2013/12/31

2013年を振り返る~個人的に印象に残った二十冊

今年はあまり時間をかけてじっくりと本を読めなかったなあという思いが強いのですが、それでも何とか20冊挙げられることが出来たので、ひとまずよしとします。
---------------------------------------------------
---------------------------------------------------
セックスの哀しみ (白水uブックス173 海外小説の誘惑)セックスの哀しみ (白水uブックス173 海外小説の誘惑)
(2008/10/17)
バリー・ユアグロー

商品詳細を見る

複雑な感情も滲み出た、男女の様々な恋愛模様を、奇想と官能にくるんで連ねて90編収録。恋をすると口から薔薇の花びらや香水壜を吐き出す男、女性に金を払って彼女たちの気を悪くさせる事をやらせてもらう男、食人種の女、キスのたびに花が一輪生える女…などが出てくる珍妙な短編集として読んでも十二分に楽しめるし、曖昧だけどどこか統一感のある書き口のせいか、<語り手(私)の奇妙な恋愛遍歴>という連作短編集としても読めてしまうのがまた面白い。たまに顔を出す静かで豊かなイメージを湛えた描写もよくて、とてもツボをくすぐられた。街に逃げ出した女性器を「私」がエロティックになだめる『楡』。恋する度に対象の女性(男性)に似た姿で女装(男装)をしてしまう男女のやりとり『人相』。<好きな女の子の前でいいところを見せようとして痛い目に遭う>という一連の流れはある意味エクストリーム・スポーツといっていいかもしれないな…と思わされる『アクロバットたち』。こういう手合いの話が肌に合うなら、是非。

---------------------------------------------------

発明超人ニコラ・テスラ (ちくま文庫)発明超人ニコラ・テスラ (ちくま文庫)
(1997/03)
新戸 雅章

商品詳細を見る

不世出の天才にして不遇の科学者、伝説と狂気と謎をもって今なお語られるニコラ・テスラの生涯を、膨大な資料を基に1冊にまとめた伝記。早熟ぶりを示す幼少期、エジソンとの出会いと訣別、栄光と凋落など、そのエピソードは枚挙に暇がない。憂鬱な少年時代に読んだマーク・トウェインの著作に深く感銘を受けて、二十数年後にアメリカの地でトウェインと対面してからは両者の親交が終生に渡って続いていくというエピソードが特に良い(テスラのその少年期のエピソードをある日聞かされたトウェインは号泣したとか)。また、"アメリカSFの父"としても知られるヒューゴー・ガーンズバックはテスラの信奉者で、1910年代に創刊した雑誌『エレクトリカル・エクスペリメンター』にはテスラの論文や自伝的エッセイが載っている。あの商業SF誌『アメージング・ストーリーズ』が創刊される少し前の話である。1943年にテスラが86歳で亡くなったとき、真っ先にデスマスクを取る手配をしたのもガーンズバックで、そのデスマスクは彫像となってオフィスに飾られたとか。また、"日本SFの父"海野十三は電気工学者でもあったので、ニコラ・テスラの研究・業績は理解しており、蜆貝介のペンネームで1925年ごろに『無線と実験』誌に執筆した「無線恩人行脚」という記事の中にテスラを紹介していたそうな。このような黎明期SFとの関わりも含めて、のめりこみました。同じく新戸氏の著である『バベッジのコンピュータ』と共に、スチームパンカー必読の書。刊行されてから15年以上経っており、既に絶版ではありますが、一気読み不可避の評伝本であります。

---------------------------------------------------

アラビアン・ナイトと日本人アラビアン・ナイトと日本人
(2012/09/28)
杉田 英明

商品詳細を見る

『千夜一夜物語』の日本への影響・受容を多層的に解き明かす、弩級の文化比較研究本。物語が初めて日本国内に紹介された明治から、戦前・戦後、近代へと時代の流れを辿りつつ、数々の翻訳・異本への言及や、欧米・日本文学における影響、文芸批評、映画・演劇などへの影響など、各時代の大小様々な情報も併せて網羅。興味のある章から拾い読みで攻めるもよし、情報の大海に身を任せるもよし、楽しみ方はいくつもあります。ちなみに、明治初期に日本で翻訳されたときの邦題は『開巻驚奇・暴夜物語』。アラビヤに<暴夜>の二文字を当てたセンスは今なお色褪せないものがあるなあと思いました。 また、明治の終わりごろ、女性に向けた訓話として『烈女之名誉』なる「アリババと四十人の盗賊」の翻訳本が刊行されたというのも興味深い。「烈女 孟慈那の機知と聡明さを、婦女子の方々は是非とも規範としてほしい」的なコンセプトの元、本編に登場する侍女モルジアナの言行をフィーチャーした1冊であったそうなのだが、これって今で言ったらハウツー本そのものだよなあと。

---------------------------------------------------

中東欧音楽の回路―ロマ・クレズマー・20世紀の前衛中東欧音楽の回路―ロマ・クレズマー・20世紀の前衛
(2009/03/26)
伊東 信宏

商品詳細を見る

ジプシーのロマやユダヤのクレズマーをはじめ、ロシア、ルーマニア、ハンガリーといった東欧の民族音楽/民俗音楽を雑多に読み込んでいく1冊(CD付き)。ストラヴィンスキー、コダーイやリゲティ、バルトークといった作曲家たちが民俗音楽からどのように影響を受け、またはどう関わりを持っていたかということや、シャガールの絵画に見るユダヤ性、レハールのオペレッタ『ジプシーの恋』に見る心性、ミラン・クンデラの処女作『冗談』が、その翻弄の物語の中に書き出した民俗音楽の相対化など、各章は主に周縁からの視点でもって展開されている。ブルガリアでは民俗音楽をポップにアレンジして女性歌手に歌わせた「チャルガ(Chalga)」というジャンルの歌謡曲が人気であるというくだりは個人的に興味深い章であり、また収穫でもありました。付属CDには収録されていないのだけども、YouTubeで検索するとすぐに聴くことが出来る。色気たっぷりのグラマラスな女性が扇情的な詞を歌っていて、パッケージも殆どエロ写真に近い過激さという、非常にいかがわしくて刺激的な魅力のある音楽。土着の文化がその様相を大いに変えながらも大衆文化として息づいていくというのは面白い流れだなと感じました。

---------------------------------------------------

傍迷惑な人々: サーバー短編集 (光文社古典新訳文庫)傍迷惑な人々: サーバー短編集 (光文社古典新訳文庫)
(2012/08/08)
ジェイムズ サーバー

商品詳細を見る

「どこかズレてるヘンな人」を軽妙なタッチで書いたユーモア短篇&エッセイ集。損得勘定の出来ない伯母さん、流言で一目散に東へ逃げ出す人々、悪気はないが人の話の腰を折ってしまう娘、いい加減な己の妄想で語り合う二人…近くに居たら頭を抱えることウケアイだが、そんな人々の振る舞いをキツく咎め立てているわけではなく、「こういう人もいましてねぇ」とあくまで語り口はソフトである。若干の苦味を伴った、しがらみのあるユーモアという印象。ゆえにブラックユーモアとは一線を画する。読んでるうちにその魅力に病み付きになってしまった。 巻末解説でもあったけど、今だとこれらの「傍迷惑な人々」はたやすく病人のレッテルを貼られてしまいそうである。ちょいと時勢の世知辛さを感じてしまった。ところで、サーバー氏の人間観察力は自分自身に対しても発揮されており、絶望的な機械オンチぶりや、ラジオ番組出演に際してのテンパりぶりなどを書いたエッセイ的小品もまた絶品の面白さ。でも、右往左往している様を読むにつけ、何だか身につまされてしまう。運転免許更新制度の融通の利かなさに対して、どう仕返してやろうかとイケナイ想像を膨らませて愉しむ話も凄く親近感が沸く。

---------------------------------------------------

魔婦の足跡―昭和ミステリ秘宝 (扶桑社文庫)魔婦の足跡―昭和ミステリ秘宝 (扶桑社文庫)
(2001/06)
香山 滋

商品詳細を見る

未知の生物や怪獣だけでなく、ファナティックな女性像というものにも眼差しを注いでいた香山氏が中期~後期に発表した<魔性の女>テーマの二作品を収録。両作品とも、ドロドロの愛憎と駆け引きの果てに破局を迎えるというプロットで、女性達の危うい魅力がグイグイとストーリーを引っ張っていく。表題作の後半は氏の得意とする冒険小説的エッセンスもたっぷり。「ペット・ショップ・R」は背徳的なエロティシズム濃厚な百合サスペンスもので、こちらもズシリとヘヴィな内容。『ゴジラ』の原作者としてしか香山氏を知らない人にも是非読んで欲しい。

---------------------------------------------------

フランク・ザッパ自伝フランク・ザッパ自伝
(2004/02/07)
フランク・ザッパ、ピ-ター・オチオグロッソ 他

商品詳細を見る

自伝としてもエッセイとしても、娯楽作品としても極上の面白さ。前半は生い立ちと音楽活動の狂騒と苦労の日々がユーモアと皮肉たっぷりに綴られ、後半は悪名高きPMRCなどの団体との戦いの記録と政治的な話が中心となる。合間には抱腹絶倒の四方山話が挟まれ、盛り沢山の内容を一気通貫で読ませる。氏の音楽観の一端が饒舌に語られる第8章「音楽について」は必読。共同編集者の巧みな手腕と、ザッパ本人の編集で生まれた構成の妙も素晴らしい。異才・奇才・鬼才・偉才と様々に称される稀有な音楽家が遺した貴重な一冊であり、一つの作品であります。

---------------------------------------------------

ソラミちゃんの唄 (1) (まんがタイムKRコミックス)ソラミちゃんの唄 (1) (まんがタイムKRコミックス)
(2013/08/27)
ノッツ

商品詳細を見る

ノッツさん(23歳Dカップ女子大生)の存在を知ったキッカケは、今年リリースされた三回転とひとひねりのアルバム曲「稲荷~三回転とひとひねり」のイラストレーションPVでありました。本書は商業誌デビュー作。勉強そっちのけで日々自室で音楽活動に勤しむ宅録ひきこもり浪人ガールと、彼女を取り囲む愉快な女の子達(面倒見の良い幼なじみ さっこ、 マンガ描きが趣味のフミリン、スタイル抜群の歩く寝袋ガール ネモちゃん)が織り成すゆるゆるな日常を音楽と共に綴った4コマ連作。いいんですわこれが。ゆるやかでさりげない形で表現とは何かということを見せつつ、最後ではホロリとも来てしまうのです。ノッツさんのHPに掲載されている、ジョン・ケージ「4分33秒」をモチーフにした漫画もしみじみとした味わいで、また良いのですよ。

