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2016/10/29

新メンバー三人を迎えた「七人編成カンサス」入魂の一作 ― KANSAS『The Prelude Implicit』(2016)

暗黙の序曲
暗黙の序曲
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カンサス
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 じつに16年ぶり、通産15枚目となる、アメリカン・プログレッシヴ・ハード・ロックの雄 カンサスの完全新作アルバム。『Somewhere to Elsewhere』以来久々のアルバムということで、国内盤は「暗黙の序曲」という邦題で、メガヒットアルバム「永遠の序曲」「暗黒への曳航」に寄せてきていますが、かつてのサウンドの要を担っていたケリー・リヴグレンがバンドを去ってから久しく、スティーヴ・ウォルシュも、2009年のデビュー35周年記念ライヴを収めた『There's Know Place Like Home』(2013)のリリース後にバンドを離れました。しかし、彼らに代わって加入した三人の新メンバーを擁した「七人編成KANSAS」がつくりあげた本作は、非常に手応えのある内容に仕上がっています。

 KANSASとしては十年以上新作アルバムのリリースがありませんでしたが、じつは2009年に「NATIVE WINDOW」名義でアルバムが一枚出ています。同バンドはフィル・イハート、リチャード・ウィリアムス、ビリー・グリアー、デヴィッド・ラグスデールの四人による別働隊バンドなのですが、つまるところは、スティーヴ・ウォルシュを抜いた状態のKANSAS。作風も『Somewhere to Elsewhere』の路線をいくらか継ぎつつ、バンドのAOR的側面を抽出した歌ものを中心とした内容の好作になっており、本隊での新作リリース前の「手ならし」として、ワンクッション置かれた形になっていました。

 また、ベースのビリー・グリアーはこの十六年の間にSEVENTH KEYという骨太のプログレッシヴ・ハード・バンドを結成してアルバムを三枚出しており、そこからのフィードバックも本作に良好にはたらいています。新メンバーのひとりであるキーボーディストのデヴィッド・マニオンは、SEVENTH KEYのメンバーでもありますし、ギタリストのマイク・スラマー(彼はスティーヴ・ウォルシュが80年代に結成したバンド STREETSのメンバーでもありました)は本作の"Refugee"の共同作曲者にクレジットされてもいます。そして、新ヴォーカリストをつとめるロニー・プラットはKANSASのフォロワーバンドであるSHOOTING STARのメンバー。そしてセカンドギタリストとして加入したザック・リズヴィは、2000年に再編されたHAPPY THE MANのドラマーであるジョー・ベルガミーニによるインスト・フュージョン・バンド 4FRONTでもプレイしている人物。いずれも脇を固める人材として申し分のないキャリアの持ち主なのであります。




 ケリー・リヴグレンが全曲の作曲を手がけた前作はブルージーなロックチューンやカラっとしたバラードが多くを占めた伸び伸びとした作風でしたが、本作は改めてプログレッシヴ・ハード路線で見つめなおしたという印象を強く感じました。冒頭の二曲"With This Heart" "Visibility Zero"はハードな見せ場もガッツリと詰まっていますし、ロニーのヴォーカルが頼もしい、どっしりとしたミドルチューン"The Unsung Heroes" "Rhythm in the Spirit" "Camouflage"も嬉しい。そして、中盤に収められた8分18秒の長尺曲"The Voyage Of Eight Eighteen"はアルバムの白眉。全盛期に負けずとも劣らないドラマティックなつくりで期待に応えてくれます。最後は、「セクション60」(イラク・アフガニスタン戦争の退役死亡兵たちが埋葬されているアーリントンの国立墓地)に眠る兵士たちに捧げた哀切のインストゥルメンタル・バラード"Section 60"で幕を閉じます。ボーナストラックの二曲"Home on the Range(峠の我が家)" "Oh Shenandoah(オー・シェナンドー)"は、どちらも民謡のカヴァー。ちなみに"峠の我が家"はカンザス州の州歌でもあります。





http://kansasband.com/

2016/03/01

激しい叙情が染みいる、黄昏のプログレッシブハードフォークバンド ― 曇ヶ原『独言独笑』(2016)


https://soundcloud.com/kumorigahara

 かつてニューウェイヴバンド ピノリュックや歌謡ハードロックバンド ぐゎらん堂などにベーシストとして在籍していた石垣翔大氏によって結成された“日本語によるプログレッシブハードフォーク”バンド 曇ヶ原の1stアルバム。石垣氏の弾き語りソロユニットとして2010年6月より活動を開始した曇ヶ原は、2013年9月よりバンドスタイルへと発展。現在に至るまでコンスタントなペースで自主企画や対バンなどを行っております。また、初期には「例のK」(中学生棺桶の後身バンド)のヤミニ氏もギタリストとして在籍しておりました(その後、プログレッシヴハードコアバンド Emily likes tennisでも豪腕をふるうエンリケ後悔王子に交代)。






 本作『独言独笑』は全6曲。デモCD時代からの楽曲をふくめほとんどが7~11分に及ぶ長尺であり、タイトなリズム隊と暴れまくるキーボードが白熱の応酬を繰り広げるハード/プログレッシヴなパートと、黄昏た情景を喚起させるフォーキーなパートとが交互に展開される構成。変拍子アンサンブルのアグレッシヴな一体感に初期のKING CRIMSONやYESを、可変性に富みながらも時にハッとするような場面が到来する作風に、石垣氏が敬愛するプログレッシヴパンクバンド「痛郎」を彷彿とさせつつ、ふんだんに盛り込まれた展開をシームレスに噛み合わせていくバンドの手腕の巧みさも光ります。ハイライトは"うさぎの涙"や"砂上の朝焼け"といった大曲ですが、一方で、コンパクトな尺のなかで加速度的に起承転結が展開される"無風地帯"(石垣氏とエンリケ後悔王子の共作曲)も印象深いですし、ストレートな歌心をぶつけるピアノ主体のウェットなスロウバラード"雪虫"は、じんわりと染み入るラストを演出しています。




『独言独笑』

01. うさぎの涙
02. 午前三時
03. 無風地帯
04. 鉛色
05. 砂上の朝焼け
06. 雪虫


ジャケットデザイン:いとうかおす
録音・ミックス:ミツビシテツロウ(カタカナ)
マスタリング:中村宗一郎(ピースミュージック)
帯コメント:井手宣裕(痛郎)


《公式サイト》
http://kgh.lix.jp/
CDの通販案内もこちらで 

2015/05/29

幻の90’s関西プログレッシヴ・ロック・バンドの唯一作、再発 ― MILLPLAT(五十嵐久勝&泉陸奥彦&細川博史)『Millplat』(1994)

祝・再CD化

MILLPLAT
MILLPLAT
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MILLPLAT
ベル・アンティーク (2015-05-25)
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 NOVELA~Nuovo Immigratoの五十嵐久勝氏、DADA~KENNEDYの泉陸奥彦氏、SOPHIAの細川博史氏といった関西圏のプログレッシヴ・ロック・バンド出身の3人が中心となり、レコーディングエンジニアとしても知られる林皇志氏、松山直容氏を迎えて結成されたバンド ミルプラートが'94年に発表したアルバム。音楽性は叙情的な側面もあるテクニカルなプログレ・ハードで、前述の3バンドが持っていたテイストをバランス良くミックスしたという印象もあります。KENNEDY、SOPHIAの楽曲のリメイク・ヴァージョンも収録されているのもポイントでしょう。また、夜来香(ページェント、浪漫座の中嶋一晃氏率いるバンド)のヴォーカリストである外田直美さんや、ファンク系アイドルバンド 宝bune-buneのサックス奏者である堂地誠人氏も一部の楽曲にゲストで参加されています。

 在りし日の熱狂から醒めたようなムードも漂うオリエンタルな味わいのインスト"Ambassador"。泉氏のブルージーなプレイも交え、五十嵐氏のハイトーン・ヴォーカルをじっくりとした曲展開で聴かせる歌ものシンフォニック・プログレ"Tsuioku" "Do You Close Your Eyes"。激しいバンドサウンドをコンパクトな形で聴かせる"Down"。ラストの"Remember"は、ヴォーカルとギターのシンプルな編成による"Do You Close Your Eyes"のリプライズなので、MILLPLATで制作されたオリジナル曲は実質4曲ということになります。注目のリメイク曲ですが、KENNEDYのアルバムではインスト曲だった"Twinkling Nasa"は、ヴォーカル・ヴァージョンで収録されています(80年代後半のKENNEDYのライヴでは五十嵐氏がゲストで参加したこともあり、このヴァージョンもその頃から歌われていたようです)。ヴォーカルが加わったことにより音の厚みは増しましたが、勢いという点ではやはりオリジナル版に軍配が上がるかなといったところ。一方、オリジナル版はニューウェイヴ寄りのサウンドプロデュースと今ひとつ噛み合わず、ハードな面が削ぎ落とされた印象だったSOPHIAの"Prism"は、ぎこちない部分が改善されて秀逸なシンフォニック・プログレとして仕上がっています。シンセサイザーで代替していたサックスのフレーズが生になったのも大きいところです。一抹の寂しさを湛えてアルバムは幕を閉じます。バンドの活動はごく短期間で終わってしまったものの、このアルバムは関西プログレ界隈の人脈の繋がりを知る上で興味深い1枚です。早々に廃盤になっておりましたが、先ごろ、マーキー/ベル・アンティーク レーベルより、紙ジャケット仕様で再CD化を果たしました。

