今井義頼氏は数々のアーティストやバンドのセッションに参加されているほか、佐々木秀尚氏と共に「有形ランペイジ」のメンバーでもあります。小林修己氏はグルーヴィーな技巧派バンド GRAVITATIONAL FORCE FIELDでも活動中。2014年にミニアルバムを出されています。大沼あいさんはツインキーボード・デュオ NEO-ZONKで2015年にアルバムを出されており、軽やかで変幻自在なセンスが味わえます。
クラシックなジャズやフレンチ・ポップ、映画音楽や電子音楽のエッセンスを特有のユーモアでくるんだ曲調やアレンジは、一見耳ざわりがよいようでどこか屈折していて、懐の広さが知れないたたずまい。セルジュ・ゲンズブールのアレンジャーでもあったアラン・ゴラゲールやジャン=クロード・ヴァニエにも通じるしたたかなセンスも感じさせます。ちなみに、ジュリアン・ガスクはかのSTEREOLABのメンバーでもあり、ジュリアン・バルバッガロはオーストラリアのTAME IMPALAのライヴメンバーとして2012年から活動もしています。メンバーそれぞれの越境的な活動もまた見所でしょう。AKSAK MABOULのマーク・ホランデル主宰のレーベル「Crammed Discs」を通じて世界流通もされている『Laisse Ça Être』は、2016年のEP『Guerre』に続く4thフルアルバム。前作と比べると焦点をやや絞った内容ながら、軽やかにうねるブラス・ジャズ・ロック"Tour du monde"、カンタベリー・ジャズ・ロック風味な"Virage Sud"を皮切りに、ブイブイに歪ませたヘヴィ・サイケとラウンジ・ポップを気ままに行き来するかのような"Tintin on est bien mon loulou"や、かと思えば瀟洒な風が吹き込むミニマル・チェンバー・ポップチューン"Si loin si proche"が顔を出すなど、佳曲多し、です。
近年は「赤尾でこ」名義でアニメの脚本家・シリーズ構成でおもに活躍されている三重野瞳さん。彼女の1995年のデビューアルバム『Ki Ra Ri Pi Ka Ri』については少し前にブログに書きましたが、その後のアルバムについても触れたいと思います。1stからわずか七ヶ月後にリリースされた2ndアルバム『All Weather Girl』は、引き続き根岸貴幸氏が全曲の編曲を担当し、前作とほぼ同じ演奏メンバーのもとに制作された作品。manzoこと坂下正俊氏によるハードポップチューンが二曲収録されてもいます。1997年リリースの3rdアルバム『ドラムカンサラダ』は、谷脇仁美、和田弘樹、高田耕至、立花瞳、中野礼翔、三保理を作曲陣に迎えた作品。1stの路線を踏襲したメロディック・ハード・ポップ・チューンであり、アニメ「超魔神英雄伝ワタル」のオープニングテーマとなった"ひとつのハートで"や、三重野さん自ら作詞作曲に挑戦した"バイバイ☆ダーリン"が収録されています。演奏では、過去二作でも参加されていた松原正樹氏とエルトン永田氏が本作では全面的に参加。1998年リリースの4thアルバム『ベリー☆ロール』では、三重野さんの作詞曲が四曲収録。作曲陣は高田耕至、水野雅夫、中野礼翔、谷脇仁美、立花瞳、Love Palette、泉川そら。ギタリスト陣は松原正樹、増崎孝司、土方隆行、梶原順、松下誠といった強力な顔ぶれが揃いました。そして、1999年にリリースされた5thアルバム『23.4』が、今回ご紹介する作品です。
スムースジャズ/フュージョン シーンの第一人者であるサックス奏者 ケニー・G(ケネス・ゴアリック)。彼の息子であるマックス・ゴアリック率いるツインギター+ドラムス編成のプログレッシヴ・メタル・トリオ ザ・マントルが先ごろデビューアルバムをリリースしました。父のライヴにギタリストとして客演することもあるというマックス。スムースジャズとプログレメタルの二つを並べるとギャップを感じますが、どちらも派生ジャンルであり、「クロスオーヴァー」な音楽性である、と考えれば差異はないのかもしれません。彼はさらに、ニューヨークのブラックメタルバンド Imperial Triumphantのメンバーでもあります(昨年の10月に正式加入したばかり)。2015年には、PS4のアドベンチャーゲーム「The Order: 1886」のプロモーションソングとして書かれた80'sヘヴィメタルスタイルの楽曲"Werewolf Slayer"の共同プロデュースに参加し、同曲のギターもプレイしていました。