---------------------------------------------------

聖夜 (文春文庫)聖夜 (文春文庫)
(2013/12/04)
佐藤 多佳子

商品詳細を見る

オリヴィエ・メシアンのオルガン曲とキース・エマーソンのプログレ曲を二本柱に、家族関係によって翳りと屈折を孕んだ18歳の主人公が、音楽への姿勢を自問し葛藤していく音楽小説。メシアンのオルガン曲と共に葛藤する話。一方で彼がとり憑かれているのがキース・エマーソンで、EL&Pの曲を聴いたり弾いたりする描写が出てきたり、キース・エマーソンは解放者か破壊者かと問いかけるシーンも出てきます。音楽的な小ネタも目を引くのだけど、聖職者の父と、出て行った母への複雑な思いと共に鬱屈した一哉が、どのように葛藤を乗り越えてメシアンの楽曲を理解し、そして成長してゆくのか、穏やかな筆致で書かれたストーリーが何より素晴らしくて、読後感も柔らかい。いい音楽小説です。

---------------------------------------------------

おまえはケダモノだ、ヴィスコヴィッツおまえはケダモノだ、ヴィスコヴィッツ
(2001/06)
アレッサンドロ ボッファ

商品詳細を見る

「ヴィスコヴィッツ」の名前を持つ、ヤマネの、カマキリの、蛇の、犬の、魚の、蟻の、海綿の、微生物の個体たち。彼らが喜怒哀楽豊かに織り成す、動物の生態とユーモアとペーソスをふんだんに交えたコミカルな生態系短篇集。その人間模様ならぬ「動物模様」の数々は人間以上に人間臭く、味のある可笑味に富んでいる。それぞれのヴィスコヴィッツは別の個体だが、各話を読み終える頃には深遠で有機的繋がりがあるようにも思えてくるから不思議だ。書き口の人懐っこい雰囲気などからイタロ・カルヴィーノの『レ・コスミコミケ』に通じるものを感じた。

---------------------------------------------------

オノマトペは面白い ---官能小説の擬声語・擬態語辞典 (河出i文庫)オノマトペは面白い ---官能小説の擬声語・擬態語辞典 (河出i文庫)
(2012/12/05)
永田 守弘

商品詳細を見る

『用語表現辞典』『「絶頂」表現用語用例辞典』に続く、官能表現辞典三部作の完結編。多用し過ぎは興を削ぐが、読み手の海綿体を疼かせ、イメージを効果的に喚起させるためになくてはならない官能小説における擬音・擬声語のユニークなヴァリエーションが、細かく分類分けされている(また、収録作品も明記されている)。50年に渡り官能小説を読み込んできた永田氏だからこそ編める1冊であり、その労力に今回も頭が下がりました。随所のコラムとコメントも性の含蓄に富んでいて流石の面白さ。まずは適当にアタリをつけてパラパラとめくってみるべし。 個人的には「ギクン」が好きである。「ビクン」よりも奥ゆかしさを感じさせつつも、鋭く快感が突き抜けるようなニュアンスを孕んでいるからたまらない。その読み手へのエレクチオン喚起力たるや計り知れないものがある。あるんだってば!

---------------------------------------------------

江戸滑稽化物尽くし (講談社学術文庫)江戸滑稽化物尽くし (講談社学術文庫)
(2011/08/11)
アダム・カバット

商品詳細を見る

江戸時代の黄表紙本に描かれた妖怪にスポットを当て、江戸時代の人々や文化を読み解いてゆく1冊。有名な逸話や当時の流行のパロディ、器物や文房具の擬人化、豆腐小僧などの創作妖怪や、ろくろ首や幽霊・累といった恐ろしい姿の妖怪たちの描写の滑稽化などを見ると、現代に繋がる豊かなキャラクター文化の源流を垣間見ることを出来るし、妖怪という「異類」を通して人間社会を逆照射していく黄表紙作品からは、江戸時代の創作者たちのユーモアとアイロニーも伝わってきます。どこか憎めない妖怪達の姿を眺めているだけでも楽しい読み物。 源頼光の酒呑童子討伐の登場人物を、うどんやそば、薬味に置き換えた(!)恋川春町の『うどんそば 化物大江山』や、信長や秀吉といった武将が異類の姿で描かれる『化物太平記』は、思わず現本で読んでみたくなる興味をそそる内容。現代のパロディ同人誌に通じるユーモア精神を感じてとても感慨深い。個人的には安永8年(1779年)の黄表紙本『怪談豆人形』に載っている、松茸の化け物が妖怪に親切に講釈している図絵にいたく心惹かれるものがありました。

---------------------------------------------------

完全な真空 (文学の冒険シリーズ)完全な真空 (文学の冒険シリーズ)
(1989/12)
スタニスワフ・レム

商品詳細を見る

架空の書物の評論集であり、芳醇なネタ帳。博覧強記の天才作家に想像力の限りにホラを吹かせた結果がこれである。存在しないものをさも実在するかのように語り、なおかつそれを評論という形で解体してみせるという難業を、レムおじさんはサラリとやってのけてしまうからかなわない。『魁!男塾』に登場する民明書房も大概だと思ったが、この人はその遥か上を突き抜けている。時に饒舌に、時にユーモラスに、惜しげもなくネタを放出しているかと思えば、『あなたにも本が作れます』というタイトルの書をレビューしていたりで、何ともお茶目。

---------------------------------------------------

運命のボタン (ハヤカワ文庫NV)運命のボタン (ハヤカワ文庫NV)
(2010/03/26)
リチャード・マシスン

商品詳細を見る

追悼、リチャード・マシスン。「四角い墓場」は別の短篇集で何度も読み返しましたが、何度読んでも素晴らしい。落ちぶれた元ボクサーが、整備不良で壊れたロボットの代わりに生身でロボットボクシングに打って出るという、破天荒で無骨な再生の物語(オッサン二人のやり取りがまた良いのです)。「戸口に立つ少女」は妖しくも恐ろしいイメージを喚起させてやまないし、機内から外を眺めると得体の知れぬ何かが機体をぶっ壊そうとしている、という突拍子のない導入から、あれよという間に焦燥感溢れる展開に持って行く「二万フィートの悪夢」も好き。生涯に渡って様々なジャンルを書かれたマシスン氏だけど、60年前に既に戦闘美少女モノで短編を書いていたのか、と、1951年発表の「魔女戦線(Witch War)」を読んで驚いきました。七人の美少女が圧倒的な超能力を以って軍隊を壊滅させるという、いたって単純明快(この邦題もGOOD!)な10ページほどの短編ながら、そのインパクトは抜群。わかる人にはシュピーゲル・シリーズやストライクウィッチーズあたりをイメージしていただきたい。戦う美少女というのは今ではすっかりお馴染みとなった題材だけど、その源流を見る思いがしました。

---------------------------------------------------

ダイナミックフィギュア(上) (ハヤカワ文庫JA)ダイナミックフィギュア(上) (ハヤカワ文庫JA)
(2013/05/10)
三島 浩司

商品詳細を見る

ダイナミックフィギュア(下) (ハヤカワ文庫JA)ダイナミックフィギュア(下) (ハヤカワ文庫JA)
(2013/05/10)
三島 浩司

商品詳細を見る

環境的ハンデを負わさせた状況で、謎の地球外生命体キッカイを相手に巨大二足歩行兵器ダイナミックフィギュアで戦う…のだが、デカいロボットがハデに大暴れするケレン味を期待すると肩透かしを喰らう。本作はロボットよりも各キャラクターにスポットが当たるSF群像劇なのであります。説明的文章が少ないので諸々を把握するのに少々時間を要すし、戦闘シーンも結構地味なのだけれど、こういう無骨さは嫌いじゃない。個人的には「ガンパレードマーチ」+「THE 地球防衛軍」という印象を持った。帯の推薦文が芝村裕吏氏と長谷敏司氏で、思わず納得。 下巻は上巻とは打って変わって、スーパーロボット的なテイストが強まり、キャラクターもストーリーも派手な動きを見せる。亡き全権司令官の遺志を継いだ安並風歌が、自身の初陣において盛大な啖呵を切って出撃に臨むシーンはベタながら下巻屈指の熱いシーン。彼女が放った「ダイナミックにフィギュアせよ!」のセリフは、下巻の印象そのものである。細かいところを挙げてしまえば色々気になる部分はあるのだけれど、「やはりオトコノコならスーパーロボット好きだよな!うんうん」的な共感の方が強かったなあと。主人公はどこまでも真っ直ぐでありました。

---------------------------------------------------

グリンプス (創元SF文庫)グリンプス (創元SF文庫)
(1997/12)
ルイス・シャイナー

商品詳細を見る

あのグループやミュージシャンの幻のアルバムは、世に出ていたらどんなものになっていたのか…という、ロック好きなら誰しも抱く夢想を形にした1冊。主人公が過去へトリップし、ビートルズやビーチボーイズ、ドアーズ、ジミ・ヘンドリックスの幻のアルバムを完成させようとする本書は、作者の60年代ロックへの溢れる思いが込められた、ロック好きのロック好きによるロック好きのためのSFファンタジー。また、家族小説/私小説的なところもあり、主人公があの世でのやりとりを経て現世に戻る終章では、再生の物語としての姿も現れる。作中に登場するアルバムは本書の発表当時は幻の存在だったが、今では殆どが正式リリースされ、ファンの耳に届くようになっている。そのあたりに昔日の感慨も抱きつつ。
【追記】二十選の中に入れた後で気づいたのですが、何と、来年初めにちくま文庫から復刊されるみたいです。
グリンプス (ちくま文庫)グリンプス (ちくま文庫)
(2014/01/08)
ルイス・シャイナー

商品詳細を見る


---------------------------------------------------

垂直世界の戦士 (ハヤカワ文庫SF)垂直世界の戦士 (ハヤカワ文庫SF)
(1998/10)
K.W. ジーター

商品詳細を見る

上下に延々と続く巨大階層都市<シリンダー>、その外壁の<垂直世界>を生きる主人公が、戦闘部族や情報代理店を相手にしたたかに立ち回る、サイバーパンクの流れを汲む冒険小説(1989年作)。ハイテク世紀末な世界観(しかし一方で天使が空を飛んでいたりする)や各種用語が十分な説明なしに矢継ぎ早に提示されるので、そこを大味ととるか痛快ととるかで好みが別れるものの、ヴィジュアルのインパクトやストーリーのエンタメ的吸引力は抜群なので、ハマってしまえばしめたもの。弐瓶勉氏の『BLAME!』のイメージをダブらせながら読んだ。

---------------------------------------------------

夢幻会社 (創元SF文庫)夢幻会社 (創元SF文庫)
(1993/07)
J.G. バラード

商品詳細を見る

ドギツい。全編に横溢する妄執じみた想像力は読み手を選ぶが圧巻の一言。憑かれた危うい幻視者である主人公ブレイクが目の当たりにする光景はめまぐるしく、熱気とイカ臭さも立ち込めている。イメージに次ぐイメージは夢と現実を一緒くたに押し流す。その奔流にすぐさま呑まれるものの、ついていくので精一杯になることも多々ある。『クラッシュ』を読んだときも思ったが、性的にイカれ気味なところがある変態的主人公ってのはストーリーに異様なドライヴ感を与える上でやっぱりいいもんですなあ。

