2011/10/23

M3-2011秋にて頒布される「同人音楽.book 2011 Autumn」に寄稿させていただきました。

 そういえば、このブログで告知の類を行うのは初めてだなあと思いつつ、告知。10月30日(日)に、東京流通センター(TRC)で行われる同人音楽即売会「M3-2011秋」にて頒布される、「同人音楽同好会」さんの「同人音楽.book -2011 Autumn-」に、コラム(「月読レコード・ディスクガイド」)や個人的オススメ同人音楽十選で計7ページほど寄稿させていただきました。その他にも多数の寄稿者さんやサークルさんが参加されており、コラムや企画、ライヴ・レポートなど、トータル100ページ越えの濃厚なヴォリュームの冊子に、60サークル参加の試聴DVDがセットで付いた、質・量共に充実の内容になっております。こりゃ凄いですよ。

「同人音楽.book -2011 Autumn-」

 http://www.doujin-ongaku.org/2011au/

L10ab「同人音楽同好会」にて頒布しておりますので、よろしければ是非お手にとってみてください。

2011/10/15

ストロベリーソングオーケストラ『鏡町にて』(2003)


https://itunes.apple.com/jp/album/jing-tingnite-liu-dao-pan/id463974709

  大阪の見世物パンク一座 ストロベリーソングオーケストラの1stアルバム。寺山修司や丸尾末広などの影響色濃い世界観に、J・A・シーザー、人間椅子、犬神サーカス団などの持つ暗黒性や猟奇性、不条理トラウマなどの美味しいところを全て持ち合わせたアングラハードロックを展開。また、ヴォーカル兼座長の宮悪戦車氏のドスの効いた声質と吐き捨てるような歌い回しが奇しくもオーケンのソレに非常に近いためか、曲によっては初期筋肉少女帯っぽくも感じます。いやらしく含み笑いでもカマしてるかのようなゲテモノぶりがテンポの良さと相まってクセになるヘヴィロックナンバー「電波大サーカス」。穴あき包丁とアナーキー包丁をかけた猟奇ユーモアが光る「包丁ロマンス」。"生まれてきたこと自体親不孝"と執拗にリフレインするJ・A・シーザー系恨み節「親不孝怨歌」。暗喩&風刺を凝らした長尺演劇ハードロック「電気蟲」など、いずれも演劇的趣向とシンクロしてドスの効いたおどろおどろしさを演出。また、詞の殆どがぐるぐるで埋め尽くされた文字通り電波ぐるぐるなハードコア唱歌「デンパ」。タモリの料理番組ネタのような展開をドロドロした趣向でコーティングした「時計を看病する女の飼い方」。清楚な詞、リズム隊とヴォーカルの淡々とした展開が最終的に阿鼻叫喚のノイズ空間と化す理不尽大全開の「ハナ」では、元々ノイズ/ハードコアバンドをやっていたというメンバーの嗜好が所々でこれでもかと伺えます。とにかく様々なアングラ方面へのオマージュを感じさせる何でもアリな大所帯バンドというのが魅力的。長らく廃盤状態でしたが、先ごろめでたくダウンロード販売で再発。『鏡町にて~六道盤』と銘打たれており、旧盤収録の7曲に加え、「赤い蝶」「走るという行為を改めて見直す提議、走レ!」「彼岸花」の3曲が追加収録されております。


ストロベリーソングオーケストラ:公式
ストロベリーソングオーケストラ:Wikipedia

2011/09/20

「ファンタジー・ロック・フェス」 2011 9/18(日) @川崎クラブチッタ ライヴレポート



 久々のライヴレポート、久々のブログ更新。私も行ってきましたよ。ゲーム・ミュージックとプログレッシヴ・ロックの繋がりを前々からずっと追求している自分にとっては夢のようなフェスです。震災による公演延期もあったとはいえ、無事に開催されたことを嬉しく思います。全4アーティスト、トータル約4時間ちょっと、たっぷり堪能いたしました。第2回、第3回と、今後も是非続いていって欲しいフェスですね。  

