2012年7月21日土曜日

あさき『神曲』(2005)

神曲神曲
(2012/03/21)
あさき

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 コナミのBEMANIシリーズに楽曲を提供しているマルチコンポーザー、あさき(元GUNIW TOOLSメンバーのASAKIとは別人)の、ギターフリークス/ドラムマニア提供曲のリ・アレンジに、数曲の新曲を加えた全10曲入り1stフルアルバム。あさき自身が元々ヴィジュアル系バンド出身ということもあって、楽曲は和風ヴィジュアル系ロック(本人に言わせると「京都メタル」なんだそうで)のフォーマットをとったものが多いのですが、楽曲によってはやたらに邪気怨恨を放っていたり、プログレ、メタル、チェンバー・ロックなどの要素を投入したトリッキーなアレンジがあったりと、アルバムにはそこかしこでドス黒い色合いが滲みまくっています。へばりつくようなあさき氏のヴォーカルも相まって耳を惹く楽曲ばかりですが、スラッシーなリフと切れ込むヴァイオリンを軸に、生き急いでるんじゃないかと思うほどに切羽詰まった勢いで圧倒する変拍子プログレ・メタル「この子の七つのお祝いに」、寂滅としたアコースティック・バラード「予後の音」、トータル9分半(イントロだけで2分)に及ぶ「神曲」は白眉。特に「神曲」は、陰陽座をさらにドロドロに融解させたかのような不気味な詞世界、チェンバー・ロックもかくやといった粘性の高さと禍々しい展開など聴き所が多く、アルバムの中でも一際異様な存在感を誇るプログレ楽曲に仕上がっております。また、本作のレコーディング・メンバーには、佐々木博史(p)、ZektbachのTOMOSUKE(p)といったBEMANIシリーズの人気コンポーザーの2人や、元SIAM SHADEの淳士(dr)、THE ALFEEやDIMENSIONのサポートメンバーで知られる吉田太郎(dr)、KAO'S!SESSIONの高橋香織(vln)、などの名前も見られ、各人流石のプレイを聴かせてくれるのも見逃せないところです。長らくコナミスタイルでの通信販売のみの流通でありましたが、2012年3月にリマスター版がリリースされ、一般流通で出回ることになりました。良い意味で日本的なプログレッシヴ・メタル・サウンドを聴かせる傑作アルバムだけに、入手が容易になったのは非常にめでたいことです。


「神曲」:Wikipedia
あさき:公式
あさき:Wikipedia

2012年7月18日水曜日

APOTEOSI『Apoteosi』(1975)

神格神格
(2012/02/25)
アポテオジ

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 イタリアのシンフォニック・ロック・バンド アポテオジが、75年に発表した唯一のアルバム。メンバー5人のうち3人(プロデューサーも含めると4人)の名前が"Ida"姓を持っているということで、どうやらファミリーで結成したバンドであったようです。基本的にクラシカルかつ叙情的な曲調(初期のKING CRIMSONを思わせるところも少々)で、間あいだに細やかなジャズ・ロック的展開を差し挟んでちょっとした盛り上げ所を設けているといった楽曲構成。ひとたびスイッチが入るとバタバタしたスタイルで疾走するアンサンブルや、力強くストレートに歌い上げるバンドの紅一点シルヴァナ嬢のヴォーカル・パートに突入すると一転して熱量が上がりますが、全体的には軽やかでさっぱりとしており、泥臭さや暑苦しさとは結構距離が置かれているといった感じ。楽曲は短いもので2分半、長いもので15分の全5曲。派手さ控えめなため楽曲展開に物足りない部分も多々ありますが、逆に言えば非常にとっつきやすいものがあると言えます。テロテロと滑り込んでいくギターはコンパクトにまとまっておりながらも、インストパートでなかなかの冴えを見せてくれますし、スパスパと細かく刻んでいく手数の多いドラムがタイトさやスリリングさにいっそうの拍車をかけていてツボを程良く押さております。キーボード類はムーグやアープ、オルガン、ピアノなどが駆使され、時にユーモラス、時にメロディアスに表情を変えつつもしっかりとアンサンブルを支える働きに徹しており、まさに屋台骨といった存在感を示しています。キーボード担当のマッシモ・イダ氏はどうやら当時若干14歳かそこらだったそうですが、いやはや良い仕事してます(音使いがPFMのフラヴィオ・プレモーリっぽいのは、やはりメンバーが影響を受けていたからなのかしらん?)。イタリアン・ロックの入門盤としてオススメ!…というものではないですが、要所要所で光るものがあるいぶし銀的な1枚であるのは確かです。ちなみに現在、イダ氏はイタリア本国でコンポーザー/アレンジャーとして活躍しております。


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