2015年5月31日日曜日

カンフーパワーとシンセサイザーの素晴らしきマッチング ― 『Kung Fury(カン・フューリー): Original Motion Picture Soundtrack』 (2015)



 アナタはもう観ましたか? 「Kung Fury」。スウェーデンのDavid Sandbergという奇特な元CMディレクターが、2013年の暮れにkickstarterで資金を募り、一年をかけて17000人以上から約63万ドルをかき集め、制作した80年代賛歌的サイバー・カンフー・アクション・アドベンチャー・ムービーです(5月28日付でYouTubeに全編が無料公開されております)。ざっくりしたあらすじを説明すると、クレイジーなニンジャを追跡中の事故により比類なきカンフーパワーを得た警官が、カンフー遺伝子の研究で最強のソルジャーを生み出さんと目論むカン・フューラー(カンフー総統):アドルフ・ヒトラーの陰謀を打ち砕くため時空を越えた戦いに臨む……といったところですが、股間を執拗に銃撃するトリケラトプスの同僚警官、パワーグローブを駆使するスーパーハッカー、レーザーをぶっぱなしたりしゃべったりする恐竜、ガトリングガンを携えた女ヴァイキング、筋肉を誇示する雷神トール……といった、まったく統一感のない魅力的キャラクターたちや、全編に横溢する80年代テイスト(VHSビデオのノイズの演出が心ニクイ)に、あれやこれやのオマージュ/パロディが突っ込まれたハチャメチャな内容です。狙いすぎだろうというくらいに思いっきり狙ってつくりあげられていますが、演出などはしっかりしていますし、とにかく洗練されたボンクラさが小気味よい傑作。2D感あふれるアクションシーンは必見ですし、なかなかまっとうなオチも用意されております(「ナイトライダー」のデヴィッド・ハッセルホフがあんな形で出てくるとは)。



 先日の本編映像の無料公開に合わせて、全13曲のサウンドトラックのデジタル配信も開始されました。また、ユニバーサルミュージック スウェーデンより7月8日にサウンドトラックのLP盤がリリースされる予定です。4月半ばにPVが公開されるやいなや、またたく間に1000万ビューを突破するという快挙を成した、ハッセルホフが歌うメインテーマ"True Survivor"も、もちろん収録。本編スコアのメインコンポーザーは、スウェーデンのシンセウェイヴ・アーティスト Mitch MurderLost Years。そのほか、BetamaxxHighway SuperstarChristoffer Lingといった面々が楽曲を提供しております。アダルト・コンテンポラリー、オールドスクール・ヘヴィメタルもありますが、全体的にはシンセウェイヴでまとめられております。以下は収録曲。

1. Mitch Murder - Kung Fury
2. David Hasselhoff - True Survivor
3. Lost Years - West Side Lane
4. Betamaxx - Redlining 6th
5. Mitch Murder - Face Puncher
6. Mitch Murder - The Final Stretch
7. Highway Superstar - Careful Shouting
8. Mitch Murder - Enter the Fury
9. Mitch Murder - Power Move
10. Lost Years - Phoenix Rising
11. Mitch Murder - From the Future
12. Christoffer Ling - Barbarianna
13. Lost Years - Nuclear





https://itunes.apple.com/us/album/kung-fury-original-motion/id999155960
(※iTunes Store USのページです。日本版iTunes Storeでは6/1現在、配信はなし)

http://shop.kungfury.com/*/*/Original-Motion-Picture-Soundtrack/4NC30000000
LP盤のプレオーダーページ


 シンセウェイヴは、ここ数年くらいでじわじわと支持を得てきている、シンセサイザー・ミュージックのいちスタイル。ニューウェイヴやイタロディスコの影響下のほか、「ニューヨーク1997」「ブレードランナー」「ナイトライダー」「マイアミ・バイス」などのサウンドトラック、「アウトラン」などのゲーム・ミュージック、そしてスラッシャームービーやサイバーパンクなど、'80年代ポップカルチャーをリスペクトし、消化した上で現代に再提示したものです。言ってしまえば「リバイバル」ですが、そのムーブメントには回顧的なものににとどまらない拡張的な意味合いも備わっているとも感じます。コンセプト面での共鳴も含め、シンセウェイヴが「Kung Fury」のサウンドトラックに全面的にフィーチャーされることは必然だったと言えましょう。

