特別版】』(1977/2000)

金田一耕助の冒険 特別版
オムニバス 金子由香利 塚田三喜夫 茶木みやこ 古谷一行
キングレコード (2000-01-07)
売り上げランキング: 49,566



 いわゆる「横溝正史ブーム」のただなかにあった1977年にリリースされたアルバム。〈金田一耕助〉シリーズの作品を、高田弘氏、成田由多可氏、羽田健太郎氏の三人の作編曲家がそれぞれイメージ。ディスコ・ファンク調にアレンジしたインストゥルメンタルを収録した、一種の企画盤です。この年、高田氏はキャンディーズのアルバム『キャンディ・レーベル』の楽曲の編曲や、「ボルテスV」のオープニングテーマの編曲などを手がけられ、羽田氏は沢田研二「勝手にしやがれ」や、TBS系列のドラマ「赤い激流」の主題歌でのピアノ演奏などを手がけられておりました。本作の演奏グループは「ミステリー金田一バンド」という名義で統一されており、演奏者には水谷公生氏や山木秀夫氏、宮下明氏の名前もみられます。ライナーノーツには横溝先生のコメントも掲載されており、ディスコ調アレンジに若干のとまどいらしきものを感じつつも「この華麗なリズムの底に漂う哀愁に、共感を持っていただきたいと思う」と締めくくられております。

 全10曲のうち、高田氏は3曲、成田氏は2曲、羽田氏は5曲を担当。コーポレーションスリーや、伊集加代子さん(ちなみに、同年に放送された「ルパン三世」第二シリーズのテーマのイントロコーラスも彼女)による艶やかな女性スキャットをストリングス、ブラスが盛り立てる"金田一耕助のテーマ" "仮面舞踏会"。軽快なラテン・パーカッションと妖しい京琴の響きを前面に押し出した"本陣殺人事件"は高田氏の作編曲。成田氏の作編曲による"八つ墓村"は、篠笛によるヒュードロドロな旋律、金切り声をあげるショッキングなスキャット、そして筑前琵琶が響く、呪術ディスコファンクとでもいうような様相。のっぴきならないインパクトでは本作随一で、MAGMAのファンクサイドにも通じる……かも? "獄門島"では、水谷氏のニュー・ロック的ギターワークも冴える緊張感のあるサウンドの上に、作中で登場する三つの句「鶯の 身をさかさまに 初音かな」(其角)、「むざんやな 冑の下の きりぎりす」「一つ家に 遊女も寝たり 萩と月」(芭蕉)が朗々と謡われるという趣向。



 旧B面の残り5曲はすべて羽田氏の作編曲。ブラスサウンドバリバリの躍動感あふれる"悪魔の手毬唄"や、フリューゲルホルンが黄昏た旋律を奏でる"迷路荘の惨劇"は、金田一耕助というよりもむしろ刑事ドラマもののイメージに近いです。"悪魔が来りて笛を吹く"はスペイシーなシンセサイザーに能管とフルートがソロでせめぎあうクールな和風プログレッシヴ・ジャズ・ロック。"三つ首塔"は、ストリングス、サックス、ガットギターによるスムース・ジャズ。そしてラストを飾る"犬神家の一族"は、美しくも哀切なピアノコンチェルトとなっています。ライナーノーツによると、ハネケン氏の楽曲はこの数年後にアニメ「スペース・コブラ」に流用されたと書かれているのですが、「西部警察」でも流用されていたとのこと。同ドラマのサウンドプロデューサーの鈴木清司氏の選曲なのでしょう。なるほど、確かに流用されていても何も違和感がないなと思いました。





 2000年のCD化に際し、ボーナストラックとして映画/TVシリーズの主題歌が併せて収録されております。こうしてまとめられてみると、改めて作詩・作編曲陣の顔ぶれの豪華さが感じられます。ちなみに、古谷一行氏が主演した、毎日放送の「横溝正史シリーズ」(1977)の主題歌"まぼろしの人"、同じく『横溝正史シリーズ II』(1978)の主題歌"あざみの如く棘あれば" "あなたは何を"の演奏グループ「グッド・グリーフ」は、プログレッシヴ・ロック・バンド 四人囃子の変名バンド。そういうこともあり、"まぼろしの人"はプログレッシヴ・ファンクとでもいうような趣に仕上がっております。なお、同年にリリースされた茶木さんのアルバム『レインボウ・チェイサー』ではアレンジが異なり、ゴダイゴが演奏、ミッキー吉野氏が編曲で携わられています。





 以下は余談。ミステリ作家の山口雅也氏が今から十年以上前に〈ダ・ヴィンチ〉で連載されていた音楽エッセイ(後に単行本『ミステリーDISCを聴こう』に収録)で本アルバムが取り上げられた回(「横溝正史の怪しくない(?)音楽世界」)があるのですが、実に興味深い内容でした。アルバムの内容に対しては「木に竹を接いだような感じでいただけない」とバッサリですが、「このレコードの魅力の大半は、文庫でもお馴染みの杉本一文描くところのジャケットのよさにあると思う」ということで、このアルバムジャケットのちょっとした謎について触れています。というのも、ジャケットは角川文庫版と同じく杉本氏が描かれた『悪魔が来りて笛を吹く』をテーマとしたイラストレーションなのですが、全部で三ヴァージョンある角川文庫版のイラストレーションのいずれの流用でもなく、描き下ろしのものであったのです。フルートを吹く男(悪魔)という構図は昭和50年初頭に出回っていた二番目のヴァージョンに非常に近いのですが、確かに顔の向きなどに違いがみてとれます。


ミステリーDISCを聴こう―Mystery DISC;Now on play (ダ・ヴィンチ・ミステリシリーズ)
山口 雅也
メディアファクトリー
売り上げランキング: 1,333,570






