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2018/12/14

渡辺邦孝『デスクリムゾン サウンドトラックス』(2018)

祝「デスクリムゾン」20周年――せっかくだから、俺はデスクリムゾンのサウンドを改めて振り返るぜ

22年目のデスクリムゾン、オリジナルコンポーザーによるサウンドトラック・セルフカヴァー





 ダニー、グレッグ、生きてるか!? 先の2つのエントリでデスクリムゾンの20周年や22周年、コンポーザーの渡辺邦孝氏について書いてきましたが、その後、今年5月半ばに当ブログのコメント欄で渡辺氏ご本人から「世間の反応をリサーチしつつ年内にリリースを予定している」としてデスクリムゾンの新サウンドトラックの構想を教えていただき、9月20日にCD発売情報が解禁、ついに2018年11月14日、ソフト発売から22年の歳月を経て『Death Crimson Soundtracks』がリリースされました。旧盤の『デスクリムゾン ヒストリー』の再販ではなく、当時の音源データを最新環境のもとで全曲再録&未発表曲&新曲を追加した、全面リニューアルの新生盤です。CD/デジタル同時リリース。CDパッケージは紙ジャケット仕様です。いま、われわれは21世紀のデスクリムゾンを目の当たりにする……。こっちだぁ、越前……


Death Crimson Soundtracks
Death Crimson Soundtracks
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渡辺邦孝
アンコール音楽工房 (2018-11-14)
売り上げランキング: 793

《Amazon MP3》
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《iTunes》
https://itunes.apple.com/jp/album/death-crimson-soundtracks/1439393756


「デスクリムゾン」発売から22年を経て新録サウンドトラック発売――そのワケは? せっかくだから俺は作曲家の渡辺邦孝氏にインタビューするぜ!
(4gamer net|2018.12.05)


 先ごろ4gamerで公開された渡辺氏へのインタビュー記事は、とにかくトピックが満載でした。デスクリムゾンのサウンドの制作期間は2か月だったこと。オーダーはエコールの真鍋社長から直接受けたこと。最終的に制作したMIDIファイルを買い取ってもらい、制作から身を引いたこと。2008年9月に行われたエコールのツアーイベント「デスクルーズ」(※)のお誘いを真鍋社長から受けたこと、サントラリリースのアイデアを言ってくれたこと。ヤマハで作っていた教本にデスクリムゾンをもとにした楽曲を入れたこと(!?)などなど。なにより、「ストリングスがパーカッションの音色で鳴っていたり、スネアがパーン!と鳴るところがリムショットだった」楽曲が、『Death Crimson Soundtracks』ですべて本来想定されていたサウンドになったというのは一番のポイントです。

「デスクルーズ2008in友ヶ島」レポート
(from エコールソフトウェア|2008.09)

 初代デスクリムゾンとデスクリムゾンOXのカップリングサウンドトラック『デスクリムゾン・ヒストリー』(2001年)の初代デスクリムゾンBGMのトラックリスト(なおトラック1、2、4~10、12~15は「デスクリムゾンOX」のBGMにあたります)と、今回の『Death Crimson Soundtrack』のトラックリストを以下に併記します。


『デスクリムゾン・ヒストリー』『Death Crimson Soundtrack』

03. ファースト・ボス
11. 赤の扉
16. メインテーマ
17. 傭兵
18. デスマスク
19. サロニカ
20. リムブルク
21. コネラート
22. イズキット
23. アッシム
24. ムーラ
25. シャナファーラ
26. 宇宙船
27. デスビスノス
28. エンディング


01. ファースト・ボス
02. デスマスク
03. ムーラ
04. アッシム
05. 傭兵
06. メインテーマ
07. バトル・ブリッジ
08. イズキット
09. 赤の扉
10. 秘宝博物館
11. サロニカ
12. リムブルグ
13. 宇宙船
14. デスの覚醒
15. コネラート
16. シャナファーラ
17. デスビスノス
18. エンディング
19. 再起動
20. クリムゾン・デスの宮殿



 収録順が変わり、未発表曲/新曲が追加され、そして本来想定されていたサウンドとなったことでトータルで印象がガラリと変わりました。「ファースト・ボス」や「ムーラ」はエマーソン、レイク&パーマーからの影響を色濃く投影した楽曲で、「ムーラ」は「タルカス」のオマージュが全開です。「デスマスク」「アッシム」はそれぞれディシプリン期キングクリムゾン、「傭兵」は「太陽と戦慄パート2」のオマージュを感じさせる楽曲ですが、「傭兵」の成立の経緯は非常に興味深いものがあります。過去に渡辺氏はキングクリムゾン在籍時のビル・ブルーフォードと来日時に共演(渡辺氏とナニワ・エキスプレスの中村建治氏のキーボードデュオに、ブルーフォードがシモンズのドラムで合わせるというもの)しており、そのときに演奏された渡辺氏のオリジナル曲を流用してできたのだそうです。また、デスクリムゾンを象徴する「メインテーマ」はキングクリムゾンとジミヘンのエッセンスが混じり合った一曲。





 アップテンポな「バトル・ブリッジ」は、6月にYouTubeで先行公開もされていた未発表曲。アルバム構成的にもブリッジの役割を担っています。「イズキット」は、アコーディオニストでもある渡辺氏のソロアルバムの路線、ヨーロッパの雰囲気を感じさせるお洒落な一曲であり、同様の趣は「秘宝博物館」が継いでいます。〈せっかくだからのテーマ〉として語り継がれるまでになった「赤の扉」の持つ哀愁のテーマ性は、「エンディング」ともども改めて注目したいところ。無機質さと荘厳さを併せ持った新曲「デスの覚醒」は、「デスビスノス」のプレ・テーマとしてみても興味深い一曲です。ラストを飾る2曲のうち、「再起動」は、本盤を象徴するヘヴィ・プログレ。そして「クリムゾン・デスの宮殿」はデスクリムゾン初のヴォーカル曲であり、キングクリムゾン「エピタフ」にとことんオマージュを捧げた一曲。〈終わりはない プログレこそ我が運命〉というフレーズに、渡辺氏の矜持が集約されています。そして実はこのあと、21曲目に約45秒の「隠しトラック」があり、混沌とともにアルバムの幕が閉じられます。




 渡辺氏を擁するハードロックバンド「山水館」のライヴが11月11日には神戸、12月8日に東京でそれぞれ行われましたが、来たる12月15日は大阪のディスクピアで渡辺氏のソロ・インストアライヴが行われます。関西圏の人、この機を逃してはなりませんよ。

『渡辺邦孝「Death Crimson Soundtracks」発売記念ライブ~せっかくだから俺はこのCDにサインするぜ!』


「渡辺邦孝 Death Crimson SoundTracks Live & サイン会 Kunitaka Watanabe」



 12月15日のデスクリムゾン大阪インストアライヴのフルセット映像。たっぷり十数曲(約1時間)のライヴパフォーマンス。渡辺氏の小粋なエンターテイナーっぷりともども観応えがあります。思えば、キングクリムゾンへのオマージュ曲の数々や、QUEENのWe Will Rock Youを意識した「シャナファーラ」が収められた『デスクリムゾン・サウンドトラックス』が発売した月に映画「ボヘミアン・ラプソディ」が日本公開され、キングクリムゾンの来日ツアーも開幕しているので、まことに奇跡的巡り合わせだと思いますね。


「2018年12月15日 渡辺 邦孝氏、LIVE&サイン会トーク内容」
(Matのホームページ)
http://userweb.117.ne.jp/mat/20181215dcst.html
有志の方によりイベントの書き起こし。渡辺氏のMCも含めて、このインストアライヴそのものが新たなる「デスクリムゾン・サウンド・ヒストリー」といえる内容です。


「渡辺邦孝 Death Crimson SoundTracks Live」
セットリスト


①ファーストボス
②デスマスク
③ムーラ
④アッシム
⑤傭兵
⑥メインテーマ
⑦赤の扉
⑧サロニカ
⑨リムブルグ
⑩宇宙船
⑪コネラート
⑫シャナファーラ
⑬元町チャチャ
(上沼恵美子のおしゃべりクッキング テーマ)
⑭クリムゾン・デスの宮殿
⑮再起動











《『Death Crimson Soundtrack』への軌跡》
(セルフカヴァー/ライヴ演奏)

Kunitech Music210 Death Crimson Main Theme(Original Song)
(2014年10月22日)

Kunitech Music211 Death Crimson Moula(Original song)
(2014年10月26日)

Kunitech Music212 Death Crimson Death Mask(Original Song)
(2014年10月29日)

Kunitech Music213 Death Crimson First Boss(Original Song)
(2014年11月12日)

Kunitech Music222 Death Crimson Red Door(Original Song)
(2015年1月21日)

■Kunitech Music317 One-Man Show Part1 '15 9/27
(2015年9月27日)

8曲目で「デス・クリムゾン ファースト・ボス」
9曲目で「デス・クリムゾンのテーマ」を演奏。

Kunitech Music632 Death Crimson Assim(Original Song)
(2018年2月4日)

Kunitech Music633 Death Crimson Izukitto(Original Song)
(2018年2月7日)

Kunitech Music637 Death Crimson Limburg(Original Song)
(2018年2月14日)