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01. AMBASSADOR (作曲:細川博史)
02. TWINKLING NASA (作曲:泉陸奥彦 - 作詞:泉由美)
03. TSUIOKU (作曲:林皇志)
04. PRISM (作曲:細川博史)
05. DO YOU CLOSE YOUR EYES (作曲:林皇志 - 作詞:五十嵐久勝)
06. DOWN (作曲:林皇志)
07. REMEMBER (作曲:林皇志 - 作詞:五十嵐久勝)

五十嵐久勝(vo)
泉陸奥彦(g.b.prog)
細川博史(ds)
林皇志(vo.kbd.prog)
松山直容(prog)

土屋天祥(Fleteles bass③④⑤)
三觜智紀(E.bass⑥)
外田直美(Backing Vocal③)
堂地誠人(sax③④)

[MP-9401](1994)


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余談ですが、泉氏と細川氏は本作から十数年後、コナミの音楽ゲームのライヴイベントである「THE GITADO LIVE 2011」に、共に出演されることになります。
http://www.konami.jp/bemani/gfdm/gfdmxg2/festa/live/index.html

●ノヴェラ - Wikipedia
●泉陸奥彦:Wikipedia

■SOPHIA『Defiance』(1986)
■DADA(泉陸奥彦&小西健司)『DADA』(1981) / 『城壁/鏡の中の家』(1994)
■KENNEDY(泉陸奥彦)『Kennedy!』(1987)
■KENNEDY(泉陸奥彦)『Twinkling Nasa』(1986)

2015/03/30

現在進行形のパフォーマンスで、AOR/プログレッシヴ・ハード・ロックの矜持も改めて示した入魂の傑作 ― TOTO『TOTO XIV』(2015)

TOTO XIV~聖剣の絆 [Blu-spec CD2]TOTO XIV~聖剣の絆 [Blu-spec CD2]
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TOTO

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 アメリカが誇るAOR/メロディック・ロックの最高峰 TOTOの、『Falling in Between』(2006)以来、9年ぶりとなる新作アルバム。スタジオ・アルバムとしては通産十二作目となるのですが、タイトルに掲げられた「XIV」は、アウトテイクやライヴ・トラックなどの未発表曲を収録した『TOTO XX』(1998)、カヴァー・アルバム『Through the Looking Glass』(2002)も勘定に入れた上での十四作目ということになるようです。邦題にも「聖剣の絆」とありますが、思えばここ数年のバンドの活動はまさに絆の強さを再確認させてくれるものがありました。『Falling in Between』リリース後、ベーシストのマイク・ポーカロが筋萎縮性側索硬化症(ALS)との闘病のためツアーを離脱し、それに伴って2008年7月にバンドは解散宣言をしますが、デヴィッド・ペイチの呼びかけで始まった2010年7月からのマイクのベネフィットのための期間限定再結成ツアーを経て再始動。2013年の35周年記念ツアーにおけるポーランド公演をシューティングしたライヴDVDもリリースされたほか、2011年と2014年には来日ツアーも行っております。再結成ツアーからは、『Fahrenheit』(1986)、『Seventh One』(1988)でメイン・ヴォーカリストを務めたジョセフ・ウィリアムズが正式メンバーとして復帰し、2014年には自身の活動をメインとしていくため脱退したサイモン・フィリップスに代わって、Steely DanやSTING、ジョン・メイヤーなどでプレイしていた実力派セッション・ドラマーのキース・カーロックが加入。さらに同年の夏のツアーからは、オリジナル・メンバーであるデヴィッド・ハンゲイトが、『TOTO IV』(1982)以来32年ぶりに復帰するという大きなトピックもありました。それぞれ十数年の歳月を経てのジョセフとデヴィッドの再合流もふくめ、感慨深いものがあります。


 
 レコーディングには十分な時間と相当の気合を入れて臨んだとのことで、スティーヴ・ルカサーは「『TOTO IV』に続く『TOTO V』のつもりで制作した」というコメントもしております。そしてその言葉に違わぬ、傑作アルバムに本作は仕上がりました。アルバムジャケットに久々に掲げられた「剣」のシンボルからも、並々ならぬ想いがうかがえるというもの。プロデュースにはバンドメンバーのほか、ルカサーの近年のソロアルバムでも作編曲や演奏などで腕を振るうCJ ヴァンストンを迎えるなど、気心の知れた人選がなされております。参加ミュージシャンには、リーランド・スカラー(b)、レニー・カストロ(perc)、トム・スコット(sax)などお馴染みの面々。また、タル・ウィルケンフェルド(b)、ティム・ルフェーヴル(b)の二名は、キース・カーロックのセッション人脈からの参加であることを付しておきます。

 ジョゼフの存在もあって、『Seventh One』のころの空気を少しばかり感じますが、アルバムに詰めこまれているのは、正しく現在進行形のバンドとしてのパフォーマンス。ジョセフのヴォーカルも依然としてフレッシュな魅力を保っているのもたまらないものがあります。前作がファンキーなグルーヴとハードエッジな曲が揃ったロック作品だったことを考えると、バラエティに富んだ曲調と、コンパクトでありながら効果的なアレンジの妙味を効かせた本作は、王道のAORのスタイルを改めて提示した感があります。アルバムは、エッジの効いたイントロと歯切れのよいカッティングギターが冴え渡るプログレッシヴ・ハード・チューン"Running Out Of Time"で幕開け、続いてダイナミックなビートと雄大なヴォーカル/コーラスで魅せる"Burn"へ。ルカサーとヴァンストンの共作による"21st Century Blues"は、そのままルカサーののソロの延長のようなブルージーな仕上がり。ともに先行公開されていた"Holy War" "Orphan"の二曲は、本作における象徴的楽曲。ヴォーカルとコーラスがハードエッジな曲調を相乗的に高めていく、この安心感がもたらすカタルシスがTOTOのひとつの魅力なのですよね。"Unknown Soldiers(For Jeffrey)"のジェフリーとはもちろんジェフ・ポーカロのことで、万感の思いを込めて亡き彼の想いに捧げられた珠玉のパワーバラードです。"Chinatown" "All The Tears That Shine"、そして日本盤ボーナストラック"Bend"の三曲に共同作曲者としてクレジットされているマイク・シャーウッドは、かつてデヴィッド・ペイチとスティーヴ・ポーカロがプロデュースを手がけたプログレッシヴ・ロック・バンド LODGICのフロントマンです(ちなみに、同じくLODGICのメンバーであり、元YES、現CIRCAのビリー・シャーウッドは、彼の弟にあたります)。それだけに、ウェットな質感といいダイナミズムといい、実に「わかっている」楽曲だなという印象を感じました。ラストの"Great Expectations"は、TOTOのプログレッシヴな側面を追求した楽曲。尺も6分53秒と本作最長です。前作の"Hooked"などでもバリバリのプログレッシヴ・ハード・ロックを聴かせてくれましたが、この曲はいつになくドラマティックな構成に重点を置いた仕上がりになっています。意外な収穫でした。

 2015年3月15日、本作がリリースされる数日前に、マイク・ポーカロが長年の闘病の末この世を去りました。復帰を切望していた彼の無念を思うとやりきれないものがありますが、本作を聴くことでも改めて哀悼の意を表したいです。



http://totoofficial.com/

○The making of the new Toto XIV album - Steve Lukather.com
○【インタビュー】スティーヴ・ルカサー「TOTOでプレイするのは喜び」- barks.jp
○WORLD PREMIERE:“HOLY WAR”“ORPHAN”【TOTO】 - Marunouchi Muzik Magazine
○スティーヴ・ルカサーが語るTOTO 9年ぶり新アルバム制作秘話 新しい歴史の幕開け - ZAKZAK

2015/02/25

スパイシーで縦横無尽、抜群のドライヴ感に富むプログレッシヴ・ハードロックを無造作に投下する、ワシントンの謎の存在 ONY

 bandcampに存在する謎のバンドというのはそう珍しいものでもないですが、なかにはビックリするくらいの求心力を持った手合いが紛れこんでいて、うっかり出くわしたりすると嬉しくなります。今回ご紹介するこのONYも、まさに驚きの存在。この謎のクリーチャーが描かれたアートワークもなんとも異様なのですが、プロフィールはワシントン州レッドモンドの出身であるらしいということしかわかりません。バンドなのかソロアーティストなのかも、どういうバックグラウンドを持っているのかも一切わからない。また、2012年6月に十曲の楽曲をアップロードしているのですが、一枚のアルバムとしてまとめるでもなく、すべて単体リリースという形をとっています。

