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2015/09/23

爆走サウンドと享楽的チップチューンのジャンクな悪魔合体 ― Go:Eskimo『The Mythical Forest Zone』(2015)





 カリフォルニアのニンテンドーコア・ユニット Go:Eskimoは、2006年から2009年にかけて活動していたエクスペリメンタルなサイバーグラインドコア・ユニット Sea Anemone See's An Enemy (SASAE)のナードなフロントマンであったSkylah Pendallが率いるプロジェクト的ユニット。EPやアルバムでは別にギタリストやキーボーディスト/プログラミング担当が参加するという活動形態で、これまでにEPやスプリットアルバムへの参加のほか、2Dアクションフリーゲーム「Flagman」や、「MOTHER」シリーズをオマージュしたデザインのインディーRPG「R.A.D.S」(現在制作中?)にサウンドトラックを提供してもおります。特に「MOTHER」シリーズへの敬愛は深く、ユニットのbandcampアカウントでは同作へのオマージュを込めたトラックをリリースしております。『Condom:Squid』というタイトルの1stアルバムを2012年8月にリリースする予定だったそうですが、何らかの事情で現在も延期中。今後のリリース予定には「MOTHER」や「ポケットモンスター」をコンセプトにしたアルバムもあるようですが、そちらもいつごろのリリースになるのかは不明です。




 本作『The Mythical Forest Zone』は、さる9月14日付けでリリースされたインストゥルメンタル・アルバム。今後ヴォーカルを入れる予定があるのかは不明で、デビューアルバムがペンディングという状況のなかでこのアルバムがどのようなポジションにあるものなのかもいまひとつよくわかっておりませんが、初代ポケモンのシオンタウンのBGMを取り込んだ"House Of Mammaries"や、初代メトロイドのメインテーマを取り込んだ"SR388"なども交えながらの、ブラストするエモい爆走サウンドと享楽的チップチューンの悪魔合体による、ナードでジャンク上等な1~2分程度の楽曲群は勢いで聴かせる魅力たっぷり。アルバムのダウンロードは$5より。また、ボーナストラックとしてヴォーカル入りのライヴトラック(いずれも「MOTHER」モチーフ)が5曲収録されています。


http://goeskimo.wikia.com/wiki/Go:Eskimo_Wiki
https://www.facebook.com/GoEskimo
https://soundcloud.com/GoEskimo

2015/07/21

ノスタルジーとオリジナルの融合、チップチューンの名作 ― Shnabubula『SNESology Special Edition』(2015)

 アメリカのchiptuner、ShnabubulaことSamuel Ascher-Weissの名作『SNESology』が、さる六月末にスペシャル・エディションと装いを新たにして氏のbandcampに再アップされました。同アルバムは、ゲーム音楽リミックス投稿サイト「OverClocked ReMix」界隈を中心とした不特定多数のコンポーザーが、スーパーファミコン音源を駆使してカヴァーやオリジナル曲を制作するプロジェクト「SNESology」の企画趣旨にのっとってShnabubula氏が制作した楽曲を収録したアルバムです。2012年に全10曲収録でリリースされ、その後、2013年にトータル20分以上の新規トラックを8曲追加収録して再リリースされました(現在は両ヴァージョンとも削除されています)。再々リリースとなる今回のスペシャル・エディションでは、新たに2014年制作の2曲"Fun Saber" "Grape Kid"に、2012年録音のピアノソロヴァージョン3曲を追加収録した全23曲。もちろん今回も name your price(投げ銭)でダウンロードが可能です。