 リリースから四十年近く経とうとしておりますが、昨今ではレア・グルーヴ界隈からの評価の動きがあるようで、今年(2015年)の8月にはHMVのレア・グルーヴもの企画でLP盤が限定で復刻しています。

【HMV recordshop渋谷1周年記念限定独占盤!】8/1(土)リリース!!
ミステリー金田一バンド『横溝正史ミュージック・ミステリーの世界 金田一耕助の冒険』LP

http://recordshop.hmv.co.jp/news/10862/

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『横溝正史MM(ミュージック・ミステリー)の世界 金田一耕助の冒険』
LP[SKA-187(SKLB-9852)|1977.07.21|KING RECORDS]
『金田一耕助の冒険【特別版】』
CD[KICA-3034|2000.01.07|KING RECORDS]


01. 金田一耕助のテーマ
(作編曲 高田弘)

羽田健太郎(keyboard)
武部秀明(bass)
山本秀男 [山木秀夫](drums)
水谷公生、金成良悟(guitar)
瀬上養之助(latin percussion)
羽鳥幸次、荒尾正伸、宮下明(trumpet)
新井英治グループ(trombone)
コーポレーションスリー(female chorus)
多忠昭グループ(弦)



02. 八つ墓村
(作編曲:成田由多可)

羽田健太郎(keyboard)
武部秀明(bass)
森田順(drums)
水谷公生(guitar)
穴井忠臣(latin percussion)
羽鳥幸次、荒尾正伸、宮下明(trumpet)
新井英治グループ(trombone)
吉村昇(bass clarinet)
望月太八(篠笛)
平山万佐子(筑前琵琶)
伊藤加代子 [伊集加代子](female solo)
多忠昭グループ(弦)



03. 仮面舞踏会
(作編曲:高田弘)

羽田健太郎(keyboard)
武部秀明(bass)
田中清司(drums)
水谷公生(guitar)
穴井忠臣(latin percussion)
多忠昭グループ(弦)
伊藤加代子 [伊集加代子](female solo)


04. 本陣殺人事件
(作編曲:高田弘)

羽田健太郎(keyboard)
武部秀明(bass)
山本秀男 [山木秀夫](drums)
水谷公生(guitar)
穴井忠臣(latin percussion)
山内嘉美子(京琴)



05. 獄門島
(作編曲:成田由多可)

羽田健太郎(keyboard)
武部秀明(bass)
山本秀男 [山木秀夫](drums)
水谷公生(guitar)
穴井忠臣(latin percussion)
羽鳥幸次、荒尾正伸、宮下明(trumpet)
新井英治グループ(trombone)
今藤広史(謡)
堅田啓輝(鼓)
多忠昭グループ(弦)



06. 悪魔の手毬唄
(作編曲:羽田健太郎)

羽田健太郎(keyboard)
武部秀明(bass)
市原康(drums)
水谷公生(guitar)
瀬上養之助(latin percussion)
羽鳥幸次、荒尾正伸、宮下明(trumpet)
新井英治グループ(trombone)
川島和子(female solo)
村岡健(sax)
西谷昭グループ(弦)
川畑博美、渡辺栄郎(contrabass)
市川秀男(piano)
中牟礼貞則(gut guitar)



07. 迷路荘の惨劇
(作編曲:羽田健太郎)

羽田健太郎(keyboard)
武部秀明(bass)
森谷順(drums)
水谷公生(guitar)
瀬上養之助(latin percussion)
羽鳥幸次、荒尾正伸、宮下明(trumpet)
新井英治グループ(trombone)
旭孝、坂部美智子(flute)
村岡健、砂塚俊三(alto sax)
山下芳彦(fagott)
久保修平(tuba)
金山功(xylophone)
西谷昭グループ(弦)
数原晋(flugelhorn)



08. 悪魔が来りて笛を吹く
(作編曲:羽田健太郎)

羽田健太郎(keyboard)
武部秀明(bass)
森田順(drums)
水谷公生(guitar)
瀬上養之助(latin percussion)
山口弘治、沖田晏宏(horn)
旭孝、坂部美智子(flute)
西川浩平(能管)
堅田啓輝(大皮)
数原晋(flugelhorn)



09. 三つ首塔
(作編曲:羽田健太郎)

羽田健太郎(keyboard)
武部秀明(bass)
市原康(drums)
水谷公生(guitar)
瀬上養之助(latin percussion)
篠原猛(flute)
村岡健(sax)
児玉敬(口笛)
西谷昭グループ(弦)
川畑博美、渡辺栄郎(contrabass)
市川秀男(piano)
中牟礼貞則(gut guitar)
数原晋(flugelhorn)



10.犬神家の一族
(作編曲:羽田健太郎)

羽田健太郎(keyboard)
越野禎子(pipe)
山川恵子(harp)
西谷昭グループ(弦)
川畑博美、渡辺栄郎(contrabass)
市川秀男(piano)
中牟礼貞則(gut guitar)



【BONUS TRACKS】

《『犬神家の一族』より》
11. 愛のバラード
(作詩:山口洋子/作曲:大野雄二/編曲:神保正明/唄:金子由香利/演奏:ビクター・オーケストラ)

12. 仮面
(作詩:山口洋子/作曲:大野雄二/編曲:神保正明/唄:金子由香利/演奏:ビクター・オーケストラ)

《東宝映画『女王蜂』智子のテーマ》
13. 愛の女王蜂
(作詩:松本隆/作曲:三木たかし/編曲:若草恵/唄:塚田三喜夫)

14. 少女夜曲
(作詩:松本隆/作曲:三木たかし/編曲:若草恵/唄:塚田三喜夫)

《毎日放送『横溝正史シリーズ』主題歌》
15. まぼろしの人
(作詩:寺山寿和/作曲・唄:茶木みやこ/編曲・演奏:グッド・グリーフ)