Kunitech Music639 Death Crimson Spaceship (Original Song)
(2018年2月18日)

Kunitech Music641 Death Crimson Salonica (Original Song)
(2018年2月21日)

Kunitech Music643 Death Crimson Konerato (Original Song)
(2018年2月25日)

Kunitech Music645 Death Crimson First Boss (Original Song)
(2018年2月28日)

Kunitech Music649 Death Crimson Moula (Original Song)
(2018年3月4日)

Kunitech Music651 Death Crimson Main Theme (Original Song)
(2018年3月7日)

Kunitech Music652 Death Crimson Death Mask (Original Song)
(2018年3月11日)

Kunitech Music654 Death Crimson Red Door (Original Song)
(2018年3月14日)

Kunitech Music673 Death Crimson 4Boss (Original Song)
(2018年5月2日)

Kunitech Music681 Death Crimson First Boss(Original Song) (Live)
(2018年5月3日)

Kunitech Music682 Death Crimson Theme(Original Song) (Live)
(2018年5月3日)

Kunitech Music685 Death Crimson Shanafara (Original Song)
(2018年5月5日)

Kunitech Music706 Death Crimson Bridge (Original Song)
(2018年6月3日)

Kunitech Music776 Death Crimson Reboot(Original Song)
(2018年9月20日)

Kunitech Music784 Death Crimson Red Door(Original Song)
(2018年10月12日)

Kunitech Music785 Death Crimson Red Door(Accordion Ver.)
(2018年10月24日)

Kunitech Music790 Death Crimson Theme(Original Song)
(2018年10月21日)

Kunitech Music791 Death Crimson Shannafarrah(Original Song)
(2018年10月23日)

Kunitech Music792 Death Crimson Salonika(Original Song)
(2018年10月23日)

Kunitech Music793 Death Crimson Salonika(Original Song) Accordion Ver.
(2018年10月24日)

kunitech Music794 Death Crimson Main Theme(Original Song)
(2018年11月1日)

kunitech Music795 Death Crimson Main Theme(Original Song)(Accordion Ver.)
(2018年11月4日)

Kunitech Music796 Death Crimson Release!
(2018年11月13日)

Kunitech Music805 Death Crimson Main Theme(Original Song)
(2018年12月1日)

Kunitech Music807 Death Crimson First Boss(Original Song)
(2018年12月6日)

Kunitech Music808 Death Crimson Mercenary(Original Song)
(2018年12月10日)

Kunitech Music809 Death Crimson First Boss(Original Song)
(2018年12月11日)


■Death Crimson Main Theme【Rock Organ】



ラブライブ!サンシャイン!!の「Waku-Waku-Week!」や、アイドルマスター ミリオンライブ!の「満腹至極フルコォス」「シャクネツのパレード」などの作編曲者であるラムシーニ氏は渡辺邦孝氏の芸大での教え子の一人。氏も、デスクリムゾンのカヴァー動画を2015年8月にアップされていました。



2018/04/21

Yamantaka // Sonic Titan『Dirt』(2018)



“ PSYCHEDELIC NOH(能) WAVE OPERA FROM THE BEAST ASIAN DIASPORE ” を標榜し、サイケ、フォーク、ポップ、メタル、シューゲイザー、プログレ、ノイズ、仏教思想、漫画・アニメ、中国戯曲、歌舞伎などを織り込んだ音楽性を展開する、カナダ・モントリオールの「ヤマンタカ // ソニック・タイタン」(YT//ST)。中国とアメリカの血を引くアラスカBと、日本とスコットランドの血を引くルビー・カトー・アトウッドの二人を中心として2007年に結成された「Lesbian Fight Club」がやがてYT//STに発展し、2011年にアルバム『YT//ST』でデビュー。2013年には媽祖(道教における航海の守護神)をテーマにしたコンセプトアルバム『UZU』をリリース。一方で、2012年にはKlei Entertainment開発のニンジャアクションゲーム「Mark of the Ninja」エンディングテーマを提供し、2016年にはトロントのDrinkbox Studios開発による異色RPG「セヴァード(Severed)」サウンドトラックを、フィリピン系カナダ人女性からなるカリンタン(民俗打楽器)アンサンブル PANTAYOと競作しています。YT//STはバンドというよりも一種のアート・クリエイティヴ集団という面が強く、メンバーは流動的です。2015年にはギタリストのジョン・アンチェタ(2011年加入)と、オリジナルメンバーでありヴォーカルのアトウッドが脱退するものの、新たにギタリストのヒロキ・タナカ、スラッジ・パンク・バンド HSYのベーシストであるブランドン・リム、そしてPANTAYOのメンバー ジョアンナ・デロス・レイエスをヴォーカルに迎えて現行ラインナップとなりました。





 スタジオアルバム第三作となる『Dirt』のレコーディングは2015年から2016年にかけて行われており、PANTAYOのキャット・エスタシオ、カトリーナ・エスタシオがカリンタンの演奏で参加していることからも、時期的には「Severed」のサントラ制作と重なっていたものと思われます。アルバムコンセプトは「ホデノショニ連邦と仏教徒をテーマとした1987年制作の未発表アニメーションの架空サウンドトラック」。一万年後の未来、架空の地「Pureland」が大洪水に見舞われ、生き残った人々は軌道上に浮かぶバブルドームでの生活を余儀なくされていた。やがて、腐敗していない土壌を探し求めて傭兵団が結成され、崩壊後の世界へと降りたっていく――というポスト・アポカリプティックなストーリー。




 前作『UZU』はスケジュール面など様々な制約があったとのこと。それだけに本作にかけられた意欲もひとしおだったのでしょう。過去二作をさらに凌駕するヘヴィなテーマとサウンドで迫ります。轟音アンサンブルとコーラスによるイントロダクション「Karonhiake」に始まり、カリンタンの厳かな音色と浮遊感あふれるヴォーカルが紡ぎ出す夢見心地のムードを、やがて力強いバンドサウンドがゆっくりと突き破ってゆく「Someplace」。ギンギンに歪ませたベース&ギターのヘヴィメタリックなリフが高らかなヴォーカルとテンションを高め合う「Dark Waters」「Yandere」ではグネグネとしたうねりを伴ったプログレッシヴ・ハードロックサウンドと、ふいに顔を出す爽やかなメロディラインがヤンデレ的な二面性を表現しているともいえます。ズルズルとしたドゥーミーなサウンドと浄化をもたらすかのようなヴォーカル/コーラスによる「The Decay」もある意味で二面性をうかがわせる仕上がり。「Beast」は「Severed」サントラの作風にも通じるオリエンタルな空気を濃密にまとったミクスチャーサウンド。プログレ的キーボードソロが、悲鳴のようなシャウトが、ホーンセクションが混然となっています。強迫的なドゥーム/スラッジメタルとなってこれでもかと容赦なく攻め立てる「Hungry Ghost」「Dirt」でその緊張感は最高潮に達します。破滅的な様相は「Tawine」「Out of Time」のラスト二曲においても拭い去ることができず、本作のストーリーが悲劇的結末を迎えるであろうことを予感させます。最後まで不穏さと緊張感が途切れることなく、そして予定調和で終わらないトータルアルバムとして存分に気が吐かれています。




https://www.yamantakasonictitan.com/
https://ja-jp.facebook.com/ytstlabs/
https://www.youtube.com/channel/UCmPD2I1ZPTLT-B0E5XEGclg


Dirt
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Yamantaka // Sonic Titan
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「First Play: Yamantaka // Sonic Titan, Dirt」
(from CBC Music|2018.03.15)

「Yamantaka // Sonic Titan Brace for Impact on 'Dirt'」
(from exclaim!|2018.03.23)

「Yamantaka // Sonic Titan are tired of the "maelstrom of confusion” that follows them」
(from Newtronto|2018.03.23)


YAMANTAKA // SONIC TITAN & PANTAYO『Severed OST』(2016)

2018/02/23

Cody Carpenter『Cody Carpenter's Interdependence』(2018)




 父 ジョン・カーペンターの音楽的な右腕としてアルバムの作曲やレコーディング、ツアーなどに参加するかたわら、プログレッシヴ・ロック・ユニット「Ludrium」でも活動を続けているコーディ・カーペンター。2012年発表の1stアルバム『Zeal』を皮切りに、2ndアルバム『Pleasure of a False Past』(2015)、3rdアルバム『Unity』(2016)、4thアルバム『Through Sentinent Eyes』(2016) でプログレ、フュージョン、ゲームミュージックの要素を併せ持った良質なインストゥルメンタルを次々と生み出し、昨年頭にコーディ・カーペンター名義で発表した5thアルバム『Alternate Universe』では初のヴォーカルアルバムに挑戦するなど、コンスタントにクリエイティヴィティを発揮するとともに、着々と次のステップへと歩を進めていました。また、オムニバスホラーシリーズ〈マスターズ・オブ・ホラー〉の第一期作品としてジョンが手がけた「世界の終り/Cigarette Burns」(2005)のコーディ作曲スコアや、SUPER R-TYPEの3面BGM「We Wet You」(海外版では「As Wet as a Fish」)のピアノアレンジ&演奏の公開。イギリスのチップチューンユニット Electric Cafe(マーク・デイ)とのコラボレーションや、イタリアのエレクトロユニット CONFRONTATIONALのアルバム『The Burning Down』へのゲスト参加。ここ数年間にsoundcloudなどに単発的にアップしていた楽曲をまとめたEP『Infiltrate the Mothership』のリリースなどもトピックとしてありました。



