1984年に公開され大ヒットを記録した映画「ゴーストバスターズ」は、その後各種ハードでゲーム化され、海外では近年も何らかの形で新作タイトルがリリースされています(今年はリブート版映画が公開されたこともあり、二タイトルがリリース)。日本国内で初めてリリースされたのは、ビッツラボラトリーが開発し、トクマソフト(徳間書店)から発売されたファミコン版。1984年にアメリカでApple IIやCommodore 64などで出たものの国内移植になるわけですが、その移植具合はよろしくなく、エンディングで唯一表示される「りり」の二文字がそのままゲームの代名詞となっています。そして本日、2016年9月22日で発売30周年を迎えました。
今から10年ほど前にジーパラドットコムの特集ページ(現在は404 not found)では、国内移植版「ゴーストバスターズ」の開発に関わられたビッツラボラトリーの創設メンバーである宮崎暁氏(ファミコンではほかに「テクザー」「キングスナイト」、PCエンジン版の「ファンタジーゾーン」「スーパーダライアス」「アフターバーナー」「愛・超兄貴」などにも参加)へのインタビューが掲載されていたのですが、その記事によると、開発中にメインプログラマーが交通事故に遭い、急遽、専務を駆り出して二人でプログラムその他諸々を担当されていたとのこと。また、「キングスナイト」(1986年9月18日発売)とほぼ同時期に進行していたということで、なおさらキビシイ状況であったことがわかります。
▽クリエイターズファイル「第213回 ビッツラボラトリー 宮崎暁さん」
(from Gpara com |2006.01.23|※Internet Archiveのログ)
宮崎氏:
思い入れが深い作品は、会社設立後初期の作品『ゴーストバスターズ』と『キングスナイト』ですね。
『ゴーストバスターズ』は映画のノリがとても好きで、今でもDVDを引っ張り出して見たりしてます(笑)。この作品は開発中にメインプログラマーが交通事故にあって入院しちゃいまして、急遽、私と当時の専務がプログラムを担当したりして、とにかく大変だったのを覚えています。ちなみに、この作品ではプログラムの他、グラフィック、音響も担当してました。今考えるとかなり無茶をしていたと思います。
『キングスナイト』では、これも先の『ゴーストバスターズ』とほぼ同時期に進行してた作品なのですが、当時のスクウェア(現スクウェア・エニックス)にいらっしゃった坂口さんや、音楽の植松さんと一緒に仕事が出来たとても幸運な作品です。
さて、悪名高き「りり」についてですが、これは単に「スタッフロールのデータ処理をミスっていた」という事実が判明しております。2015年にニコニコ動画にアップされたこちらの解析・検証動画を参照のこと。非常に面白いです。
「ゴーストバスターズの「りり」を直してみよう」
1988年に海外でリリースされたNES移植版ではちゃんとスタッフロールを見ることができます。なお、あちこちのスペルミスや文法ミスはほとんど直っていません。
「りり」は、当時徳間書店から刊行されていた《ファミリーコンピュータMAGAZINE》(ファミマガ)の懸賞用パスワードだった、という話も出回っていましたが、その真偽は怪しい状態です。実際に国会図書館でファミマガのバックナンバーにあたって調べられた方のレポート。
▽FC版ゴーストバスターズEDの「りり」はただのバグ? - 月記
【2016.09.24 追記】
「クリア後に表示されるパスワードをハガキで送ってくれた方 先着○名様にプレゼント!」という応募キャンペーンがあり、応募したらナンバーが振られた認定証カードが届いた、という情報をいただきました。ファミマガ以外で一番可能性が高いのはソフトの説明書かパッケージにキャンペーンの文言が入っていたのではないかというところですが、リアルタイムでソフトを購入された方で詳しくご存知の方、ぜひご一報ください。
私も先日、国会図書館でファミマガのバックナンバーを一通り調べましたが、やはり懸賞クイズ的な記述は見当たりませんでした。以下は、私がチェックしたファミマガの4月18日号から12月19日号までのなかでのゴーストバスターズ関係の記事の概要です。
《ファミリーコンピュータMAGAZINE》
▼1986年 No.5(4月18日号) P109
「超新作ゲーム先取り大作戦」半ページの告知。
(発売日未定・トクマソフト・価格未定)
▼1986年 No.6(5月12日号) P116
「超新作ゲーム先取り大作戦」半ページの告知。