 サウンドはフュージョン・タッチのテクニカルなギタープレイとオリエンタルなムードたっぷりのプログレッシヴ・ハード・ロックで、まさに縦横無尽のドライヴ感に富んだシュレッドなプレイが一貫した痛快極まる仕上がりなので、そこから推測するに、確かな技量を持ったギタリストが中心人物であるのは間違いないのではと思います。90年代フィンランドの伝説のサイケデリック・ハード・ロック・バンドであるKingston Wallや、姿を消して久しいスウェーデンのネオクラシカルギター仙人 スティーヴン・アンダーソンに近いものを感じさせますが、こちらには彼らの孕んでいた神秘性のようなものはさほどなく、むしろカラッとした後腐れのなさに全振りしたかのようなたたずまい。先立つものは何もなくとも、楽曲の説得力のみで一気に引き込んでゆきます。以下に、ONYがこれまでリリースした楽曲を全曲掲載いたします(各曲ともname your priceでダウンロード可能)。まずは長尺シャッフル・チューンの"Free Radicals"や、オリエンタルな方向性を強く印象付ける"Dead Gods Dancing"、ピロピロせわしない疾走チューン"Ghost's Dance"あたりをとっかかりとしてどうぞ。ヘンリー・マンシーニの"ピーター・ガンのテーマ"の秀逸なカヴァーも、むわっとした暑さすら感じさせるスパイシーなアレンジで味わい深いものがあります。



先に挙げたKingston Wallやスティーヴン・アンダーソンにからめて、90年代のゼロ・コーポレーションのメタル系カタログにしれっと紛れ込んでいてもおかしくないなと思いましたし、往年のシュラプネル・レコーズ系のテクニカルギタリストの諸作を好む手合いなどにはまさにストライクど真ん中の方向を行く内容でしょう。

2014/08/03

PENDRAGONのクライヴ・ノーランがプロデュースする、ポーランドの女性シンガーのソロアルバム ― Agnieszka Swita『Sleepless』(2014)

SleeplessSleepless
(2014/07/08)
Agnieszka Swita

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ポーランドの女性ヴォーカリスト Agnieszka Switaの1stソロアルバム。彼女は数年前より、PENDRAGONやARENA、SHADOWLANDといった多数のプログレッシヴ・ロック・バンドを股にかけるClive Nolanと組んだシンフォニック・ロック・ユニット CAAMORAでも活動しておりますが、ここにきてソロ名義での作品をリリースしました。NolanとAgnieszkaとの出会いは2005年頃まで遡り、CAAMORA名義としてはこれまでに3枚のEPと、冒険小説作家ヘンリー・ライダー・ハガードの「洞窟の女王」をモチーフとしたロック・オペラ・アルバム『She』、そして同アルバムの楽曲を演奏したライヴDVDと、アコースティック・ライヴアルバムを発表しております。また近時では、Nolanのプロデュースによるプログレッシヴ・ロック・ミュージカル「Alchemy」のキャストにも名を連ねており、精力的な活動を展開しています。

SheShe
(2008/02/28)
Caamora

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ソロアルバム、とは言っても本作のプロデュースはNolanであるので、実質的にCAAMORAの延長線上です。作風もいくらかゴシック・メタル寄りかなというくらいで、基本的にはバンドスタイルで展開するスケールの大きなシンフォニック・ロック・サウンドであります。CAAMORAでも遺憾なく発揮されておりましたが、Agnieszkaのヴォーカルの表現力はやはり卓越したものがあり、伸びやかさや力強さもさることながら、妖艶な側面の演出に長けています。ヴォーカル/コーラスを前面に押し出し、エッジの効いたバンドサウンドで仕上げられた「Cosmo」三部作をハイライトに掲げ、パワーバラード・スタイルの"Borderland" "In Her Arms"、エモーショナルなサビを設けたリードトラック的な"Trapped"、最後はプログレッシヴ・ロック・オペラな趣向をダイナミックに繰り広げる"Sleepless"といった、コンパクトな全10曲。安定感のある演奏とプロダクションで生み出された、秀逸な歌もの作品として首尾一貫した内容になっています。



アルバムのミキシング/マスタリングは、PENDRAGONのバンドメイトであるKarl Groom。バックバンドは、キーボードとオーケストレーションを担当するNolanを筆頭に、元IQのPaul MenelのバンドでもプレイしているギタリストのSteve Harris(もちろんIRON MAIDENの同名メンバーとは別人)、Twelfth NightやJUMPなどへの参加歴もあるベーシスト Andy Faulkner、そして何より驚いたのが、先ごろDRAGONFORCEを脱退したDave Mackintoshがドラムスとして参加しているところです。彼がDRAGONFORCEを脱退したのは、プログレッシヴ・ロックがやりたくなったからというのもあるのだそうですが、なるほどこういう繋がりでやっていくのかと。実はDRAGONFORCEはPENDRAGONと浅からぬ関係があります。というのも、初期アルバムのミックス/エンジニア周りやプロデュースはKarlが担当していた上、Nolanは演奏やバッキングヴォーカルでアルバムにずっと参加しているからです。彼らのスタジオアルバムのクオリティの高さは、ひとえに彼らの力によるところも少なからずあったのではないかなと思います。

●Agnieszka Swita - Official Site
●Agnieszka Swita - YouTube
●CAAMORA - ProgArchives
●デイヴ・マッキントッシュ - Wikipedia

2014/08/02

知る人ぞ知るジャーマン・プログレッシヴ・ハード・ロック・バンド、14年ぶりのカムバック作品 ― SOUL CAGES『Moon』(2013)



1990年ごろに結成され、90年代にMASSACRE RECORDSから3枚のアルバムをリリース、SAVIOUR MACHINEやVENI DOMINEといったバンドともツアーを行うなどしながらも。2000年代に入って完全に沈黙してしまったドイツのプログレッシヴ・ハード・ロック・バンド SOUL CAGES。'94年のデビュー・アルバム『Soul Cages』は、かつてテイチクのインペリアルレコードから国内盤も出ていました(カナダのTILESやドイツのRICOCHETなど、テイチクやビクターは90年代にB級プログレ・ハードのカタログをちょくちょくリリースしていましたねえ)。そんな彼らですが、近年バンド活動を再開していたようで、2013年8月になんと14年ぶりとなる新作をリリース。それがこの『Moon』になります。ラインナップも、5人中4人は全てオリジナル・メンバー。前三作に参加していたベーシストのStephan Tiggesのみ不在ですが、彼に代わって、ヘヴィ・メタル・バンドSomewhere in Nowhereの元メンバーであるJörg Bodeが本作でプレイしています。マイルドな男女混成ヴォーカルと、RUSHやSAGA、FATES WARNING影響下のタイトなプログレ・ハード・サウンドは10年以上の歳月を経ても変わっておらず、若干渋さを称えた感はあるものの、精力的に活動していた90年代からそのまま地続きになっているという印象。華はないですが、抑制されたダイナミズムでじっくりと聴かせるタイプなので、B級サウンド好きのツボを否応なくくすぐる内容になっています。先ごろ、プログレッシヴ・ロック系ストリーミング試聴サイトである「Progstreaming」に、アルバムの全曲がフルサイズでアップされました。期間限定ですので、視聴はお早めに。

Progstreaming - SOUL CAGES 『MOON』



●SOUL CAGES - Official Site
●SOUL CAGES - Encyclopedia Metallum
●SOUL CAGES - ProgArchives

2014/02/22

A.C.T『Circus Pandemonium』(2014)

CIRCUS PANDEMONIUMCIRCUS PANDEMONIUM
(2014/02/19)
アクト

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スウェーデン有数のプログレッシヴ・ハード・ポップ・バンド アクトの5thアルバム。2006年発表の4thアルバム『Silence』から実に8年ぶりとなる新作です。2007年のヨーロッパツアーの後、数年来のマネージャーと袂を分かち、長らくライヴ活動を休止していた彼らですが、水面下ではアルバムの制作を行っており、数年前からmyspaceやfacebookなどでレコーディングの進捗状況をこまめに公開しておりました。それだけに、まさに満を持しての完成といった感があります。メンバーのラインナップは3rd、4thアルバム制作時と同様、Herman Saming(Vo)、Jerry Sahlin(kbd)、Ola Andersson(g)、Peter Asp(b)、Thomas Lejon(ds)の5名。ゲストでSara Wendelford、Linnea Olnertという二人の女性シンガーと、Imogen Ross、Peter Riderという二人のヴォイス担当、そしてカナダのプログレッシヴ・ハード・ロック・バンド SAGAのキーボーディスト Jim Gilmourを迎えています。SAGAはフロントマンのジェリー・サーリンが特に敬愛しているバンドであり、SAGAと共にツアーをしたこともあるだけあって、氏の今回のゲスト参加はなかなか感慨深いものがあったのではないでしょうか。