Cody Carpenter's Interdependence
Cody Carpenter's Interdependence
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Cody Carpenter
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https://www.bluecanoerecords.com/codycarpentersinterdependence.html


 ジョン・カーペンターのセルフカヴァーアルバム『Anthology: Movie Themes 1974-1998』のレコ発を兼ねた14公演の北米ツアー(2017年10月29日~11月19日)への参加を挟んでリリースされた通算6thアルバムとなる『Cody Carpenter's Interdependence』は、ミキシングとマスタリングをジョンのツアーバンドの一員でもあるジョン・スパイカーが担当。リズム隊には、YELLOWJACKETS、JING CHIなどの活動や、トミー・ボーリン、アラン・ホールズワースなどとの共演で知られるベーシストのジミー・ハスリップ。TENACIOUS Dのサポートメンバーであり、エイミー・マンやジェイソン・ムラーズなど数多くのレコーディングに参加しているスコット・セィーバー(彼もまたジョンのツアーメンバーであります)を迎え、オーストリア/イタリア系のシュレッドギタリスト P・J・ディアトリがギターソロで客演し、さらにスペシャルゲストとしてヴァージル・ドナティが参加しています。PLANET XやRING OF FIRE、2010年のマイク・ポートノイの脱退に伴うDREAM THEATERのドラマーオーディションの参加者の一人であり、近年は渡辺香津美とジェフ・バーリンとのトリオなどでその腕を振るう、言わずと知れたスーパードラマーであるヴァージルの参加は本作の大きなトピックでありましょう。音楽的にも、これまでのソロアルバムで着々と積み重ねてきたプログレ、フュージョン、ゲームミュージックのクロスオーヴァーの集大成と言える内容になっています。





 冒頭を飾る「Jinrai Fuuretsu(迅雷風烈)」は、生バンドスタイルを知らしめるに格好のタイトなプログレッシヴ・フュージョン・チューン。「Face The Future」「Overlooking The Divide」では80年代のプログレやゲームミュージックの憧憬と親和性の高さを再提示し、メロディアスなシンセウェイヴ「The Divide」、ポップなフュージョン「Heart of Slag」「Thinking Of What Might Be」を経て、今から5年ほど前に書かれた「The Procession」は、全パートをコーディが演奏。レコーディングはAMBROSIAのバーレイ・ドラモンドのスタジオで行ったとのこと。ポップ・プログレ「Premonition」「Her Precious Youth」、シンセサイザーによるサウンドスケイプ的な小品「A Simple Sustenance」を挟み、ラストはヴァージルの圧巻のドラミングと、ディアトリのギターソロがここぞと炸裂する「Nebulous Is The Power」でアルバムは幕を閉じます。「相互依存」のタイトルを冠した本作は、コーディとレコーディングスタッフ陣との良好なケミストリーを示しているだけでなく、LudriumとCody Carpenterの二つの名義での活動の関係をも示す一枚であるともいえます。インタビューによると、今後はLudrium名義ではヴォーカルプロジェクトを、Cody Carpenter名義ではインストプロジェクトをそれぞれ行っていくだろうとのこと。コーディの「新章」は、今ここに開幕しました。







「Interview - Cody Carpenter」
(from Dreadcentral|2018.02.02)

「Interview - Cody Carpenter」
(from Cryptic Rock|2018.01.24)

Ludrium『Zeal』(2012)
Ludrium『Pleasure of a False Past』(2015)
Ludrium『Unity』(2016)
Ludrium『Through Sentinent Eyes』(2016)
Cody Carpenter『Alternate Universe』(2017)

John Carpenter『Lost Themes』(2015)
John Carpenter『Lost Themes II』(2016)

https://www.facebook.com/ludrium
https://soundcloud.com/john-cody-carpenter
https://www.youtube.com/channel/UC2hboJKaYwHLZQWWCyI9zOg
https://twitter.com/Ludrium

2018/02/10

プログレ/メタルの老舗レーベル MAGNA CARTA RECORDS バックカタログのbandcamp配信を開始

 1989年にピーター・モルティチェッリが、「Shrapnel Records」の創始者であるマイク・ヴァーニーとともに設立し、来年2019年には30周年を迎えるアメリカ・ニューヨークののインディペンデント・レコードレーベル「MAGNA CARTA RECORDS」。近年はマイペースなリリースを続けておりますが、1990年代から2000年代初頭にかけて精力的にプログレッシヴ・ロック、プログレッシヴ・メタルのカタログ、数々の企画トリビュートアルバムをリリース。SHADOW GALLERY、MAGELLAN、CAIRO、ENCHANT、TEMPESTなどが同レーベルからデビューし、DREAM THEATERメンバーのサイドプロジェクトである「Liquid Tension Experiment」や、一大プログレプロジェクト「Explorers Club」、テリー・ボジオ、トニー・レヴィン、スティーヴ・スティーヴンスによるインストゥルメンタル・トリオ「ボジオ・レヴィン・スティーヴンス」、TESTAMENTのアレックス・スコルニック、フレットレス魔人マイケル・マンリング、PRIMUSのティム・アレクサンダーによる「Attention Deficit」、スティーヴ・モーズ、ビリー・シーン、ジョーダン・ルーデスのソロアルバムなど、アメリカのプログレ/テクニカル系といえばまずここ、という名物レーベルとして確固たる存在感を示しました。そんな同レーベルが今年に入り、自社の過去のカタログをbandcampで順次配信中。現時点(2018年2月10日)でのリリースは以下の通り。


https://magnacartarecords.bandcamp.com/


Liquid Tension Experiment『Liquid Tension Experiment』(1998)




Liquid Tension Experiment『Liquid Tension Experiment 2』(1999)


※LTEの二作はSpotifyでも聴けます。


Explorers Club『Age of Impact』(1999)



Explorers Club『Raising The Mammoth』(2002)



Jordan Rudess『Feeding The Wheel』(2001)



Jordan Rudess『4NYC』(2002)



Jordan Rudess『Rhythm Of Time』(2004)



Jordan Rudess『Prime Cuts』(2006)※ベスト盤



Jordan Rudess『The Road Home』(2007)



Major Impacts『Steve Morse』(2000)



Steve Morse Band『Split Decisions』(2002)



Steve Morse『Major Impacts 2』(2004)



Steve Morse『Prime Cuts』(2005)※ベスト盤



Steve Morse『Prime Cuts Volume 2』(2009)※ベスト盤



Robert Walter's 20th Congress『Giving Up The Ghost』(2003)



Robert Walter『Super Heavy Organ』(2005)



OZRIC TENTACLES『Spirals In Hyperspace』(2004)



OZRIC TENTACLES「Even Chewier (Eat Static Remix)」※リミックス



OZRIC TENTACLES『The Floor's Too Far Away』(2006)



TEMPEST『The Double-Cross』(2006)



TEMPEST『Prime Cuts』(2008)※ベスト盤



TEMPEST『Another Dawn』(2010)



TEMPEST『The Tracks We Leave』(2015)



Points North『Road Less Traveled』(2012)



Points North『Points North』(2015)



Pinnick Gales Pridgen『Pinnick Gales Pridgen』(2013)



Pinnick Gales Pridgen『PGP 2』(2014)



Red Zone Rider『Red Zone Rider』(2014)



Red Zone Rider「Day of the Eagle / Dead Man Walking」※シングル



http://www.magnacarta.net/
https://www.facebook.com/MagnaCartaRecords/
https://www.youtube.com/user/magcart

2017/07/31

WOW!『Produk Hijau』(1983)

 イタリアのプログレッシヴ・ロック・レーベルであるMELLOW RECORDSはbandcampアカウントで過去のカタログや発掘音源などを定期的にアップしています。インドネシアものではDISCUSの2003年発表の1stアルバム『Tot Licht!』や、異才シンガーソングライター ハリー・ルスリの1977年発表の二部構成のロックオペラアルバム『Ken Arok』があるのですが、ジャカルタで1983年に結成されたロックバンド ワオ!が同年に発表したデビューアルバムは、まさに掘り出しもの。90年代初頭に解散を迎えるまで四作のアルバムをカセットテープで発表しています。





 メンバーは、EL&PなどのフォロワーバンドだったABBHAMAの元メンバーであるイワン・マジド(ヴォーカル/キーボード)とダーウィン・B・ラックマン(ベース)の二人に、当時すでにいくつかのバンドを渡り歩き、ソロでも数枚のアルバムを発表するという多忙ぶりであったFariz RMことファリス・ロスタム・ムナフ(ドラムス)を加えた三人。一曲目の"Dibalik Kemerdekaan"は二部構成、14分近い大曲ですが、一貫してフレッシュなポップサウンドを聴かせており、やりたいことをやりつつ、ヒットチャートとも折り合いをつけようという欲張りなスタンスがみなぎっています。その後も、しっとりとしたピアノ・バラードを配しつつ、プログレッシヴ・ロック/AORな味付けもしっかりした明快な歌ものアルバムというカラーは崩しません。ブリティッシュ・ポップやプログレ、とくに中期のGENESISへの傾倒は如実にうかがえるのですが、イントロからモロに"Firth of Fifth"な4曲目の"Armagedon"はその最たる一曲。国は違えど、同時期にアルバムデビューを果たしたアルゼンチンの良バンド PABLO EL ENTERRADORと同じ根っことベクトルを持っているという印象もあります。