《毎日放送『横溝正史シリーズ II』主題歌》
16. あざみの如く棘あれば
(作詩:阿久悠/作曲・唄:茶木みやこ/編曲:岡井大二/演奏:グッド・グリーフ)

17. あなたは何を
(作詩:阿久悠/作曲・唄:茶木みやこ/編曲:中村哲/演奏:グッド・グリーフ)

《TBS「金田一耕助シリーズ」主題歌》
18. 糸電話
(作詩:山下啓介/作曲:伊勢正三/編曲:青木望/唄:古谷一行)

19. 見えない雨の降る街を
(作詩:山下啓介/作曲:伊勢正三/編曲:青木望/唄:古谷一行)







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2015年10月25日日曜日

圧巻のシネマティック・プログレッシヴ・メタル・サウンド ― Earthside『A Dream In Static』(2015)




 アメリカ、ニューイングランドの新鋭プログレッシヴ・メタル・バンド Earthsideのデビューアルバム。四人組のインストゥルメンタルバンドであり、バンドのキーボーディストであるフランク・サクラモーンは、これ以前にBurning Sidewaysなるモダン・プログレ・プロジェクトで2012年にアルバムをリリースしているという経歴の持ち主でもあります。現在のところ選任ヴォーカルはおりませんが、本作ではSOILWORKのビョーン・ストリッド、SEVENDUSTのラジョン・ウィザースプーン、TesseracTのダニエル・トムキンス、Face The Kingのエリック・ジーリンガーといった強力なゲストヴォーカリストが参加。また、レコーディングはスウェーデンで行われ、プロデュース/エンジニアには、OpethやKatatonia、Bloodbathなどを手がけてきたデヴィッド・カスティロが。そしてマスタリング/ミキシングには、名だたるバンドを数多く送り出してきたイェンス・ボグレンの二人が迎えられております。




 恵まれた環境でデビューを飾るわけですが、それに見合う力量もしっかり兼ね備えており、非常に良好な相互作用が生まれてもいます。"The Closest I've Come" "The Ungrounding"のようなdjent以降の剛直性プログレッシヴ・メタル・インストはもちろん、ヴォーカル曲ではいずれも各ゲストのパフォーマンスの特性を引き出しながらも徹頭徹尾ダイナミックなサウンドに収束していく構成で、10分近い長尺曲がアルバムで半数を占めるのもなるほどといったところです。モスクワスタジオ交響楽団の壮麗なシンフォニック・サウンドをバックに、ラジョンがエモーショナルに歌い上げる大曲"Mob Mentality"はとにかく圧巻で、本作随一の会心曲。PVとともに必見・必聴です。また、モスクワスタジオ交響楽団と、ブルックリンを拠点に活動するハンマーダルシマー奏者のマックスZTをフィーチャーした"Entering the Light"や、9分半にわたる"Skyline"では、ヘヴィネスを間隙を縫うようにしてエピック・サウンドやポスト・ロックの要素が色濃く反映されており、今後の成長も期待させる仕上がり。バンドが標榜する“Cinematic Rock”というコンセプトの説得力も含め、その堂々たる風格は決定的に新人離れしたものがあります。


A Dream in Static
A Dream in Static
posted with amazlet at 15.10.09
Bushwhack LLC (2015-10-23)


http://earthsideband.com/
https://www.facebook.com/EarthsideMusic

2015年10月21日水曜日

ロメロ、フリードキン、マン、カーペンター影響下のダークなニューロマサウンド ― CONFRONTATIONAL『A Dance of Shadows』(2015)




 イタリアのインダストリアル/ノイズ・バンド Recs of the fleshのマッシモ・ウザイ率いるエレクトロ・ユニット CONFRONTATIONAL。今年2月にリリースされた4曲入りデビューEP『Done with You』に続くフルアルバムが10月1日にリリースされました。70~80年代シンセサイザー・ミュージックやサウンドトラック、ジョージ・A・ロメロ、ウィリアム・フリードキン、マイケル・マン、ジョン・カーペンターらの作品の影響下にある、鈍い輝きのあるサウンド。"Flat / Line" "One Last Kiss" "You'll Be Mine"といった甘口のメロディーとミステリアスなムードが支配する初期MINISTRYばりのニューロマンティックチューンを中心に、クラウディオ・シモネッティやジョン・カーペンターへのリスペクトが垣間見える"Shadowdancing" "Forsaken"や、元PRONGのメンバーで、現在はマドンナのツアーギタリストであるモンテ・ピットマンの流麗なギターソロをフィーチャーした"Like A Curse"。スラッシュ・メタル・バンド SADUSのダレン・トラヴィスによるシリアスなモノローグをしたためた"Script"。ジョン・カーペンターの息子であり、近年のジョンのサウンドにおける右腕的存在でもあり、自らもプログレッシヴ・ユニット Ludriumで活動するコディ・カーペンターのメロディアスなセンスが終盤で光る"To Live And Die On The Air"といった、ゲストのカラーも織り込みながらの全8曲を収録しています。


http://www.confrontational.net/
https://www.facebook.com/2confrontational
https://soundcloud.com/2confrontational

2015年10月18日日曜日

今の筋少なりの「原点回帰」 ― 筋肉少女帯『おまけのいちにち(闘いの日々)』(2015)