YouTubeの彼のアカウントをみると、楽器メーカー主催のYouTubeでのギターコンテストに投稿した動画や、WINTERSUNやENSIFERUM、ANIMALS AS LEADERSやPROTEST THE HEROなどをカヴァーしており、根っからの北欧メタルやプログレメタル好きであることが一目瞭然(そもそもアカウントが「IWishIWasFinnish」というあたりも微笑ましい)、もはや完全にわが道を行っております。バンドの楽曲は、ツインギターの相方であるジェイク・ミラーとの共作。最短3分、最長12分と尺に幅がありますが、どの楽曲においても往年のシュラプネル系を彷彿とさせる、快楽指数の高い弾きまくりスタイルを貫いており、多少の金太郎飴状態もなんのそのな過積載ぶりがむしろ潔い。キャッチーな爽快感でもっとも突き抜けた感のある"Sisu"や、djentとフュージョンの二つのスタイルが交錯する大曲"A Sense of Scale"など、「顔見せ」として十二分すぎるパフォーマンスです。アルバムのダウンロードは投げ銭。この期待の新鋭の楽曲を聴き逃す手はありません。
ユニークかつ実力派のバンドが数多くひしめくロシアのプログレッシヴ・ロック・シーン。そのなかでも、90年代から現在に至るまで継続的な活動を展開しているバンドというと、LITTLE TRAGEDIESとLOST WORLD BANDの二つは外せません。リリースの二~三年前に録音を済ませ、一年の間をおいてリリースするという方式で演歌調のキーボード・シンフォニック・ロックの極みを聴かせるのが LITTLE TRAGEDIESなら、KING CRIMSONやJETHRO TULLなどからの影響をベースに、ヴァイオリンとフルートを前面に押し出したしなやかで颯爽としたクラシカル・クロスオーヴァーで魅せるのがLOST WORLD BANDです。
フロントマンのアンドリイ・ディドレンコが、ヴァッシリ・ソロヴィエフ、アレクサンダー・アシモフとモスクワの音楽院で意気投合し1990年に結成。クラシック・ヴァイオリニストとしての活動と並行して自主制作でのリリースを続けながら、2003年に『Trajectories』でデビュー。当時は「LOST WORLD」名義であり、ヴォーカリストのアレクセイ・リバコフ擁する四人組バンドでした。その後、アレクセイが脱退。サポートキーボーディストやドラマーを迎えてインストバンドとしてのスタイルを強化します。アンドリイがニューヨークへ拠点を移すという大きな転機もあった2006年には第二作『Awakening of the Elements』をリリース。フランスのMUSEAレーベルから全世界流通となり、広く知られるところとなりました。
2009年には第三作『Sound Source』をリリース。同作はバンド史上もっとも緊張感のみなぎったアルバムであり(最初に聴くならまずコレをオススメします ※)、バンド側もかなりの手応えを感じたのか、同年には三時間にわたるスタジオ・ライヴを行い、その音源は2011年にライヴアルバム『In Concert』としてパッケージ化されます。2013年にはアレクサンダーがプロデュースにまわり、ふたたびヴォーカル曲を交えながらトリオ編成で録音された第四作『Solar Power』を、翌 2014年には『Awakening of the Elements』の再録&リミックス盤や、アンドリイによるクラシカルなピアノ&ヴァイオリン作品集『Intervals』『Go 4 Sonatas』を相次いでリリースしています。
以上の活動を経て、2016年10月にリリースされた第五作となる本作『Of Things and Beings』では、四部構成の「Shapes And Objects」、三部構成の「Simple as」といった、得意とする組曲を中心に、二本のガット・ギターが爽やかな風を吹き込む小品"Intertwined"やトロピカルな興趣の"On Thin Ice"など、アコースティック曲やスロウなヴォーカルパートを随所に挿入。前作で拡幅された音楽性を踏まえたうえで、叙情性や暖色系のカラーにも目配りの効いた内容になっています。もちろん、スキあらばキレ味鋭いヴァイオリンが飛び込んでくる持ち前の痛快さはブレることなく、ヌーヴォ・メタル期KING CRIMSONを意識したような"The Structure Of Madness"では、とびっきりにヘヴィなアンサンブルで度肝を抜いてきます。