 このあと、ムシャ・ヨーノース(ギタリスト)、イカル・インドラ(ドラムス)という二人のメンバーを迎えながら、1985年に2ndアルバム『Produk Jingga』、1990年に3rdアルバム『Rasio & Misteri』、1991年にラストアルバム『Lupus IV』(1990年公開の映画「Anak Mami Sudah Besar」のサウンドトラックでもあります)をリリース。アルバムを重ねるごとにプログレッシヴ・ポップ色は減退し、よりストレートでコンパクトなAORにシフトしています。また、イワンは1986年、1988年に二枚のソロアルバムをリリースしたほか、ロックバンド Cynomadeusのメンバーとして90年代初頭ごろまで音楽活動を継続。その後は音楽活動にカムバックすることなく(どうやら長らく服役をしていたとのこと)、2014年に57歳でこの世を去っています。ファリスはFariz RMとしてポップミュージック界で大成し、現在も精力的に活動を続けています。


「Yess Records:インドネシアのブートレグカセットレーベル」
(Red Bull Music Academy Japan)


70年代中盤から80年代後半にかけてのインドネシアは英米のバンドの海賊盤カセットテープがYess Recordsなどのショップを通じて数多く流通しており、少なからずシーン形成にも影響をもたらしていたとのこと。


「インドネシアのプログレ事情 改定ダイジェスト版」【前編】 【後編】
 (蝸牛の神託 蝸牛のゴタク)

ジェット尻氏による上記記事は、インドネシアン・プログレシーンを知るには欠かせない、必見の内容です。

2017/03/22

「アーサー王と円卓の騎士たち」四十年目の完全版 ― Rick Wakeman『The Myths & Legends of King Arthur』(2016)

アーサー王と円卓の騎士たち
リック・ウェイクマン
ユニバーサル ミュージック (2016-04-27)
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1975年に発表された『アーサー王と円卓の騎士たち (The Myths and Legends of King Arthur and the Knights of the Round Table)』は、イギリスのキーボーディスト、リック・ウェイクマンの代表作のひとつとして挙げられるタイトルであり、ナンシー・モリソンの著作に着想を得た1973年作『The Six Wives of Henry VIII(ヘンリー八世の六人の妻)』、ジュール・ヴェルヌの同名作をコンセプトとする1974年のライヴアルバム『Journey to the Centre of the Earth(地底探検)』とあわせて「文芸三部作」として初期のキャリアを成しております。このうち『地底探検』は1999年に「完結編」と題した続編が、2012年にはオリジナル版に新規パートを追加した再録盤がそれぞれ出ておりました。そして、今度は『アーサー王と円卓の騎士たち』に白羽の矢が立ちました。







 そもそも、本作は二枚組アルバムとして構想されていたものの、当時のレコードの収録時間の都合からカットをせざるをえなかったようです。オリジナル版からじつに四十年もの時を経ての「完全版」プロジェクトは、2016年2月にPledgeMusicで出資キャンペーンが立ち上げられ、ほどなくして目標を達成。その後、6月19日にロンドンのO2アリーナで開催された「Stone Free Festival」のプログラムの一環として、オーケストラとコーラス隊を帯同してお披露目もなされました。新たにロジャー・ディーンによるジャケットも付された本盤『The Myths & Legends of King Arthur 2016』は現在のところ公式通販のみでの流通であり、Amazonなどでは取り扱っておりませんが、ただの再録で終わっていない見事な内容であることを保証いたします。ぜひとも入手をオススメする次第。
goo.gl/PgF8GQ




 当時のスタイルで制作された、5曲の新曲"Morgan le Fay" "Princess Elaine" "Camelot" "The Holy Grail" "Percival the Knight"に、ピアノやコーラスを中心とする小品/ブリッジが追加されたことで楽曲数は7曲から20曲にまで膨れ上がり、CD二枚組、トータル88分の内容になりました。2016年版のコーラスアレンジはリックの手によるものですが、2016年版のオーケストレーションは新規追加パートもふくめて、オリジナル版を手がけたガイ&アン・プロセローが再び担当しています。ヴォーカルは、オリジナル版に参加したアシュレー・ホルトと、2012年再録版『地底探検』と同作に伴うツアーに参加した女性シンガー/サックス奏者のハーレイ・サンダーソンの二人。アシュレーの加齢を感じさせない朗々たる歌唱も素晴らしいのですが、一連の新曲におけるハーレイの時に伸びやかで、時にたおやかなるパフォーマンスが、再録&拡張版たる本作の豊かなイメージに大きく貢献していますし、ソウルフルなヴォーカルを聴かせるロックチューン"The Holy Grail"や、堂々たるシンフォニック・ロック・バラードな"Princess Elaine"は特に推したい曲です。また、全体のパフォーマンスでは、華やかなコーラスワークと多幸感あふれるバンドサウンドに彩られた9分半におよぶ長曲"Percival the Knight"が白眉。ドラムスはSTRAWBSのメンバーであり、リックの数多くのアルバムにも参加している盟友トニー・フェルナンデス。ベースはPROCOL HARUMのマット・ペグ。ギターのデイヴ・コルクハウンは、近年のウェイクマンのライヴサポートのほか、PROCOL HARUMやフランシス・ダナリーのツアーなどにも参加歴のあるプレイヤーであります。



http://www.rwcc.com/

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【The Myths and Legends of King Arthur and the Knights of the Round Table】(1975)

01. Arthur (アーサー王)
02. Lady of the Lake (湖の妖精)
03. Guinevere (王妃グィネヴィア)
04. Sir Lancelot and the Black Knight (湖の騎士ラーンスロットと黒騎士)
05. Merlin the Magician (魔術師マーリン)
06. Sir Galahad (騎士ガラハド)
07. The Last Battle (最後の戦い)


Rick Wakeman (kbds)
Gary Pickford Hopkins (vo)
Ashley Holt (vo)
Geffery Crampton (g)
Roger Newell (b)
Barney James (ds)
John Hodgson (perc)

New World Orchestra
English Chamber Choir(choir)
Terry Taplin(narration)

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【The Myths & Legends of King Arthur 2016】(2016)

※赤字は新曲

《DISC 1》

01. The Choice of King(イントロ)
02. King Arthur
03. Morgan le Fay
04. Lady of the Lake(小品)
05. Arthur's Queen(小品)
06. Guinevere
07. Lancelot and The Black Knight
08. Princess Elaine
09. Camelot

《DISC 2》

10. The King of Merlins(小品)
11. A Wizards Potion(小品)
12. Merlin the Magician
13. The Chalice(小品)
14. The Holy Grail
15. The Best Knight(小品)
16. The Contest(小品)
17. Sir Galahad
18. Percival the Knight
19. Excalibur(小品)
20. The Last Battle


Rick Wakeman(kbds)
Ashley Holt(vo)
Hayley Sanderson(vo)
Tony Fernandez(ds, perc)
Dave Colquhoun(g, banjo)
Matt Pegg(b)

The Orion Orchestra
The English Chamber Choir(choir)
The Nottingham Festival Male Voice Choir(choir)
Ian Lavender(narration)

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2017/03/12

技巧派バンドによる華麗なるプログレッシヴ・フュージョン ― 菊田裕樹『ANGELICFORTRESS TRISMEGISTUS』(2016)

『聖剣伝説2』『聖剣伝説3』『双界儀』『シャイニング・ハーツ』など、多数のゲームタイトルの楽曲を手がけてきたコンポーザーである菊田裕樹氏が、ギタリストの佐々木秀尚氏とともにユニット ANGELICFORTRESSを結成したのは2015年。同年末にデビューアルバム『Angelicfortress』を、2016年8月にデュオでの第二作『Double Helix』をリリースし、間をあけずして同年末にリリースされた本作でついにプロジェクトがギター&キーボードデュオからフルラインナップのバンドへと発展いたしました。実力派ミュージシャンの競演というと、菊田氏がスクウェア時代にコンポーザーをつとめられた『双界儀』(1998)が思い起こされますが、本作はよりコンパクトに、よりソリッドに焦点が絞られた内容です。