(発売日未定・徳間書店・価格未定)
▼1986年 No.7(5月16日号 母の日特大号)情報なし
▼1986年 No.8(6月6日号)情報なし
▼1986年 No.9(6月20日号)情報なし
▼1986年 No.10(7月4日号) P120
「超新作ゲーム先取り大作戦」としてページ四分の一ぶんの告知。
6月予定の発売が遅れていることのお詫びの文面も。
(8月上旬発売予定・徳間書店・5200円)
▼1986年 No.11(7月18日号 創刊一周年記念特大号) P175
「超新作ゲーム先取り大作戦」半ページほどの告知。
「でもな~んかイマイチなんだよナ」というコメントから
開発状況がテンパっていることがうかがえなくもないです。
(8月上旬発売予定・徳間書店・5200円)
▼1986年 No.12(8月1日号) P6~9
タイトル見開きページと、ゲーム概要を伝える情報ページを
4ページにわたり掲載。発売予定はさらにズレこむ。
(9月上旬発売予定・徳間書店・5200円)
ちなみに10ページは「キングスナイト」の記事でした。
▼1986年 No.13(8月15日・9月5日合併号) P6~13
速報第二弾「必勝GBマニュアル」と題して、タイトル見開きページと、
ゲーム概要にさらに踏み込んだ情報ページを8ページにわたり
掲載。ファミマガでのゴーストバスターズ記事は本号がピーク。
5200円と表記されていた価格が、ここでいったん「未定」に。
(9月上旬発売予定・徳間書店・価格未定)
▼1986年 No.14(9月19日号) P120~123
発売日・価格が確定する。ゲーム発売直前特集として、
「必勝GBマニュアル3」と題した情報ページを4ページにわたり掲載。
(9月22日発売予定・徳間書店・4500円)
▼1986年 No.15(10月3日号)情報なし
▼1986年 No.16(10月17日号)情報なし
▼1986年 No.17(11月7日号) P92~93、P110
「超ウルトラテクニック50+1」のページに「優勝技」「大関技」「小結技」の三つの裏技が掲載。本号以降、ゴーストバースターズ関係の情報はすべてこの企画ページのなかのものになります。ちなみにファミマガのウル技ページには毎号「ウソテックイズ」というクイズがあり、51本の裏技のなかに一個だけ混じっているウソの裏技をクイズの答えとして読者に当てさせるという趣旨。「りり」が懸賞用パスワードだというウワサも、この企画の存在と記憶が混同されて発生した可能性があります。
「優勝技」 あっというまに大金持ちになるのだあ!!(P92)
「大関技」 ゴーザとの対決に役立つ2種類の隠れキャラ発見(P93)
「小結技」 動けなくなって、かなしばりになったみたいだ!!(P110)
▼1986年 No.18(11月21日号)情報なし
▼1986年 No.19(12月5日号) P134、P146、P149
「超ウルトラテクニック50+1」のページに「小結技」が二つ、「十両技」が一つ掲載。さらに「負けウルトラテクニック番外地コーナー」の欄外に「ウル技場外技」が一つ掲載。
「小結技」 隠れキャラのファミコンくんでダメージを0に!!(P134)
「小結技」 階段のない空中を歩いてしまう、変な魔術を見よ!!(P146)
「十両技」 なんて遠いショップまでの道のりなんだろうか!?(P146)
「ウル技場外技」 「電源を入れてからセレクトボタンを五回押すといくらスタートボタンを押してもゲームが始まらない」(ポーズがかかる)というもの。(P149)
▼1986年 No.20(12月19日号) P126
「超ウルトラテクニック50+1」のページ欄外に「ウル技場外技」が一つ掲載。「階段の昇り降りを繰りかえし、階段一段ぶんズレた状態でBボタンで扉を開けようとすると上の扉が開いてしまう」というもの。
以上になります。
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以下は余談。
▼ファミコン国内移植版「ゴーストバスターズ」のサウンドエフェクト担当は、ツルオカヨシアキ氏とソウタダシ氏のお二人。海外のゲームミュージック・データサイトである「Videogame Music Preservation Foundation(vgmpf)」では、「キングスナイト」のサウンドドライバも両人が担当されたことになっています。ファミコン版「キングスナイト」にはスタッフロールがなく、クレジットも確認できないのですが、二作の開発スタッフが同じで、開発時期が近いということからの推測によるものでしょう