ヘルマン・サミングの甘いヴォーカル、QUEENを彷彿させるブ厚くも華麗なるコーラスワーク、RUSHやSAGA、IT BITESからの流れも汲んだ、巧みな緩急と併せてより一層のカタルシスを与えてくれるテクニカルなバンド・アンサンブル(現ドラマーのトーマス・レイオンはプログレッシヴ・メタル・バンド ANDROMEDAのドラマーも兼任しています)、Electric Light Orchestraや10cc、CITY BOYなどの往年のブリティッシュ・ロック・バンド譲りともいえるポップなメロディ・ライン、ストリングスにこだわったシンフォニックなアレンジなど、バンドがこれまでに培ってきたものはより一層の洗練のもとに提示されており、互いに邪魔をすることなく鮮やかかつ澱みなく聴かせられる手腕はやはり流石と言わざるを得ません。キャッチーな甘さを控えたヘヴィなサウンドを聴かせる場面も多く、プログレッシヴ・ハード・ロック色の強いバンドサウンドで勝負していた初期の頃を思わせるゴリゴリな押しの展開も復活しています。

また本作は、とあるサーカスが大混乱に至る顛末を描いたストーリー・コンセプト・アルバムとなっています。邪悪な表情のサーカス団員と鎖に繋がれた一人の男をあしらった穏やかならぬアルバムジャケットや、爆発炎上するビッグトップから逃げ出す団員や動物達が描かれたブックレット内のイラストが象徴するように、詞のテーマは終始暗いムードが覆っております。これまでもバンドは決して明るいとは言えないテーマの楽曲をユーモアとペーソスを絡めていくつも歌ってきましたが、本作では醜くも悲しい人間模様の縮図をサーカスに見ております。鞭打たれ疲弊した動物達、情け容赦のないマネージャー、痛ましく涙に暮れるピエロ、醜い風貌のために虐げられる団員、危険な状況に追い込まれる空中ブランコ乗りの女…彼らの悲哀と屈辱そして怒りと絶望が、存分に磨きのかかったポップでキャッチーなサウンドに載せて歌われる、その複雑な味わいたるや。

アルバムは短めのイントロダクションを経て、エッジも効いたテクニカルチューン"The End"で幕開けし、8年のインターバルを感じさせない不変のA.C.Tのサウンドの魅力をこれでもかと示しています。また、この曲は本作のストーリーのハイライトにあたる楽曲でもあります。アルバムが始まっていきなり結末部分を歌うという趣向もさることながら、"調教師のルイスが動物達を解き放ち、たちまちのうちに阿鼻叫喚となるサーカス。その混乱の中でサーカスのバンド(その名も「A.C.T」)が「ショウは続けなければならない(Show Must Go On)」と高らかに宣言し、演奏を続けていく…"という内容の詞も実にメタな仕掛けだなあと。これ以降、サーカスの面々のバックグラウンドにスポットを当てた楽曲が続いていくというアルバムの構成と併せて見てみると、なおのことそう思います。続く"Everything's Falling" "Manager's Wish"でも爽やかなヴォーカル/コーラスと鮮やかな起伏に富む楽曲展開のキャッチーな駆け引きが繰り広げられ、裏打ちのリズムも交えて一際ポップに躍動する"A Truly Gifted Man"は、終盤に盛り込まれたシンセの泣きのメロディラインも印象的な1曲に仕上がっています。これら前半パートの澱みなくスピーディーな構成だけとってみても、飢えたファンの渇きは十分に癒されるのではないかと思います。

中盤では1~2分ほどの楽曲がいくつも続き、丸ごと寸劇やSEから成る"Presentation" "Argument"も交えて、シアトリカルな趣向もより強まります。大仰なヴォーカルと凝りに凝ったコーラスワークで目まぐるしく駆け抜ける"Look At The Freak"や、SAGAのジム・ギルモアがハイヴォルテージなキーボード・ソロで参加した怒涛のプログレ・メタル・インスト"Confrontation"、サラ・ウェンデルフォード嬢とのエモーショナルなデュエットによるバラード"A Mother's Love"という一連の流れは聴きものです。観衆の前で愉快な狂人として演じ続けたあまりに擦り切れ、自分の「顔」を完全に喪失してしまうピエロを描いた"The Funniest Man Alive"は、とびっきりのポップ・センスの裏に内包された凄まじい悲壮感が心を打つ1曲。「死刑」という最後のショウに赴かざるを得なくなったダンサーを描いた"Scared"は、日本盤ボーナス・トラックです。ボートラながらテーマはサーカスというコンセプトと通底しているため、しっかりとアルバムの1曲として溶け込んでいます。ここからからラストまでは重厚な楽曲が続きます。メタリックなリフとシンフォニックなアレンジが美しくも哀しいサビへと収束する"A Failed Escape Attempt" "Lady In White"のドラマティック極まる構成は、もはやロック・オペラの域。ヘルマンのヴォーカルの素晴らしさも改めて実感させられます。また、"A Failed Escape Attempt"では、フリークスと蔑まれてきた一人のサーカス団員が逃げ出すチャンスを与えられるというストーリーが展開されているのですが、彼が喪失感と共に虐げてきた者達への復讐を誓うのがラストを飾る"Freak Of Nature"。ミドルテンポの曲調にも象徴されるかのように、深い影を落としながらアルバムは終幕を迎えます。その余韻はあまりにも重いものです。

まさにデビューからの十数年間の総決算と言うべき仕上がり。8年分の説得力も最後の最後まで伝わってきました。曲・構成・コンセプトそしてアレンジと、細部に至るまでじっくり丁寧に練り込まれたそのこだわりには頭が下がりますし、素晴らしいアルバムでもって示したバンドの鮮やかな復活劇を改めて喜びたいと思います。本作は海外では3月にリリースされるのですが、それに伴って本国でのライヴも既にいくつか決定しているようです。願わくば是非とも来日して欲しいところ。同じくスウェーデンのバンドで、ポップでメロディアスなサウンドを志向しているMOON SAFARIとカップリングで来日してくれたら言うことはないなあ、なんて。



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2013/12/02

MAGELLAN『Cynic's Anthem (Digital Single)』(2013)

1985年に結成され、1991年にアメリカのプログレッシヴ/テクニカル・ロック系レーベル MAGNA CARTAからデビュー、同レーベルを離れて後もコンスタントなペースでアルバムをリリースしている、トレント、ウェインのガードナー兄弟率いるアメリカのネオ・プログレッシヴ・ロック・バンド MAGELLAN。数年前からアナウンスされている新作アルバム『Inert Momentum』を今なお制作中(保留中?)の彼らですが、一方で昨年あたりから、ゲストを迎えてのコラボレーション・トラックをデジタル・リリースで発表しております。

こちらはRob Lopezというヴォーカリストを迎えての、KANSAS"Dust In The Wind"のカヴァー


こちらは今年3月に公開された新曲"Good To Go"のサンプル。かのブラス・ロック・バンド CHICAGOのメンバーであるRobert Lammが作詞で、Lee Loughnaneがトランペットでそれぞれゲスト参加しています。ガードナー兄弟は近年、彼らと親交を深めているようです。


この18分半のトラックは、MAGELLANがこれまでに発表したアルバム曲の断片を繋げたメドレー。選曲はもちろんガードナー氏自らによるものです。


こちらはCHICAGOのギタリスト/ヴォーカリストであるKeith Howlandをフィーチャーした、全5パート・トータル8分半のドラマティックな歌もの路線の組曲"Better Suite"。また、Lee Loughnaneがトランペットソロを吹いているほか、GTR(スティーヴ・ハケット脱退後に加入)や、キース・エマーソン、カール・パーマーとの"3"などで知られるRobert Berryがベースとギターを担当しています。


フリーダウンロード音源として公開されたヘヴィ・プログレ路線のデモ・トラック。『Inert Momentum』の布石的なトラックなのでしょうか。


そして、先ごろ発表されたトラックがこの"Cynic's Anthem"。CHICAGOのJason Scheffがコーラスで参加しています。シンセサイザーの打ち込みをメインにしたデジタリーな1曲で、それゆえに90年代初めの頃のMAGELLANのカラっと明快なテイストを匂わせる懐かしい仕上がり。また、この曲にはCHICAGOのメンバー3人が参加したヴァージョンも用意されているそうです。Tris Imbodenがドラムで、Keith Howlandがギターソロで、Lee Loughnaneがホーン・アレンジで参加したオルタネイト・ヴァージョンは、そのうち公開予定とのこと。


●MAGELLAN - Official Site
●MAGELLAN(band) - Wikipedia
●MAGELLAN - ProgArchives
●CHICAGO(band) - Wikipedia