---------------------------------------------------

江戸奇談怪談集 (ちくま学芸文庫)江戸奇談怪談集 (ちくま学芸文庫)
(2012/11/07)
須永 朝彦

商品詳細を見る

『西鶴諸国はなし』『新著聞集』『耳嚢』『伽婢子』『稲生物怪録』ほか多数の江戸の書物からチョイスされた怪談奇談を集めた1冊。流石に値は張るけど、アレコレと興味の尽きない内容で質・量ともにとても充実している。かの滝沢馬琴が主催していた奇談の寄合「兎園会」で語られた話をまとめた『兎園小説』には、男装女子と女装男子とふたなりの話もあるのか。江戸時代のUFOと言われている「虚舟(うつろぶね)」の話が出たのも兎園会からだというし、一度全編読んでみたいものだなあ。

---------------------------------------------------
バーナード嬢曰く。 (REXコミックス)バーナード嬢曰く。 (REXコミックス)
(2013/04/19)
施川 ユウキ

商品詳細を見る

読書あるあるショートギャグ漫画。「一度も見たことないこの本…私の中ではすでに読破したっぽい雰囲気になっている!」「読まないほうがアレコレ想像できて楽しいじゃない?一度読んだらもう二度と読む前には戻れない―」「ディックが死んで30年だぞ!今さら初訳される話が面白いわけないだろ!」「グレッグ・イーガンは多少よくわからなくてもすっっっごく面白い」etcetc...ホントそうですね。ええ、まんまとツボりましたよ。読まずに読んだフリをしてカジュアルに読書を楽しむバーナード嬢こと町田さわ子の言動も、ディープかつハードコアなウンチクSF読みの神林しおりの言動も、見ていて人ごとに思えないのであります。

---------------------------------------------------
---------------------------------------------------
今年も復刊ものは色々ありましたね。覚えている範囲でつらつら書き連ねてみますが、まず二階堂奥歯『八本脚の蝶』が復刊ドットコムから重版されたこと。そして、随分前からアナウンスされていたものの、延び延びとなっていた河出書房新社の奇想コレクションのロバート・F・ヤング『たんぽぽ娘』が遂に刊行されたこと。ロバート・E・ハワードのコナン全集の新訂版が、第5巻『真紅の城砦』から4年の間を経て、ようやく第6巻『龍の刻』で完結を迎えたことも感慨深いものがありました。戦後派五人男の一人である大坪砂男の全集が東京創元社から文庫版で刊行されたこと(全4巻)。氏の孫が虚淵玄であるという事実が判明したことも驚きでありましたが、その虚淵氏のサイバーパンクSF武侠片『鬼哭街』のノベライズ版が、角川スニーカー文庫で刊行されてから8年の時を経て、合本として星海社から文庫で刊行されたことも嬉しいトピックでありました。映画化決定でめでたく新訳&復刊した『エンダーのゲーム』シリーズ(まだ積んだままで読んでないです)。サンリオSF文庫の中でもベラボウに高い古書価がついていたことで知られるピーター・ディキンスン『生ける屍』の、ちくま文庫からの復刊(内容は、まあ、うん…って感じでした)。おっと、椎名誠『武装島田倉庫』が鈴木マサカズ氏によってコミカライズされたこと、またそれに伴って新装版が刊行されたことも書いておかねば。日本SF作家クラブ創立50周年を記念したアンソロジー(ハヤカワの『日本SF短篇50』、東京創元社の『てのひらの宇宙(星雲賞短編SF傑作選)』)が刊行されたのも印象深かったです。『日本SF短篇50』第二巻に神林長平「戦闘妖精・雪風」シリーズ第一作目「妖精が舞う」が、SFマガジン掲載時の版で収録されていたので、おいしくいただきました。ところで、制作が進んでいるというハリウッド実写版「戦闘妖精・雪風」。ポシャらずに無事完成したとして、そのうち日本公開されるのなら、深井零の日本語吹き替えはOVA版同様、堺雅人氏で、と個人的には切望しております。ブッカーおじさんの吹き替えはもちろん中田譲治おじさんで。あと何か忘れているような気がするのですが…とりあえずこんなところでしょうか。

上の方でも書きましたが、まずは来年早々に出るルイス・シャイナーのロック・ファンタジー小説『グリンプス』の復刊はうれしいニュースだなあと。また、オースン・スコット・カードの『無伴奏ソナタ』も新訳版で1月末に刊行されるとのことで、これまた嬉しい。2月にはフランスのユーモア作家であるピエール・カミの『機械探偵クリク・ロボット』がハヤカワ・ミステリ文庫で出るのも忘れないようにしたいところです。あと、これはあくまで個人的な予想ですが、「キルラキル」に絡めてバリントン・J・ベイリーの衣服哲学ワイドスクリーンバロック『カエアンの聖衣』がハヤカワあたりから復刊されるんではないかと踏んでおります。「天元突破グレンラガン」のときに、ベイリーの『禅銃』、フレドリック・ブラウンの『天の光はすべて星』の復刊が成ったという前例があるので、期待しております。

"それとフレドリック・ブラウンの『天の光はすべて星』 コレ昔は『星に憑かれた男』だったんだって!この改題はスバラシイ!!今売ってるのは表紙もステキで ウフッ!ンフフフフ…"(神林しおり嬢曰く)

2013/12/22

2013年を振り返る~個人的に印象に残った20曲

例によって今年もまだ聴けていないアルバムがたくさんあるのですが、もう年明けまで時間もないので、ここいらで20曲挙げます。


●Wintergatan「Sommarfågel」

2010年に活動を休止してしまったスウェーデンのフォークトロニカユニット DetektivbyranのMartin Molinが2012年に立ち上げた後身的バンド Wintergatanが今年の頭に発表したデビュー曲。バンド名よろしく、冬の澄んだ空気感たっぷりのドリーミーなサウンドで、琴線にどストライクでした。今の時期に聴くとさらに真価を発揮するのではないかと。


●岩崎琢「ジョジョの奇妙な冒険 - WELCOME TO THE WORLD」

松尾早人氏による第一部のサントラも聴きまくりましたが、岩崎琢氏による第二部のサントラはそれ以上に聴きまくりました。イントロにYESの"Owner Of A Lonely Heart"を混ぜ込んだ趣向もGOODな、ニューロマンティック風ヴォーカル曲のねっとり感がとても中毒性が高かったです。岩崎さんの仕事にハズレなし。


●JOLLY「Firewell」

流行りのDjent系とも一線を画する、骨太であり繊細でもあるオルタナティヴ・ヘヴィ・プログレッシヴ・サウンドにヤラれた。デビュー数年でこの貫禄はやっぱり只者じゃないなと思った次第。アレンジとアルバム構成に気を配っている所も良いし、スウィートな魅力もあるのもたまらないものがあります。


●GRAPEVINE「1977」

『イデアの水槽』以来の久々のセルフプロデュースアルバムとなった『愚かな者の語ること』は、聴けば聴くほど耳に馴染んでくる感じでこれまた良いアルバムでした。あくまで自然体な姿勢を崩さない。この曲の"これが最後のシーンなんて思えないが" "ここで再会するような大団円はない …けど他に展開はないのかい”というフレーズがとにかく好きなんですよ。


●悠木碧「ポポン...ポン!」

彼女にとってもまさに念願であった、新居昭乃さん・保刈久明氏とのコラボレーションは親和性が高く、極上でございました。コンセプトや世界観にかなり凝る人だってのもよくわかったので、是非ともフルアルバムのスケールで彼女の世界観を味わってみたいなあと思った次第です。


●溺れたエビの検死報告書「ワシャワシャ! ! グギャギャギャギャ! ! !」

まさかのアルバムリリースで海面を沸騰せしめた謎のエビ怪人音楽集団。身体は人間、頭はエビ。彼らは何者なのか。何故エビなのか。それはまだ……混沌の中。それが……溺れたエビの検死報告書!チェンバー・ロック、ファンク、エレクトロなどをミステリアスにパッキングしたサウンドは、ヴィジュアルとパフォーマンスも含めてライヴで聴きたくなるものです。


●amazarashi「ジュブナイル」

焦燥と葛藤のボーイミーツガール、というテーマには自分はつくづく弱いなと。ストレートに吐き出され、曝け出される詞と、奥底から抉り出すような秋田ひろむ氏の鮮烈なヴォーカルと相まってなおのことクるものがありました。


●LAGITAGIDA「Tutela!!」

2010年に解散したマヒルノのメンバー二人が結成したバンド。超鋭角的なインストトゥルメンタル・プログレでとてもエキサイトいたしました。アグレッシヴだけど耳馴染も良さもミソ。このバランス感覚、やっぱり好きです。


●クウチュウ戦「佐知子」

このご時勢に空飛ぶ円盤に弟が乗りそうなジャケットと『プログレ』の四文字をタイトルに冠した1stアルバムを発表したバンド。改めて聴いてもやっぱり不思議な立ち位置の歌謡プログレだなあと思います。すっとぼけているようですっとぼけていない、イロモノのようでイロモノでない味わい。あと70年代感。


●永谷喬夫「Take Me Higher」(アイカツ!)

「アイカツ!」の一連の曲のクオリティは相当に高くて驚かされてばかりなのですが、元SURFACEの永谷氏が手がけた「Take Me Higher」はまさに自分にとって会心の一撃でありました。思わず部屋に眠っていたSURFACEのアルバムを引っ張り出してしまったくらいにハマりました(そういえばSURFACEには「ゴーイングmy上へ」って曲がありましたねえ)。ちなみに、永谷さんは「這いよれ!ニャル子さん」の一部キャラソンにも作編曲や演奏で参加されており、流石のギターサウンドを聴かせてくれます。


●三回転とひとひねり「稲荷~三回転とひとひねりのテーマ」

2008年に結成された長崎出身の男女4人組バンドによる、小粋で軽やかなるポップ・チューン。日々の戦いに明け暮れヤケクソまがいのファンネルを飛ばす本職軍人のメイドさんを歌った1曲。ノッツ先生によるイラストPVも含めてたまらんちんなのです。


●Ramin Djawadi「PACIFIC RIM - MAIN THEME」

今年の夏、パシフィック・リムには大いにエキサイトさせられました。劇場でこのテーマを聴いた時、初めて聴いた気がせず、とめどなく湧き上がる高揚感と共にどこか懐かしさと親近感も覚えたのですが、フィーチャリング参加しているトム・モレロの弾くリフがBLACK SABBATHの"IRON MAN"にどことなく似てるからかなあと。あのデロデロした感じ。


●「Oratorio The World God Only Knows」(神のみぞ知るセカイ 女神篇)

全6章・トータル8分という第一期のオープニングテーマ「God Only Knows」をさらに上回り、全8章・トータル約13分という破格の構成で繰り広げられる渾身にしてド級の一大シンフォニック・ロック。見事にやられました。90年代、00年代と、時代が進むにつれてプログレ/シンフォニック・ロック的なアプローチを見せるアニソンが増えてきましたが、その中でもある種の極みをこの曲は見せてくれました。


●MOON SAFARI「Mega Moon」

今年のアルバムは、「Lover's End」三部作の後ってことで内容的には大分落ち着いたなあという印象でした。甘々なコーラスとムード重点な展開が続くので、アルバムとして見ると緩さを感じるのは否めませんが、この曲は光っていました。じわじわと盛り上がる展開が好きな手合いにはたまらない1曲。『Himlabacken Vol.2』への期待も込めて。


●HENTAI CORPORATION「Equilibristic Bride」

Ylvisの「キツネは何て鳴くんだい?」PVを観た時の衝撃は、このチェコのバカどものせいでどっかに行ってしまいました。vimeoにPVの無修正版をわざわざ上げるという抜かりのなさも含めてマジキチです。ところで、ビーバーは何て鳴くんだい?