  

●黒沢ダイスケ PROGRESSIVE BAND
 オープニング・アクトは、コナミのBEMANIシリーズへの楽曲提供で知られ、また自身が率いるプログレッシヴ・メタル・バンド「軌道共鳴」のギタリストでもある黒沢ダイスケ氏率いるバンド。ラインナップも、上田哲也(b)、藤田良介(key)、渡部正人(dr)と、近年の軌道共鳴ライヴメンバーでした。かねてからアナウンスされていた通り、1曲目はKING CRIMSONの「RED」のカヴァーでまずはドカンと一発。黒沢氏曰く「NIACIN(ビリー・シーン率いるインスト・トリオ)のカヴァー・ヴァージョンに自分たちのカラーを加えた」アレンジということで、渡部氏によるバキバキのドラムスと疾走感も交え、ヘヴィ・プログレを通り越して圧殺メタルと化したサウンドでした。続いて、ギターフリークス/ドラムマニアに黒沢氏が提供した、氏を代表する1曲である「恐怖の右脳改革」。若干、ギターやキーボードのフレーズが聴こえづらい場面もあったものの、スリリングな爽快感に溢れるスピーディーなプログレッシヴ・メタル・チューンとしてやはり素晴らしい楽曲であります。3曲目は、近年のライヴでも何度もプレイされている、上田氏のペンによる「Agharta」。ゲーム・ミュージックのキャッチーさと、90年代以降のアメリカン・プログレ・メタル(MAGNA CARTAレーベルあたりの)を思わせる構成が合わさったような力作です。ラストは、小野秀幸氏がギターフリークス/ドラムマニアに提供した「Over there」のカヴァー。弾きまくりのギターが映える、メロウなプログレッシヴ・フュージョン・ナンバーで綺麗にシメ。国産プログレ・メタル・バンドのフロントマンとしても、プログレ寄りのゲーム・ミュージック・コンポーザーとしても、今後の黒沢氏の活動に大いに期待したいですね。  


●遊佐未森
 2番手は、日本の幻想系ポップスを代表する存在の一人と言っても過言ではない遊佐未森さん。岩本晃市郎氏のMCによると、フェスの企画時から遊佐さんの出演は構想にあったということで、早くから打診していたそうですが、当初予定されていた3月の公演には彼女のスケジュールの関係で参加できなかったそうです。しかしながら震災の影響によりフェスが延期となったことで、改めて出演の運びとなったとのこと。遊佐さんが敬愛するケイト・ブッシュのカヴァーを3曲(「Moving」「少年の瞳を持った男」「嵐が丘」)と、オリジナルを3曲(「潮見表」「ROKA」「Tell Me Why」)披露されました。個人的に、5拍子が印象的な名曲「ROKA」が演奏されたのは非常に嬉しかったです。また、身振りも交え思い入れたっぷりに歌い上げられるケイトのカヴァーの中でも、ラストの「嵐が丘」での熱唱は、今なおこの曲に魅了されてやまない者としてはグッとくることこの上なかったです。また、バックバンドが今堀恒雄(g)、中原信雄(b)、BaNaNa-UG(key)、佐野康夫(dr)というラインナップだったということも見逃せないポイントでしょう。今回のフェスのための特別編成というのもうなづける、ハンパじゃないメンツです。言うまでもなく、安定感と安心感は折り紙つきでありました。  