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 菊田氏のソロによる書き下ろしのイントロダクションを冒頭に据え、1stからの2曲と2ndからの3曲をバンド編成で再録した本作。参加ミュージシャンは、ツアーサポート、スタジオワークの傍ら、グルーヴィーな技巧派トリオ GRAVITATIONAL FORCE FIELDでも活動されているベーシストの小林修己氏。VIENNA、DED CHAPLIN、ExhiVisionなど、国内の数々のプログレ/フュージョン・バンドに名を連ねるフレットレスベースの名手 永井敏己氏。ジャズ/フュージョン、ポップス、サントラなど多岐にわたる仕事を手がける作編曲家/ピアニストの新澤健一郎氏。変幻自在のツインキーボード・デュオ NEO-ZONKでも活動されているキーボーディストの大沼あいさん。そのNEO-ZONKにサポートとしても参加されているセッションドラマーの伊藤 ショボン 太一氏。野獣王国など数々のアーティストやバンドのセッションに参加されているほか、佐々木秀尚氏と共に「有形ランペイジ」のメンバーでもある今井義頼氏。以上の面々が二チームに分かれた形になっており、佐々木氏は双方に参加しています。リズム隊が加わったことにより楽曲がグッと骨太になったのはもちろん、各パートの技巧と技巧のぶつかり合いがまことに気持ちいい。"Angelic Fortress"は10分近くにまで拡張され、1stアルバムの難曲"Dark Schizopherenia"はさらに音の密度が増しています。とびきりの爽快感に富む"Energy Blaster"は永井氏のフレットレスベースの存在感と牽引力がハンパなく、キーボードとギターがリードしていたデュオ版とはまた違った表情を見せています。バンドならではの醍醐味が横溢した、満足度の高いプログレッシヴ・フュージョン・アルバムでありましょう。




《Lineup》

佐々木秀尚(guitar) http://hidehisa.syncl.jp/
小林修己(bass) http://ameblo.jp/kobakobanao/
永井敏己(fretless bass) http://w01.tp1.jp/~a422368402/index.html
新澤健一郎(keyboard) http://www.shinzawa.net/
大沼あい(keyboard) http://neo-zonk.wixsite.com/neo-zonk-site
菊田裕樹(keyboard) http://hirokikikuta.com/
伊藤 ショボン 太一(drums) https://twitter.com/shobon_mint
今井義頼(drums) http://yoshinoridrums.wixsite.com/yoshinori-imai

《Track List》

01. Overture X
菊田裕樹(keyboard)

02. Angelic Fortress【1st収録曲】
菊田裕樹(clavinet, composer)
佐々木秀尚(guitar, arranger)
新澤健一郎(keyboard)
小林修己(bass)
伊藤 ショボン 太一(drums)

03. Dark Schizopherenia【1st収録曲】
菊田裕樹(composer)
佐々木秀尚(guitar, arranger)
新澤健一郎(keyboard)
小林修己(bass)
伊藤 ショボン 太一(drums)

04. Double Helix【2nd収録曲】
菊田裕樹(composer)
佐々木秀尚(guitar, arranger)
新澤健一郎(keyboard)
小林修己(bass)
伊藤 ショボン 太一(drums)

05. Energy Blaster【2nd収録曲】
菊田裕樹(keyboard, composer)
佐々木秀尚(guitar, arranger)
大沼あい(keyboard)
永井敏己(fretless bass)
今井義頼(drums)

06. Forever World【2nd収録曲】
菊田裕樹(keyboard, composer)
佐々木秀尚(guitar, arranger)
大沼あい(keyboard)
永井敏己(fretless bass)
今井義頼(drums)


コンポーザーとギタリスト、阿吽のテクニカル・フュージョン・デュオ ― 菊田裕樹&佐々木秀尚『ANGELICFORTRESS』(2015)

確かな技巧と音楽性が織り成す、グルーヴィーな技巧派フュージョン・トリオ ― Gravitational Force Field『ZERO』(2014)

軽やかな技量とセンス、変幻自在のツインキーボードプログレユニット ― NEO-ZONK『Luminous』(2015)


 なお、ANGELICFORTRESSの1stアルバム『Angelicfortress』(2015)と、2ndアルバム『DOUBLEHELIX』(2016)は菊田氏の公式bandcampアカウントでデジタル配信されています。




2017/02/02

高い切れ味と充実度を誇るロシアンヴァイオリンプログレ ― LOST WORLD BAND『Of Things and Beings』(2016)

 ユニークかつ実力派のバンドが数多くひしめくロシアのプログレッシヴ・ロック・シーン。そのなかでも、90年代から現在に至るまで継続的な活動を展開しているバンドというと、LITTLE TRAGEDIESLOST WORLD BANDの二つは外せません。リリースの二~三年前に録音を済ませ、一年の間をおいてリリースするという方式で演歌調のキーボード・シンフォニック・ロックの極みを聴かせるのが LITTLE TRAGEDIESなら、KING CRIMSONやJETHRO TULLなどからの影響をベースに、ヴァイオリンとフルートを前面に押し出したしなやかで颯爽としたクラシカル・クロスオーヴァーで魅せるのがLOST WORLD BANDです。






 フロントマンのアンドリイ・ディドレンコが、ヴァッシリ・ソロヴィエフ、アレクサンダー・アシモフとモスクワの音楽院で意気投合し1990年に結成。クラシック・ヴァイオリニストとしての活動と並行して自主制作でのリリースを続けながら、2003年に『Trajectories』でデビュー。当時は「LOST WORLD」名義であり、ヴォーカリストのアレクセイ・リバコフ擁する四人組バンドでした。その後、アレクセイが脱退。サポートキーボーディストやドラマーを迎えてインストバンドとしてのスタイルを強化します。アンドリイがニューヨークへ拠点を移すという大きな転機もあった2006年には第二作『Awakening of the Elements』をリリース。フランスのMUSEAレーベルから全世界流通となり、広く知られるところとなりました。

 2009年には第三作『Sound Source』をリリース。同作はバンド史上もっとも緊張感のみなぎったアルバムであり(最初に聴くならまずコレをオススメします )、バンド側もかなりの手応えを感じたのか、同年には三時間にわたるスタジオ・ライヴを行い、その音源は2011年にライヴアルバム『In Concert』としてパッケージ化されます。2013年にはアレクサンダーがプロデュースにまわり、ふたたびヴォーカル曲を交えながらトリオ編成で録音された第四作『Solar Power』を、翌 2014年には『Awakening of the Elements』の再録&リミックス盤や、アンドリイによるクラシカルなピアノ&ヴァイオリン作品集『Intervals』『Go 4 Sonatas』を相次いでリリースしています。

ちなみにiTunes storeでは750円という安価でダウンロード購入可能です。
https://itunes.apple.com/jp/album/sound-source/id339685175

【追記】Amazon MP3ではアルバム一枚300円です。安っ

Sound Source
Sound Source
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 以上の活動を経て、2016年10月にリリースされた第五作となる本作『Of Things and Beings』では、四部構成の「Shapes And Objects」、三部構成の「Simple as」といった、得意とする組曲を中心に、二本のガット・ギターが爽やかな風を吹き込む小品"Intertwined"やトロピカルな興趣の"On Thin Ice"など、アコースティック曲やスロウなヴォーカルパートを随所に挿入。前作で拡幅された音楽性を踏まえたうえで、叙情性や暖色系のカラーにも目配りの効いた内容になっています。もちろん、スキあらばキレ味鋭いヴァイオリンが飛び込んでくる持ち前の痛快さはブレることなく、ヌーヴォ・メタル期KING CRIMSONを意識したような"The Structure Of Madness"では、とびっきりにヘヴィなアンサンブルで度肝を抜いてきます。





https://www.lostworldband.com/
https://www.facebook.com/lostworldband/
https://www.youtube.com/user/Andid74



オヴ・シングス・アンド・ビーイングス
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2016/11/19

スティーヴン・ウィルソンに心酔するポーランドのマルチ奏者 ― Hubert Torzewski『The Expression』(2015)

The Expression [Explicit]
The Expression [Explicit]
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Hubert Torzewski (2015-10-03)

https://open.spotify.com/user/lebatteurfou/playlist/62WW4fXmJOT9MteXJzLd0j

 ポーランドのマルチコンポーザー Hubert Torzewski。幼少のころよりピアノやヴォーカルに興味をもち、PORCUPINE TREE、DREAM THEATER、GENESISなどに影響を受け、特にスティーヴン・ウィルソンに心酔しているメガネ男子。そんな彼がギター/ベース以外のパートを全て担当して創り上げたデビューアルバムが本作『The Expression』。ギター、ベースは五人のゲストミュージシャンを立てる形でカバーしています。ロック/ポップスからウェットなピアノバラード、オーソドックスなプログレチューンからラフなハードロックチューンまで起用にこなす、ユニークなミクスチャー感のある歌ものアルバムになっており、オランダのクリスチャン・ブルーインやスウェーデンのフレドリック・ラーソン(FreddeGredde)に通じるセンスも。期待のニューカマー……と思いきや、いつの間にかYouTubeアカウントやfacebookアカウントが非公開になっていて近況がさっぱりわからなくなり、さてどうしたものかと思っていたところ、少し前に自身の名前を冠したレコーディングスタジオを立ち上げていたようです。今後、音楽活動はどうしていくのかわかりませんが、まずは一安心。


http://www.torzewskistudio.pl/

Hubert Torzewski w WYWIADowisku #8
(from WYWIADowisko |2015.05.18)

Hubert Torzewski『The Expression』(2015)

2016/10/30

難波弘之 『一生鍵命』(2016)