●kamomekamome「手を振る人」

さらに逞しさを増したツインヴォーカルのもとにストレートに突き抜けたアルバムのラスト曲。まだまだこのバンドの前進は止まらないなあと。向氏の独特の言葉選びによって紡ぎ出される世界観の醒めたヒリつきは依然として唯一無二であり、"我らソングライティング"のシャウトにバンドの自負と気概をひしと感じて思わず嬉しくなりました。


●HAKEN「Cockroach King」

ニッチなB級プログレから、劇的なプログレメタルとして魅せるようになったこのバンドの化けようには驚かされた。セサミストリートというよりはハッチポッチステーションって感じでじわじわくるPVも含めて、アルバムの中でも特にファニーでヘヴィな趣向の1曲。GENTLE GIANTやQUEENオマージュなコーラスが特徴的。ちょっとMr.Bungle感。


●岡村靖幸「ビバナミダ」

色々ありましたが、6年ぶりのこの曲はホントにもう会心の出来でした。ダンサブルでスタイリッシュでキャッチー、必殺の三拍子。この曲を主題歌とする来年の「スペース☆ダンディ」も気になっております。特に音楽面。


●メテオール「ワイズマン第三の眼」

伝統民謡の耳馴染みの良さとニューウェイヴ/テクノポップのキャッチーさを絶妙な塩梅でミックスする宇宙民謡バンド。"会津磐梯山"も彼らの手にかかればこの通り。もっともだー、もっともだ。


●Losers「Azan」

FROST*のジェム・ゴドフリー氏がアルバムのミックス/プロデュースを手がけたUKロックバンド。目の醒めるようなパワフルなサウンドが鮮烈で、メロディック・プログレリスナー泣かせというかFROST*ファン泣かせな仕上がりでもあると思います。問題は、アルバムがまだ一般流通していないってところなのですが…今後の動きに期待します。

2013/12/21

光栄オリジナルBGM集Vol.2『信長の野望・戦国群雄伝/水滸伝・天命の誓い』(1989)

光栄オリジナルBGM集Vol.2「信長の野望・戦国群雄伝」「水滸伝・天命の誓い」光栄オリジナルBGM集Vol.2「信長の野望・戦国群雄伝」「水滸伝・天命の誓い」
(1989/11/25)
ゲーム・ミュージック

商品詳細を見る


「信長の野望」シリーズの3作目にあたる「戦国群雄伝」(PC-88SR版)と、「水滸伝・天命の誓い」(PC-88版)、共に1988年末に発表された歴史シミュレーション二作品のサウンドをカップリングで収録したサウンドトラック。「群雄伝」のコンポーザーは菅野よう子さんと山本光男氏のお二人。「天命の誓い」のコンポーザーは、木下伸司氏、三井一正氏、滝沢洋一氏の三名です。

本作がリリースされる以前、1989年4月に二作品のサウンドトラックがそれぞれ単体でリリースされているのですが、そちらはヴォーカル・アレンジ/オーケストラ・アレンジを中心とした内容ゆえ、FM音源のBGMは収録されておりませんでした。ちなみに、前者には新居昭乃さんが、後者には70年代中期に活動したAORバンド「ブーメラン」の黒住憲五氏が歌うヴォーカル・アレンジがそれぞれ収録されています。



このカップリングサントラは二作品の原曲BGMのほか、【グレードアップ・ヴァージョン】と銘打たれたアレンジが3曲収録されているのですが、なんと、松前公高氏と山口優氏によるテクノポップユニット「EXPO」が担当されているのです。EXPOによるアレンジ・ヴァージョンはこのCDでしか聴けないため、非常にレアな逸品です。

「群雄伝」のアレンジはメドレー形式になっており、"オープニング"(菅野曲)、"篭城戦"(山本曲)、"信長・メイン"(菅野曲) "信長・戦争"(山本曲)の4曲を起・承・転・結なイメージで繋げております。シリアスなようでどこか親しみやすいユーモアも感じさせられます(特に終盤の"信長・戦争"のあたり)。



「天命の誓い」のアレンジは"出向"(三井曲)と、"戦後処理"(三井曲)と"エンディング"(滝沢曲)を繋げたトラックの2曲。「出向」のアレンジがマーティン・デニー風味のエキゾチカ・サウンドなのがまた味わい深い。原曲もトロピカルな趣ですが、なるほどそうくるかと。





●信長の野望・戦国群雄伝 - Wikipedia
●水滸伝・天命の誓い - Wikipedia

●「信長の野望・戦国群雄伝/水滸伝・天命の誓い」(H27E-20008) - VGMdb
●「信長の野望・戦国群雄伝」(H29E-20001) - VGMdb
●「水滸伝・天命の誓い」(H29E-20003) - VGMdb

2013/12/19

Tim Follin『PRIME』(メガCD/1994)



Tim Follin氏が手がけた唯一のメガCDタイトルである、1994年にリリースされた『Ultraverse Prime』の楽曲がYouTubeに全曲あったので、再生リストを作成いたしました。アメリカンコミックのヒーローの一人"プライム"を操りステージを進んで行くベルトスクロールアクションゲームです。タイトル画面で流れるテーマ曲は渋いヴォーカルも入った7分に及ぶ力作であり、メガCDのスペックも活かしつつ、ブリティッシュ・ロック/プログレ テイストの香る秀逸な1曲に仕上がっております。出だしの歌メロがQUEEN"We Will Rock You"をかなり意識しているのはご愛嬌でありましょう(氏のQUEENのパロディだと、1990年リリースのNESソフト『Pictionary』には"Another One Bites The Dust"のパロディがありました)。

★Ultraverse Prime[SEGA MEGA CD] - YouTube再生リスト
http://www.youtube.com/playlist?list=PLJ4LFs94gFfkh8H6kUfQMpttzq6MiHH_K







ベルトスクロールアクションものということでゲーム本編のBGMはさぞや激しめの曲調なのかと思いきや、そんなことはなく、全体的にフォーキーかつリリカルなムードを感じさせる仕上がり。映画スコアのようなシンフォニックな趣向も少しばかり顔を覗かせています。フルートの音色をフィーチャーした楽曲がどれも秀逸で、ティム氏の音楽的ルーツの一つであるイギリスのプログレッシブ・ロック・バンド JETHRO TULLからの影響が程良く出ているなとも感じます。比較的大人しめながら、押さえるところはしっかりと押さえた良BGMばかりです。

ちなみに「プライム」は、Psygnosis社の3Dシューティング・ゲーム「マイクロコズム」とのカップリングで販売されていたそうです。「マイクロコズム」といえば、かのリック・ウェイクマンが作曲者の一人として関わっていることで密かに知られるゲームなのです。直接顔を合わせたというわけではないとはいえ、こういう形でこの二人の名前が並ぶとは、いやはや面白いものがあります。



●Prime(Comics) - Wikipedia
●Ultraverse Prime/Microcosm - Sega Retro
●Tim Follin - Wikipedia

2013/12/15

Todd Rundgren's Utopiaのベーシスト ジョン・シーグラーの意外なお仕事『Pokémon 2.B.A.Master』(1999)


John Siegler(ジョン・シーグラー)といえば、かのトッド・ラングレン率いるロック・バンド「UTOPIA」の70年代中期に在籍したベーシスト(2011年の再結成時にも参加)ですが、そんな彼の意外な仕事のひとつに、アニメ「ポケットモンスター」(初代 カントー編)のアメリカ放送版の主題歌・挿入歌・イメージソングの編曲/プロデュースがあります。このアメリカ版ポケモンのヴォーカル曲を収録したアルバム『Pokemon 2.B.A. Master』は非常にクオリティの高い内容で、AOR/メロディック・ハード・ロック・アルバムとしても十分に鑑賞に堪えうる「大きなお友達向け」のシロモノなのです。発表当時、各国でゴールド・ディスクもしくはプラチナ・ディスクを獲得するほどのスマッシュ・ヒットを飛ばしたというのもなるほどうなづけます。シーグラー氏はこのアルバムのヒットで一山儲けたとか。アルバムはAmazon MP3からダウンロード購入可能です。


http://www.amazon.co.jp/Pokemon-2-b-Master-Music-Series/dp/B0047ZEEOW



こちらがシーグラー氏がコ・プロデュースとアレンジを手がけた主題歌"Gotta Catch Em All"。どうでしょうこのメロディック・ハード・ロックっぷり。ちなみに、この曲のヴォーカルを担当されているJason Paige氏はなかなかの実力派で、この十数年後、かのブラス・ロック・バンド BLOOD,SWEAT&TEARSにヴォーカリストとして加入いたします(2011年~2012年にバンドに在籍)。また、酔狂なことにアメリカの"ゲーム・メタル・バンド" POWERGLOVEが、SONATA ARCTICAのヴォーカリスト トニー・カッコをフィーチャリングしてこの曲をカヴァーしております。




こちらはいわゆるロケット団のキャラソン。この曲には、ピーター・フランプトン・バンドでお馴染みのキーボーディスト ボブ・メイヨの名前が作編曲の一人としてクレジットされております。




タイトルから予想するに、第38話"ピカチュウのもり"(日本では1998年4月放送)の海外放送時に使用されたと思しき1曲。あまりにも感動的なミドル・バラードに仕上がっており、ただただ素晴らしいの一言です。


海外のポケモン関連のサイト「PokePress」が行った、John Sieglerへのインタビュー音源。話題は、彼が手がけたポケモン・ミュージックについてのものと思われます。




ちなみに、シーグラー氏はアメリカ放送版の遊戯王(デュエルモンスターズ)の主題歌・挿入歌にも関わっており、こちらではプロデュース/アレンジのみならず、バッキング・ヴォーカルでも参加しています。こちらもまた実に聴かせる内容でたまりません。