●桜庭統トリオ
 そして、今回のフェスのメイン・イベンターの一角である桜庭トリオが登場。三方を鍵盤類で固めたセッティングも存在感十分です。過去の3度のライヴでプレイしていた長谷川敦氏(GERARD~Sound Horizon)は今回参加されておらず、代役として、セッション・ベーシストの のまぐちひろし氏がプレイ。赤いスーツで決めた貴公子風ルックスののまぐち氏は、トリオのヴィジュアル面も担当していました。ドラムスはおなじみの中村俊彦氏。鋭く手数で攻める中村氏のドラム、エフェクトを多用しつつもヘヴィなベースを刻むのまぐち氏、そしてとにかく鍵盤類を弾き倒し、押しに押しまくる桜庭氏と、三者三様のプレイで魅せてくれます。各パートの長いソロ・タイムもあり、技巧派キーボード・トリオという面を存分にアピールしていました。会場限定で販売された桜庭氏のミニアルバム『After All...』からの楽曲を中心としたセットリストということで、初めて聴く楽曲が続いたのですが、やはりDEJA-VU時代から氏の作風にはブレがないですね。時にGERARDを凌ぐかと思えるほどの高いテンションはもちろん、テクニカルながらもキャッチーな落としどころがあるというのが桜庭サウンドの大きな魅力だと改めて感じました。ラストはトライエース作品から人気の高い2曲「未確認神闘シンドローム」と「The Incantation Of Devel」を続けて披露。終始最高潮のテンションで駆け抜けたパフォーマンスに、ただただ圧倒されました。  


●植松伸夫/EARTHBOUND PAPAS
 トリは御大 植松氏率いるEARTHBOUND PAPAS。ステージ左から、魔道士ルックスでキメた植松伸夫(key)、弘田佳孝(b)、羽入田新(dr)、岡宮道生(g)、成田勤(kbd/g)のバンドメンバーに加え、アルバムでもコーラスを担当したCHiCO、馬場宏美、佐々井康雄、木村圭児の4人も参加し、1stアルバムの楽曲をほぼ全曲プレイ。YESの「Changes」を思わせる変拍子フレーズが印象的なオリジナル曲「Metal Hypnotized」では2人のベリー・ダンサーがステージに登場したり、森林化計画のテーマソングとして提供した「Forest Of Thousand Years」では、アルバムでNip-Nop語のモノローグを担当されていたエミ・エヴァンスさんがチェロで参加するなど、ライヴならではの趣向も。何よりメンバーの皆さんがスキあらばしきりに観客を煽るので、盛り上がる場面も多々あり、エンターテインメントな面でも魅せる内容でした。アルバムだとやや物足りなかった「Liberi Fatali」や「One Winged Angel」は、ライヴだと結構印象変わるもんだなあと。そして「Eternity」はライヴでもやっぱり凄かった!ARK STORMなど、数々のメタル・バンドやセッションに参加する生粋のメタル・シンガーである佐々井氏のシャウトとハイトーンはライヴでますますパワフルに増幅され、抜群のインパクトを誇っておりました。気になるカヴァー曲はQUEENの「Bohemian Rhapsody」。楽曲の知名度はもちろんですが、4人のコーラス隊を含んだ編成と、ハイトーン・ヴォーカリストの佐々井氏の存在を活かすという点でも、なるほど納得の選曲です。アンコール曲は、THE BLACK MAGESが2ndアルバムでカヴァーした「Maybe I'm A Lion」。アレンジもTBM版準拠です。この曲のソロパートはやっぱりDEEP PURPLE(というかジョン・ロード)からの影響大だよなあと改めて思ったりしつつ、興奮のうちにライヴは幕を閉じました。

2011/03/30

CMB『Sound Majesty』(2011)



 茅原実里「Key for Defection」ツアーの会場で販売された、彼女のバックバンドCMB(Creative Music Band/Chihara Minori Band)のアルバム。メンバーは須藤賢一(kbd)、岩田ガンタ康彦(dr/per)、山本直哉(b)、加藤大祐(g)、室屋光一郎(vln)の5名、2008~2011年のツアーで演奏されたオリジナル楽曲を中心とした全10曲を新規スタジオ・レコーディングで収めています。アルバムの試聴PVが上がったときから大いに期待していたのですが、いやはや、これは凄い。ここぞと弾きまくり、叩きまくる強靭でパワフルなバンド・アンサンブルの醍醐味が存分に味わえる、ド直球のプログレッシヴなインスト・アルバムであります。ヴァイオリン奏者を擁するプログレ・バンドと言えばイタリアのPFMやアメリカのKANSASが思い浮かびますが、CMBはどちらかというと後者のタイプに近い印象。メンバー全員のプレイが素晴らしいのですが、時に情感豊かに、時にキレ味抜群のプレイでサウンドに一層のメリハリを与える室屋大先生のヴァイオリンは非常に耳を惹きます。