 各アーティストについて簡単に説明いたしましょう(ただ、Christoffer Lingだけは詳細が不明でした)。サントラ楽曲の半分を担当(書き下ろし)しているMitch MurderことJohan Bengtssonは、ストックホルム出身のコンポーザー。2010年に『Television EP』でデビュー後、精力的にEPやアルバムを発表しております。エレクトロ・ユニット Stratos Zeroは別名義。主な作品に、『Burning Chrome』(2010)、『Current Events』(2011)、『Interceptor』(2014)など。また、架空のメガドライブ用アドベンチャーゲームのサウンドトラック『SPRAWL』(2012)や、ロックマンのカヴァーアレンジEP『mitch murder vs mega man』(2012)、ストリートファイターIIのガイルステージのリミックスといったものもあります。





 Lost YearsことMagnus Larsonは、アヴェスタを拠点に活動する音楽プロデューサー。2012年に『Nuclear EP』でデビュー。現在までに、『Black Waves』(2012)、『Amplifier』(2013)の二枚のアルバムを発表しています。いずれもテキサスのRosso Corsa Recordsからのリリース。サントラに収録されている三曲はいずれもアルバムからの選曲であり、"West Side Lane" "Phoenix Rising"は『Black Waves』に、 "Nucluer"は『Nuclear EP』にそれぞれ収録されております。





 BetamaxxことNick Moreyは、ペンシルヴァニアのシンセウェイヴ・ユニット。ユニット名はもちろん、かつてVHSと市場競争を繰り広げたビデオ規格のβマックス。しかし勝者となったVHSもいまでは過去の遺物となってしまっただけに、諸行は無常です。2012年に発表したデビューアルバムのタイトルは『Lost Formats』。その後、2013年に『Interface』 『Sophisticated Technology』 『B-Sides』(お蔵入りマテリアル集)の三枚のアルバムを立て続けにリリースしています。現行最新作は、カリフォルニアのTelefuture(ちなみに、ここのレーベルはシンセウェイヴの宝庫です)よりリリースされた『Plug & Play』(2015)。また、彼のbandcampアカウントにはTANGERINE DREAM曲のリミックスもあがっているのですが、そのチョイスが「卒業白書」サウンドトラックの"Love On A Real Train"というのがなかなかシブい。サウンドトラックに提供した"Redlining 6th"は、『Sophisticated Technology』からの一曲。






 Highway SuperstarことAlex Karlinskyは、イスラエル・テルアビブの音楽プロデューサー。同名義では2013年ごろより活動を開始しております。シングルリリースが中心であり、アルバムは現在のところRosso Corsa Recordsよりリリースした『Take My Time』(2013) 一枚のみですが、メロディアスなAORタイプのエレクトロ・ポップに長けており、まさに職人的クオリティ。ノスタルジックな甘いメロディラインは必聴です。サウンドトラックに提供したアーバン・アダルト・コンテンポラリーな"Careful Shouting"は、おそらく書き下ろし曲と思われます。





「We Talked to the Director of 'Kung Fury,' the '80s-Fueled Nazi-Ninja-Dinosaur Movie of Your Dreams」
https://www.yahoo.com/movies/kung-fury-full-movie-and-interview-update-we-120203584472.html
 「Kung Fury」の監督・脚本を務め、カン・フューリー役を演じたDavid Sandberg氏へのインタビュー。Mitch Murderの音楽が「Kung Fury」のインスピレーションであったといったことを語っております。「彼はスウェーデン版ヤン・ハマーだ」

http://www.kungfury.com/


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2015年5月29日金曜日

幻の90’s関西プログレッシヴ・ロック・バンドの唯一作、再発 ― MILLPLAT(五十嵐久勝&泉陸奥彦&細川博史)『Millplat』(1994)