おまけのいちにち(闘いの日々)
筋肉少女帯
徳間ジャパンコミュニケーションズ (2015-10-07)
売り上げランキング: 1,891



 筋肉少女帯の17thアルバム。アルバムジャケットはオーケンの怪作小説『新興宗教オモイデ教』(1992)の角川文庫版でも使用された丸尾末広氏のイラストレーション。大傑作アルバム『新人』(2007)で鮮烈な二度目のデビューを果たし、さらに再編後『シーズン2』(2009)をリリース。その次作の『蔦からまるQの惑星』(2010)あたりから徐々に方向性がユルくなっているのですが、本作のちょうど一年前にリリースされた『THE SHOW MUST GO ON』で完全にそれが馴染んだ感があるなと。ユルいことはユルいのですが、手応えのあるユルさというか。90年代初期に回帰したようでもあり、50歳を目前にして落ち着くところに落ち着いたバンドの姿をダイレクトに反映しているようでもあり、微笑ましくもあります。サポートメンバーはおなじみ三柴理氏と長谷川浩二氏。そして内田雄一郎氏、本城聡章氏、河塚篤史氏(元 陰陽座~現 NESS)を擁するプログレ歌謡バンド「Foo-Shah-Zoo」のフロントマンである扇愛奈さんが前作に引き続きバッキングコーラスとして参加されております。

 アルバムタイトルの「おまけのいちにち」は、6thアルバム『断罪!断罪!また断罪!!』(1991)の冒頭曲のタイトルでもあり、ファンならおなじみのワードでありますね。また、今年の四月に刊行されたオーケンの最新エッセイ集のタイトルは『おまけのいちにち(その連続)』でありました。アルバムの副題にある「闘いの日々」は、1976年から1979年にかけて放送された石原プロ制作の刑事ドラマ「大都会」シリーズ第一作目の副題と同じ。ということで、冒頭は"大都会のテーマ"(作曲:篠原仁志)のカヴァー、しかもTVサイズヴァージョン。もちろん、アルバム終盤ではフルヴァージョンも収められています。また、1977年から1987年にかけて放送された刑事ドラマ「特捜最前線」の主題歌"私だけの十字架"(作詞:尾中美千絵/作曲:木下忠司)のカヴァーもあり、オーケンのなかで刑事モノのリバイバルが来たのかしらん? と思ったのですが、ナタリーのインタビューでオーケンが “再結成以降の筋肉少女帯というのは、刑事ドラマでいうと「西部警察」だったと思うんです”“『西部警察』の原点は何だろう?」と考えてみると、その前に「大都会」という番組があったんですよね――「大都会 闘いの日々」というのがあって、これが最初なんです――筋肉少女帯もそこに戻ってからチェンジしていくのがいいんじゃないかなって” と語っていることから、これは筋少なりの原点回帰の表れの一端でもあったようです。





 "レジテロの夢" "混ぜるな危険" "球体関節人形の夜"の三曲はいわゆるキラーチューンの流れ。橘高氏作曲の"レジテロの夢"はジャーマン・メタル風なのにサビが「古畑任三郎のテーマ」っぽく、最終的にはそれらを全部ぶん投げて平穏なオチがつく、まごうことなき「ヘンな曲」です。筋肉少女帯としては「EAT-MAN」以来、実に18年ぶりのアニメタイアップとなった、「うしおととら」主題歌となった"混ぜるな危険"は、昭和40年代、50年代のアニメソングのイメージで本城氏が書かれた曲。キャッチーかつおどろおどろしいという、この百鬼夜行感。"球体関節人形の夜"は、声優の野水伊織さんのシングル『D.O.B.』のカップリングとして提供された楽曲のセルフカヴァー。"再殺部隊"や"トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く "あたりに通底するエモーショナルな筋少様式美が炸裂しております。"枕投げ営業"は、本アルバム随一のほっこり曲。一部のフレーズがLED ZEPPELINの"Achilles Last Stand(アキレス最後の戦い)"っぽいのは、歌詞のストーリーを考えるとなるほどピッタリだな、と。ヘヴィでドラマティックな正統派筋少チューン"おわかりいただけただろうか"も、戦慄の怪奇ホラーかと思えばじんわりと切なく、年を重ねた今だからこその優しさが込められた曲が増えてきたなと思います。本城氏が高校時代につくった曲を30年ぶりに再録した"LIVE HOUSE"は、本城氏とオーケンのツインヴォーカルによる青春のロックチューン。続く、ボサノバタッチの"別の星の物語り"が、男女の久しぶりの再会を描いており、それぞれ異なる形で「邂逅」の二曲が続いた形になっているのがまた心憎い。"時は来た"はDEEP PURPLEの"Space Truckin'"にガッツリとオマージュを捧げたオルガン・ハードロック。しかし、ここにアジりまくった歌詞とムサいコーラスが載るともはや筋少ナンバー以外の何モノでもないという(笑)。"S5040"は内田氏曰く “心を病んだシド・バレットが脱退したPINK FLOYDに、後任で太田裕美が入ったっていうイメージ” という、氏の嗜好が全開のユルユルサイケデリック歌謡。ラストは郷愁のフォークナンバー"夕焼け原風景"でじんわりと締め。一見するととりとめがないようで、聴き終わってみれば一貫して「昭和50年代、40年代回帰」が意識されるものになっています。


http://www.kids.co.jp/King-Show/

結成から33年ーー筋肉少女帯・大槻ケンヂが語る“異能のヴォーカル”の矜持と、バンドの現在地 - Realsound
筋肉少女帯「おまけのいちにち(闘いの日々)」メンバー全員インタビュー - 音楽ナタリー Power Push
野水いおり「D.O.B.」特集 野水いおり×大槻ケンヂ×橘高文彦鼎談 - 音楽ナタリー Power Push


新興宗教オモイデ教 (角川文庫)
KADOKAWA / 角川書店 (2013-07-17)
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筋肉少女帯『新人』(2007)
筋肉少女帯『シーズン2』(2009)
Thunder You Poison Viper(内田雄一郎/三柴理/長谷川浩二)『You!』(2014)
NESS(三浦俊一/戸田宏武/内田雄一郎/河塚篤史)『NESS 2』(2013)
特撮『パナギアの恩恵』(2012)