 ハードな疾走感を味わうなら「Shining Mosh」「Soldiers of the Queen」、バンドの一体感を味わうなら「Hot Colosseum」「Sound Majesty」あたりでしょうか。YESの「Changes」EL&P「Black Moon」のパロディ的なフレーズも盛り込まれており、そのあたりもニヤリとできます。中でもこれは!と思ったのが「Open the new century」。ベートーヴェンの第九のフレーズをフィーチャーしたRAINBOWの楽曲「Difficult To Cure」の明らかなオマージュなのですが、バンドがオーケストラ帯同で行った1984年の来日公演ヴァージョンのアレンジを意識したのではないかと思われるダイナミックな仕上がり。終盤ではクワイア・コーラスが入り、大仰な盛り上がりを見せます。「君がくれたあの日-Adult refrain-」「純白サンクチュアリィ-sweet midnight-」の2曲は茅原嬢のアルバム曲のアレンジ・ヴァージョン。こちらもプログレ・テイストを強めたアレンジが施されており、原曲とはまた違ったドラマティックな印象。流通が限られているのが勿体無いとこれほどまでに思ったことはありません。プログレ・リスナーは是非一聴されることをオススメいたします。



【追記】
 『Sound Majesty』は当初会場限定のみでの流通でありましたが、現在はランティス公式通販で入手可能です。また、2012年の3月3日には渋谷O-EASTでCMBの単独ライヴが開催、後にこのライヴの模様を収録したDVDがリリースされました。そして同月にCMBメンバーチェンジが発表され、大幅にラインナップが刷新されました。CMBのプログレ的側面の要を担っていた須藤氏の脱退は特に大きな変化をもたらすのではないかと思われますが、今後の活動に期待ですね。



須藤賢一/菊谷知樹 他
「宇宙をかける少女 O.S.T Vol.1 LEOPARD」「Vol.2 P.O.D.」「BEST Collection」(2009)
須藤賢一WORKS プログレ・パロディ曲聴き比べ

【CMB:Lantis内情報サイト】

2011/03/10

Autumn Moonlight『The Sky Over Your Shoulders』(2010)




 南米のプログレッシヴ/ジャズ・ロック系カタログを多くリリースしているVIAJERO INMOVIL RECORDSより新たに登場した、ギタリストとベーシストのデュオによるアルゼンチン出身のユニット オータム・ムーンライトのデビューアルバム。SIGUR ROSやGod Is An Astronautといったバンドからの音楽的影響を公言しているだけあって、どっぷりと感傷に浸れる、浮遊感たっぷりのメランコリックなポスト・ロック/アンビエント・サウンドを基調としているのですが、このユニットの面白いところは、存外シンフォニック・プログレ的なアプローチも強いところ。

 さざ波や子供達の声など、いかにもな趣向も凝らしつつも、時に惜しげもなくグワッと押しだされるシンフォニックなオーケストレーションの味付けや、オープニングとエンディングにタイトル曲のパート1、パート2をそれぞれ配する趣向に、この人たちの隠し切れないプログレへの愛が伺えます。「Autumn Moonlight Part I」「The Outsider」などは、ハードなエッジも効かせたモダンなメロディック・ロックとしても聴ける曲。イントロから既に最高潮の盛り上がりに達しているシンフォニックなストリングスアレンジをバックに、ギターの乾いたアルペジオや、抜けの良い泣きのトーンを反復させる「Letters To God」や、「The Sky Over Your Shoulders」は、欧州的なウェットなメランコリーを感じさせる楽曲。同様に「T.O.R.」も、ピアノやギターのアコースティックな響きを大切にしつつ、後半では徐々にストリングスアレンジとメロディアスなギターで壮大に盛り上がっていく王道の趣向がたまりません。打ち込みと思われるドラムスの軽さも、心なしかサウンドの方向性にマッチしています。ポスト・ロックの静の面と、シンフォニック・プログレの動の面、両者の美味しい部分を殺すことなくソフトに融合させたこういったユニットが南米から出てきているというのも非常に面白いなと思いつつ、最近のお気に入りアルバムのひとつとして何度もリピートしております。