『SNESology』は単なるカヴァーアルバムではなく、名作SFCソフトのサウンドフォントを駆使した、オマージュをたっぷりと込めたオリジナル曲集というのがミソ。元のゲームに紛れ込んでいても違和感のないつくりなのです。使用しているタイトルを挙げると、「スーパーマリオワールド」「悪魔城ドラキュラ」「ファイナルファンタジーVI」「スーパーマリオカート」「ガイア幻想紀」「魂斗羅スピリッツ」「天地創造」「ロックマンX」「Run Saber(日本未発売)」「聖剣伝説2」「Secret of Evermore(日本未発売)」「クロノトリガー」「ストリートファイター2」「MOTHER」といったところ。サウンドフォントの特性がよく出ているものとしては、「スーパーマリオカート」の音源を駆使した"At The Races" "Ready Set..." "Golden Corridor"でしょうか。スティールパンやホイッスルの響きを活かしたトロピカルなムードで仕上げられています。また、Shnabubula氏はかなりの凝り性で知られる人なので楽曲構成がかなり練られており、フュージョン/プログレッシヴな要素が強いのも特徴です。「悪魔城ドラキュラ」のサウンドフォントによる"Darling Escape"や、「魂斗羅スピリッツ」のサウンドフォントによる"Infiltration"、複数タイトルのサウンドフォントを惜しみなく投入した"SNESology"などは圧巻のプログレ・チューン。また、収録曲のなかで"I Dreamed a Dream"は「レ・ミゼラブル」の劇中曲のカヴァー。これをFFVIの「オペラ」のサウンドフォントでカヴァーするという趣向がなんともニクいです。聴き手がプレイしたゲームへのノスタルジーを喚起させつつ、オリジナル曲としてもバッチリとした聴き応えをもたらしてくれるという、なかなか味わえない感触があります。すでに知っている人も、そうでない人も、ぜひ聴いてみてはいかがでしょうか。

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※カッコ内は使用サウンドフォントの元ゲームタイトル
※☆は2013年版の追加曲
※★は2015年版の追加曲


01. Adventures in Dinosaur Land (スーパーマリオワールド)
02. Daring Escape (☆悪魔城ドラキュラ)
03. Across The Plains (ファイナルファンタジーVI)
04. At The Races (☆スーパーマリオカート)
05. The Story Begins (ファイナルファンタジーVI)
06. Stonehenge (☆ガイア幻想紀)
07. Ready Set... (スーパーマリオカート)
08. Infiltration (魂斗羅スピリッツ)
09. A Solemn Decision (天地創造)
10. Static Lobster (☆ロックマンX)
11. Fun Saber (★Run Saber)
12. A Cry of Joy and Sadness (天地創造)
13. Evermore Densetsu (☆聖剣伝説2/Secret of Evermore)
14. Riverlands (天地創造)
15. Golden Corridor (スーパーマリオカート)
16. Hands of Fate (クロノトリガー/ファイナルファンタジーVI/天地創造)
17. Billy Mitchell's Stage (☆ストリートファイター2)
18. I Dreamed a Dream〔「レ・ミゼラブル」より〕 (☆ファイナルファンタジーVI)
19. Grape Kid (★MOTHER)
20. SNESology (☆複数タイトルのアラカルト)
21. Across The Plains〔★ピアノソロヴァージョン〕
22. A Solemn Decision〔★ピアノソロヴァージョン〕
23. Ready, Set...〔★ピアノソロヴァージョン〕


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http://snesology.tumblr.com/


 以下はおまけ。そのほか、サウンドフォントを駆使したアルバムをいくつかご紹介。

■「ロックマンX」のサウンドフォントを使用した、各種ゲーム音楽カヴァーアルバム、その名も『Mega Man XA』。アレンジはJormungandことJoe Schwebke氏。ゲーム版「ガングレイヴ」の曲をカヴァーする人は初めて見た気がする。フリーダウンロード。




■「スーパーマリオワールド」のトリビュートアルバム。しかしBGMのカヴァーではなく、ゲームと同じサウンドフォントを使い、ゲームの世界観をオマージュしての完全オリジナル曲集というやたら気合の入った内容。つまり、近藤浩治氏トリビュートでもある。「ヨッシーアイランド」のトリビュートと同時リリースされているので、ダブルトリビュートコンピレーションアルバムというコンセプトでもある。投げ銭でダウンロード可能。





■要注目の一枚。ロシアのUbiktuneから2012年にデビューアルバムをリリースしたコンポーザー fluidvoltの3年ぶりとなる新作アルバム『Clay Memory』。「MOTHER 3」の膨大なサウンドフォントを駆使し、ワビサビに想を得た複合的チップチューンを奏でる。





Shnabubulaのゲーム音楽ピアノカヴァー ライヴストリーミング「VGMCAST」のベストセレクションが登場

2014/11/11

チップチューン×プログレッシヴ・デスメタル 驚愕の悪魔合体アルバム ― Norrin Radd『Anomaly』(2010)