祝・再CD化

MILLPLAT
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MILLPLAT
ベル・アンティーク (2015-05-25)
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 NOVELA~Nuovo Immigratoの五十嵐久勝氏、DADA~KENNEDYの泉陸奥彦氏、SOPHIAの細川博史氏といった関西圏のプログレッシヴ・ロック・バンド出身の3人が中心となり、レコーディングエンジニアとしても知られる林皇志氏、松山直容氏を迎えて結成されたバンド ミルプラートが'94年に発表したアルバム。音楽性は叙情的な側面もあるテクニカルなプログレ・ハードで、前述の3バンドが持っていたテイストをバランス良くミックスしたという印象もあります。KENNEDY、SOPHIAの楽曲のリメイク・ヴァージョンも収録されているのもポイントでしょう。また、夜来香(ページェント、浪漫座の中嶋一晃氏率いるバンド)のヴォーカリストである外田直美さんや、ファンク系アイドルバンド 宝bune-buneのサックス奏者である堂地誠人氏も一部の楽曲にゲストで参加されています。

 在りし日の熱狂から醒めたようなムードも漂うオリエンタルな味わいのインスト"Ambassador"。泉氏のブルージーなプレイも交え、五十嵐氏のハイトーン・ヴォーカルをじっくりとした曲展開で聴かせる歌ものシンフォニック・プログレ"Tsuioku" "Do You Close Your Eyes"。激しいバンドサウンドをコンパクトな形で聴かせる"Down"。ラストの"Remember"は、ヴォーカルとギターのシンプルな編成による"Do You Close Your Eyes"のリプライズなので、MILLPLATで制作されたオリジナル曲は実質4曲ということになります。注目のリメイク曲ですが、KENNEDYのアルバムではインスト曲だった"Twinkling Nasa"は、ヴォーカル・ヴァージョンで収録されています(80年代後半のKENNEDYのライヴでは五十嵐氏がゲストで参加したこともあり、このヴァージョンもその頃から歌われていたようです)。ヴォーカルが加わったことにより音の厚みは増しましたが、勢いという点ではやはりオリジナル版に軍配が上がるかなといったところ。一方、オリジナル版はニューウェイヴ寄りのサウンドプロデュースと今ひとつ噛み合わず、ハードな面が削ぎ落とされた印象だったSOPHIAの"Prism"は、ぎこちない部分が改善されて秀逸なシンフォニック・プログレとして仕上がっています。シンセサイザーで代替していたサックスのフレーズが生になったのも大きいところです。一抹の寂しさを湛えてアルバムは幕を閉じます。バンドの活動はごく短期間で終わってしまったものの、このアルバムは関西プログレ界隈の人脈の繋がりを知る上で興味深い1枚です。早々に廃盤になっておりましたが、先ごろ、マーキー/ベル・アンティーク レーベルより、紙ジャケット仕様で再CD化を果たしました。

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01. AMBASSADOR (作曲:細川博史)
02. TWINKLING NASA (作曲:泉陸奥彦 - 作詞:泉由美)
03. TSUIOKU (作曲:林皇志)
04. PRISM (作曲:細川博史)
05. DO YOU CLOSE YOUR EYES (作曲:林皇志 - 作詞:五十嵐久勝)
06. DOWN (作曲:林皇志)
07. REMEMBER (作曲:林皇志 - 作詞:五十嵐久勝)

五十嵐久勝(vo)
泉陸奥彦(g.b.prog)
細川博史(ds)
林皇志(vo.kbd.prog)
松山直容(prog)

土屋天祥(Fleteles bass③④⑤)
三觜智紀(E.bass⑥)
外田直美(Backing Vocal③)
堂地誠人(sax③④)

[MP-9401](1994)


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余談ですが、泉氏と細川氏は本作から十数年後、コナミの音楽ゲームのライヴイベントである「THE GITADO LIVE 2011」に、共に出演されることになります。
http://www.konami.jp/bemani/gfdm/gfdmxg2/festa/live/index.html

ノヴェラ - Wikipedia
泉陸奥彦:Wikipedia

SOPHIA『Defiance』(1986)
DADA(泉陸奥彦&小西健司)『DADA』(1981) / 『城壁/鏡の中の家』(1994)
KENNEDY(泉陸奥彦)『Kennedy!』(1987)
KENNEDY(泉陸奥彦)『Twinkling Nasa』(1986)

2015年5月28日木曜日

泉陸奥彦氏率いる伝説のプログレッシヴ・ロック・バンドの’87年のライヴ盤、再発。― KENNEDY『Kennedy!』(1987)

祝・再CD化

ケネディ!
ケネディ!
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ケネディ
ベル・アンティーク (2015-05-25)
売り上げランキング: 84,429