●John Siegler - IMDb
●UTOPIA - Wikipedia
●Pokémon 2.B.A. Master - Wikipedia

2013/12/14

佐藤多佳子『聖夜』(文春文庫 - 2013)

聖夜 (文春文庫)聖夜 (文春文庫)
(2013/12/04)
佐藤 多佳子

商品詳細を見る

先ごろ文庫版が出た佐藤多佳子『聖夜』を読了。あらすじの「メシアンのオルガン曲と格闘する少年」に興味を惹かれて手にとった本なのですが、まさかキース・エマーソンの名前が出てくるとは思っても見ませんでした(ちなみに、最初の扉絵にはキーボードとEL&P『TARKUS』のジャケットをあしらったイラストが描かれています)。

本作は、家族関係によって翳りと屈折を孕んだ18歳の主人公 鳴海一哉が、音楽への姿勢を自問し葛藤していく音楽小説であります。メシアンのオルガン曲に苦戦する一方で、彼がとり憑かれているのがキース・エマーソンで、EL&Pの曲を聴いたり弾いたりする描写が出てきます。「くだらねえな。何もかも。ELPを弾こうが、メシアンが弾けなかろうが、どうでもいいんじゃないのか。」(P54) また、キース・エマーソンは解放者か破壊者かと問いかけるシーンも。「解放者でも破壊者でもない―そんなイデオロギーの奴隷ではなく、彼は自由な音楽家なのだ。騎士でも悪魔でもなく、鍵盤の技術者、卓越した人間だ。」(P148) 作品設定が1980年ごろという、プログレに翳りが出てきた頃であるのもまたミソ。深井というクラスメイトが途中からストーリーに絡んでくるのですが、こいつがプログレ好きで、当時の四大バンドの凋落ぶりに憤慨するシーンが出てきます。「―だけどさ、もう、なんか、みんなダメだよなあ。どれ聴いてもがっかりでさ。お前、『ラヴ・ビーチ』聴いた?」(P108)

オリヴィエ・メシアンのオルガン曲とキース・エマーソンのプログレ曲を二本柱にしつつ、合間にはフォーカス、ラリー・カールトン、スティーリー・ダン、リターン・トゥ・フォーエバー、クルセイダーズ、マイケル・フランクスの名前もちょろっとだけ登場します――そういった小ネタも目を引く『聖夜』でありますが、聖職者の父と、ドイツ人のオルガン職人と共に出て行った母への複雑な思いを自身の内に抱え込んだ一哉が、どのように葛藤を乗り越えてメシアンの楽曲を理解し、そして成長してゆくのか。「家族」「神」「赦し」「聖性」などのテーマもゆるやかに織り込みつつ、穏やかな筆致で書かれたストーリーが何より素晴らしくて、読後感も柔らかい。いい青春音楽小説だなあと感じた作品でした。

ちなみに一哉が苦闘していたメシアンの曲が、「主の降誕」の第9曲"神はわれらのうちに"。 ラストシーンは聴きながら読むとより感慨深いものがあります。


2013/12/08

ポケモンサウンドの源流 ― 増田順一『パルスマン』(メガドライブ/1994)

ゲームフリーク開発による、1994年発表のメガドライブ用アクションゲーム「パルスマン」。2007年にはWiiのバーチャル・コンソールの配信タイトルにも加わった同作品の楽曲が、YouTubeに全曲上がっていました。コンポーザーはポケットモンスター・シリーズのサウンドの生みの親である増田順一氏。初代ポケモンが世に出る2年前の作品であり、数々なアッパーかつパンキッシュなニューウェイヴ・テクノなサウンドは、まさに「ポケモン前夜」といった感。今聴いても非常に興味深いものがあります。

■Pulseman OST GEN/MD 再生リスト
http://www.youtube.com/playlist?list=PLD41E5F8EF88DD672








PULSE MAN エレクトレース パルスマン〜ステレオタイプPULSE MAN エレクトレース パルスマン〜ステレオタイプ
(1994/08/01)
ゲーム・ミュージック

商品詳細を見る

パルスマンのコンセプトにはテクノからの影響が大きくあり、当時のテクノ界隈との関わりも深い作品だったようです。ライター/作詞家/オーガナイザーとしてあちこちで動いていた佐藤大氏(今はアニメ脚本家としても著名ですね)と、当時電気グルーヴに在籍していた砂原良徳氏によるテクノ・ユニット"STEREOTYPE"が、ゲームフリークのボスである田尻智氏を加えた編成で『エレクトレース パルスマン』というリミックス&イメージアルバムをゲームの発売と同時期にリリースしているほか、佐藤氏が関わっていたテクノ・レーベル「フロッグマンレコーズ」が、同ゲームのテーマにしたコンピレーション・アルバムをCDとLPの2形態でリリースしています。


レコーディングはゲームの制作途中で完了していたという、アルバム『エレクトレース パルスマン』。その冒頭に収録されている楽曲。ライナーノーツの四者対談(増田、田尻、佐藤、砂原)によると、このCDの企画コンセプトには、プリンスが1989年に発表したバットマンのサウンドトラック&イメージアルバムからの影響が大きく、ゲーム本編とはまた一味違うものをこのCDで見せたい、という思いが強くあったようです。


1995年にマイク・ヴァン・ダイクが発表したマキシシングル『Tokyo Trax(東京トラックス)』の楽曲。パルスマンのサウンドをサンプリングしております。

ゲームボーイ『ポケモン』のサウンドがまるごと入って,遊べるCDゲームボーイ『ポケモン』のサウンドがまるごと入って,遊べるCD
(1997/11/01)
ゲーム・ミュージック、三木眞一郎 他

商品詳細を見る

ちなみに、増田氏は1997年に"ポケモンテクノ"なるトラックを発表しております。メディアファクトリーから97年にCD2枚組でリリースされた『ゲームボーイ『ポケモン』のサウンドがまるごと入って、遊べるCD』のDISC 2の最後に、SE集とくっついた形で収録されております。



●パルスマン | Wii(R) バーチャルコンソール メガドライブ 公式サイト
●パルスマン - Wikipedia
●増田順一 - Wikipedia
●フロッグマンレコーズ - Wikipedia

2013/12/02

MAGELLAN『Cynic's Anthem (Digital Single)』(2013)

1985年に結成され、1991年にアメリカのプログレッシヴ/テクニカル・ロック系レーベル MAGNA CARTAからデビュー、同レーベルを離れて後もコンスタントなペースでアルバムをリリースしている、トレント、ウェインのガードナー兄弟率いるアメリカのネオ・プログレッシヴ・ロック・バンド MAGELLAN。数年前からアナウンスされている新作アルバム『Inert Momentum』を今なお制作中(保留中?)の彼らですが、一方で昨年あたりから、ゲストを迎えてのコラボレーション・トラックをデジタル・リリースで発表しております。

こちらはRob Lopezというヴォーカリストを迎えての、KANSAS"Dust In The Wind"のカヴァー


こちらは今年3月に公開された新曲"Good To Go"のサンプル。かのブラス・ロック・バンド CHICAGOのメンバーであるRobert Lammが作詞で、Lee Loughnaneがトランペットでそれぞれゲスト参加しています。ガードナー兄弟は近年、彼らと親交を深めているようです。


この18分半のトラックは、MAGELLANがこれまでに発表したアルバム曲の断片を繋げたメドレー。選曲はもちろんガードナー氏自らによるものです。


こちらはCHICAGOのギタリスト/ヴォーカリストであるKeith Howlandをフィーチャーした、全5パート・トータル8分半のドラマティックな歌もの路線の組曲"Better Suite"。また、Lee Loughnaneがトランペットソロを吹いているほか、GTR(スティーヴ・ハケット脱退後に加入)や、キース・エマーソン、カール・パーマーとの"3"などで知られるRobert Berryがベースとギターを担当しています。


フリーダウンロード音源として公開されたヘヴィ・プログレ路線のデモ・トラック。『Inert Momentum』の布石的なトラックなのでしょうか。


そして、先ごろ発表されたトラックがこの"Cynic's Anthem"。CHICAGOのJason Scheffがコーラスで参加しています。シンセサイザーの打ち込みをメインにしたデジタリーな1曲で、それゆえに90年代初めの頃のMAGELLANのカラっと明快なテイストを匂わせる懐かしい仕上がり。また、この曲にはCHICAGOのメンバー3人が参加したヴァージョンも用意されているそうです。Tris Imbodenがドラムで、Keith Howlandがギターソロで、Lee Loughnaneがホーン・アレンジで参加したオルタネイト・ヴァージョンは、そのうち公開予定とのこと。


●MAGELLAN - Official Site
●MAGELLAN(band) - Wikipedia
●MAGELLAN - ProgArchives
●CHICAGO(band) - Wikipedia

2013/12/01

Richard Harvey(GRYPHON)『Terrahawks(地球防衛軍テラホークス)』(1983)

古楽からの影響を色濃く反映させた音楽性で知られるイギリスのプログレッシヴ・ロック・バンド GRYPHON。そのフロントマンでありマルチ演奏者/コンポーザーであるRichard Harvey/リチャード・ハーヴェイ氏は、70年代後半から数々のライブラリー音楽(TV、CMなどの業務用音楽、音楽素材)や映画音楽を手がけられております。ライブラリー・ミュージックはその性質上 一般に出回るケースはあまりないのですが、今ではYouTubeを漁れば、その頃の音源の数々を聴くことが出来ます。ハーヴェイ氏が手がけられたライブラリー音楽作品は、流石のクオリティのものが多く、掘り下げる価値は十分あると思います。

今回ご紹介するのは、サンダーバード・シリーズの製作でも知られるジェリー・アンダーソンによる83年のイギリスの特撮人形劇TVシリーズ「地球防衛軍テラホークス」の劇伴。これをハーヴェイ氏が担当されているのです(同年に2曲入りのLPシングル/カセットシングルもリリースされました)。予算の関係上、全てシンセサイザーによる演奏で制作されたそうで、テーマ曲はまさにシンセサイザー・シンフォニーといった印象。どこかB級プログレ感もある仕上がりになっています。



こちらはロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラを起用した、メインテーマのド派手なヴァージョン。


こちらは12インチLPシングルのB面に収録されているテーマ曲のヴァリエーション。採用されたテーマと比べるとかなりとっ散らかった印象なのは否めませんが、ハーヴェイ氏の制作過程の一端が伺える興味深いものだと思います。


エンドクレジット。メインテーマの短縮・変奏です。


余談ですが、テラホークスの日本版オープニング・テーマは、燕奈緒美/真由美姉妹が歌う「ギャラクティカ・スリリング」という曲。スペクトラムの新田一郎氏が作曲を担当しております。ホーンアレンジに流石のカッコ良さを感じるテクノ歌謡な1曲であります。

■リチャード・ハーヴェイ/Richard Harvey - 素晴らしき映画音楽作曲家たち
非常に詳細なデータが掲載されております。

●Richard Harvey - Wikipedia
●GRYPHON(band) - Wikipedia
●地球防衛軍テラホークス

2013/11/27

メテオール『コスモ越さぬも』(2013)

