FREIA Music Distribution (2016-03-28)
オランダは古くよりプログレッシヴ・ロックのファン活動が盛んであり、それに応えるかのように、90年代からはIQやPENDRAGONをはじめとするイギリスのバンドが主拠点として活発にライヴを行い、現地に立ち上げられたSI MUSICレーベルは発信源として大きな影響力を持っていました。現在もプログレッシヴ・ロック豊作の地として良質なバンドがひしめくかの地は、一方でQUEENの遺伝子を色濃く受け継いだロビー・ヴァレンタインやヴァレンシア、AYREONのアルイエン・アンソニー・ルカッセン、The Black Codexのクリス・ブリューイン、EQUISAのセバス・ホーニングなど、一人で作編曲や演奏のほとんどをこなしてしまうマルチなポップ・ミュージシャンを続々と輩出してもいます。今回紹介する ジュースト・マグレヴも、そんなオランダで活動するマルチミュージシャンの一人。過去にはJ-POPカヴァーバンドのSlightly Springに在籍。GALANORというメタルバンドのベーシストとして大阪と東京で来日公演を行った経験もある彼は、大の日本音楽通でもあり、音楽的インスピレーションとしてQUEEN、YES、GENESIS、AYREON、ヴァレンシア、ティム・スミス(CARDIACS)のほか、Gackt、X JAPAN、VIENNA、菅野よう子、坂本真綾、冨田ラボの名を挙げています。なかでもGacktに対するリスペクトは並々ならぬものがあるようです。2002年よりミニアルバム『Prelude』をリリースし、ソロ活動を開始。これまでに『Voluntary』(2005)と『Unleaded Blood』(2008)の二枚のフルアルバムをリリースし、現在はプログレッシヴ・メタル・バンド EQUISAのメンバーとしても活動しています。
8~12分の5つの長尺曲からなる本作『Overwrite the Sin』は三枚目のフルアルバム。ぶ厚いコーラスハーモニーがパワフルな求心力を伴った"Play the Game"、朗々たるヴォーカルを聴かせるパワーバラード"Song of a Dead Bard"を皮切りに、多重録音を施したスウィートなプログレッシヴ・ポップ・サウンドは徹底的に絢爛、かつダイナミックなインパクトに特化しています。また、レコーディングには長らく活動を共にしているセバス・ホーニングとスカーレット・ペンタがそれぞれギターとヴォーカルで参加しているほか、なんと大御所 ロビー・ヴァレンタインがピアノを弾いており、彼のまさかの参加には正直驚かされました。華やかなコーラスワークとストリングスサウンドでガンガン盛り上げる"Judith"は、ぶっちゃけてしまえば往年のヴァレンシアの作風をほぼ完コピした曲。過去にも"Gaia"をオマージュした曲を制作しているのですが、高音コーラスの挿入の仕方といい、サビで一気にバウンスする展開といい、よくぞここまでというくらいの高いテンションと再現度をキープしています。思わず笑ってしまうのですが、その研究ぶりには頭が下がります。続く"Confined"はアコースティック・バラードな前半から一転してメロディックスピードメタルになるのですが、サビ後のストリングスの切り込み方、そこからのツインギターのソロがX JAPANの"Silent Jealousy"へのド直球なオマージュであります。ラストの"The Hands of Time"は12分を越える本作最長の楽曲。GacktやX JAPANからの影響を昇華した、スローテンポの甘口シンフォニック・ロックで大団円を迎えます。一口にフォロワーといっても、ここまでいろいろなものを貪欲に取り込んでプラスに転化するフォロワーを前にしてしまうと、何かしらの音楽的パラダイムシフトが起こりえるのではという可能性すら感じてしまいます。
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