Autumn Moonlight:bandcamp
Autumn Moonlight:myspace
Autumn Moonlight:Prog Archive

2011/03/03

Barroquejón『Concerning the Quest the Bearer and the Ring』(2003)


 南米チリのマルチ・コンポーザー デヴィッド・ハヌスによる一人シンフォニック・プログレ・プロジェクト:バロックエジョンの1stアルバム。トールキンの「指輪物語」をコンセプトに、デヴィッド氏が全楽器&コーラスを一人で担当して作り上げた作品で、彼のマルチな才能を存分に発揮したトータルアルバム。管弦楽器類を前面に出した、ほぼギターレスのシンフォニックなアンサンブルと、迫るようなテンションの高さをひしひしと感じさせる多重クワイアコーラス、トラディショナルなメロディを織り込みつつ、息をつかせずに押しまくる楽曲は耳を惹くことこの上なく、そのドラマティックな作風は、さながらストーリーテリング的な方向性を打ち出していた『Nightfall In The Middle Earth』の頃のBLIND GUARDIANと、QUEEN直系の多重録音コーラスと溢れんばかりの瑞々しいセンスを巧みに絡めて楽曲を彩っていた『GAIA』の頃のヴァレンシアを髣髴とさせられます。若干打ち込み臭さが抜けない部分や、やや一本調子な楽曲展開など、少々パンチに欠ける面や荒削りな面もありますが、それを補って余りある魅力と才気に溢れており、ファンタジックなサウンドトラック作品と考えれば申し分ない内容です。

 本作発表後、2ndアルバム『Songs For Her』をリリースするというアナウンスがあったのですが、制作途中でデヴィッド氏が急性白血病であることが発覚。治療に専念するために、『Songs For Her』のリリースは頓挫となります。その後、長期に渡って闘病生活を続けたものの、2009年2月9日に若くしてこの世を去られてしまいました。享年29歳。彼が制作に着手していたというアルバム『Soundtrack To My End』は、『Songs For Her』の楽曲も収められる予定だったのですが、未完となってしまいました。訃報に際し、デヴィッド氏と親交のあったフランスのエピック・メタル・バンド FAIRYLANDのフロントマンであるフィリップ・ジョルダノ氏は、追悼のコメントを寄せておりました。BarroquejonとFAIRYLAND、両者の作風には相通ずるところが非常に多かっただけに、盟友とも呼べるデヴィッド氏の急逝を知ったフィリップ氏の心中は察するに余りあります。今後の成長ぶりを期待させてやまない音楽性を展開していた人だっただけに、あまりにも残念でなりません。改めて、哀悼の意を表します。


未完のアルバム『Songs For Her』『Soundtrack To My End』に収録される予定だった楽曲。


デヴィッド氏もメンバーとして在籍していたチリのメロディック・ポップ・ロック・バンド:Lo que Queriaのライヴ映像。中央のスキンヘッドの人物が彼。

Barroquejon:MySpace

2011/03/02

Jinetes Negros『Omniem』(2007)