 現在はコナミのギタドラシリーズのコンポーザーとして活動する泉陸奥彦氏がかつて在籍していたプログレッシヴ・ロック・バンド ケネディ。本作はデビューアルバム『Twinkling Nasa』の翌年にMONOLITH COMMUNICATIONSより発表された、旧曲と新曲からなる2ndアルバム。前作では楽曲ごとに演奏者を迎えるという形でしたが、本作ではメンバーが固定された完全なバンドスタイルでのライヴ録音となっています。北岡敦伊藤宏二の両氏は前作から引き続き参加。ドラムスは宇佐見斉氏から、元飢餓同盟の安田隆氏に交代しています(ちなみに飢餓同盟は、DADAを結成される前の小西健司氏や、NOVELAを結成する前の平山照継氏も在籍されていたバンドです)。安田氏のパワフルなドラミングを得てバンド・アンサンブルはよりズ太くハードなジャズ・ロック・サウンドを志向するようになり、即興的なパートも増えたことでむせ返るような熱気で満ち満ちております。硬質なスラップ・ベースのシーケンスの上でサックスが長大なソロを繰り広げる"Tasmanian Devil"、シンセ&ギターがメランコリックなフレーズを奏でる"Kremlin Dream"は共に新曲。"Birds Of Fire"は、泉氏の音楽的なルーツの一つであるジャズ・ロック・バンド MAHAVISHUNU ORCHESTRAの代表曲のカヴァーであり、ゴジラの咆哮するSEとアジテーションも交えての白熱した演奏を聴くことが出来ます(ドラムソロ、ギターソロがそれぞれ繰り広げられる"Birth Of Fire" "Birds On Higher"のオマケ付き)。旧曲では、"Explorer 1958 Alpha" "Flying Ship Part 3"の2曲が圧巻、ラストの1秒に至るまで全メンバーが凌ぎを削り切っています。凝縮されたエネルギーが大発散された傑作アルバムであるのは勿論、現在の泉氏の作風へと繋がるものも伺える内容だけに、コナミのゲーム作品などで泉氏の楽曲に触れたというファンには是非とも一聴をオススメする一枚であります。99年にフランスのMUSEAレーベルからリリースされたCD盤は現在ほぼ廃盤に近い状態であり、近年はiTunes StoreやAmazon MP3で音源のみ購入可能な状態でありましたが、先ごろめでたく紙ジャケット仕様の国内盤で再CD化いたしました。

iTunes Store
https://itunes.apple.com/jp/album/kennedy!/id347837757



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01. Twinkling Nasa
02. Flying Ship Part 1
03. Tasmanian Devil
04. Kremlin Dream
05. Birds Of Fire
06. Birth Of Fire
07. Birds Of Higher
08. Explorer 1958 Alpha
09. Flying Ship Part 3

泉陸奥彦(g)
JuJu北岡[北岡敦](kbd)
安田隆(ds)
伊藤宏二(sax)

LP盤:[MNK-8](1987)
CD盤:[FGBG-4294](1999)


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『Kennedy!』リリース後のケネディのライヴではNOVELAの五十嵐久勝氏やMARINOの大谷令文氏もゲストで参加されており、大谷氏が参加された時のパフォーマンスはYouTubeで観ることが出来ます。さらなる飛躍を期待されておりましたが、89年に北岡氏が事故により亡くなられてしまい、バンドは解散。泉氏はその後、安田隆氏と五十嵐久勝氏と共にKremlinを結成されるのですが、こちらはごく短期間での活動に終わってしまいます。

安田氏はその後セラピストとして活動されておりますが、泉氏との親交は現在も続いており、ギタドラXGに泉氏が提供した"FIFTH GIG"でドラムを叩いております(クレジットも「Mutsuhiko Izumi with Takashi Yasuda」となっています)。また、泉氏が2011年にリリースした2ndソロアルバム『ポン太と巡る世界の音楽』にも参加されております。

KENNEDY - Wikipedia
泉陸奥彦 - Wikipedia
泉陸奥彦 - VGMdb
安田隆(セラピスト) - Wikipedia

DADA(泉陸奥彦&小西健司)『DADA』(1981) / 『城壁/鏡の中の家』(1994)
KENNEDY(泉陸奥彦)『Kennedy!』(1987)
KENNEDY(泉陸奥彦)『Twinkling Nasa』(1986)
MILLPLAT(五十嵐久勝&泉陸奥彦&細川博史)『Millplat』(1994)
泉陸奥彦『Heaven Inside』(2006)