http://www.vgmpf.com/Wiki/index.php?title=Yoshiaki_Tsuruoka
http://www.vgmpf.com/Wiki/index.php?title=Tadashi_Sou
▼1990年にゲームボーイやファミコン用ソフトとしてリリースされた「NEWゴーストバスターズ2」は、かのHAL研究所が開発。前作とは違い、良作に仕上がっています。そしてBGMのコンポーザー/アレンジャーは〈星のカービィ〉シリーズの石川淳氏。HAL研に入社してまもない頃の仕事のひとつです。良曲・良アレンジの宝庫であり、とくにステージ3のBGMはブリリアントな一曲。ぜひご一聴あれ。また、NES版ではMark Van Hecke氏がBGMを手がけられています。
▼1990年にリリースされたメガドライブ版「ゴーストバスターズ」の全BGM集。コンポーザー/アレンジャーは「エイリアンシンドローム」「獣王記」「ゴールデンアックス・ザ・デュエル」などを手がけられた長井和彦氏によるものです。
▼ゲーム版「ゴーストバスターズ」(1984~2016)リスト
「Ghostbusters」
(1984|Apple IIほか)
開発・販売:ActiVision
「The Real Ghost Busters」
(1987|アーケードほか)
開発・販売:データイースト
※1986年から1991年にかけてアメリカで放送されたテレビアニメシリーズ「ザ・リアルゴーストバスターズ」のゲーム版。日本では1987年に「迷宮ハンターG」のタイトルでリリースし、ゴーストバスターズの版権は使用していません。
「Ghostbusters II」
(1989|AMIGAほか)
開発:Foursfield|販売:ActiVision
「NEWゴーストバスターズ2」
(1990|ファミコンほか)
開発・販売:HAL研究所
「Ghost Busters」
(1990|メガドライブ)
開発:コンパイル/セガ|販売:セガアメリカ
「The Real Ghostbusters」
(1993|ゲームボーイ)
開発:ケムコ|販売:ActiVision
※日本では「ミッキーマウスIV 魔法のラビリンス」としてリリースされ、ミッキーマウスを操作する版権ゲーム。しかしヨーロッパ版ではこれがガーフィールドに差し替えられ、北米版ではリアルゴーストバスターズに差し替えられています。
「Extreme Ghostbusters」
(2001|ゲームボーイカラー)
販売:Light and Shadow Productions
「Extreme Ghostbusters: Code Ecto-1」
(2002|ゲームボーイアドバンス)
開発:Magic Pockets|販売:DreamCatcher Interactive
「Extreme Ghostbusters: The Ultimate Invasion」
(2004|プレイステーション)
開発:Similis Software|販売:Light and Shadow Productions
※上記三作は、「ザ・リアルゴーストバスターズ」に継ぐアニメシリーズとして1997年に放送された「エクストリーム・ゴーストバスターズ」のゲームシリーズ。
「Ghost Busters」
(2006|Windows)
開発:Behaviour Interactive|販売:Atari
※1988年のActiVisionのNES版をリメイク
「Ghostbusters: The Video Game」
(2009|プレイステーション3ほか)
開発:Terminal Reality|販売:Atari
「Ghostbusters: Sanctum of Slime」
(2011|プレイステーション3ほか)
開発:Behaviour Interactive|販売:Atari
「Ghostbusters: Paranormal Blast」
(2012|iOS/Android)
販売:XMG Studio
「Ghostbusters Beeline」
(2013|iOS)
販売:Beeline
「Ghost Busters」
(2016|プレイステーション4ほか)
開発:FireForge|販売:ActiVision
「Ghostbusters: Slime City」
(2016|iOS/Android)
開発:EightPixelsSquare|販売:ActiVision