コスモ越さぬもコスモ越さぬも
(2013/09/27)
メテオール

商品詳細を見る


 CGアニメーションと連動したライヴ・パフォーマンスと、ニューウェイヴ/テクノ・ポップと民謡を橋渡する音楽性で特異なインパクトを放つバンド メテオール。映像作品だけにとどまらず、パントマイム集団やイラストレーターとのコラボレーション作品も発表している彼らの新作アルバム。メンバーのカズウ(山田カズミ)氏と、4-D mode1やメトロファルスの横川理彦氏との共同プロデュース作品。また、民謡団体「ミカド天風総連合会」の家元代行である横笛奏者 ミカド香奈子さんが参加されています。ポップなエレクトロ・シーケンスに、エレクトリック・ギター&三味線の躍動的なビートと軽快な篠笛の旋律、ハァ~チョイナチョイナな合いの手が入るサウンドはバツグンのノリの良さ。アルバムは民謡アレンジとオリジナル曲が入り混じる構成で、民謡アレンジはタイトル・内容の宇宙的な改変ぶりも含めて絶妙な仕上がりであります。

 朝寝・朝酒・朝湯好きで身上をつぶした小原庄助さんを謳った福島県民謡の"会津磐梯山(あいづばんだいさん)"は、地震・津波・氷河期で絶滅した大型恐竜を謳う"ワイズマン第三の眼"になり、茨城県民謡の"網のし唄"が"AminoShooter"になり、山形県民謡の"真室川音頭(まむろがわおんど)"が"マクロ側オンディーヌ"に、"ソーラン節"が"ソーラー節"に、"木遣りくずし"が"ゲシュタルト崩壊(くずし)"といった具合でもじられております。ディレイラマとVOCALOIDのコーラスをバックに朗々と歌い上げられる"さそり座クシー"(和歌山県民謡"串本節"のアレンジ)。「ネルシャツのゾンビに気をつけろ♪」というフレーズの中毒性が高い祭囃子調ナンバー"NEL"。はぁー、どっこい ならぬ HardCoreでニューウェイヴ・パンクな"べんとら節"など、民謡特有の耳馴染みの良さと、テクノ・ポップのキャッチーなノリの気持ちの良い相乗が楽しめる曲ばかり。ミカドさんを全面的に(作曲も含め)フィーチャーした"Dodoiz~メテオール~"なる純民謡調な1曲もあります。

 また、やはりと言うところですが、バンドの音楽的なバックグラウンドには、平沢進氏からの影響も色濃く伺えます(ちなみに、メテオールは過去のアルバムで平沢氏のソロ曲"金星"を、南国民謡テイストでアレンジ・カヴァーしております)。after the rain、元P-MODELの秋山勝彦氏やヒカシューの巻上公一氏と三田超人氏のみならず、日本民謡協会の大会部長がアルバムにコメントを寄せているところも、"宇宙民謡"を標榜するこのバンドならではといったところでしょう。伝統民謡を大胆なアプローチで魅せる、新たな発見と楽しさに満ちた愉快な1枚。もっともだー もっともだ。






●オフィス・ガナゴナ×メテオール

2013/11/24

HAKEN『The Mountain』(2013)

MountainMountain
(2013/09/17)
Haken

商品詳細を見る


イギリスのプログレッシヴ・メタル・バンド TO-MERAのギタリスト Thomas MacLean、キーボーディストのRichard Henshallが中心となって2007年に結成されたプログレッシヴ・バンド ヘイケンの3rdアルバム。本隊であるTO-MERAはゴシック、シンフォニックな要素も組み込まれた聴き応えのあるプログレッシヴ・メタルを展開しているのですが、このヘイケンは各メンバーの音楽嗜好、アイデアを詰めるだけ詰め込んだ欲張りなハイブリッド・プログレ・サウンドが魅力のバンドであります。

前々作『Aquarius』、前作『Visions』では英国的プログレッシヴ・ロック様式と米国的プログレッシヴ・ハード様式の境目を行ったり来たりしつつ、ゴシック・メタル、シンフォニック・ロック、チェンバー・ロック、アヴァン・ロック、チップチューン的な要素も顔を出すというゴッタ煮具合で、ニッチなサウンドを好む手合いにはたまらないものがあるとはいえ、良くも悪くもB級感に甘んじているような内容でありました。それだけに、今回の大化けぶりには驚かされた次第です。欲張りなスタイルは変わっていないのですが、サウンドの焦点がこれまでになくプログレッシヴ・メタルとして聴かせるという方向で格段に絞り込まれており、楽曲に詰め込まれた無数のアイデアがことごとく劇的な方向に収斂していったのは非常に大きい。頼もしいことこの上ないサウンドを聴かせてくれます。

抜けるような清涼感と効果的に差し挟まれるパーカッシヴなラテン・テイストが ただでさえ起伏に富む曲展開をさらにキャッチーに引っ張っていく、ドラマティック極まる構成のリードトラック"Atlas Stone"と、GENTLE GIANTやQUEENへのオマージュともいえるアカペラコーラスワークも印象的に響く、ファニーでヘヴィなプログレ・メタル・チューン"Cockroach King"の2曲は必殺の出来で、アルバムの掴みの曲としてバッチリ。終盤には10分越えの大曲"Falling Back To Earth""Pareidolia"を配し、トリッキーでドラマティックな趣向はさらに強まってゆきます。プログレ・メタルとしての手応えもさることながら、"Because It's There" "Somebody"など、ヴォーカル/コーラスのハーモニーを重視したシンプルな演奏で叙情的な側面がこれまでになくフィーチャーされており、全体的に思索的なムードの横溢したアルバム構成になっているところもポイントでしょう。

スタイルをデビュー時から頑として変えずにここまでのものを作り上げたことに、賞賛の言葉を贈りたいです。また、ミキシングとマスタリングには、SOILWORK、DARK TRANQUILLITY、AMON AMARTH、SYMPHONY X、OPETH、ジェイムズ・ラブリエなど、数々のメジャー級アーティストのアルバムなどに携わり、近年のヘヴィ・メタル/プログレ・メタル シーンには欠かせない人物の一人とも言えるJens Bogrenが関与していることも、今回の方向性に大いにプラスになったのではないかと思います。今年10月をもってフロントマンの一人であるThomas MacLeanがバンドを脱退するというアナウンスがされたものの、バンドは来年2月に開催される マイク・ポートノイ主催の一大プログレッシヴ・メタル・フェスティバル「Progressive Nation At The Sea 2014」への出演が決定しており、さらなる飛躍が期待されます。







●HAKEN - Official Website
●TO-MERA - Encyclopedia Metallum

2013/11/23

豪快極まるトンデモ臓器移植ゲームの秀逸なBGM ― Black Heron『Surgeon Simulator 2013 OST』(2013)

今年 STEAMでリリースされた海外の臓器移植シミュレーションゲーム「Surgeon Simulator 2013」。爆走中の救急車内や、無重力下の宇宙ステーションといったあまりにも特殊な状況下で、骨やら臓器をヒッチャカメッチャカにしつつ脳移植や心臓移植術式を施すという、豪快極まる内容のバカゲーであり、リリース直後からあちこちで話題になった作品です。

(※当然ながらグロテスクな表現ありなので、リンク先の閲覧はご注意を)

■Surgeon Simulator 2013
http://www.surgeonsimulator2013.com/

■Steam Store - Surgeon Simulator 2013
http://store.steampowered.com/app/233720/

■人生に疲れた男のblog - Surgeon Simulator 2013
http://d.hatena.ne.jp/BCC/20130421/p1

http://blackheron.bandcamp.com/album/surgeon-simulator-2013-ost
そんな「Surgeon Simulator 2013」のサウンドトラックがbandcampでダウンロード販売(全12曲、購入は£2.50より)されているということを、つい最近になって知りました。トンデモなゲーム内容に反して、BGMは往年のVANGELISやTANGERINE DREAMのようなエレクトロニック/シンセサイザー・ミュージックあり、物悲しい旋律を奏でる情緒的なピアノ・インストゥルメンタルありで、かなり「聴かせる」内容になっております。





また、12曲目の"Unidentified Flying Organ"は隠しミッションで流れるBGMなのですが、「X-ファイル」メインテーマのオマージュな仕上がりなのは、該当ミッションをプレイしている方ならばニヤリとさせられるものがあるのではないでしょうか。BGMを担当したBlack Heronはサウンドプロダクションチームの名前で、Leo Chilcott、Murugan Thiruchelvamのお二人が中心メンバーのようです。

http://blackheronaudio.com/

Murugan Thiruchelvam氏は自身のサイトでポートフォリオを公開しております。エレクトロ/アンビエント志向はこの人に因るところが大きいのかなと。
http://muruganthiruchelvam.com/portfolio.php



2013/11/20

Tim Follin『Treasure Master』(NES/1991)

1991年の12月にAmerican SoftworksからリリースされたNES用ソフト「トレジャーマスター」(NES作品なので日本未発売)。色々と盛りすぎなパッケージイラストが物凄く怪しいニオイをプンプンさせていますが、ゲームの内容は地味めなアクションゲームです。ロックマンを意識して作ったようなところも見受けられます。こちらがプレイ動画ですが、なんともモッサリした印象が拭いきれません。



◆YouTube再生リスト:「Treasure Master」BGM(全7曲)

そんな本作のBGMの担当は、Tim Follin氏。「ソルスティス」や「シルバーサーファー」を経て、氏が最後に担当されたNES作品ということもあってか、眩い音の煌きと技巧の数々がたっぷりと盛り込まれており、まさにNES時代のティム・フォリン・サウンドの総決算とでも言うべき内容が繰り広げられております。ファンク、シャッフル、ワルツといった軽快な曲調に載せて、所狭しとスプラッシュする粒揃いかつ重厚な音・音・音……脳内物質がとめどもなく溢れ出てきます。ちなみに、タイトル画面のファンキーなBGMは、70年代のドラマ「刑事スタスキー&ハッチ」のテーマを意識して作られたフシがあるようです(ちなみにこの十数年後、フォリン氏はゲーム版「STARSKY&HUTCH」のBGMの作編曲を手がけられるのですが、その話はまた別の機会に)。



本作を象徴する1曲がコチラ。フォリン氏の十八番といえる高速アルペジオや変拍子に加えて、クロスフェードまでキメるという前代未聞かつトリッキー極まりない展開を聴かせるステージ3&5のBGMのインパクトたるや、一度聴いたらイヤでも忘れられなくなります。


続くステージ4のBGMも相当なもので、あの「ソルスティス」メインテーマの再来・変奏とも言うべき、プログレッシヴな要素の詰め込まれた超絶的チップチューンに仕上がっています。


●Tim Follin - Wikipedia
●Treasure Master - Wikipedia
●Timothy J.Follin - みんなで決めるゲーム音楽ベスト100まとめwiki