2015年5月27日水曜日

ヘヴィサウンドで健在ぶりを示した、元祖チャイニーズ・プログレメタルバンドの四作目 ― 唐朝楽隊『芒刺』(2013)

唐朝楽隊/タン・ダイナスティー
唐朝
ビクターエンタテインメント (1995-06-21)
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 中国のハード・ロック・シーンを語る上で避けては通れないバンドであり、90年代にシーンを牽引したビッグネーム 黒豹(Heibao)のオリジナルメンバーであった丁武が、80年代末期にバンドを脱退してまもなくアメリカ華僑のKaiser Kuoらと'88年に結成した唐朝(Tang Chao)は、チャイニーズ・プログレッシヴ・メタルの草分け的存在として、現在も活動を続けるバンドです。度重なるメンバーチェンジや種々の事情もあり、二十数年の活動歴でこれまでにリリースしたアルバムは四枚と少ないのですが、いずれも練り込まれたサウンドで存在感を示しています。Kaiserは'89年に帰国のためアルバム制作に関わることなく脱退してしまうものの、'92年に発表されたデビューアルバム『梦回唐朝』は本国のみならずアジア全域でヒットを記録し、日本でも'93年にP-VINEから、'95年にビクターからそれぞれ国内盤がリリースされていました。丁武のラフなハイトーンヴォーカルと浮遊感のあるコーラスハーモニーによる歌謡テイストと、ギターを中心として組み立てられたプログレッシヴ・ハード・ロック色の強いサウンドの絶妙なマッチングもさることながら、"インターナショナル"の仰々しいカヴァーもハマっており、DREAM THEATER『Images And Words』のリリースと同年の作というところも含めて、印象深い作品です。



 '95年にベーシストの張炬が事故死、さらに丁武のドラッグ問題などで活動が危ぶまれたものの、'96年にKaiserの復帰もあり活動を再開、'98年に発表された2ndアルバム『演義』は、三国志演義をコンセプトにしたよりプログレ色の強い大作志向の内容に仕上がり、復活をアピールするに申し分ないものでありました。'99年に意見の相違によりKaiserが再び脱退、'00年に陳磊が新ギタリストとして加入、'02年にオリジナルギタリストの老五が復帰して五人編成になるなどの変動が続き、3rdアルバム『浪漫騎士』が発表されたのは結成20周年目と迎えた'08年と、かなり長いスパンとなりました。音楽性もアジアン/オリエンタル・ポップスの色が強くなり、この手のバンドによくある変容の波からは逃げられなかった模様。


芒刺 (中國版) ~ 唐朝樂隊
芒刺 (中國版) ~ 唐朝樂隊
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唐朝(タン・ダイナスティー)
StarSing Records (2013-11-15)
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 以上、駆け足で活動を追いました。本作『芒刺』は、『浪漫騎士』からさらに五年の歳月を経て発表された、バンドの現行最新作。'09年に老五がバンドを脱退したため、再び四人編成での制作となったわけですが、サウンドは前作の反動なのか、原点回帰しつつもヘヴィ・ロックな味付けが濃くなされております。タイトルチューンや、続く"斑马线"ではどっしりとタメの効いたサウンドで強烈な印象付けに成功しております。8分越えの"睡莲"は丸ごとギターが主役のテクニカル・インストゥルメンタル。豊富な音楽経験を持つ陳磊の本領が発揮された一曲ともいえます。ハードなエッジとフックを持った"大象不抱怨"も秀逸。アルバム終盤は落ち着いたトーンの楽曲が中心となり、『紅楼夢』に登場する歌〈葬花吟〉から詞を引用し、古琴と萧笛の幽玄な響きに彩られたアジアン・ニューエイジ調の"梅花赐"や、環境音を交えたアンビエント"紫叶"、ポスト・ロック・シーンにも目配せをしたかのような"异乡客・岚池"といった楽曲も収められており、完全にヘヴィに振り切ってはいませんが、アルバムのメリハリという意味ではちょうどよくバランスが取れている好作品と感じます。決して順風満帆とはいえない活動を長年続けていながら、これだけのものを生み出せるわけですから、やはり底力のあるバンドであると改めて実感させられます。