2011/03/30

CMB『Sound Majesty』(2011)



 茅原実里「Key for Defection」ツアーの会場で販売された、彼女のバックバンドCMB(Creative Music Band/Chihara Minori Band)のアルバム。メンバーは須藤賢一(kbd)、岩田ガンタ康彦(dr/per)、山本直哉(b)、加藤大祐(g)、室屋光一郎(vln)の5名、2008~2011年のツアーで演奏されたオリジナル楽曲を中心とした全10曲を新規スタジオ・レコーディングで収めています。アルバムの試聴PVが上がったときから大いに期待していたのですが、いやはや、これは凄い。ここぞと弾きまくり、叩きまくる強靭でパワフルなバンド・アンサンブルの醍醐味が存分に味わえる、ド直球のプログレッシヴなインスト・アルバムであります。ヴァイオリン奏者を擁するプログレ・バンドと言えばイタリアのPFMやアメリカのKANSASが思い浮かびますが、CMBはどちらかというと後者のタイプに近い印象。メンバー全員のプレイが素晴らしいのですが、時に情感豊かに、時にキレ味抜群のプレイでサウンドに一層のメリハリを与える室屋大先生のヴァイオリンは非常に耳を惹きます。

 ハードな疾走感を味わうなら「Shining Mosh」「Soldiers of the Queen」、バンドの一体感を味わうなら「Hot Colosseum」「Sound Majesty」あたりでしょうか。YESの「Changes」やEL&P「Black Moon」のパロディ的なフレーズも盛り込まれており、そのあたりもニヤリとできます。中でもこれは!と思ったのが「Open the new century」。ベートーヴェンの第九のフレーズをフィーチャーしたRAINBOWの楽曲「Difficult To Cure」の明らかなオマージュなのですが、バンドがオーケストラ帯同で行った1984年の来日公演ヴァージョンのアレンジを意識したのではないかと思われるダイナミックな仕上がり。終盤ではクワイア・コーラスが入り、大仰な盛り上がりを見せます。「君がくれたあの日-Adult refrain-」「純白サンクチュアリィ-sweet midnight-」の2曲は茅原嬢のアルバム曲のアレンジ・ヴァージョン。こちらもプログレ・テイストを強めたアレンジが施されており、原曲とはまた違ったドラマティックな印象。流通が限られているのが勿体無いとこれほどまでに思ったことはありません。プログレ・リスナーは是非一聴されることをオススメいたします。



【追記】
 『Sound Majesty』は当初会場限定のみでの流通でありましたが、現在はランティス公式通販で入手可能です。また、2012年の3月3日には渋谷O-EASTでCMBの単独ライヴが開催、後にこのライヴの模様を収録したDVDがリリースされました。そして同月にCMBメンバーチェンジが発表され、大幅にラインナップが刷新されました。CMBのプログレ的側面の要を担っていた須藤氏の脱退は特に大きな変化をもたらすのではないかと思われますが、今後の活動に期待ですね。



●須藤賢一/菊谷知樹 他
「宇宙をかける少女 O.S.T Vol.1 LEOPARD」「Vol.2 P.O.D.」「BEST Collection」(2009)
◆須藤賢一WORKS プログレ・パロディ曲聴き比べ

【CMB:Lantis内情報サイト】

2011/02/18

ガールズ プログレッシヴ・ロック・バンド VELVET PΛW (ベルベット・パウ)の軌跡



 80年代初頭から90年代中ごろにかけて活動していたレディース・ロック・バンド:ベルベット・パウ。彼女達がアルバムデビューした頃は活動時期的に国内でバンドブーム、ガールズバンドブームの時期にもあたり、彼女達もそんな追い風を受けてのデビューだったようですが、メンバー全員の確かなテクニックと、アメリカン・プログレ・ハードに近い質感を持った歌モノサウンド(各メンバーがTOTOやJOUNRNEY、VAN HALEN、ASIAといったAOR系バンドを一様に好んでいたのがやはり大きいと見えます)は凡百のガールズバンドとは一線を画しており、当時としてもかなり異質な存在だったのではないでしょうか。80年代の活動初期ごろに彼女達が対バンしていたバンドに、関西プログレハードの雄:スターレスや、泉陸奥彦氏が在籍していたアヴァンギャルド・ジャズ・ロックバンド:KENNEDY、そしてルーシェル、ロザリア、などがいたというのも頷けるというもの。



「VELVET PΛW」(1989)
 88年にレディースロックコンテストで入賞、その勢いを受けてレコード会社との契約が決まり、翌年にCBS/SONYより発表されたデビュー1作目『VELVET PΛW』。バンドのセルフプロデュースのもと、TOTOやJOURNEYを志向したプログレハードテイストと、やや泥臭めのハードロックテイストのバランスを取りつつ、一方ではJOURNEYやTM NETWORKを思わせる「Aim Of Lover」のようなわかりやすい楽曲も織り交ぜています。また、「Cynthia」「Everyday」といったミドルテンポの楽曲展開・構成には、デビュー作とは思えない貫禄と土台の揺ぎ無さを強く感じます。爽やかに乾いたギターがドライヴし、キーボードが鮮やかに味付けするラスト曲「LONG WAY OUT」は次作への布石も兼ねているような仕上がり。





「SIGN」(1990)
 2ndアルバム。バンドのカタログの中でも最もプログレハード度が高まった作品であると個人的に思います。やや暗めのトーンだった前作とは一転して、本作では明るめの方向性に。コーラスワークも前に出てき始めており、各楽曲のキャラの立ち具合もより明確に。そして元マライアの笹路正徳氏、土方隆行氏の両氏がアルバム・プロデュースを手がけられているところもポイント。ハードかつ骨太なサウンド作りにおいてはこれ以上ないほどに心強い人材はないです。以降、バンドと両氏との製作体制は最終作まで続きます。躍動的なオープニング「Changes」、シニカルな詞にグニグニとトリッキーな動きを見せるベースの明瞭さが気持ちの良い「Sorry Mother」「T.V.Game」の他、キーボードの活躍ぶりも増え、空間的なバラード「空を見ていた」や、ファンキーなAOR「Love Commission」「Giving It Up」といった一味違った楽曲もあり、ポップサイドの楽曲の充実振りにバンドの良好なコンディションが伺えます。また、プログレサイドにあたる楽曲が強烈。中でも1分半分近いイントロから、捻りと変拍子を加えた疾走感溢れる展開とバシっと決まるサビにシビれる「Say You've Got the Sign」はアルバムのハイライトと呼ぶにふさわしい。また、6分弱のちょっとした大曲「Soaler」はキーボードをフィーチャーしまくったシンフォニック・プログレ曲で、途中のキーボードソロは白眉。この曲で堂々たる〆となるのもお見事。キャッチーだけども一筋縄ではいかない彼女らのプログレ・ハード・サウンドがここで確立。





「Desire」(1991)
 90年代には聖飢魔IIやアースシェイカーといったメタル/ハードロックバンドとの対バンも行い、特に聖飢魔IIの面々との親交は深かったようで、共にメディア出演などもしていた模様。そういったことも影響したのか、はたまたレコード会社からの方向転換要請なのか、91年発表のこの3rdアルバムではハードロックへのアプローチがグっと強まっており、SHOW-YAばりのパワフルさを発揮。肉感的なタイトル曲「ディザイアー」を皮切りに、ソリッドかつタイトなサウンドが全開。特にシングルカットされた「太陽をつれて」は"勝負に出た"という勢いを感じさせるフレッシュ極まりない痛快なハードポップ曲で、北欧のバンドがやっていてもおかしくない仕上がり。反面、プログレっぽさは「Beat That Paranoid」や「Sail On」で味付け的にとどまっているという程度になり、また「プラスチック・ガール」や「夏の終わり」など、楽曲の傾向がポップスに寄り始めてやや没個性気味というか丸くなってきたというのも感じます。「Peeping Tom」「私の中の彼女」の2曲の作詞に森雪之丞が参加しているのも、よりキャッチーな方向性にという"テコ入れ"的な意図があったのでしょうかね。




「目覚めるまで」(1992)
 前作を最後にギターの高橋洋子嬢が脱退し、後任に伊東憂紀嬢を迎えて制作、バンドにとって最終作となった4thアルバム。今作には笹路&土方のコンビに加え、坂井紀雄氏もプロデュースに参加(ちなみに笹路、土方、坂井の3人は元NAZCAのメンバー)。前作のハードロック/ポップス路線にさらなる磨きをかけたという仕上がりで、1stの頃と比べると大分方向転換してしまいましたが、元々土台がしっかりしているため依然として骨太なサウンドが健在なのは流石というほかないです。前作ではやや散漫なせいか少々ジレンマめいたものも感じてしまいましたが、本作ではしっかり筋が通っていて、ストレートな威勢の良さを感じさせるのが嬉しい。シングルカットされた「目覚めるまで」はもちろん、「その瞳のポラロイド」「こんな悲しいしあわせを」でのエッジの効いたリフとキャッチーなサビは、アルバムタイトルではないですが目が覚めるようであります。しばらくナリを潜め気味だったキーボードの迸る様な出音も実にパワフル。本作発表後、93年にキーボードの増田友希江嬢が脱退、95年3月に活動休止を発表し、バンドは14年間の活動に幕を閉じることになります。