2015年10月13日火曜日

「千年祭」の名にふさわしい、「ゼノギアス」一大アレンジアルバム ― 光田康典&Millennial Fair『CREID』(1998)

ゼノギアス アレンジヴァージョン クリイド
光田康典&ミレニアル・フェア
スクウェア・エニックス (2005-06-29)
売り上げランキング: 15,062




 '98年に今は亡きデジキューブよりリリースされた、ゲーム「ゼノギアス」アレンジアルバム。アルバムタイトルの「CREID」とはゲール語で「信じる」の意。東京とダブリンの二箇所でレコーディングが敢行され、コンポーザーの光田康典氏が日本/アイルランドの凄腕ミュージシャンたちと編成した一大グループ「光田康典&Millennial Fair」名義で発表した力作です。グループのメンバーにはZABADAKの吉良知彦氏&小峰公子さん。上野洋子さん、渡辺等氏、大槻“KALTA”英宣氏、Marsh-Mallowの藤井珠緒さん、Vita-Novaの本間哲子さん、ファイナルファンタジーIVのケルティック・アレンジアルバム『Celtic Moon』(1991)でも演者として参加されていたモイア・ブレナン、Anúnaのイーマー・クイン、NIEKKUのマリア・カラニエミなど、まさにMillennial Fair(千年祭)の名にふさわしい錚々たる面々であります。





 アレンジではケルティック/ワールド・ミュージックのエッセンスをミックスし、ホイッスルやアイリッシュ・ハープ、バグパイプやアコーディオン、尺八、篠笛など、民族色豊かな楽器をフィーチャーして大胆な変貌を遂げています。上野さんのアレンジによる多重コーラスと熱を帯びてゆくアンサンブルで静かなダイナミズムを伝える"Melkaba"や、中東風フレーズで熱く、パーカッシヴに展開してゆく"Dajil"。イーマーの神秘的なコーラスワークとパイプ&ハープの響きがゆるやかにたゆたうかのような感覚をおぼえさせてくれる"Creid"。胸躍り、そして切ないフォーキー・ポップス "光の階段" "春の子守歌"。街中の喧騒とともに祝祭的な盛り上がりを見せる"Lahan"。どこを聴いても暖かみにあふれています。ラストの"メビウス"はゲーム本編のエンディングテーマ"SMALL TWO OF PIECES ~軋んだ破片~"のアレンジで、本アルバムのラストを締めくくるにもふさわしい一曲。原曲はIONAのジョアンヌ・ホッグがヴォーカルを務めていましたが、こちらは本間哲子さんによる日本語版ヴォーカルアレンジで、また異なる表情を見せてくれます。「ゼノギアス」のアレンジアルバムとしても、光田康典のプライベートなソロ作品としても、深い感動をおぼえる畢生の傑作なのです。





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『CREID』

[SSCX-10018|1998.04.22|デジキューブ]
[SQEX-10046|2005.06.29|スクウェア・エニックス]


“光田康典&Millennial Fair” are
本間“Techie”哲子/上野洋子/小峰公子/渡辺等/HATA/吉良知彦/藤井珠緒/大槻“KALTA”英宣/素川欣也/近藤治夫/モイア・ブレナン/イーマー・クイン/デイヴィ・スピラーン/ロウリー・カスザス/マリア・カラニエミ/アン・マリー・オ・ファレル/リーシュ・ケリー


01. MELKABA(作曲:光田康典)

上野洋子(chorus)
Davy Spillane(uilleann pipes)
Maria Kalaniemi(accordion)
Maire Breatnach(fiddle)
Laoise Kelly(celtic harp)
光田康典(acoustic piano)
HATA(acoustic guitar, electric guitar)
渡辺等(electric upright bass)
藤井珠緒(congas, bongos)
大槻“KALTA”英宣(drums)



02. 二つの羽根(作詞:工藤順子/作曲:光田康典)

本間“Techie”哲子(vocal)
Davy Spillane(low whistle)
HATA(acoustic guitar, electric guitar)
光田康典(keyboard, programming)
渡辺等(electric bass)
大槻“KALTA”英宣(drums, tambourine)



03. BALTO(作曲:光田康典)

Maria Kalaniemi(accordion)
Maire Breatnach(fiddle)
素川欣也(尺八)
Laurie Kaszas(tin whistle)
HATA(acoustic guitar)
吉良知彦(bouzouki)
渡辺等(electric upright bass)
藤井珠緒(glockenspiel)
大槻“KALTA”英宣(drums, programming)



04. CREID(原作詞・作曲:光田康典/Irish Translation:BLATHNAID COFFEY)

Eimear Quinn(vocal)
Davy Spillane(uilleann pipes)
渡辺等(fretless bass)
Laoise Kelly(celtic harp)
大槻“KALTA”英宣(programming)



05. DAJIL(作曲:光田康典)

吉良知彦(bouzouki, electric guitar)
小峰公子(chorus)
Maria Kalaniemi(accordion)
Maire Breatnach(fiddle)
HATA(electric sitar)
渡辺等(electric bass)
藤井珠緒(clasher, china cymbal, paste 5cup cymbal, tree bell, angel heart, india bells, darbuka, flexatone)
大槻“KALTA”英宣(drums, programming)



06. 光の階段(作詞:工藤順子/作曲:光田康典)

本間“Techie”哲子(vocal)
Maria Kalaniemi(accordion)
Maire Breatnach(fiddle)
素川欣也(尺八)
HATA(acoustic guitar)
渡辺等(electric upright bass)
藤井珠緒(castanet)
大槻“KALTA”英宣(drums)



07. 神無月の人魚(作曲:光田康典)

Davy Spillane(low wistle)
Maire Breatnach(fiddle)
Laoise Kelly(celtic harp)
渡辺等(electric upright bass)
藤井珠緒(wind chime, nail chime, cha-cha, finger cymbals)
大槻“KALTA”英宣(programming)