一生鍵命
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難波弘之
キングレコード (2016-09-07)
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 さる9月10日の六本木での記念ライヴでは山下達郎氏やスターレス高嶋氏もゲスト参加し、四時間以上にわたる充実のパフォーマンスをみせてくれたキーボーディスト 難波弘之氏の「鍵盤生活40周年記念作品」となるアルバム。2010年にはデビュー作『Sense Of Wonder』(1979)とイメージアルバム『グリーン・レクイエム』(1984)の再発、SENSE OF WONDERの初ライヴDVDのリリース、2013年には27年ぶりとなるソロ名義アルバム『Childhood's End ~幼年期の終わり~』の発表と、近年も印象的なリリースが続いていますが、本作は主に2000年以降のバンドやプロジェクトでの楽曲(新録)を中心に、コンピレーションやサントラへの提供曲、そしてリーダーバンドであるSENSE OF WONDERや、自身のソロでの完全新曲を収録したベスト&レアトラックス。

 冒頭を飾る"浮遊"は、織田哲郎作曲、SENSE OF WONDER名義の新曲。じっくりとしたパワーバラードです。織田氏との久々のコラボレーションともなった楽曲であり、氏はギター&コーラスでも参加されております。二曲目の"Hokey Pokey Baroquey"、そして六曲目の"Orb"はExhiVisionの楽曲。同バンドは和田アキラ(g/PRISM)、永井敏巳氏(b/TOSHIMI SESSION、ex.VIENNA)、長谷川浩二(ds/THUNDER YOU POISON VIPER)といった歴戦の手練たちと2003年に結成したテクニカル・ジャズ・ロック・バンドであり、これまでに二枚のアルバムと一枚のライヴアルバムが出ています。 この二曲はともにライヴでは披露されていますが、バンドのアルバムには未収録です。

"256001"は、東海道新幹線開業50周年記念アルバム『走れ!夢の超特急楽団』(2014)への提供曲。スギテツの岡田鉄平氏とのデュオによる、ピアノ&ヴァイオリンのアコースティック・インストです。曲名は難波氏が小学生時代に乗車した思い出深い車両の番号。難波氏も相当な鉄道マニアでありながら、ソッチ系の依頼はなかなか来なかったとのこと。また、十曲目の"ODEN~往時電車~"も、鉄道コンピアルバム『恋する鉄道』(2015)への提供曲。こちらは難波氏自らヴォーカルもとった、素朴な歌もの曲に仕上がっています。"The DOOR INTO SUMMER"は、演劇集団キャラメルボックスによって2011年に上演された、ロバート・A・ハインラインの名作『夏への扉』の舞台版への提供曲の新ミックス。シンガーソングライターの玲里さんと、今年の夏にこの世を去られたZABADAKの吉良知彦氏と、SENSE OF WONDERの爽やかなコラボレーションによるヴォーカル曲。

 野獣王国は是方博邦(g/KORE CHANz)、鳴瀬喜博(b/カシオペア)、東原力哉(ds/ナニワエキスプレス)と90年代半ばに結成されたスーパー・フュージョン・ロック・バンド(現在のドラムスは小森啓資)。"Floating Island"は、アルバム『Candy』(2007)以来 約十年ぶりとなる新曲。ゆったりと滋味あふれるテイストで、リゾート感もある一曲に仕上がっています。2014年に放送されたアニメ「スペース☆ダンディ」に提供した二曲のうちの一曲"SPACE CHANTEY (宇宙舟歌~ただし、船酔い気味の) "は、キース・エマーソンが手がけた「幻魔大戦」や、難波氏がかつて制作された「真・幻魔大戦」のイメージアルバムの路線を踏襲した壮大なプログレインスト(制作側からそのものズバリなオーダーがきたとのこと)。「幻魔大戦」サントラのレコーディングにも参加されていたSHOGUNの芳野藤丸氏がフィーチャリング参加されているのもミソです。曲名の「スペース・シャンティ」はもちろんスペース・ダンディと引っ掛けていますが、R.A.ラファティの1968年の奇天烈スペースオペラ『Space Chantey(宇宙舟歌)』にも引っ掛けています。さらに難波さんのことなので、かつてデイヴ・スチュワートとスティーヴ・ヒレッジが在籍したプログレッシヴ・ロック・バンド KHANの1972年のアルバム『Space Shanty(宇宙の船乗り歌)』とも引っ掛けている可能性があります。

 THE HITS!?は、池田憲一(b/ROOT SOUL)、森信行(ds/ex.くるり)らと2011年に結成されたRED HOT CHILI PEPPERSトリビュート・トリオ。"Doggie Bag"は、同年のアルバムに収録された難波氏のオリジナル曲の新ミックス。グリグリと攻め立てるオルガン・ロック・チューンです。A.P.Jは、水野正敏(b)、山木秀夫(ds)らと2000年に結成された「Acoustic Progressive Jazz」トリオ(現在のドラムスは池長一美)。"Happiness"は、フクシマレコーズの企画コンピ『OTO-LOVE』(2013)へ提供した一曲。EDENは難波氏が2008年に立ち上げたソロ打ち込みユニット。同年のアルバム『Eden』はアンビエント路線の楽曲が収められており、上野洋子さんが数曲にゲスト参加されてもいました。8年ぶりの新曲となる"Proto - Consciousness"は神秘的なムードを湛えたピアノ&シンセ小品です。

 ラストに収録されたSENSE OF WONDER名義の新曲"ココロと心臓"は、作詞家活動で同じく40周年を迎えられた森雪之丞氏との久しぶりの再タッグを組んだ感慨深い新曲。海野十三のディストピアSF「十八時の音楽浴」の世界観に通じるエッセンスも織り込まれたストーリーにもグッとくる、八分半の大曲。もっとシンプルにする予定だったとのことですが、たっぷりと盛り込まれたそうる氏のドラムといい、玲里さんの暖かなコーラスワークといい、トリッキーでドラマティックな構成になっています。それでいて一抹の切なさを湛えたロックバラードとしても非常に素晴らしく、個人的には本作のハイライトだと思います。近年の活動を俯瞰できる充実の一枚ですが、もちろん、現在も難波氏はさまざまなバンドやプロジェクトで活動を展開されております。本作を足がかりに、これからの活動も追いかけてみてはいかがでしょうか。

 ところで、本作は各店舗(タワーレコード、ディスクユニオン、ワールドディスク)によって異なる購入特典CD/DVD-Rがあり、自分はタワーレコードで買ったので特典は"薔薇と科学"でした。もともとは『N氏の天球儀』(1986)の収録曲ですが、こちらは小森啓資氏(ds)とフュージョン・バンド パラダイムシフトの富倉安生氏(b)とのトリオによる1991年のテイク。 ジャズ・フュージョンギタリストのフランク・ギャンバレとの共演の話が上がった際、小森氏のプレイを聴いてみたいというギャンバレ氏の意向を汲んで録音されたものだそうで、演奏者以外ではギャンバレ氏しか耳にしたことがなかったという発掘音源です。

2016/10/15

ジェノヴァのたのしいプログレッシヴ・ジャズロック ― PROMENADE『Noi al dir di Noi』(2016)



 イタリア・ジェノヴァを拠点とする新鋭プログレッシヴ・ロック・バンド プロムナード。結成は2010年ごろ。本国で毎年開催されている、AREAの故.デメトリオ・ストラトス トリビュートコンサートイベント「Omaggio a Demetrio Stratos」の2012年度に参加しており、メンバーがインタビューを受けている映像がありました。キーボード兼ヴォーカルのマッテオ・バリゾーネを中心に、ギター、ドラムス、ベース兼サックス奏者を擁する四人組。メンバーが敬愛するデメトリオ・ストラトスやアラン・ホールズワースはもちろん、カンタベリー・ジャズロックのエッセンス、クラシカルな響きも兼ね備えたブリリアントなサウンド。軽やかにテクニックを織り交ぜていくというところでは、イギリスのGENTLE GIANTや、アメリカのECHOLYNにも近い印象です。イタリアのバンドということで挙げるならば、Deus Ex MachinaやD.F.Aあたりでしょうか。マッテオによる艶のあるヴォーカルも、単なる添えものではなく、アクセントとして効いています。ヴェテラン、新人を問わず軸をハズさないカタログを抱える信頼度の高いイタリアのプログレ/ジャズロックレーベル Altrockからリリースされたというのも大きなアドバンテージ。アルバム1曲目を飾る大曲"Athletics"をどうぞ聴いてみてください。めくるめく楽しい10分間が待っています。





 ちなみに彼らはYouTubeアカウントで演奏動画をアップしているのですが、ポケモンのメインテーマのカヴァーをしています。ちょっとAREAっぽくなるアレンジ、ほほえましい。




https://www.facebook.com/Promenade-112931495433989
https://soundcloud.com/la-promenade
https://www.youtube.com/channel/UCSy1CiXzPALRS6Y56rYQK8w


ノイ・アル・ディル・ディ・ノイ
プロムナード
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2016/09/07

アルゼンチン屈指のプログレバンド、事実上の最終作 ― PABLO EL ENTERRADOR『Threephonic』(2004/2016)