 ANIMAのキーボーディスト オクタヴィオ・スタムポラを中心としたアルゼンチンの5人組プログレッシヴ・ロック・バンド ジネテス・ネグロスの3rdアルバム。クラシカルなオーケストレイションや混声コーラスのハーモニー、フルートやヴァイオリンなどのアコースティック楽器を生かしたミドルテンポのメロディアスな楽曲が多く、ゆったりとした流れのアルバムの構成ながらも、しっかりアイデアを盛り込んで最後まで厚みを持たせたつくりは思わず愛着すら沸いてしまうほど好感が持てます。個々の楽曲は大作志向というわけでもないのですが、アルバムのスケール感は大きいですし、幅の広さも感じさせます。「La Gesta Del Poder」「El Canto Del Noctambulo」などのしっとりと哀愁を帯びたバラード曲にはスペイン語ヴォーカルの熱をたっぷり孕んだ濃密さが映えるので、AORとしての魅力も見出せそうかも。どこか懐かしさを覚える勇壮なイントロで幕開けする「Epico」や、メロディアスなハード・ロック「Dieciseis Lirios De Eternidad」「La Bestia」、イントロから一転してハードなアンサンブルがクワイアコーラスと一体になって超ハイテンションに疾走する「Pagaras Por Mi」など、壮大/ハードな側面もしっかり備えております。ブラジルのSAGRADO CORACAO DA TERRAやイタリアのNEW TROLLSあたりにも通ずるシンフォニックさ、植松伸夫・桜庭統あたりのシンフォニック・プログレ寄りなゲームミュージックっぽさも感じられたりするので、そういった手合いにもオススメではないかと。Mellow Recordsの新鋭バンドカタログの中でもかなりイイ線を行ってるバンドのひとつだと個人的に思います。アルゼンチンあなどり難し。


Jinetes Negros:Myspace
Jinetes Negros:公式

2011/02/18

ガールズ プログレッシヴ・ロック・バンド VELVET PΛW (ベルベット・パウ)の軌跡



 80年代初頭から90年代中ごろにかけて活動していたレディース・ロック・バンド:ベルベット・パウ。彼女達がアルバムデビューした頃は活動時期的に国内でバンドブーム、ガールズバンドブームの時期にもあたり、彼女達もそんな追い風を受けてのデビューだったようですが、メンバー全員の確かなテクニックと、アメリカン・プログレ・ハードに近い質感を持った歌モノサウンド(各メンバーがTOTOやJOUNRNEY、VAN HALEN、ASIAといったAOR系バンドを一様に好んでいたのがやはり大きいと見えます)は凡百のガールズバンドとは一線を画しており、当時としてもかなり異質な存在だったのではないでしょうか。80年代の活動初期ごろに彼女達が対バンしていたバンドに、関西プログレハードの雄:スターレスや、泉陸奥彦氏が在籍していたアヴァンギャルド・ジャズ・ロックバンド:KENNEDY、そしてルーシェル、ロザリア、などがいたというのも頷けるというもの。



「VELVET PΛW」(1989)
 88年にレディースロックコンテストで入賞、その勢いを受けてレコード会社との契約が決まり、翌年にCBS/SONYより発表されたデビュー1作目『VELVET PΛW』。バンドのセルフプロデュースのもと、TOTOやJOURNEYを志向したプログレハードテイストと、やや泥臭めのハードロックテイストのバランスを取りつつ、一方ではJOURNEYやTM NETWORKを思わせる「Aim Of Lover」のようなわかりやすい楽曲も織り交ぜています。また、「Cynthia」「Everyday」といったミドルテンポの楽曲展開・構成には、デビュー作とは思えない貫禄と土台の揺ぎ無さを強く感じます。爽やかに乾いたギターがドライヴし、キーボードが鮮やかに味付けするラスト曲「LONG WAY OUT」は次作への布石も兼ねているような仕上がり。