2013/11/19

Chris Huelsbeck『Shades』(1991 / 2013)

「タリカン」シリーズなどで知られるドイツのゲームミュージックコンポーザー Chris Huelsbeck氏が91年に発表した初期ワークスアルバム『Shades』が、つい先月bandcampに上がった。購入は$8.99から。



"Vince DiCola風"ミックスなんてのもあって面白い。コモドール64版タリカンにVince氏を意識した曲があったのもなるほど頷ける。





2013/11/18

Tim Follinが楽曲を手がけた幻のメガドライブ用ソフト『TIME TRAX』(1993)

93年から94年にかけてアメリカで放送されたSFドラマ・シリーズ「TIME TRAX」。同作品はゲーム化され、94年にスーパーファミコン用ソフトがリリースされています。同時期にメガドライブ版も開発されており、製品化の直前まで行っていたそうですが、何らかの事情により結局リリースされることはありませんでした。そのメガドラ版TIME TRAXのBGMを担当していたのが、かのTim Follin氏であります。かつてフォリン氏のサイトで、同作品のタイトルテーマのmp3が公開されており(現在は音源へのリンクが切れています)、幻の作品の一端を聴くことが出来ました。

◆Dr. Follin's Home Surgery
http://www.timfollin.pwp.blueyonder.co.uk/Archive.htm

そして今年7月、ゲームがお蔵入りとなってから20年目を迎える年に、なんとメガドライブ版プロトタイプROMが発掘・公開され、海外のゲーム関係のフォーラムで話題になりました。そして、収録されていたBGMの全貌も明らかになったのです。BGMは全6曲(うち1曲は十数秒のジングル)で、60Hz版[NTSC版]、50Hz版[PAL版]ともにYouTubeやニコニコ動画で聴くことができます。SF的イメージの広がるスペイシーなテイスト、ハード・ロッキンなギター、コンテンポラリーなシンセなど、FM音源による極上のティム・フォリン サウンドを堪能できます。

◆Time Trax for the Sega Genesis
now available for download! - SEGAAGE




ニコニコ動画のリンクはこちら
■TimeTrax(NTSC版)BGM集 http://www.nicovideo.jp/watch/sm21321987
■TimeTrax(PAL版)BGM集 http://www.nicovideo.jp/watch/sm21626471

●Time Trax - Wikipedia
●Time Trax - Sega Retro
●Tim Follin - Wikipedia

2013/11/17

『One Man&His Mic Show #3 (Follintastic!)』(2008)

こだわりの打ち込みと多彩なメロディセンスで驚異的な作品を数多く残した伝説的なゲーム・ミュージック・コンポーザー Tim Follin氏。ゲーム音楽の仕事からは遠ざかってしまった今でもなお、国内外の多くのコンポーザーからのリスペクトを集めてやまない人物であります。今回ご紹介するのは、海外のレトロゲーム/ハードの情報サイト/音楽レーベルのBinary Zone Interactiveの中の人がDJを務める「One Man&His Mic」というレトロゲームポッドキャストが、フォリン氏を特集した回の音源です。フォリン氏が手がけたゲームの楽曲を、合間にコメントと有志によるリミックス・ヴァージョンを交えつつ1時間に渡って紹介していくという粋な企画であり、フォリン氏のサウンドの魅力を改めて再認識できる内容です。コモドール64作品からの選曲が多めであり、中にはレアなトラックもチラホラ。下記URLにあるプレイヤーの「Episode 003 -Follintastic!」を選択することで聴くことができます。

http://www.binaryzone.org/podcast/

同音源はニコニコ動画にもあります。


ちなみに、46:50あたりで聴ける"The Shining"という楽曲は、かつてフォリン氏のサイトで公開されていた(現在はリンク切れのためダウンロード不可能)、映画「シャイニング」のダイアローグをフィーチャーしたファンク調の小品。また、33:00あたりで流れる曲は未発表のPS2ソフト「Firearm」の楽曲。38:30あたりで流れるのは、同じく未発表となった1993年制作のメガドライブ用ソフト「Time Trax」のタイトル・テーマです。

個人的にオススメしたいのは、26:30から流れる、1991年発表のAMIGA用ソフト「Gauntlet III」のタイトル・テーマ。ブリティッシュ・プログレ・テイストの1曲であります。


また、18:10から流れるリミックス・ヴァージョンもなかなかです。アーケード版「大魔界村」の楽曲は、TAMAYOこと河本圭代さんによる作曲で知られていますが、海外で発売されたコモドール64/アタリST版「大魔界村」ではさらにTim Follin氏の編曲が加わります。つまり【作曲:TAMAYO/編曲:Tim Follin】という贅沢な仕上がりのBGMが聴けるのです。こちらはそのコモドール64版大魔界村のステージ4BGMを、BinsterことMartin Binfield氏がリミックスしたもの。















また、このポッドキャスト音源にボーナス・トラック9曲を追加収録したCD版が、Binary Zone Interactiveのサイトで販売されております。
http://www.binaryzone.org/retrostore/index.php?main_page=product_info&products_id=345















さらに、同サイトでは、フォリン氏が手がけたコモドール64作品からセレクトされた楽曲を収録した初期ベストCD『The Best Of Tim Follin』も販売しております。
http://www.binaryzone.org/retrostore/index.php?main_page=product_info&cPath=65&products_id=187

●Tim Follin - Wikipedia
●Binary Zone Interactive

2013/11/14

「CAMEL Europe Tour 2013 In The Autumn」2013.10.26 オランダ・アムステルダム公演 ライヴ映像

Snow Goose: Re-Recorded EditionSnow Goose: Re-Recorded Edition
(2013/10/22)
Camel

商品詳細を見る


フロントマンのアンディ・ラティマーが長期療養から復帰し、再び活動を再開したイギリスのプログレッシヴ・ロック・バンド CAMEL。先ごろ、1975年の名盤『The Snow Goose』のリ・レコーディング・アルバムもリリースされ、それに伴い、イギリス、ベルギー、オランダ、ドイツで計11公演を行うヨーロッパ・ツアーも、10月19日から11月1日にかけて行われました。バンドの、そしてラティマーの久々のライヴというだけでなく、75年のロイヤル・アルバート・ホール公演以来という『The Snow Goose』のアルバム完全再演もセットリストに含まれたメモリアルな公演というだけあって、殆どの公演のチケットがツアー前からソールド・アウトとなっておりました。今回のツアーメンバーはアンディ・ラティマー(vo.g)、コリン・バース(b)、ギー・ルブラン(kbd / NATHAN MAHL)、デニス・クレメント(dr)、そして、近年のRENAISSANCEにライヴ・サポートとして参加もされているジェイソン・ハート(kbd)の5人。YouTubeには、10月26日にオランダのアムステルダムで行ったバンドのパフォーマンスをファンが撮影した映像が分割で上がっております。













ここまでの一連の映像が『The Snow Goose』再演パート。同公演では他にも、初期の代表曲にしてライヴの定番曲である"Never Let Go"。『Moonmadness』からの染み入る2曲 "Song Within a Song" "Airborn"。そして大曲"Lady Fantasy"のパフォーマンス映像もあります。たまらなく良い顔(ラクダ顔!)を伴ったギタープレイ、年輪を重ねてさらに旨味の増したフルートの旋律、CAMEL復活を印象付けるラティマー氏の熱演が十分に堪能できます。

"Never Let Go"
http://youtu.be/zfU3p3q5s9c

"Song Within a Song"
http://youtu.be/V4bT46hUvRo

"Airborn"
http://youtu.be/OJaTe8QWhY0

"Lady Fantasy"



CAMELの公式サイトでは先ごろ(11月13日付)、2014年3月のツアー予定が発表されました。現時点では、3月前半にオランダ、ベルギー、ドイツ、イギリスで計9公演を行うことが決定しているようです。また、こちらはまだ確定はしていませんが、3月後半にはポルトガル、スペイン、イタリアでもライヴを行う予定だそうです。再始動後の新作アルバムの発表にも期待したいですし、また日本にも来て欲しいですね。

●CAMEL PRODUCTIONS.COM
●CAMEL - Andy Latimer - facebook

2013/11/09

未知との遭遇を果たすエレクトロ・プログレッシヴ・サウンド ― Zantilla 『Encounters』(2013)

ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)
(1978/10)
フィリップ・K・ディック

商品詳細を見る

フィリップ・K・ディックのSF小説"ユービック"からレーベル名をとった、「Ubiktune」というロシアのチップ・チューン&ゲーム・ミュージック専門ネットレーベルがあります。これまでに70枚に上るカタログをリリースしており、そのラインナップを眺めるだけでも楽しいものがあります。

http://ubiktune.com/releases

今回ご紹介するのは、10月末にubiktuneからリリースされた、カタログNo.71。Adrian Shegstadによるユニット Zantillaのデビューアルバム『Encounters』です。アメリカのUFO研究者 J・アレン・ハイネック(映画『未知との遭遇』のスーパーバイザーでもあった人です)の著書にインスパイアされた全7曲のアルバムであり、ChiptuneとDjentを二本柱に掲げ、両者のテイストを盛り込んだシンセサイズド・プログレッシヴ・メタル・サウンドを展開しております。コンパクトながら変拍子と起伏に富んだ構造の楽曲を、抜けの良いサウンドがさながら流線型を描くようにして突き抜けてゆく様は、煌びやかな味付けも含めてストレートにカタルシスが味わえることうけあい。bandcampにて全曲フル試聴可能。ダウンロード購入は$2です。Sci-Fiなプログレ・メタルがお好きな手合いはもちろん、80年代末期TANGERINE DREAMや、FROST*がお好きな手合いにもオススメです。

http://zantilla.bandcamp.com/





◆『Encounters』レーベル内紹介ページ
http://ubiktune.com/releases/ubi071-zantilla-encounters

2013/11/07

『ベストアルバムCD キルミーベイベー・スーパー』(2013)

ベストアルバムCD キルミーベイベー・スーパーベストアルバムCD キルミーベイベー・スーパー
(2013/10/16)
VARIOUS ARTISTS

商品詳細を見る


キルミーベイベーは復活した。
歴史が呼吸する瞬間が遂に訪れた…。

 みんな大好き「キルミーベイベー」の歌もの楽曲をまとめたベスト盤。買いましたよハラショー(しかしまだ付属DVDのアニメを観ていないのでわさわさ)。ハイパー・インストゥルメンタル・ロック・バンド ウンベルティポの今堀恒雄氏(g)、佐野康夫氏(dr)のお二人がプレイしていることでも一部で話題になった、キャッチーに込み入ったオープニングテーマ"キルミーのベイベー"、一転してシンプルながら非常に中毒性のあるエンディングテーマ"ふたりのきもちのほんとのひみつ"に始まり、やすな、ソーニャ、あぎりさんの各キャラソンが続きます。少し懐かしいテイストも香るテクノポップチューン"HOW TO ENJOY"(歌:赤﨑千夏) "Wanted! OBAKA dead or alive"(歌:田村睦心)。ほのぼのとしたポップスナンバー"今日も二人で"(歌:赤﨑千夏) "焼きそばパン"(歌:田村睦心)。すっとぼけつつも洒落たアレンジが最高に良い塩梅な"ティーンエイジ・ハイスクール・ニンジャ・ガール" "空き地と野良猫"(歌:高部あい)。と、三者三様の魅力を堪能出来ます。