 70年代にアルゼンチンで結成され、市民への弾圧の激しかった軍事独裁政権下で活動を展開。政権が終焉を迎えた1983年に晴れてアルバムデビューを果たしたプログレッシヴ・ロック・バンド パブロ・エル・エンテラドール(墓掘りパブロ)。一枚のアルバムでアルゼンチン・プログレッシヴ・ロックの存在をより知らしめるところとなった彼らは、長らくの沈黙を経て1998年に二枚目のアルバムをリリース。こちらは、AOR/プログレッシヴ・ハードロックの良作でありました。2005年にキーボーディストのホルヘ・アントン氏が亡くなり、オリジナルメンバーが再び集うことは叶わなくなってしまったのですが、彼が亡くなる一年前に自宅スタジオでレコーディングされた楽曲が残っており、12年の時を経てわれわれの元へと届けられました。それが、事実上の三作目であり、ラストアルバムとなった本作『Threephonic』。全9曲のレコーディングには、オリジナルメンバーであるホセ・マリア・ブランとマルセロ・サリのほか、数名のゲストが参加。ホセ氏はソロや自身のバンドで現在も活動を続けており、2014年にはPABLO EL ENTERRADORの結成40周年を記念したライヴも行っておりました。アルバムは一作目と二作目の双方の作風を継いだ内容となっており、"La marcha del regreso" "Caída libre"の二曲は限りなく原点へと回帰した感慨深いインストゥルメンタルとなっています。ラテンアメリカ流ハードポップな"Encontraré un lugar"、トリッキーなラテン歌謡チューン"Los cielos de Irak"、ギターとヴォーカルが高らかに歌い上げるロックバラード"Pasión" "Clave de sol"など、壮麗なアレンジと哀愁のメロディ、そしてハートウォーミングなヴォーカルの三本柱はやはり素晴らしい。万全の状態でのレコーディングとは決していえなかったでしょうが、苦難の時代を過ごしたバンドの矜持と魅力がここに詰まっています。墓掘りパブロよ、永遠なれ。


https://www.facebook.com/pages/Viajero-Inmovil-Records/181866281831046

PABLO EL ENTERRADOR - Prog Archives

PABLO EL ENTERRADOR 『2 (Re-Issue)』(1998/2013)

2016/08/20

今年第二弾のソリッド・プログレ・フュージョン ― Ludrium (Cody Carpenter)『Through Sentinent Eyes』(2016)



 コディ・カーペンターによるプログレッシヴ・インストゥルメンタル・ユニット Ludriumの約7ヶ月ぶりのリリースにして、通産四作目のフルアルバム。今年4月に発表された、父 ジョン・カーペンターの二作目のソロアルバム『Lost Themes II』での楽曲・演奏面での貢献、そしてカーペンターバンドの一員として、同作を引っさげての世界各国のライヴやフェス出演など、今年に入ってますます活発化した活動を展開しているコディ氏。本作の楽曲のほとんどは今年3月から5月にかけて書かれたもので、一部は古いマテリアルをリファインしたものとのこと。先行公開された"Years" "Last Line of Resistance" "Cave of Time" "Subtle Cosmos"の4曲をふくむ全12曲を収録。本作のマスタリングは、2015年に誕生したばかりのフランスのシンセウェイヴレーベル LASERDISCS RECORDSの筆頭アーティストであり、プロデューサー Absolute Valentine。ちなみにコディ氏は同レーベルが今年3月にリリースしたコンピレーション第一弾に新曲"Starlight Desire"を提供しております。





 EL&P、GENESIS、スティーヴ・モーズ、ヴィンス・ディコーラ、細江慎治などからの影響を独自に昇華・ミックスし、ゲーム音楽、プログレ、フュージョン、シンセウェイヴの各要素を散りばめた四本柱のインストゥルメンタルサウンドはますます磨きがかかっており、冒頭を飾る"Last Line of Resistance"は、「慈悲のないはるか未来の世界で、人間が生んだ人工知能ロボットによる世界征服に立ち向かうのが、私達しかいない……」(コディ氏のコメント)というコンセプトのスリリングな疾走チューン。同曲しかり、"Misty is Our Love" "Jagged Hag" "Mind Over Matter"しかり、プログレとフュージョンが巧みにせめぎあうソリッドな楽曲展開がより練られた仕上がりです。FM音源とギターフュージョンをミックスしたノスタルジックな趣の"Cave of Time" "The Labyrinth"や、チャーチオルガンサウンドによるRPGライクな小品"Held"、80年代以降のポップ期GENESISに通じるきらびやかなメロディが躍動する"Subtle Cosmos"などを間あいだにはさみ、テンポよくまとめられています。


https://www.facebook.com/ludrium
https://soundcloud.com/john-cody-carpenter
https://www.youtube.com/channel/UC2hboJKaYwHLZQWWCyI9zOg
https://twitter.com/Ludrium


「Exclusive: Cody Carpenter talks Ludrium and tour with John Carpenter」
(from axs.com|2016.07.03)

受け継がれる音楽的遺伝子。ジョン・カーペンターの息子コディ率いるプログレッシヴ・ロック・バンド ― Ludrium『Zeal』(2012)

ゲーム音楽、フュージョン、プログレの折衷をより推し進めた、コディ・カーペンターの二作目 ― Ludrium『Pleasure of a False Past』(2015)

コンスタントなリリース、コンパクトなグッドメロディ ― Ludrium『Unity』(2016)


 ところで、8月頭にiOSでリリースされたスポーツアクションゲーム「Tap Track Heroes」のBGMをコディ氏が手がけており、Ludriumが昨年リリースした2ndアルバム『Pleasure of a False Past』の収録曲が使われています。


2016/07/27

二年間でアルバム七枚。カナダのストレンジ・ポップ職人の快(怪)進撃は続く ― Terriblething『Chucharrón』(2016)

 昨年からミュージックインストラクションビデオなどをYouTubeにアップし始め、ピーター・ヘンリックという名前も判明。フランク・ザッパやBEATLES、QUEEN、TALKING HEADS、Mr.Bungle、PRIMUSなどからの音楽的影響も公言し、「謎のおじさん」から「愉快な面白おじさん」にイメージチェンジ。たゆまぬリリースでミクスチャーな音楽性にもますます磨きのかかるカナダの奇才ミュージシャン Terriblething。氏については以前も取り上げていますので、まずはこちらをご参照をば。「へえ、何から聴いたらいいの?」という人には、まず"Yuko San"をオススメいたします。




素性不明、方向性不明、中毒性高し。謎が謎と謎を呼ぶプログレ・アーティスト Terrible Thing

奇才カナダ人、バンクーバーで炸裂~二作目の奇作をリリース ― Terrible Thing『Journey to the Centre of Zorn』(2014)


『Journey to the Centre of Zorn』発表後、彼の活動はますます活発化しています。まず2014年12月19日に三作目『The Depths of Krang』をリリース。十人近いメンバーの名前がクレジットされており、バンド体制か!?……と思わせつつ、やっぱり一人でつくっています。それから四ヵ月後の2015年3月27日に四作目『Antighost』をリリース。一方で、この頃からYouTubeにも顔出しするようになりました。再び四ヵ月後の2015年7月30日に五作目『Loquarion Modesto』をリリース。まずはアルバム三曲目"Friendly Sushi"を聴いてスシと和解せよ。それからしばらく期間が空き、約十ヵ月後の2016年5月17日にリリースされた六作目『Suck It Reagan』では、突如としてパンク/ハードロック化。それでは聴いてくれ、「I'm Scared My Dick Will Fall Out of my Pants (パンツからちんこがこぼれるのが怖い)」。間髪を入れず、約一ヵ月半の2016年6月29日に七作目『Too Many Planets』をリリースし、自己最速記録を更新……と思いきや、それからわずか十八日後、7月16日に八作目『Chucharrón』をリリース。あっという間に記録を大幅に塗り替えました。アルバムとしてもこれまでの集大成のような仕上がりになっており、英米ロック/ポップスからの影響を独自のユーモア精神とともに昇華したストレンジポップスメイカーの矜持を感じさせてくれる快作だと断言したい。今回もダウンロードはname your price(投げ銭)。さっそくダウンロードしてお友達にも聴かせまくろう。




https://www.facebook.com/terriblethingmusic
https://www.youtube.com/channel/UCy0iZjfKDaoWfG-QmsU8uLQ

2016/06/20

マルチな才能がさらに開花した、元Big Big Trainのドラマーのソロ二作目 ― Steve Hughes『Once We Were, Part One』(2016)

ONCE WE WERE-PART ONE
ONCE WE WERE-PART ONE
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STEVE HUGHES
JFK (2016-06-24)


 The Enid(1993~1998)や、Big Big Train(1991~1998、2002~2009)、ジョン・ミッチェルのKINOにも一時在籍していたこともあるイギリスのドラマー スティーヴ・ヒューズ。バンドを脱退後、2015年3月に『Tales From The Silent Ocean』でソロデビュー。長年の友人であるJ・C・ストランドや、元Big Big Trainのショーン・フィルキンス、CITIZEN CAINのスチュワート・ベルらのサポートのもと、躁鬱に苦しむジャーナリストをテーマとしたコンセプト作を創り上げました。それから一年を経て、早くもリリースされた二作目が本作。二部作の前半パートとなるアルバムであり、前作にも参加したポーランド人ヴァイオリン奏者のマチェイ・ゾロウスキや、サックス奏者、DARWIN'S RADIOのデック・バークら複数のギタリストが参加。ショーン・フィルキンスもそうですが、元Big Big Train組は爆発力のあるモダンプログレチューンをつくるのがめちゃくちゃ上手い。聴き手をいっさい飽きさせないリズムパターンの変幻自在ぶりはさすがドラマーであり、TOTOやRUSH、IT BITESやFROST*にも通じる芯の太いメロディック・ロック/モダン・プログレチューンを創り上げています。本作では冒頭から33分もの大曲"The Summer Soldier"を配しており、楽曲へのすさまじい自信の現れを感じさせます。一方で、"Kettering Road" "That Could've Been Us"、ピアノ/シンセやストリングス中心の小品"Propaganda Part 1" "Second Chances"などの甘いメロディをもつポップスナンバーが多いのも、TEARS FOR FEARSやSCRITTI POLITTIをフェイバリットに挙げる彼らしい。男女デュオで歌い上げられるラストナンバー"Saigo Ni Moichido"は、なぜか日本語タイトルのハートウォーミングなバラードです。マルチ奏者/コンポーザーとしての才がさらに開花した、充実の一作といえます。