唐朝楽隊 TANG DYNASTY - 中国揺滾 DATABASE
唐朝 - Encyclopedia Metallum

 余談ですが、脱退したKaiserはその後、春秋というプログレッシヴ・メタル・バンドを結成し、'06年にアルバムを発表しています。こちらもドラマティックな内容なのです。



2015年5月22日金曜日

映画『セッション (Whiplash)』雑感

「セッション」観た。よかった。破滅スレスレの血みどろの削り合いのなかでしか交感できない野郎ふたりの音楽を介しての殺伐ショー。日和るどころか最後まで互いにプライドをへし折り合うという。もはや死んでも治らなさそうなどうしようもなさひっくるめての魅力だなと思った。最初に出てくるポスターに“無能な奴はロックをやれ”とあるけど、ラストを考えるとなんだかんだでこれに尽きる感はやっぱりあるよな。ニーマンもフレッチャーもジャズの世界で何者かになろうとして結局のところ何者にもなり損ねているし(でもプライドの殺し合いは最後までする)。「セッション」でのジャズというか音楽の扱い方は、ゴッソリと中抜きして単純化して表面化して極端にしてるので、そのあたりは観ていて違和感はかなりあるわけだけど、それら全部を見越した上での「うるせえ聴いて死ね!!」という問答無用感で全部持っていく。そのへんが一方で強力なカタルシス要因なんだよね。観ている方は自分の理性が邪魔になってくる。フレッチャー親父が作中でこぼす「世の中甘くなった、ジャズが死ぬわけだ」というセリフも、普通の文脈でとれば何いってんだこの老害という印象にしかならないわけだけど、吐いてる本人が己の求める音楽のために結果的に人ひとり殺してしまうことも厭わない純粋な、あまりにも純粋な狂人なので味わい深い印象になる。殺し合いのなかにこそ対話の可能性がある、みたいな。




▼「セッション」のメインテーマであるハンク・レヴィの“Whiplash”は七拍子の曲なわけだけど、オリジナル・ヴァージョンはドン・エリスの’73年のアルバム『Soaring』に収録。エリスは変拍子ジャズの鬼なのでプログレ方面からの受けもよい。せっかく取り上げられたんだからドン・エリスの『Soaring』を再発してくださいよぉ。





Soaring
Soaring
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Don Ellis
Universal I.S. (2008-10-27)
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2015年5月19日火曜日

西脇辰弥、エース清水、馬飼野康二 他『うしおととら ヴォーカル・コレクション』(1993)

うしおととら 完全版 1 (少年サンデーコミックススペシャル)
藤田 和日郎
小学館 (2015-05-18)
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 1990年から1996年にかけて週刊少年サンデーで連載された藤田和日郎氏の長編シリーズ「うしおととら」。人間と妖怪の宿業と絆を描いた伝奇少年バトルマンガの王道的作品にして、壮絶にしてどこまでも真っ直ぐな熱い“藤田節”がほとばしる、いまなお色褪せぬ大傑作であり、五月から全20巻の完全版ワイドコミックスが順次刊行され、七月からは二度目となるアニメシリーズも予定されております。つい最近、久しぶりに読み返しましたが、案の定読み止まらなくなり、寝る間を惜しんで最終巻まで怒涛の勢いで引っ張られてしまった次第です。

うしおととら~ボーカル・コレクション~
イメージ・アルバム 三浦秀美 佐々木望 井口慎也 SATOKO YASU 天野由梨 冬馬由美
EMIミュージック・ジャパン (1993-06-23)
売り上げランキング: 7,584


 「うしおととら」の一度目のアニメ化は、本編連載中の1992年から1993年にかけて制作された全十話のOVA作品で、第一話から第六話までを第一期、第七話から第十話までを第二期として区切り、原作の第九章「風狂い」までをとりあげています。うしお役には佐々木望氏、とら役には大塚周夫氏がキャスティングされ。劇伴は鷺巣詩郎氏と若草恵氏のおふたりが参加されておりました。今回取り上げるのは、アニメ化に先がけて1992年にリリースされたイメージアルバムのヴォーカル曲に、二枚のサウンドトラックに収録されたアニメ第一期、第二期の各主題歌/イメージソングを一枚にまとめたヴォーカルベストアルバムです。これがまさに珠玉の内容なのであります。



