2015年5月2日土曜日

ゲーム音楽、フュージョン、プログレの折衷をより推し進めた、コディ・カーペンターの二作目 ― Ludrium『Pleasure of a False Past』(2015)



 コンポーザー/ミュージシャンであり、近年は父であるジョン・カーペンターの右腕的存在としても腕をふるう若き才能 コディ・カーペンターが主導するプログレッシヴ・ロック・ユニット Ludrium。2012年にリリースされたデビューアルバム『Zeal』から、約二年半ぶりとなる新作フルアルバムが先ごろリリースされました。今回も全曲の作曲とほとんどの演奏はコディによるものです。また、"Constellation" "Savior Dance"の二曲にベースで参加しているJason Choは、日本に仕事で長期滞在していた時期に現地で編成したバンドのメンバーであった人物。そして"Constellation"は、日本滞在中のライヴで披露された楽曲でもあるのです。



2014年6月にアンスティチュ・フランセ(仏語学校)のコンサートで"Constellation"を演奏した際の映像。演奏メンバーは、Cody Carpenter(kbd), David Rambeau(g), Jason Cho(b), 印南俊太郎(ds)の四名。それぞれ出身がアメリカ、フランス、カナダ、日本ということで、多国籍バンドでもあったわけです。

 前作がプログレッシヴ・ロックを柱に、フュージョンやゲーム・ミュージックのテイストを盛り込んだインストゥルメンタル作品だとすれば、本作はゲーム・ミュージックを柱に、プログレやフュージョン、エレクトロのテイストを盛り込んだ方向性になっていると言えます。構成もコンパクトにまとまっており、エレクトロなバッキングに奔放なギターソロがのる"Spaceport 30"や、ライトなフュージョン調の"Touch" "Longing for Angels"、ネオプログレな"Gyrocopter Love"のほか、村のイメージを想起させる牧歌的でささやかな小品"Tales"や、広大なフィールドを感じさせるテーマ"Thanks for Playing"など、そのままRPG作品に使ってもなんら遜色のない楽曲も見受けられます。彼はYouTubeでは「F-ZERO」「アクスレイ」「ストライダー飛竜」などの楽曲をカヴァー/アレンジして投稿しているのですが、そちらの活動に寄った内容とも言えますね。いずれにしても、少し古めかしさを感じるメロディアスなサウンドのたたずまいは依然として80年代のそれです。"Neon Sludge" "Tracker"は、彼の80年代シンセサイザー・ミュージックへの愛が滲む楽曲。もちろんそこには、父であるジョンの影響もあるでしょう。ここ数年、盛り上がりを見せているシンセウェイヴ・シーンとも合流した感もあります。

https://www.facebook.com/ludrium

Cody Carpenter - YouTube Channel
Cody Carpenter - soundcloud

Interview: Cody Carpenter - NEONVICE
 今年の3月に行われたコディへのインタビュー記事。GENESISやEmerson Lake&Palmer、「トランスフォーマー:ザ・ムービー」のコンポーザーであるヴィンス・ディコーラから多大な影響を受けているということ。Dixie Dregs/スティーヴ・モーズやLevel 42を愛聴していること。幼少のころからファミコン、スーパーファミコン、メガドライブ、アーケードゲームなどに親しんでいたこともあって、ゲーム・ミュージックからの影響も非常に大きいということ。また、父であるジョンのソロアルバム『Lost Themes』の制作に参加した際のことなど、色々と興味深い話が述べられています。

Cody Carpenter - IMDb
Ludrium『Zeal』(2012)

John Carpenter『Lost Themes』(2015)
John Carpenter: 新たな世界 - Resident Advisor