「SIGN」(1990)
 2ndアルバム。バンドのカタログの中でも最もプログレハード度が高まった作品であると個人的に思います。やや暗めのトーンだった前作とは一転して、本作では明るめの方向性に。コーラスワークも前に出てき始めており、各楽曲のキャラの立ち具合もより明確に。そして元マライアの笹路正徳氏、土方隆行氏の両氏がアルバム・プロデュースを手がけられているところもポイント。ハードかつ骨太なサウンド作りにおいてはこれ以上ないほどに心強い人材はないです。以降、バンドと両氏との製作体制は最終作まで続きます。躍動的なオープニング「Changes」、シニカルな詞にグニグニとトリッキーな動きを見せるベースの明瞭さが気持ちの良い「Sorry Mother」「T.V.Game」の他、キーボードの活躍ぶりも増え、空間的なバラード「空を見ていた」や、ファンキーなAOR「Love Commission」「Giving It Up」といった一味違った楽曲もあり、ポップサイドの楽曲の充実振りにバンドの良好なコンディションが伺えます。また、プログレサイドにあたる楽曲が強烈。中でも1分半分近いイントロから、捻りと変拍子を加えた疾走感溢れる展開とバシっと決まるサビにシビれる「Say You've Got the Sign」はアルバムのハイライトと呼ぶにふさわしい。また、6分弱のちょっとした大曲「Soaler」はキーボードをフィーチャーしまくったシンフォニック・プログレ曲で、途中のキーボードソロは白眉。この曲で堂々たる〆となるのもお見事。キャッチーだけども一筋縄ではいかない彼女らのプログレ・ハード・サウンドがここで確立。





「Desire」(1991)
 90年代には聖飢魔IIやアースシェイカーといったメタル/ハードロックバンドとの対バンも行い、特に聖飢魔IIの面々との親交は深かったようで、共にメディア出演などもしていた模様。そういったことも影響したのか、はたまたレコード会社からの方向転換要請なのか、91年発表のこの3rdアルバムではハードロックへのアプローチがグっと強まっており、SHOW-YAばりのパワフルさを発揮。肉感的なタイトル曲「ディザイアー」を皮切りに、ソリッドかつタイトなサウンドが全開。特にシングルカットされた「太陽をつれて」は"勝負に出た"という勢いを感じさせるフレッシュ極まりない痛快なハードポップ曲で、北欧のバンドがやっていてもおかしくない仕上がり。反面、プログレっぽさは「Beat That Paranoid」「Sail On」で味付け的にとどまっているという程度になり、また「プラスチック・ガール」や「夏の終わり」など、楽曲の傾向がポップスに寄り始めてやや没個性気味というか丸くなってきたというのも感じます。「Peeping Tom」「私の中の彼女」の2曲の作詞に森雪之丞が参加しているのも、よりキャッチーな方向性にという"テコ入れ"的な意図があったのでしょうかね。




「目覚めるまで」(1992)
 前作を最後にギターの高橋洋子嬢が脱退し、後任に伊東憂紀嬢を迎えて制作、バンドにとって最終作となった4thアルバム。今作には笹路&土方のコンビに加え、坂井紀雄氏もプロデュースに参加(ちなみに笹路、土方、坂井の3人は元NAZCAのメンバー)。前作のハードロック/ポップス路線にさらなる磨きをかけたという仕上がりで、1stの頃と比べると大分方向転換してしまいましたが、元々土台がしっかりしているため依然として骨太なサウンドが健在なのは流石というほかないです。前作ではやや散漫なせいか少々ジレンマめいたものも感じてしまいましたが、本作ではしっかり筋が通っていて、ストレートな威勢の良さを感じさせるのが嬉しい。シングルカットされた「目覚めるまで」はもちろん、「その瞳のポラロイド」「こんな悲しいしあわせを」でのエッジの効いたリフとキャッチーなサビは、アルバムタイトルではないですが目が覚めるようであります。しばらくナリを潜め気味だったキーボードの迸る様な出音も実にパワフル。本作発表後、93年にキーボードの増田友希江嬢が脱退、95年3月に活動休止を発表し、バンドは14年間の活動に幕を閉じることになります。



The record of VELVET PΛW
ガールズバンド:Wikipedia

 バンドのフロントマンでありドラムスを担当していた桐生千弘氏は、バンド解散後はコンポーザー/アレンジャーとして、他アーティスト(ともさかりえ、奥菜恵、カルメン・マキetc)への楽曲提供やCM・アニメ劇伴作曲などの活動をされていたようです(笹路氏と共に仕事をされていることが割と多かった模様)。Wガンダム、名犬ラッシー、カードキャプターさくらなどの主題歌/キャラクターソングの一部で彼女の名前を見ることができます。特に、WガンダムのキャラクターソングはVELVET PAWの頃の作風を伺わせる部分もあり、興味深いです。
http://camelletgo.blogspot.com/2014/01/exvelvet-paw-works.html