Steve Hughes: Interview
(from Official Site)

『Once We Were, Part One』 - progstreaming
全曲ストリーミング試聴(期間限定)

http://www.stevehughesmusic.co.uk/
https://www.facebook.com/spaceinsubs/
https://www.youtube.com/channel/UC4ibwOr4hCzaxg9lIB55g7A

2016/06/11

八年の歳月を吹き飛ばす、エレクトロ・プログレッシヴ・ロックの金字塔 ― FROST*『Falling Satellites』(2016)

Falling Satellites
Falling Satellites
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Frost
Inside Out U.S. (2016-05-27)
売り上げランキング: 640

http://www.insideoutmusic.com/newsdetailed.aspx?IdNews=16843&IdCompany=8

 ジェム・ゴドフリー率いるイギリスのプログレッシヴ・ロック・バンド フロスト*の、『Experiments in Mass Appeal』以来、実に八年ぶりとなるオリジナルフルアルバム。この間にジェムは結婚して四人の子のパパになり、本業もふくめて多忙を極めていたとのこと。まずは粘り強くレコーディングを続けたジェムへの感謝、そしてアルバムの完成を寿ぎたいです。ラインナップはジェム(keyboard, vocal, etc)、ジョン・ミッチェル(vocal, guitar)、ネイザン・キング(bass)、クレイグ・ブランデル(drums)。八年ぶりのスタジオアルバムとはいうものの、その間にはアメリカのプログレフェス「RoSfest」出演時の音源にスタジオ録音の新曲"The Dividing Line"をプラスした二枚組アルバム『The Philadelphia Experiment』(2010)、ウェールズのスタジオで行われたセッションに、ジェム氏の自宅スタジオでのアコースティック・セッションの映像と音源を収録したDVD&CD『The Rockfield Files』(2014)のリリースがあり、キレとダイナミズムの増したパフォーマンスで彼らの良好な「途中経過」をみせてくれましたし、バンド周辺ではジョン・ミッチェルが新たなソロプロジェクト LONELY ROBOTを立ち上げるなど、嬉しいニュースもありました。




 イントロダクション"First Day"からの"Numbers"は、待ちに待ったアルバムへの期待感に見事に報いてなお余りある、ダイナミックなキラーチューン。畳み掛けるコーラスのハーモニー、込み入っているようで、おそろしく抜けのよいアレンジ。この曲だけでも、本作が過去二作の延長線上ではないということを知らしめてくれます。続く"Towerblock"は、ジェム・ゴドフリーの音楽的嗜好とプロデューサー業のフィードバックを強く感じさせる一曲。ダブステップ/EDMをガッツリと組み込み、持ち前の太いサウンドがよりいっそう弾ける仕上がりです。ちなみに氏はTom Bellamy(ex. The Cooper Temple Clause)、Eddy Temple Morris、Paul Mullenによるエレクトロ・ロック・バンド LOSERSの2ndアルバム『...And So We Shall Never Part』(2014)のミックスとプロデュースに携わっており、そのことを思い出しました。ジェムとジョンの共作による"Signs"は、めくるめくバンドサウンドはそのままに、ジョン・ミッチェルのヴォーカルを存分にフィーチャーしたメロディック・ロック。"Lights Out"は2014年の夏ごろにジェムのsoundcloudアカウント(現在は消滅)で短期間こっそり公開されていた曲。トーリ・ビューモント(過去には小室哲哉『Digitalian Is Remixing』にバッキングヴォーカルとして参加しています)のコーラスを得た、しっとりとしたバラードです。




 そして、本作のハイライトとなる"Sunlight"へ。一曲二十五分の大曲だったデビューアルバムの"Milliontown"を意識しつつも、それとは別の方法論でつくりあげられた、六部構成/総尺三十二分にわたる大作組曲です。第一パートの"Heartstrings"は前述の『The Rockfield Files』にも収録されていた楽曲ですが、アレンジ/ミックスは別物。楽曲展開も一分半ほど長くなり、シンフォニックなブリッジで第二パート"Closer to the Sun"へ。そしてここではジョー・サトリアーニがギターソロで客演しています。2012年のG3ツアーのサポートキーボーディストをジェムが務めたことが縁となっての参加で、やはりというか、バンドのシャープなサウンドとサトリアーニの流麗なプレイは相性がバツグンです。第三パート"The Raging Against the Dying of the Light Blues in 7/8"、は、そのタイトル通り七拍子を基調としたプログレッシヴ・メタルチューン。ヴァイオリンで客演しているのは、ゲームミュージックコンポーザーでありヴァイオリニストのマーク・ナイト。ハイテンションで惜しげもなくアイデアを吐き出しつながら、シームレスに第四パート"Nice Day fot It"へ。"Heartstrings"のメロディラインもリプライズしながら高密度のソロパートで加速度的にグイグイと突き進み、カタルシスをもたらしてくれます。そして、丸ごとアンビエントな第五パート"Hypoventilate"と、ピアノとヴォーカルによるシンプルなバラード仕立ての第六パート"Last Day"で、たっぷりの情緒とともに締めくくります。圧巻の構成、圧巻の余韻。"Lantern" "British Wintertime"の二曲はボーナストラック。前者は『The Rockfield Files』のアコースティック・セッションに収録されていた楽曲のスタジオ版。後者はポストロック調のドリーミーな一曲。美しいオーケストレーションとコーラスがしみじみと味わい深いです。


フォーリング・サテライツ
フロスト*
マーキー・インコーポレイティド (2016-06-22)
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 6月22日にはマーキー・インコーポレイティド/AVALONからSHM-CD仕様の国内盤でのリリースもひかえています。これまでは同社のベル・アンティーク レーベルからの輸入盤帯・解説付き仕様でのリリースでしたが、国内プレスでの流通は今回が初。また、以前よりアナウンスされていましたが、バンドは三作目となる本作をもってInside Outレーベルとの契約を終えます。次作のリリースがどこからになるのかは未定ですが、現ラインナップによる過去作の再録の構想もあり、今後もまだまだお楽しみは尽きません。そうそう、今年の7月24日は、『Milliontown』のリリース10周年を迎えるのですよ。


http://www.frost.life/
http://www.facebook.com/Official-Frost-154098904622178
https://frost.bandcamp.com/


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JEM GODFREY OF FROST*!!
(from Marunouchi Musik Magazine|2016.05.12)
インタビュー記事(日本語)

FROST*『The Rockfield Files』(2013)
FROST*『The Philadelphia Experiment』(2010)
FROST*『Experiments in Mass Appeal』(2008)
FROST*『Milliontown』(2006)
Lonely Robot『Please Come Home』(2015)
FROST*の前身バンド「FREEFALL」の楽曲が、元メンバーのsoundcloudにて多数公開中
FROST*のジェム・ゴドフリーも関与のLOSERSのアルバム『...And So We Shall Never Part』が4月4日にリリース

2016/04/25

アルゼンチン伝説のヘヴィプログレバンド、三十八年ぶりに復活 ― BUBU『Resplandor EP』(2016)



 1978年に残したたった一枚のアルバム『Anabelas』で伝説と化したアルゼンチンのプログレッシヴ・ロック・バンド BUBU。作編曲を手がけるダニエル・アンドレオーリを中心に、フルート、テナーサックス、ヴァイオリン奏者を擁した八人編成のもと、初期KING CRIMSON由来の叙情性とヘヴィなサウンドを長尺の展開にのせ、コッテリと濃厚な音世界を繰り広げていました。南米プログレものでも屈指のオススメアルバムの一枚として挙げられる同作は、EMI Argentinaより手ごろな価格で近年再発されております。そんなBUBUですが、先ごろ復活を果たし、なんと新作EPをリリース。まさか復活するようなバンドだとは思っていなかっただけに、青天の霹靂。マジでブッたまげました。バンド編成も当時と同じく、フルート、テナーサックス、ヴァイオリンを擁した編成(キーボーディストとフルート奏者はゲストとしての参加)。オリジナルメンバーはダニエルひとりだけですが、実力派の若手ミュージシャンでしっかりと固めています。2015年12月にレコーディングされたという3曲は、3分、6分、5分といずれもコンパクトな構成ですが、あのころの作風をキープしつつも、アップトゥデイトに成功しています。これはぜひとも、フルアルバムのリリースに期待したいところですね。



https://www.facebook.com/BubuResplandor
http://www.progarchives.com/artist.asp?id=626





Anabelas
Anabelas
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Bubu
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