●The record of VELVET PΛW
●ガールズバンド:Wikipedia

 バンドのフロントマンでありドラムスを担当していた桐生千弘氏は、バンド解散後はコンポーザー/アレンジャーとして、他アーティスト(ともさかりえ、奥菜恵、カルメン・マキetc)への楽曲提供やCM・アニメ劇伴作曲などの活動をされていたようです(笹路氏と共に仕事をされていることが割と多かった模様)。Wガンダム、名犬ラッシー、カードキャプターさくらなどの主題歌/キャラクターソングの一部で彼女の名前を見ることができます。特に、WガンダムのキャラクターソングはVELVET PAWの頃の作風を伺わせる部分もあり、興味深いです。
http://camelletgo.blogspot.com/2014/01/exvelvet-paw-works.html




2010/11/21

DISTRICT 97『Hybrid Child』(2010)

Hybrid ChildHybrid Child
(2010/09/14)
District 97

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 今年、アメリカのLASER'S EDGEレーベルからアルバムデビューを果たした、新鋭プログレッシヴ・メタル・バンド ディストリクト97の1stアルバム。バンドの母体は2006年から存在しており、元々はLiquid Tension Experimentなどから影響を受けたテクニカルなインストを演る4人組のバンドだったそうな。そこに、アメリカのオーディション番組「American Idol」の2007年上半期に行われたシーズン6に出場し、セミファイナルまで勝ち残ったという経歴をもつ女性ヴォーカリストのレスリー・ハントと、シカゴ交響楽団などのチェリストを務めているという女性奏者のカティンカ・クレイジンを迎えてほぼ現在のラインナップが完成。この経歴の異なる2人の女性メンバーを迎えたいきさつも気になるところですが、何にしても面白い組み合わせです。また、バンド名のDISTRICT 97は2009年に全米で(日本だと今年)公開された例の映画「DISTRICT 9(第9地区)」を意識したのでしょうかね。

 バンドのメインコンポーザーがドラムスのジョナサン・スキャングということもあって、クセのある変拍子を織り込んだ、引っかかりどころ多めのプログレ・メタル/プログレ・ハードといった趣。ソフトなタッチのMESHUGGAH、という印象を感じたりも。複雑でありながらキャッチーさもしっかりあり、「I Don't Want To Wait Another Day」「I Can't Take You With Me」の冒頭2曲は好例。フックのある展開の中、前者はギコギコしたチェロに併せて疾走するアンサンブルが痛快、後者は明快ながらも耳にこびりつきやすい歌メロが組み込まれております。続く「The Man Who Knows Your Name」「Termites」の2曲は共にヘヴィなギターリフと疾走感溢れるチェロ、そして絡みつく滑らかなシンセフレーズを主体として組み上げられた、ストイックな印象を感じさせる楽曲。そして本作のハイライトが、全27分半に及ぶ十部構成の組曲「Mindscan」。各2~3分の小曲/モチーフを寄せ集めただけのような気もしますが、シンフォニックなインストパートから、モダン・ヘヴィネスを感じさせるねじくれた変拍子パート、妙に実験的テイストを感じさせるパート、静謐なバラード・パート、と、静と動を交互に、そして起伏たっぷりに繰り返すミクスチャー・プログレ一大力作。なかなかの手堅さです。

 ちなみに本作にはオリヴィエ・メシアンの「世の終わりのための四重奏曲」の一部をカヴァーとして収録する予定だったそうですが、権利関係の事情でアルバムに収録することがが出来なかったため、あえなく外されたとのこと、そのカヴァー/アレンジは現在バンドがフリーDL音源として配布中。また、レスリー嬢は09年には自身のレーベルからソロアルバムを発表しており、そこではヴィニー・カリウタ(dr)、ヴェイル・ジョンソン(b)という著名的なセッション・ミュージシャンを迎えて、ロック/ポップス路線の楽曲を展開しております。こちらもなかなか水準の高い内容。



●DISTRICT 97:公式
●DISTRICT 97:Myspace
●アメリカン・アイドル(シーズン6):Wikipedia

2010/09/05

VIENNA『Overture』(1988) / 『Step Into...』(1988) / 『Unknown』(1998)

オーヴァーチュア=序章(紙ジャケット仕様)オーヴァーチュア=序章(紙ジャケット仕様)
(2011/09/07)
ヴィエナ

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 GERARDの藤村"茶々丸"幸宏(vo. g)を筆頭に、AFFLATUSの永井敏巳(b)、OUTER LIMITSの塚本周成(kbd)、NOVELAの西田竜一(ds)という、当時の国内プログレシーンのツワモノ達によって結成されたプログレ・ハード・ロック・バンド:ヴィエナの88年発表の1stアルバム。ロッキンf誌の後押しもあり、低迷していた国内プログレ・シーン活性化のために結成されたものの、時流の流れには逆らえず、あまりにも短い活動期間で終わってしまったプロジェクト・バンドです。その編成や音楽性から、英国のスーパー・プログレ・バンドだったU.K.を意識していただろうことは明らかで、U.K.を思わせる楽曲のキャッチーさ、複雑な変拍子展開、各パートが存在感のある技巧的演奏を繰り広げております(特に永井氏のフレットレス・ベースのうねり具合はかなりの存在感)。ただ、ヴォーカルが弱いのがタマにキズで、茶々丸のお耽美なヴォーカルが入った瞬間に違和感を覚える部分も少なくないです。ノヴェラ、ジェラルドと同路線を狙っていたと言えないこともないんですが、テンションの高い演奏だけで十分に聴かせてくれるだけに、無理してヴォーカルをとらなくても良かったのでは? とも。しかしながら、やはりそこはバンドとしての個性をもうひとつ押し出したかったのかなあと。とはいえ、楽曲は質・量共に文句なく素晴らしい内容に仕上がっております。ラストに収められた10分近くに及ぶ「Canone」は、塚本氏のキーボードワークをフィーチャーしたシンフォニックな力作。


ステップ・イントゥ・ヴィエナ(紙ジャケット仕様)ステップ・イントゥ・ヴィエナ(紙ジャケット仕様)
(2011/09/07)
ヴィエナ

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 こちらは同年の12月に発表された2ndアルバム。茶々丸氏のヴォーカルはやはり好き嫌いが分かれるところですが、演奏のテンションは前作以上。複雑な楽曲展開の中で各人がその技巧を存分に発揮しています。曲調もアグレッシヴに寄ったりシンフォニックに寄ったりと、明確なメリハリがついたことでグッとパワフルに進化。何よりも思い切ったサウンドが全編に炸裂しているのがホントに気持ち良いです。耽美な雰囲気に溢れたシンフォニックなイントロダクション「Step Into The Vivid Garden」から、ウルトラハイテンションかつ濃密なバンドアンサンブルが一体となってが押し寄せる「Gathering Wave」の流れは超強力。ド派手にぶっ放される壮大かつ分厚いキーボードサウンド、フレットレスベースのゴリゴリとしたうねり、細かく隙間を縫って刻まれるドラミング、唸りを上げて切れ込み、さらなる厚みを加えていく鋭角的なギタープレイ、この2曲で既に満足を覚えてしまうほど印象深いものになっています。また、大仰にしてかなり力の入った歌モノプログレ・ハード曲「Magic Eyes」は、歌詞のこっ恥ずかしさも含めて、色んな意味で印象深い。GERARDやNOVELAライクなゴリ押し曲「Caution!」や、ラストの「Fall In Alone」も詰め込める要素は全部詰め込んだ濃厚な佳曲。間違いなく80年代国内プログレシーンに残る名盤であります。