2011/01/21

Erotic Beast Kingdom『受胎告知』(2010)

受胎告知
受胎告知
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Erotic Beast Kingdom

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 野獣王国ならぬ淫獣王国。"デッドボールP"こと槙タケポン氏と、"馬鹿の極み"こと上松翔一氏の5/4TAKEPODのメンバー二人も在籍するスーパーモテ系バンド エロティック・ビースト・キングダムのデビューアルバム。ボーカロイドに数多くのキワドイ曲を歌わせまくっているデPですが、こちらではそれ以上に遠慮なく全てを曝け出しております。ロハスはロハスでも"L(ロリコン)、O(おっさん)、H(変態)、A(アナル)、S(セックス)"の略という1曲目の疾走チューン「LOHAS」からしていきなり全壊度高し。Yes Lolita,No Touch. ……かと思えば、「インフィニティマタニティ」は、アダルティーなR&B調の曲調でもって"セックスなしで孕ませる方法"を説く、月とスッポンなギャップが凄まじい1曲。しかしこれがあんまり下世話に聴こえないあたり、実にマジカル。

 隣のマンションに住んでる神様がパンティやらブラジャーやらを干したり真夜中にセックスをキメまくっているというただそれだけの内容を、ヴォーカルのキング柳氏がやたら気合の入ったシャウトで歌い上げるアツいハード・ロック・チューン「ゴッドパンティ」。DRAGONFORCEばりにテンションの高いイントロが炸裂する「森ガール」は、もりのくまさんが森ガールとガンガンガンガンセックスするサビは一度聴いたら耳から離れないのは必至。ギターのカッティングも爽やかなシティ・ポップ/AOR風味の曲調で、高らかにオナニーライフを歌い上げる「Shadow View Tail」は、曲調に反比例して最低なサビの空耳が秀逸。「Shadow view tail.Have a time to nice day」をルーズに10回以上口ずさめば自ずと答えは見えてくると言うもの。個人的には聴いていて思わず米米CLUBの名(迷)曲「DEEP IN YOUR NICE BODY」を彷彿とさせた次第です。

 「栗とリス」はもうこのタイトルの時点で全てを物語っている1曲。ひたすら朗々と「栗」と「リス」を連呼し続ける上に、サビではゴージャスなコーラスで壮大に盛り上がるのも微笑ましい、エンディングに相応しい趣向の1曲。後半6曲は前半収録曲のリミックス・ヴァージョン(2曲)やライヴ・ヴァージョン(4曲)を収録。"マキシマムどぴゅどぴゅremix"と銘打たれた、ハウス調のアレンジの「Shadow View Tale」。しっとりしたハウス調アレンジのどこがどぴゅどぴゅなのかしらんと思っていたが、Shadow View Taleの「Sha」のヴォーカル部分だけぶった切ってひたすら「射」「射」と連呼させているので、なるほどこれがどぴゅどぴゅなのか! と勝手に推測を立ててみる次第。歯は立てないで。

 そして"せめて週3remix"と銘打たれた「ゴッドパンティ」は、非常にテンションの高いキーボードプログレアレンジになっていたりするあたり流石としか言いようがありません。いやはや、全力でバカをやるクオリティの高いコミックバンドであります。米米CLUBや爆風スランプ、巨乳まんだら王国と同じニオイがするというか、これらのバンドが好きなら間違いなく琴線に触れるものがあるんじゃないでしょうか。曲調は幅広く、歌詞は下ネタという芸風もガッツリと確立されてますし、なるほど聴くと妊娠するというのもあながち間違ってないなーという感慨を得るに至るのでした。良い意味で頭の悪いアルバム、素晴らしい。しかしながら、当ブログの2011年最初のレビューがこんなんでいいのかと。いや、これでいいのだ。


Erotic Beast Kingdom:公式
「受胎告知」:試聴