Norrin RaddことMatt Creamerはアメリカのインディーズレーベル「II MUSIC (PAUSE)」を拠点として、コンピレーションの楽曲提供やアルバムのリリースを行っているカナダ・バンクーバーのコンポーザーです。ちなみにNorrin Raddという名前はマーベルコミックスの「ファンタスティック・フォー」に登場するシルバーサーファー(後に単独シリーズ化)の本名に由来するもの。Matt氏の作曲活動はおそらく十代のころから始まっており、2002年から2007年にかけて氏が制作した8bit曲をまとめたアルバム『Melodia di Infinita』(2007)でソロデビュー。同作は18分に及ぶ大作メドレーも収録したアルバムであり、若き才気のほとばしりも感じさせる内容です。

『Melodia di Infinita』(フリーダウンロード作品)

http://www.iimusic.net/catalog/2007/08/melodia-di-infinita


2010年には魂斗羅4の海外勢によるアレンジアルバム『Rocked 'n' Loaded』にも参加。オリジナル作曲者のひとりであるvirtことJake Kaufmanを筆頭に、SnappleMan、ARMCANNONのDanimal Cannon、Prince of DarknessことTony Dickinson、norgといった面々と共演しています。




そしてその一ヶ月後にリリースされたのが、今回のメインタイトルに上がっているこの『Anomary』。死と再生をトータルコンセプトにしたアルバムです。NES由来のチップチューンサウンドにグロウル/スクリーム ヴォーカルを載せる悪魔合体的アイデアをやってしまったのが本作であり、その着想はいたってシンプルながら激烈なインパクトを持って聴き手に一撃をかましてくれます。なお、"Proton Decay"はドイツのプログレッシヴ・メタル・バンドであるDisillusionの"And The Mirror Cracked"のちょっとしたカヴァーも含む1曲。また"Spinning"はノルウェー屈指のプログレッシヴ・メタル・バンド SPIRAL ARCHITECTの同名曲の丸ごとチップチューンカヴァーとなっています。




その後、2012年にはVblank Entertainmentの2Dアクションゲーム「Retro City Rampage」のサウンドトラックをvirt、Freaky DNAとの競作で制作。2013年4月にはロシアのチップチューンレーベル Ubiktuneからリリースされた、チップチューン特化のインターネットラジオ「Noise Channel Radio」の企画コンピレーションアルバム『Noisechan & Nugget: Adventures in Chiptunes』(name your price)に参加。同月にはMatt氏が初めて全楽曲を担当することになった、FDG Entertainment開発のiOS用2Dドットアクションゲーム「Slayin」のサウンドトラックもリリース(name your price)されています。NESサウンドによるメロディアスなチップチューン揃いの一枚。







そして先月10月21日には、Savory Games開発のiOS用ターン制ストラテジーゲーム「Swap Heroes」のサウンドトラック(name your price)がリリース。氏の二作目の単独サントラ作品であるこちらはスーパーファミコンサウンドを基調にした壮大かつファンタジックな雰囲気の楽曲をメインに仕上げられております。



http://mattcreameraudio.com/

2013/11/09

未知との遭遇を果たすエレクトロ・プログレッシヴ・サウンド ― Zantilla 『Encounters』(2013)

ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)
(1978/10)
フィリップ・K・ディック

商品詳細を見る

フィリップ・K・ディックのSF小説"ユービック"からレーベル名をとった、「Ubiktune」というロシアのチップ・チューン&ゲーム・ミュージック専門ネットレーベルがあります。これまでに70枚に上るカタログをリリースしており、そのラインナップを眺めるだけでも楽しいものがあります。

http://ubiktune.com/releases

今回ご紹介するのは、10月末にubiktuneからリリースされた、カタログNo.71。Adrian Shegstadによるユニット Zantillaのデビューアルバム『Encounters』です。アメリカのUFO研究者 J・アレン・ハイネック(映画『未知との遭遇』のスーパーバイザーでもあった人です)の著書にインスパイアされた全7曲のアルバムであり、ChiptuneとDjentを二本柱に掲げ、両者のテイストを盛り込んだシンセサイズド・プログレッシヴ・メタル・サウンドを展開しております。コンパクトながら変拍子と起伏に富んだ構造の楽曲を、抜けの良いサウンドがさながら流線型を描くようにして突き抜けてゆく様は、煌びやかな味付けも含めてストレートにカタルシスが味わえることうけあい。bandcampにて全曲フル試聴可能。ダウンロード購入は$2です。Sci-Fiなプログレ・メタルがお好きな手合いはもちろん、80年代末期TANGERINE DREAMや、FROST*がお好きな手合いにもオススメです。

http://zantilla.bandcamp.com/





◆『Encounters』レーベル内紹介ページ
http://ubiktune.com/releases/ubi071-zantilla-encounters