プログレス-ラスト・ライヴ-(紙ジャケット仕様)プログレス-ラスト・ライヴ-(紙ジャケット仕様)
(2013/09/04)
ヴィエナ

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 89年にラスト・ライヴを行い、その時のパフォーマンスを収録したライヴアルバム『Progress』をリリースし、バンドは解散してしまうのですが、茶々丸氏と永井氏の二人はその後まもなく二井原実氏率いるDED CHAPLINに参加し、新たな活動を続けることになります。そしてそのDED CHAPLINの流れを組む形でVIENNAは再編(前三作でプレイしていた西田竜一氏に代わって"手数王"菅沼孝三氏が加入)することになり、96年に発表されたのが本作。DED CHAPLINの活動を経たためかサウンドはハード・ロック色がかなり強まり、DREAM THEATER以降のテクニカルなプログレ・メタルの流れも感じさせる方向性になっています。とはいえキャッチーな落としどころは健在で、演奏的にも楽曲的にも全体的にバランスの良い内容。茶々丸氏の声質も若干ハスキーになり、これまでのねっとり耽美な歌い回しはよりラフな印象を感じさせるものに。ガラリと様変わりしたVIENNAサウンドは、荒々しい疾走感溢れる1曲目「Entrance」から十分に炸裂。キーボードが引っ込み、エッジの効いたギターが全面に押し出されることでスマートさが増し、さらに菅沼氏の手数で押しまくるドラミングが楽曲にフックをもりもり生み出しているのが、80年代VIENNAとはまた違ったカタルシスを感じさせるポイント。インストナンバー「Anubis」におけるめまぐるしい暴れ回りぶりは一聴の価値アリですし、イントロに荘厳なコーラスをフィーチャーしたミドルテンポのプログレ・ハード「Legend」は、様式美すら感じさせる練りこまれた重厚な展開が光る約10分の大曲であります。また、「Open Sesame」「Moonshine」は、どちらもチャーチオルガンやチェンバロの響きが美しいバラードナンバー。ちなみに、「Moonstone」は94年にX-JAPANのTOSHIが発表した2ndソロアルバム『Mission』(実はVIENNAのメンバーが全面参加)に提供した楽曲のセルフリメイクで、TOSHIが歌ったヴァージョン以上にドラマティックなアレンジになっております。80年代VIENNAとはやはり別物という印象こそしますが、聴き応え十分の快作。ちなみに、80年代の2枚のアルバムは既に廃盤となっていますが、本作はiTunes Storeや公式サイトの通販で現在も購入することが可能です。前者では1350円で全曲購入可能。


●VIENNA:公式
●chachamaru:Wikipedia

2010/07/20

板倉真一『Intuition』(2010)



 元NOVELAの五十嵐久勝氏と元HELLENの清水保光氏率いるハード・ロック・バンド CYCLONEのキーボーディストにして、森川智之氏と西岡和哉氏率いるBLACK VELVETのキーボーディスト。また、コンポーザー/アレンジャーとしても活動(難波弘之氏と共に「街」「DTエイトロン」「トランスフォーマー・カーロボット」といったサントラ仕事歴あり)している板倉真一氏の1stソロアルバム。

 ギターに清水氏、ベースにCichla temensisの国分巧氏を迎え、EL&P/キース・エマーソンやDEEP PURPLE/ジョン・ロードからの影響を伺わせる板倉氏のキーボードプレイが唸る、プログレッシヴなテイストも感じさせる様式系ハード・ロック/フュージョン寄りサウンドやシンフォニックなインストゥルメンタルサウンドを展開しております。オープニングとエンディングに壮大な盛り上がりを見せるインスト曲「Prologue」「Epilogue」を配するあたりは実にキーボーディストのソロアルバムという趣を感じさせます。清水氏と板倉氏のソロバトルもアツい王道チューン「To The Core」「Intuition」。清水氏の泣きのギターをフィーチャーした黄昏時をイメージさせるロック・フュージョン系インスト「Timeless Land」。声楽家の小林紗英子嬢による荘重なコーラスを交えた、「Prologue」のシンフォニック版アレンジ「Eternity」などなど、基本的にはキーボードを前面に立てた滑りの良いインスト曲が中心となっている本作ですが、ゲストを迎えてのヴォーカル曲が2曲あり、1曲は元プロヴィデンスやサーベルタイガーの久保田陽子嬢を迎えた「Breaking The Past」。久保田嬢のパワフルなヴォーカル炸裂の1曲で、彼女のいぶし銀なシャウトにひたすらシビれる本作随一の疾走キラーチューン。もう1曲は練馬マッチョマンの永野啓司氏を迎えた「A Day Of The Judgment」で、ミドルテンポの曲調に永野氏のねっとりしたヴォーカルが絡む、徹頭徹尾ドッシリ構えた1曲。自主制作アルバムということで基本的には公式からの通販で入手することになる1枚ですが、キーボードを軸とした爽快感溢れるストレートなハード・ロック系インストが目白押しなので、後腐れなくスカッと聴けるオススメの作品です。

●Shinichi Itakura『INTUITION』
●板倉真一:myspace

2010/06/13

LIGHT BRINGER『Midnight Circus』(2010)

Midnight Circus(ミッドナイト・サーカス)
LIGHT BRINGER(ライトブリンガー)
Lovely Rock Records / Vithmicstar (2010-05-29)
売り上げランキング: 164,776


紅一点のヴォーカリスト Fuki擁する若手プログレッシヴ・ハード・ロック・バンド ライトブリンガーの、昨年6月のデビューアルバム『Tales of Almanac』からほぼ1年の期間を経てリリースされた2ndアルバム。全9曲のうち、ボーナス・トラックを含む3曲(「Le Cirque de Minuit」「Lazy Maze」「Hearn's Heaven」)は08年に自主制作された両A面シングルの楽曲や、07年に参加したスプリット・アルバムへの提供曲の強化版リメイク(うち「Hearn's Heaven」は前作にも収録されており、これで都合2度目のリメイクか?)、残りは新曲という構成。SIAM SHADEや陰陽座やALHAMBRAといった先輩格バンドからの影響もさることながら、80~90年代J-POP(プリンセスプリンセスやレベッカ、ビーイング系など)やアニソンからの影響も色濃いメロディック・プログレハードなサウンドは録音環境も含めて格段にグレードアップしており、メジャーバンドばりの貫禄すら感じさせます。とりわけFuki嬢の声量とパフォーマンスのさらなる向上ぶりには目を見張るものがあり、開幕のインストから続くオープニングナンバー「Resistance」や、リメイク版「Le Cirque de Minuit」「Lazy Maze」では陰陽座の黒猫ばりに凄みと大仰さを含んだ声で歌い上げ、伸びやかさも相まって非常に象徴的。小気味の良い疾走インスト「IT'S SHOWDOWN」で楽器隊の安定感あるパフォーマンスの健在ぶりもアピールしつつ、キャッチーさを信条とするバンドのスタンスを存分に発揮した「今にも落ちてきそうな空の下で」「Hearn's Heaven」は、時代が時代ならタイアップをぶんどれそうな、良い意味であざとい懐かしの90年代臭たっぷりな歌謡ハード・ロック。続く7分半の大曲「Dream!」も、ジュヴナイルな歌詞もさることながら、眩しいくらいに溌剌としたサビが90年代アニソンそのもの。さらに中盤からは男性ヴォーカル(たぶんギターのKazu氏)も加わり、終盤ではパッヘルベルのカノンのフレーズが流れ、ダメ押しに前作の「We're All In This Together」のサビのワンフレーズ("君の夢は逃げやしないよ")も出てくるという心ニクイ趣向を見せつつ大団円を迎えるという清清しいくらいにやり切った感満載な盛り上がりっぷりはまさにハイライト。「二枚目のジンクス」という言葉があるように、バンドにとって2枚目のアルバムは勝負との1枚とよく言われますが、曲数を絞って焦点をよりハッキリとさせた本作はスキのない見事な1枚。目を見張る急成長ぶりもさることながら、"ポストALHAMBRA"に留まらないバンドのアイデンティティを見せ付けた快作だと思います。全力でオススメ。




●LIGHT BRINGER:Myspace
●LIGHT BRINGER:公式

2010/06/12

LIGHT BRINGER『Tales of Almanac』(2009)

Tales of Almanac(テイルズ・オブ・アルマナック)
LIGHT BRINGER(ライトブリンガー)
LIGHT BRINGER (2009-06-13)
売り上げランキング: 39,004


DRAGON GUARDIAN『DRAGONVARIUS』にも参加していたFuki(Vo)、Hibiki(Ba/ALHAMBRA)の二人も在籍している6人組プログレッシヴ・ハード・ロック・バンド ライトブリンガーの1stフルアルバム。『DRAGONVARIUS』は勇者アーサー氏の気張りっぷりがダイレクトに反映されたゆえか凄まじく濃ゆい仕上がりでしたが、このライトブリンガーはあちらとは対照的にソフトかつ爽やかな路線。音楽性の根幹の部分はドラガーと似たようなものなのですが、絶妙なバランス感覚でもって料理されたメロディックなプログレハードロックサウンドを展開しております。各メンバーがSYMPHONY XやGALNERYUSといった各種メタルバンドの他に、WANDSやDEEN、SIAM SHADE、Sound Horizon等をフェイバリットに挙げているだけあって、80~90年代J-POPやアニソン由来のポップネスにピリッとしたプログレハード的な要素が程良く溶け込んだサウンドが非常に好感触。