 そもそも、主題歌がいずれもハード・ロック/AORというあたりがまずツボをくすぐられます。前期OPテーマ"勇気のファイター"の作編曲は、ZARDやWANDSやDEENなどの楽曲を手がけた葉山たけし氏。この曲もビーイング印の爽やかなハード・ポップ・チューンに仕上がっていいます。後期OPテーマ"獣の槍"は、田口俊氏(ex.SENSE OF WONDER)が作詞を、西脇辰弥氏が作編曲を手がけた、プログレッシヴ・ハード・ロック チューン。ヴォーカルの井口慎也氏は、日本有数のQUEENトリビュートバンドであるGUEENのギタリストとしても著名な人物(ちなみに西脇氏は同バンドのプロデュースを手がけておりました)。井口氏は'94年に発表されたOVA「装甲騎兵ボトムズ 赫奕たる異端」のOPテーマも氏が歌っておりました。EDテーマは前後期とも佐々木望氏のヴォーカルで、井上日徳氏の作編曲による後期テーマ"誰かがおまえを狙ってる"は、カラッとしたアメリカン・ロック路線。そして、前期EDテーマ"Dear My Best Friend"は本作でも屈指の名曲。西脇氏のツボを押さえたウェットなメロディラインとAORアレンジもさることながら、佐々木氏のヴォーカルがまた非常にマッチしているのです。



 そして、イメージアルバムからは五曲が収録されております。ともに80年代テイストな"獣を見たよ" "ブギ・ウギ・モンスター"は、馬飼野康二氏、見良津健雄氏のベテラン作編曲家コンビによるもの。前者は藤田氏が作詞を手がけており、こちらもストレートにアツい描写です。後者は麻子役の天野由梨さんと真由子役の冬馬由美さんのデュエットによるアイドル歌謡調のコミカルな一曲。そして"英雄不要論序説" "パンドラの箱"は、なんと聖飢魔IIのエース清水長官の提供曲。前者はプログレッシヴ・ハード、後者はグルーヴ感のあるハード・フュージョンで、弾きまくりのソロパートも含めエキサイティングな内容。この二曲ではドラムスが“手数王”菅沼孝三氏というのもミソ。"サイレンスの下で"は、YASU氏、三浦秀美さんのデュエットによるスロウバラード。ここでもやはり西脇氏の編曲が出色。極上のAORです。



 それ以外の楽曲はサウンドトラックに収録されていたイメージソング。ドラマティックなサビを擁したパワーバラード"幻になるまで"や、往年のTOTOのような王道のメロディック・ロック チューン"Resurrection~天使たちの復活~" "風と雪の化身"といったなかでも、YASU氏のソウルフルなヴォーカルも映えるハードロックチューン"悲しみの逆襲"は、西脇辰弥(kbd)、梶原順(g)、美久月千晴(b)、湊雅史(ds ex.DEAD END)の完全バンドスタイルでレコーディングされており、一際パワーを感じさせる仕上がりです。改めて、そのクオリティの高さに感服させられます。






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『うしおととら ヴォーカルアルバム』

1. 獣の槍
(作詞:田口俊/作編曲:西脇辰弥/歌:井口慎也)

2. Dear My Best Friend
(作詞:及川眠子/作編曲:西脇辰弥/歌:佐々木望)

3. 英雄不要論序説
(作詞:高柳恋/作曲:エース清水/編曲:西脇辰弥/歌:YASU)

4. 獣を見たよ
(作詞:藤田和日郎/作曲:馬飼野康二/編曲:見良津健雄/歌:佐々木望)

5. ブギ・ウギ・モンスター
(作詞:前田耕一郎/作曲:馬飼野康二/編曲:見良津健雄/歌:天野由梨・冬馬由美)

6. パンドラの箱
(作詞:高柳恋/作曲:エース清水/編曲:西脇辰弥/歌:三浦秀美)

7. サイレンスの下で…
(作詞:石川あゆ子/作編曲:西脇辰弥/歌:YASU・三浦秀美)

8. 悲しみの逆襲
(作詞:及川眠子/作編曲:西脇辰弥/歌:YASU)

9. 妖怪退治心得マーチ
(作詞:藤田和日郎/作編曲:見良津健雄/歌:佐々木望)