 後半にまとまっている"キルミーのベイベー" "ふたりのきもちのほんとのひみつ"の各アレンジ・ヴァージョンでは、松前公高氏と山口優氏のお二人がやりたい放題やっていらっしゃいます。"キルミーのベイベー!のさらにウザいやつ"は文字通りの仕上がりで、この手のつけられないヒッチャカメッチャカ感はある意味必聴モノ。50年の時を経てもなお壮健(?)な二人の歌いっぷりが強烈な"キルミーのベイベー!2062"は、聴いていてナチュラルに脳みそが沸きそうになりました。もはや誰が歌っているのかわからない上に、途中で素の笑い声が入ってるのがなおのことツボです。また、トイ・ミュージックな趣のあるアレンジ"キルミーのベイベー!のウザくないやつ"でパーカッションをプレイされているのは、トクマルシューゴや栗コーダーポップスオーケストラ、やくしまるえつこなどの作品への参加でも知られる玩具系ドラマーのitokenさん。クレジットを見てなるほど納得いたしました。

 そして本アルバムの目玉と言えるのが、ボーナストラックとして収録された"キルミーのベイベー"の未発表ライヴ・ヴァージョン。ライヴ・ヴァージョンとありますが、曲中のMCで赤﨑さんが「みんなー8時間ありがとー!」と言ったりしているので、架空のライヴ音源と思われます。つまり、スタジオ録音で作り上げた、擬似ライヴ・ヴァージョン。しかしながら現実と虚構の境界が曖昧になるくらいにライヴ感のある仕上がりで、流石の一言です。スタジオ版とはちょっと違うアレンジもさることながら、赤﨑さんと田村さんのお二人のエキサイティングな歌いっぷりが実に痛快で、聴いているともはや細かいことはどうでもよくなります。ところで、中盤で田村さんに「この人がギターでーす!東京都在住!趣味は園芸!」と紹介されているギタリストは、今堀さんのことなのかちょっと気になりました。

●キルミーベイベー - Wikipedia
●キルミーベイベー 限りなく公式HPに近いサイト

2013/11/06

El Chitando(damofujiki)『Father,Son,And Holy Noodles』(2013)

M3で買った1枚。東方Projectの楽曲を70年代ジャーマン・ロック風にアレンジしたりしているダモ藤木さんのオリジナル楽曲を収録した4曲入りEP。サイケデリック、クラウト・ロック、ドゥームなテイストが入り混じったゆるゆるでズルズルなバンドサウンドの漂蕩感は、まさにインストゥル麺タル。EP収録曲のうち3曲はbandcampでも聴けます。name your priceです。オヌヌメです。

http://damofujiki.bandcamp.com/






●ダモ藤木低域ネットワーク
●東方ドイツ風アレンジ ‐ ニコニコ動画

2013/10/26

Olof Gustafsson、Magnus Walterstad「Benefactor」(Amiga CD32/1994)

良BGMばかりで思わず聴き入ってしまいました。スウェーデンのDigital Illusions(現在のEA Digital Illusions CE <通称 DICE>)による制作、かのロジャー・ディーンが社名ロゴをデザインしたことでも知られるPsygnosis(現在のSCE Studio Liverpool)の販売による、94年発表のAMIGA CD32ソフト「ベネファクター」。主人公のベン・E・ファクターを操り、"メリー・メン"という宇宙人たちを敵の魔の手から救出する一方で、彼らの能力を駆使しつつステージを攻略していくという内容のパズル・アクション・ゲームであります(シグノシス社のヒット作「レミングス」のちょっとした発展型といったところ)。コンポーザーはOlof Gustafsson、Magnus Walterstadの二人。Olof Gustafsson氏はDigital Illusions創設メンバーの一人であり、後に世界各国のコンポーザー(日本からは古代祐三氏が参加されておりました)が結集して制作された架空のファンタジーRPGのサウンドトラック・プロジェクト「メレグノン」にも名を連ねております。Magnus Walterstad氏は現在まで続く人気タイトルである「Battlefield」シリーズのサウンド・ディレクターを務めている人物。



●Amiga CD32 - Wikipedia
●Benefactor (video game) - Wikipedia
●Olof Gustafsson - Wikipedia
●Magnus Walterstad - IMDb

TANGERINE DREAM『Optical Race』(1988)

オプチカル・レース(紙ジャケット仕様)オプチカル・レース(紙ジャケット仕様)
(2009/09/09)
タンジェリン・ドリーム

商品詳細を見る


ジャーマン・エレクトロニック・ミュージックの大家 タンジェリン・ドリームの88年作品。クリストファー・フランケが脱退し、エドガー・フローゼとポール・ハスリンガーの二人体制で制作されたオリジナル・アルバムであり、元メンバーのピーター・バウマンが主宰するレーベル「Private Music」への移籍後 初となるアルバムでもあります。個人的にタンジェリン・ドリームは70年代の大作エレクトロ/アンビエントな作風よりも、80年代に入ってコンパクトでキャッチーな路線を目指していくようになってからの作風に多分に惹かれるのですが、中でも本作は琴線にクリティカル・ヒットした1枚。この時期のタンジェリン・ドリームの一連の作品は、80年代後期~90年代初頭のゲーム・ミュージックの源流の一つではないかと思っております。

アルバムは平均4~5分程度の十の楽曲で構成されており、ポップに躍動するエレクトロ・プログレ・テイストと、落ち着いたトーンのニューエイジ・テイストが程よく混ざり合った仕上がり。淡々としながらもリリシズムを感じさせるメロディを、巧みに盛り込まれた起伏と併せて聴かせる「Merakesh」「Optical Race」。聴き触りは爽やかながらパーカッシヴなバッキングの間を縫うようにしてチェンバロがメリハリのある旋律を奏でる「Atlas Eyes」。煌びやかに歌い上げられるノスタルジックなメロディで締められるラストナンバー「Ghazal (Love Song)」などが特に耳を惹きます。適度にスリリングな流れをキープして澱みなく聴かせる構成もさることながら、しみじみとした味わいもあるコンパクトな良作。





●TANGERINE DREAM - Official Site
●TANGERINE DREAM - Wikipedia
●「Optical Race」- Wikipedia

2013/10/25

DADA(泉陸奥彦&小西健司) 『DADA』(1981) / 『城壁/鏡の中の家』(1994)

DADA(紙ジャケット仕様)DADA(紙ジャケット仕様)
(2013/10/09)
ダダ

商品詳細を見る



 後にジャズ・ロック・バンドKENNEDYを結成、コナミ矩形波倶楽部の一員としての活動を経て、現在はコナミデジタルエンタテイメント所属のコンポーザーの一人である泉陸奥彦(Gr.Syn.Violin.Noise)。後に4-Dを結成し、90年代にはP-MODELに加入する小西健司(Syn.Noise)。彼ら二人によって70年代に結成され、70年代後半から80年代初頭にかけて関西圏で活動していたのがこの「ダダ」。マニアックな存在ながら、二人の活動の原点を知る上では欠かせないユニットです。ダダの音楽性は一口でいうと実験的なエレクトロニック・ミュージック。空間をつんざく歪んだギター、ロマンティックでメランコリックなシンセサイザーの織り成すフレーズは、テリエ・リピダル(ECMレコードでの活動で知られるジャズ・ギタリスト)やヴァンゲリスの作品からの影響が色濃く、また、楽曲の持つ静謐さにはTANGERINE DREAMやFRIPP&ENOのような印象を感じさせます。先ごろキングレコードより紙ジャケット仕様で再発された『DADA』は、彼らの2ndアルバムにしてラストアルバムとなった作品で、上記のような趣向にさらに実験的ニューウェーヴ志向も加わり、ストレンジかつバランスもとれた内容になっています。ギラギラとしたビートやドラマティックなフレーズを打ち出した「Perpetual Motion」「America」。滴り落ちる水滴をイメージさせるミニマルな小品「Stainless Mama」。激しく駆け巡るギターと強度のあるモーグシンセの絡みが秀逸な「飛行船 Part 3」。テープコラージュ、ユーモラスなSEサンプリングを散りばめた「A.T.B」「ジロ君のお誕生日会」、そして淡い光で包み込んでゆくような展開が感動的な長尺のラストナンバー「アルルの太陽」と、バランスもさることながらアルバムの流れも非常に良く、当時のお二人の意欲と野心がヒシヒシと伝わってくる作品に仕上がっています。





城壁 スペシャル・ライヴ(紙ジャケット仕様)城壁 スペシャル・ライヴ(紙ジャケット仕様)
(2013/09/25)
ダダ

商品詳細を見る


 先ごろマーキー/ベル・アンティークよりリリースされた『城壁/鏡の中の家』は、94年に同レーベルからリリースされた『城壁~スペシャルイシューVol.1』の改訂版。79年にライヴ会場限定で販売していた両A面カセットテープアルバムの収録内容に沿った上でのCD化となっており、1曲目に泉氏が作曲した約24分の「城壁」、2曲目に小西氏の作曲による約31分の「鏡の中の家」を収めています。「城壁」は、センチメンタルなメロディとミニマリズムで濃密な空間を演出していくシンセサイザー・インスト。時折ギターが唸りと共に切れ込んでくる場面もあり、ゆるやかな中にもある種の緊張感も孕んだ大曲です。日本のメディテーショナル・ミュージックの偉大なる先達であるファー・イースト・ファミリー・バンドに近いところも感じました。「鏡の中の家」は今回初めて聴いたのですが、小西氏がマイク・オールドフィールドの『Ommadawn』から色濃く影響を受けて制作したというだけあって、メディテーショナルな中にも牧歌的なテイストが顔を覗かせる仕上がりになっています。こういう曲も書かれるのか、と、少々意外に感じつつも、興味深く聴き入ってしまいました。

ちなみに、94年にリリースされた盤は、自主レーベル"Vanity"よりリリースされた1stアルバム『浄』と、前述の『DADA』の間、つまり78年から81年の間に制作されたデモテープの音源(中には「飛行船 Part 1&2」や、「アルルの太陽」のプロトタイプ版も含まれていました)を収録した全10曲入りという内容でした。詳しい曲目については、こちらを参照のこと。
★bemani series soundtrack list -「城壁~スペシャルイシューVol.1」
http://bemanicd.web.fc2.com/extra/castlewall.html

●泉陸奥彦:Wikipedia
●4-D mode1 OFFICIAL WEBSITE

●All About【4-D再編!小西健司さんへの質問】