2016年9月7日水曜日

アルゼンチン屈指のプログレバンド、事実上の最終作 ― PABLO EL ENTERRADOR『Threephonic』(2004/2016)



 70年代にアルゼンチンで結成され、市民への弾圧の激しかった軍事独裁政権下で活動を展開。政権が終焉を迎えた1983年に晴れてアルバムデビューを果たしたプログレッシヴ・ロック・バンド パブロ・エル・エンテラドール(墓掘りパブロ)。一枚のアルバムでアルゼンチン・プログレッシヴ・ロックの存在をより知らしめるところとなった彼らは、長らくの沈黙を経て1998年に二枚目のアルバムをリリース。こちらは、AOR/プログレッシヴ・ハードロックの良作でありました。2005年にキーボーディストのホルヘ・アントン氏が亡くなり、オリジナルメンバーが再び集うことは叶わなくなってしまったのですが、彼が亡くなる一年前に自宅スタジオでレコーディングされた楽曲が残っており、12年の時を経てわれわれの元へと届けられました。それが、事実上の三作目であり、ラストアルバムとなった本作『Threephonic』。全9曲のレコーディングには、オリジナルメンバーであるホセ・マリア・ブランとマルセロ・サリのほか、数名のゲストが参加。ホセ氏はソロや自身のバンドで現在も活動を続けており、2014年にはPABLO EL ENTERRADORの結成40周年を記念したライヴも行っておりました。アルバムは一作目と二作目の双方の作風を継いだ内容となっており、"La marcha del regreso" "Caída libre"の二曲は限りなく原点へと回帰した感慨深いインストゥルメンタルとなっています。ラテンアメリカ流ハードポップな"Encontraré un lugar"、トリッキーなラテン歌謡チューン"Los cielos de Irak"、ギターとヴォーカルが高らかに歌い上げるロックバラード"Pasión" "Clave de sol"など、壮麗なアレンジと哀愁のメロディ、そしてハートウォーミングなヴォーカルの三本柱はやはり素晴らしい。万全の状態でのレコーディングとは決していえなかったでしょうが、苦難の時代を過ごしたバンドの矜持と魅力がここに詰まっています。墓掘りパブロよ、永遠なれ。


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PABLO EL ENTERRADOR - Prog Archives

PABLO EL ENTERRADOR 『2 (Re-Issue)』(1998/2013)