08. 春の子守歌(作詞:工藤順子/作曲:光田康典)

本間“Techie”哲子(vocal)
Eimear Quinn(chorus)
Maria Kalaniemi(accordion)
Maire Breatnach(fiddle)
HATA(acoustic guitar)
渡辺等(fretless bass)
藤井珠緒(sleigh bells)
大槻“KALTA”英宣(drums, programming)



09. LAHAN(作曲:光田康典)

Maria Kalaniemi(accordion)
Maire Breatnach(fiddle)
素川欣也(尺八)
近藤治夫(bag pipes)
Laurie Kaszas(tin whistle)
HATA(acoustic guitar, electric guitar)
渡辺等(fretless bass)
藤井珠緒(congas, caxixi)
小峰公子(chorus, hand clap)
光田康典(acoustic piano, voices, hand clap)
大槻“KALTA”英宣(drums, voices, hand clap)
山中ちこ(voices, hand clap)
工藤ともり(voices, hand clap)
People at The Harcourt Hotel's Pub(laughing noise)



10. メビウス(作詞:工藤順子/作曲:光田康典)

本間“Techie”哲子(vocal)
Davy Spillane(low whistle)
Anne-Marie O'Farrell(celtic harp)
HATA(electirc guitar)
光田康典(keyboard, programming)
渡辺等(fretless bass)
大槻“KALTA”英宣(drums)



All Music Composed and Arranged by 光田康典
Co-Arranged by 大槻“KALTA”英宣
Chorus Arranged by 上野洋子

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『CRIED』 - procyon studio

2015年10月11日日曜日

荒木真樹彦、窪田晴男、吉田美奈子 他『高河ゆん「B型同盟」ミュージック・アルバム』(1989)

「B型同盟」ミュージック・アルバム

株式会社キティエンタープライズ (1991-09-11)
売り上げランキング: 215,599



 1988年から1989年にかけて角川書店の月刊ニュータイプで連載された、高河ゆんによる漫画作品『B型同盟』のイメージアルバム。単行本第一巻が刊行された翌月にリリースされております。作詩は吉田美奈子さんが全面的に提供。楽曲はアルバム『SYBER-BEAT』(1988)でデビューして間もないシンガーソングライター 荒木真樹彦氏や、パール兄弟の窪田晴男氏、アイリーン・フォーリーンの安岡孝章氏によるもの。洗練されたアーバン・ポップ・ナンバー "POISON DARK" "1999"は『SYBER-BEAT』からの再録。高河さんが"1999"を『B型同盟』のエンディングテーマにと考えたところから、本イメージアルバムの企画は始まったそうです。なお、本作から二年後の1991年には『B型同盟 Another Music』と題した、全曲リミックス・アルバムもリリースされてもいます。実質的に再発リリース的な内容であり、高河さんのアルバムに対する思い入れのほどもうかがえます。


 全体的にAOR志向な本作のレコーディングには、山下達郎バンドの青山純氏、マライアの土方隆行氏、ZIGGYやLINDBERGの佐藤達哉氏、MUTE BEATの松永孝義氏、アイリーン・フォーリーン~山弦の小倉博和氏といった著名なセッション・ミュージシャンがズラリと揃っており、リゾート感とミステリアスなムードの共存したインストゥルメンタル"Fence of Time"の演奏陣では作編曲者の窪田晴男氏をはじめ、mecken(荻原基文)氏や外山明氏、BAnaNa(川島裕二)氏と、ちょっとビックリしてしまうような顔ぶれもみられます。バッキングコーラスは高橋洋子さん、遠藤由美さん、清水美恵さんの三人。それぞれが一曲ずつメインヴォーカルを担当されてもいます。ライナーノーツにもありますが、三人とも松任谷由美さんをはじめ、数々のアーティストのバックを務めたキャリアを持っていることもあり、素晴らしいパフォーマンスを聴かせてくれます。また、高橋さんは本作の二年後の1991年にシンガーとしてメジャーデビュー。その後、「新世紀エヴァンゲリオン」の主題歌"残酷な天使のテーゼ"で大ブレイクを果たすわけですが、同曲の編曲者である大森俊之氏と初タッグとなったのが、本作に収録されている秀逸なメロディック・ロック・ナンバー"Mystic Eyes... 愛はCount Down"なのです。




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『B型同盟 ミュージックアルバム』
[HOOK-20157|1989.09.25|キティレコーズ]


1. Poison Dark
(作詩:吉田美奈子/作編曲・歌:荒木真樹彦)
伊藤広規(b)
荒木真樹彦(instruments & chorus)
伯耆弘徳(synth operator)



2. Fence of Time
(作編曲:窪田晴男)
窪田晴男(guitar)
meckken [※mecken](bass)
外山明(drums)
BAnaNA(keyboard)
木村誠(percussion)
土岐幸男(synth operator)



3. Dream Aroma
(作詩:吉田美奈子/作編曲・歌:安岡孝章/コーラス・アレンジ:大森俊之/歌:遠藤由美)
小倉博和(guitar)
西込加久見(synth operator)
清水美恵(chorus)
高橋洋子(chorus)
遠藤由美(chorus)



4. Rose
(作編曲:窪田晴男)
窪田晴男(acoustic & electric guitar)
松永孝義(bass)
渡嘉敷裕(drums)
古川初穂(piano, keyboard)
木村誠(percussion)
藤陵雅裕(alto sax)
佐藤達哉 [※佐藤達也](tenor sax)



5. Mystic Eyes... 愛はCount Down
(作詩:吉田美奈子/作曲:荒木真樹彦/編曲:土方隆行/コーラス・アレンジ:大森俊之/歌:高橋洋子)
土方隆行(guitar)
美久月千春 [※美久月千晴](bass)
青山純(drums)
宮城純子(keyboard)
清水美恵(chorus)
高橋洋子(chorus)
遠藤由美(chorus)



