Mountain (2013/09/17) Haken 商品詳細を見る |
イギリスのプログレッシヴ・メタル・バンド TO-MERAのギタリスト Thomas MacLean、キーボーディストのRichard Henshallが中心となって2007年に結成されたプログレッシヴ・バンド ヘイケンの3rdアルバム。本隊であるTO-MERAはゴシック、シンフォニックな要素も組み込まれた聴き応えのあるプログレッシヴ・メタルを展開しているのですが、このヘイケンは各メンバーの音楽嗜好、アイデアを詰めるだけ詰め込んだ欲張りなハイブリッド・プログレ・サウンドが魅力のバンドであります。
前々作『Aquarius』、前作『Visions』では英国的プログレッシヴ・ロック様式と米国的プログレッシヴ・ハード様式の境目を行ったり来たりしつつ、ゴシック・メタル、シンフォニック・ロック、チェンバー・ロック、アヴァン・ロック、チップチューン的な要素も顔を出すというゴッタ煮具合で、ニッチなサウンドを好む手合いにはたまらないものがあるとはいえ、良くも悪くもB級感に甘んじているような内容でありました。それだけに、今回の大化けぶりには驚かされた次第です。欲張りなスタイルは変わっていないのですが、サウンドの焦点がこれまでになくプログレッシヴ・メタルとして聴かせるという方向で格段に絞り込まれており、楽曲に詰め込まれた無数のアイデアがことごとく劇的な方向に収斂していったのは非常に大きい。頼もしいことこの上ないサウンドを聴かせてくれます。
抜けるような清涼感と効果的に差し挟まれるパーカッシヴなラテン・テイストが ただでさえ起伏に富む曲展開をさらにキャッチーに引っ張っていく、ドラマティック極まる構成のリードトラック"Atlas Stone"と、GENTLE GIANTやQUEENへのオマージュともいえるアカペラコーラスワークも印象的に響く、ファニーでヘヴィなプログレ・メタル・チューン"Cockroach King"の2曲は必殺の出来で、アルバムの掴みの曲としてバッチリ。終盤には10分越えの大曲"Falling Back To Earth""Pareidolia"を配し、トリッキーでドラマティックな趣向はさらに強まってゆきます。プログレ・メタルとしての手応えもさることながら、"Because It's There" "Somebody"など、ヴォーカル/コーラスのハーモニーを重視したシンプルな演奏で叙情的な側面がこれまでになくフィーチャーされており、全体的に思索的なムードの横溢したアルバム構成になっているところもポイントでしょう。
スタイルをデビュー時から頑として変えずにここまでのものを作り上げたことに、賞賛の言葉を贈りたいです。また、ミキシングとマスタリングには、SOILWORK、DARK TRANQUILLITY、AMON AMARTH、SYMPHONY X、OPETH、ジェイムズ・ラブリエなど、数々のメジャー級アーティストのアルバムなどに携わり、近年のヘヴィ・メタル/プログレ・メタル シーンには欠かせない人物の一人とも言えるJens Bogrenが関与していることも、今回の方向性に大いにプラスになったのではないかと思います。今年10月をもってフロントマンの一人であるThomas MacLeanがバンドを脱退するというアナウンスがされたものの、バンドは来年2月に開催される マイク・ポートノイ主催の一大プログレッシヴ・メタル・フェスティバル「Progressive Nation At The Sea 2014」への出演が決定しており、さらなる飛躍が期待されます。
●HAKEN - Official Website
●TO-MERA - Encyclopedia Metallum