 1曲目の「Diamond」からストレートに切り拓くようなメロディが全開で、フレッシュなコーラスで爽やかに歌い上げられる「We're All In This Together」や、往年のビーイングのような必殺モノのイントロを持った「In Disguise」など、モロに90年代J-POPを彷彿とさせられる楽曲のオンパレード。アイデアを詰め込みながらもツボを押さえたキャッチーさに焦点を絞って楽曲を聴かせてくる潔さは見事というほかありません。紅一点のFuki嬢の歌い回しは多少芝居がかった印象も感じさせますが、そこまでクドさはなく、むしろ伸びやかなヴォーカルを十二分に生かしてバンドのサウンドとバッチリ噛み合わせており、突き抜けぶりに拍車をかけております。中でもミドルテンポの「Closed Sister~雪待月の妹~」は秀逸。スピードチューンもスロウ~ミドルバラードもイケるソツのないオールラウンダーぶりには好みが分かれそうなところですが、プログレハード的サウンドメイキングにはALHAMBRAを彷彿とさせられる部分が多く、本家メンバーのHibiki氏がいるということを抜きにしても"ポストALHAMBRA"のポジションに納まる素質十分だと個人的に思いますし、今後の発展が非常に気になるバンドのひとつであります。

●LIGHT BRINGER:Myspace
●LIGHT BRINGER:公式

2010/04/14

ALHAMBRA『Solitude』(2010)

SOLITUDE
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ALHAMBRA
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 世良純子嬢擁するドラマティックなプログレッシヴ・ハード・ロック・バンド アルハンブラの3rdアルバム。前作『Fadista』はガッチリとした楽曲構成&怒涛の攻勢でバンドの圧倒的な力量をこれでもかと示した"攻め"のアルバムでしたが、今回は全8曲40分(うちイントロダクションが1曲、リメイクが1曲)、大曲もなし、ということで1st、2ndに比べるとヴォリューム少な目。ある種ミニアルバムのようにも感じますが、バンドのテクニカルな部分はそのままに、よりキャッチーな方向性を追求し、全体的にタイトに引き締まったという印象も強いです。洗練を重ねたとは言え、やはりキラーチューンの精度は凄まじいものがあり、2分に及ぶイントロダクション「東風遥か」から続く「Earnest」は、さながらサビが3段あるのかと思ってしまうほどに必殺級のフレーズで疾走するAメロ~Bメロ~サビ、さらにテンションを高める世良嬢のヒロイックなハイトーンヴォーカル、怒涛の流れのソロパート、といった具合に3拍子揃った『これぞALHAMBRA!』という魅力がガッツリ凝縮された1曲。いきなりクライマックスです。フックを盛り込みつつも確固たる安定感、存分にヴォーカルも生きる「Double OO」「Die Erde」。プログレメタルではなくプログレハード的なイディオム全開の、王道にして堂々たるミドルレンジナンバー「Solitude」。本作随一のキャッチーさを誇る歌謡ハードロックナンバー「約束の鍵」は、本作の"よりコンパクトかつキャッチーな"方向性をハッキリ位置づける2曲。1stアルバム収録の「Orion」の再録である「Orion 2010」は演奏・ヴォーカル共にパワーアップしているのがハッキリと伺える頼もしいリメイク。ラストはピアノとヴォーカルのみのアコースティックな小曲「ゆきうさぎ」で軽やかに〆。見事なスキのなさとブレのなさ。名実共に国内トップクラスのプログレ・ハード・ロック・バンドであるということをさらに確信させる貫禄の1枚だと思います。ヘヴィローテーション盤。

●ALHAMBRA:myspace
●ALHAMBRA:公式

2010/04/08

DEATH ORGAN『Universal Stripsearch』(1997)


 現SPIRITUAL BEGGARS、OPETHのキーボード奏者であるペル・ヴィバリが90年代に率いていた、スウェーデンのギターレス オルガン・ハード・ロック・バンド デス・オルガンの2ndアルバムにして、最終作。95年リリースの1stアルバム同様、本作でもATOMIC ROOSTERやAARDVARKといった、オルガンがフロントを切ってブイブイ言わせていた70年代のブリティッシュ・ヴィンテージ・ロックを志向した方向性を存分に展開しています。ディストーションやらファズを効かせまくって歪みに歪んだハモンドオルガンサウンド、ビリビリと重苦しいベース、それらに比べてやたら軽く淡々としたドラムス、そしてオルタナティヴ・ロック由来の激情に任せたシャウト(というかガナリ合い)をしまくる二人のヴォーカルのコンビネーション…ぶっちゃけ、ヘヴィというにもテクニカルというにも今ひとつ煮えきっていないサウンドは相変わらずなんですが、ユーモラスでミョーに切り捨てられない魅力のあるバンドであるのも確かなわけで、マジメにやってるのか確信犯的にやってるのかよくわからないこのC級寸前のB級っぷりに突っ込むのはもはや野暮だなあと。重々しいオルガンのイントロからタテノリのハードロックへと誘う「Ahead」や、「Progress」(タイトルに反して歌っていることは虚勢を張る自暴自棄野郎のなのもイカス)の愉快なヤケっぱち具合を聴いてるとどうでもよくなってきます。また、本作ではRUSHの「Tom Sawyer」やFEAR FACTORYの「Scapegoat」のカヴァーも収録されております。前者は重心低めになって結構カッコ良くキマっておりますが、後者はなんかマヌケというか情けなくなっててこれはこれで面白いことになってます。誰がこの曲のカヴァーを提案したんだ(笑)。ラストは9分を越える荘厳な長曲「3 D Days」で、広がるハモンドの響きを耳いっぱい腹いっぱいに喰わせて堂々たる〆。アルバム1枚だけ出して1発ネタ…で終わらせなかったことも含めて、90年代にここまで時代錯誤(良い意味で)をやらかしたというだけで素敵だなあと改めて思う次第。このバンドが再結成する日は…くるのか?




●DEATH ORGAN:Wikipedia
●Per Wiberg:Wikipedia

2010/04/02

Pantokraator『Tormidesoojad』(2009)

Tormides (the Storm Eaters)
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Pantokraator
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 エストニアのプログレッシヴ・ハード・ポップス・バンド パントクレーターの2ndアルバム。バンドの結成は83年、1stアルバムのリリースが90年、そして92年にエストニアの経済状況悪化のため一度バンドは解散しており、本作は約20年ぶりとなる復活作。再編ラインナップは、結成時からのオリジナルメンバーであり、キーボード、ギター、フルートなどをこなすマルチミュージシャンのエリク・サコフ氏をフロントマンに、解散時のメンバー+若手メンバーという構成。まず耳を引くのが男性ヴォーカリストであるLauri Saatpalu氏の巻き舌込みのクセのある母国語ヴォーカル(ちょっとRammsteinのティル・リンデマンっぽくも感じる)と、二人の女性ヴォーカルによるクリアーなコーラスワーク。耳にこびりつくというか、一度聴いたらなかなか忘れようにも忘れられません。

 ミドルテンポでタメの効いた曲調でハードかつダイナミックに歌い上げられる1曲目の「Metsavaht」や、捻りの効いた民族調コーラスワークをフィーチャーしたカラフルなプログレ・ポップス・ナンバーの2曲目「Linnamang」は抜群のインパクトで、この冒頭2曲でいきなりガシっと惹き込まれます。音楽的には5大プログレバンドやジャン・ミッシェル・ジャール、MARILLIONなどから影響を受けているそうで、トロピカルな曲調や素朴なアコースティック・テイストはYES、GENESISからの影響を特に強く感じさせます。また、「Kasmu」でのヘヴンリーなコーラスワークや、「Tormidesoojad」「Paus On Hea」での浮遊感溢れるムードの中でのドライヴ感溢れるテクニカルな展開などを聴くにつけ、Anderson Bruford Wakeman&Howeからの影響も多分に伺わせられます。80年代の空気をたっぷりと感じさせるのもそのあたりに因るのではないかなと。結構なクセとアクの強さですが、壮大でパワフルなプログレッシヴ・ハード・ロック/AORサウンドで1曲1曲をコンパクトに纏め上げているのは実に見事。長年の雌伏で蓄えたエネルギーだけでなく、英米のバンドとは明らかに一線を画している強烈な個性の迸りっぷりをビシビシと感じます。



●Pantokraator:Progarchives
●Pantokraator:Myspace
●Pantokraator:公式

2010/03/30

MCI_Error 「WIND」「WATER」「BANISH」「HUMAN」(2010)

 ニコニコ動画の“プログロイド”タグの初期の名曲と言えるのがコチラ。MCI_Errorさんによる、巡音ルカをフィーチャーした四部作(Part.1"WIND" Part.2"WATER" Part.3"BANISH~楽園追放~" Part.4"HUMAN:An optimist's nightmare")であります。プログレッシヴ・ハード・ロック、という以上に、いわゆるポンプ・ロックとも言われた80年代以降のシンフォニック・プログレの流れを汲んだ曲調で、キャッチーな落としどころとテクニカルな展開がたっぷりと盛り込まれており、各曲10分、トータル40分という長さを感じさせない仕上がりが実に素晴らしい。











●studio mc2 2nd