6. Eimi & Matilda
(作詩:吉田美奈子/作曲:荒木真樹彦/編曲:土方隆行/コーラス・アレンジ:大森俊之/歌:清水美恵)
土方隆行(acoustic guitar)
宮城純子(keyboard)
梅原篤(synth operator)



7. Reason
(作編曲:窪田晴男)
窪田晴男(guitar synthesizer)
矢代恒彦(bass)
木村誠(percussion)
土岐幸男(synth operator)



8. 1999
(作詩:平野肇/作編曲・歌:荒木真樹彦)
荒木真樹彦(all instruments & chorus)
伯耆弘徳(synth operator)



Original Works:高河ゆん
Supervised Produce:荒木真樹彦
Produce:PROJECT-C
Super Cordinator:栗原裕子
Producer:矢部敦志

Sound Produce:
荒木真樹彦(①⑧)
窪田晴男(②④⑦)
土方隆行(⑤⑥)
安岡孝章(③)







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辛島美登里、かしぶち哲郎、Night Circus 他
『高河ゆん - マインドサイズ イメージアルバム』(1989)
こちらは'89年7月リリースのイメージアルバム。

2015年10月9日金曜日

青春チャリンコゴアアクション映画「ターボキッド」のサウンドトラックを手がけたカナダのシンセウェイヴユニット「Le Matos」


流血シーンありゆえ、視聴注意

 カナダ/ニュージーランド共同制作による80年代リスペクテッドなボンクラ青春チャリンコゴアアクションムービー「ターボキッド」(監督:ROADKILL SUPERSTARS)を先日観てきました。いやー面白かった。文明が荒廃し、移動手段はチャリンコのみという“1997年”の未来を舞台に、ドバドバ飛び散る血しぶき! 吹き飛ぶ手足(あと首)! 人間ミンチ! 笑撃のゴアシーン満載の青春ボーイミーツガールビルドゥングスロマンがこの作品です。貴重な水を×××から精製するくだりとか、内臓と自転車を繋いでガーッてやるシーンとか、とにかく死にまくりであり、死ぬほど笑わせてもらいました。頭のネジが飛んでてかわいいヒロイン、やはり万能性を発揮するダクトテープ、ほぼ全編80年代テイストなシンセサイザー・ミュージック(シンセウェイヴ)な劇伴なのも高ポイント。「ターボキッド」のDVD/Blu-rayは2016年1月13日リリースだそうなので、要チェックやで。


le_matos.jpg


 そんな「ターボキッド」のスコアを手がけたのは、Jean-Philippe BernierJean-Nicolas Leupiの二人を中心とするカナダ・モントリオールのエレクトロ・ユニット Le Matos。「ターボキッド」のプロトタイプとなった、同じくROADKILL SUPERSTARS制作による2011年発表のショートムービー「T Is for Turbo」のBGMも彼らであります。ちなみにJean-Philippe Bernierは同作の撮影スタッフも兼任しており、IMDbによると、「300」「デス・レース」「X-MEN:フューチャー&パスト」などのタイトルにも撮影で関わっていたようです。Le Matosの音楽的影響はやはり80年代サウンドトラックにあり、コンポーザーではヴァンゲリス、ジョン・カーペンター、シュキ・レヴィ、TANGERINE DREAM、GOBLINの名前が挙げられています。太めのシンセトラックとダンサブルなリズム、そして哀愁のメロディによる煌びやかなインストゥルメンタルが魅力です。





 2011年に、ブレードランナーのエンドタイトルのカヴァーや、リミックスを含む楽曲集『Coming Soon』や、三曲入りEP『58 minutes pour vivre』(タイトルは「ダイ・ハード2」のフランス語版と同名)をリリース。ちなみにこのEPに収録されている、タイトル曲のアレンジ版である"Rise of Turbo Kid"は、「ターボキッド」のサントラに使用されます。





 2013年には待望の1stアルバム『Join Us』をリリース。ほかには、大友克洋「AKIRA」の、海外ファン有志による実写化企画「The Akira Project」に、エンディングテーマ"Kiyoko"を提供しています。いずれも、ユニットの公式bandcampアカウントで聴くことができます。そして先ごろ、「ターボキッド」のメインテーマにヴォーカルをのせた“No Tomorrow”がサウンドトラックからの先行シングルとして$2より配信リリースされています。作詞とヴォーカルは、ロンドンを拠点に活動するシンセポップユニット PAWWSルーシー・テイラーによるもの。





『ターボキッド』公開&発売決定!! - KING MOVIES
青春ディストピア映画『ターボキッド』の監督にインタビュー&特別映像 | コタク・ジャパン

RSS(※ROADKILL SUPERSTARS)「――シンセサイザーがメインとなる音楽を使うのは『ターボキッド』の世界観からして、自然な流れでした。Le Matosは最高の仕事をしてくれましたし、我々は彼らを心底信頼しているので、すべて任せて、ほとんど何も注文は出していません。それでも完璧でした。「彼らも私たちと同じ80年代キッズで、同じものから影響を受けて育ってきています。もちろん、私たちもジョルジオ・モロダーやジョン・カーペンター、タンジェリン・ドリームの大ファンです。そして、彼らの音楽も『ターボキッド』に影響を与えています。」


Le Matos - Official Site
Le Matos - facebook
Le Matos - soundcloud
Turbo Kid - IMDb

2015年10月4日日曜日

骨の髄までヴィジュアル系に浸かったNYの激エモ・プログレッシヴ・メタル・トリオのデビューEP ― Moonfall『Refraction』(2015)




 ニューヨークを拠点とするオルタナ・プログレッシヴ・メタル・トリオ Moonfallが8月末にリリースしたデビューEP。LUNA SEA、Dir en Grey、ナイトメア、ギルガメッシュ、the GazettE、NOCTURNAL BLOODLUST、GALNERYUS、Versailles、DELUHIといった日本のヴィジュアル系/ヘヴィ・メタル系バンドから一通り影響を受けており、エモーション重視のサウンドに惜しげもなく反映させた結果、出てきたのはチャラさと貪欲さと雑食性が同居したかのようなミクスチャー・プログレッシヴ・メタル。先行バンドへの憧れと若気の至り的なガムシャラさが一体になったがゆえの魅力があって、これがかなり良いです。つんのめった曲調から惜しげもなくメロディアスなギターソロに突っこんだのちブレイクダウンをカマす問答無用の生き急ぎっぷりがとにかくもう最高というほかない冒頭曲"Verglas"をまずは一聴していただきたい。そのほか、クリーン&シャウトの使い分けも効いたトリッキーなヘヴィ・ロック"Apophis"。アッパーなエレクトロ・ロック"Fumigation"。90年代ヴィジュアル系バンドへの爽やかなラブコールとしかいいようのない"In Melancholia"。バンドの標榜する「アトモスフェリック・ロック」の側面を強く押し出した、タメの効いた叙情的ミドルチューン"The Willow and the Swamp"と、すべての楽曲がドラマティックな収束をみせるつくりなのもGOOD。ダウンロードは$4.95より。EPでこれだけやってくれるなら、ぜひともフルアルバムにも期待したいところです。




Moonfall - facebook
Moonfall - Youtube channel

ジョン・カーペンター、2016年7月にアイルランドでライヴを敢行




 映画監督でありコンポーザーでもある鬼才 ジョン・カーペンター。今年二月にリリースされた、御歳67歳にして自身のキャリア初となるソロアルバム『Lost Themes』も記憶に新しいですが、来年、2016年7月にアイルランドでライヴを行うというアナウンスが先日出ました。7月1日~3日にかけて開催される「ATP Iceland」への出演で、彼が過去に手がけたサウンドトラックからの楽曲や、『Lost Themes』からの楽曲、そして、もしかすると新曲もプレイされるかもしれないといわれています。ライヴにあたっては、『Lost Themes』の共同制作者である息子のコディ・カーペンターや、養子のダニエル・デイヴィス(ちなみにThe Kinksのギタリスト デイヴ・デイヴィスの子です)が演奏で参加する可能性が高そうです。そうそう、ジョン・カーペンターのバンドといえば、『ゴーストハンターズ』(1986)のときに監督仲間のニック・キャッスル、トミー・ウォレスとともに組んだ Coupe De Villes というのもありましたね。「ATP Iceland」のイベント公式サイトでは先日チケットのプレオーダーが開始されましたが、現時点(2015年10月3日)でほぼ完売の状態です。いやあ、すごい。



https://www.atpfestival.com/events/news/1509301656

 さて、10月16日には、『Lost Themes』のリミックスアルバムがSacred Bones Recordsよりリリースされます。Prurient(Dominick Fernow)、Zola Jesus & Dean Hurley、ohGr(Skinny Puppyのニヴェック・オーガのサイドプロジェクト)、Silent Servant、Uniform(Ben Greenberg)、Blanck Mass、J.G.Thirlwell(Foetusのフロントマン)、Bill Kouligasといった全8アーティストによるリミックスを収録。bandcampやiTunesなどでの配信のほか、限定LP盤もあります。

http://www.sacredbonesrecords.com/collections/frontpage/products/sbr139-john-carpenter-lost-themes-remixed
https://itunes.apple.com/jp/album/lost-themes-remixed/id1045923560






https://www.facebook.com/directorjohncarpenter


コンポーザーとしてのジョン・カーペンターのエッセンスが凝縮された、初のソロアルバム― John Carpenter『Lost Themes』(2015)

受け継がれる音楽的遺伝子。ジョン・カーペンターの息子コディ率いるプログレッシヴ・ロック・バンド ― Ludrium『Zeal』(2012)

ゲーム音楽、フュージョン、プログレの折衷をより推し進めた、コディ・カーペンターの二作目 ― Ludrium『Pleasure of a False Past』(2015)

2015年10月1日木曜日

鉄壁の布陣で送り出される、米国産プログレッシヴ・メタルの大型新人 Earthsideが10月23日デビュー




 自ら“Cinematic Rock”を標榜する、アメリカはニューイングランドを拠点とした新鋭プログレッシヴ・メタル・バンド Earthsideのデビューアルバム『A Dream In Static』が10月23日にリリースされます。現在のところ選任ヴォーカルのいない四人組のインストゥルメンタルバンドながら、ゲストヴォーカリストとしてSOILWORKのビョーン・ストリッド、SEVENDUSTのラジョン・ウィザースプーン、元SKYHARBOR、現TesseracTのダニエル・トムキンス、Face The Kingのエリック・ジーリンガーが迎えられているという、強力なゲスト陣で構成されています。また、プロデュース/エンジニアはOpethやKatatoniaなどを手がけてきたデヴィッド・カスティロ、マスタリング/ミキシングは名だたるバンドを数多く送り出したイェンス・ボグレンの二人で、サウンドプロダクション面のお膳立てもバッチリ。先ごろ、アルバム冒頭を飾るインストゥルメンタル"The Closest I've Come"のオーディオサンプルと、SEVENDUSTのラジョンとモスクワスタジオ交響楽団をフィーチャーした10分の大曲"Mob Mentality"のPVが先行公開されておりますが、その堂々たる風格は新人バンド離れしたものがあります。







A Dream in Static
A Dream in Static
posted with amazlet at 15.10.09
Bushwhack LLC (2015-10-23)





http://earthsideband.com/
https://www.facebook.com/EarthsideMusic