10. 幻になるまで
(作詞:及川眠子/作編曲:井上日徳/歌:三浦秀美)

11. 誰かがおまえを狙ってる
(作詞:田口俊/作編曲:井上日徳/歌:佐々木望)

12. Resurrection~天使たちの復活~
(作詞:田口俊/作編曲:西脇辰弥/歌:井口慎也)

13. 風と雪の化身
(作詞:田口俊/作編曲:多田光裕/歌:SATOKO)

14. 勇気のファイター
(作詞:及川眠子/作編曲:葉山たけし/歌:YASU)


[TYCY-5308|1993.6.23 | 東芝EMI/Futureland]

keyboards & all synth programming:
西脇辰弥 ①~③⑥~⑧⑫
井上日徳 ⑩⑪
多田光裕 ⑬
葉山たけし ⑭

keyboards:
見良津健雄 ④⑤⑨

drums:
山崎彰 ①
菅沼孝三 ③⑥
湊雅史 ⑧

bass:
水江慎一郎 ①
松原秀樹 ③⑥
美久月千晴 ⑧⑫

guitars:
Hiroshi Emuro ②
鈴木英俊 ④
梶原順 ⑧
井上日徳 ⑩⑪
伊東ヒロム ⑬
葉山たけし ⑭

organ:
田中厚 ④⑤

manupulator:
田久保誓一 ④
Naoki Suzuki ⑤
Ryuichi Satou ⑨

backing vocal:
井口慎也 ①⑫
高尾直樹 ②⑭
井上りえ ③⑥⑧
岩崎元是 ④
ふじやひろこ ⑤
三浦秀美 ⑩
山根麻衣 ⑪
山根栄子 ⑪
SATOKO ⑬
大森絹子 ⑬
YASU ⑭




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〈Other Release〉

『うしおととら ORIGINAL ALBUM』
(イメージアルバム)

[TYCY-5232 | 1992.6.24]

『うしおととら II』
(サウンドトラック)

[TYCY-5247 | 1992.8.26]

『うしおととら III』
(サウンドトラック)

[TYCY-5306 | 1993.5.26]

『うしおととら CD(コミカル・デフォルメ)劇場』

[TYCY-5333 | 1993.9.29]


サンデー名作ミュージアム「うしおとととら」

2015年5月16日土曜日

非現実系テクニカル・ポップ・バンドの、のっぴきならないマキシシングル ― ぱっちりひつじ『ドSピエロのボブ』(2015)


https://wx11.wadax.ne.jp/~ku-kan-so-ko-com/3_463.html

 非現実系テクニカル・ポップ・バンド ぱっちりひつじの約二年ぶりとなる2ndマキシシングル。アルバムに収録するにはいささかクセが強いなという曲を集めたのが前作マキシシングル『ぽぷぺぴぱ』ですが、本作も同様ののっぴきならない路線です。むしろ、ぱっちりひつじ史上極最短の楽曲と極最長の楽曲が収録されているぶん、高低差の激しさではそれ以上かもといったところ。



 タイトルチューン"ドSピエロのボブ"は、心優しい内面を持ちながらドSを演じるアンヴィヴァレンツなピエロの悲喜こもごもな姿を軽快なハード・ポップ調のサウンドに載せて描いたキャッチーな一曲。一転して間奏パートでは泣きのギターソロがフィーチャーされており、出色です。"にくきゅうとかいてレイコとよむ"は8秒の曲……というよりはトラック。内容は聴いてのお楽しみですが、NAPALM DEATH的な瞬発力をぱっちりひつじ的に解釈するとこうなるというわけです。"あこがれのル・ソホラ"は、魔女の店にあこがれる子供の身に起きた不思議極まる体験を描く、ぱっちりひつじの十八番といえるファンタジックかつ奇妙な味が存分に出たストーリー調の一曲。007メインテーマのパロディのようなイントロから、酔っ払ったバッキングコーラスにテルミン調のサウンドといったユニークな趣向が盛り込まれており、特に終盤に登場する「魔女」の放つセリフが強烈の一言。でも、根幹部分はヘヴィなグルーヴ・メタルです。個人的には筋肉少女帯の内田雄一郎氏の楽曲に通じるものを感じました。ラストを飾る"ほんじつのニュース"はバンド史上最長となる約16分の長尺曲。何者かによって太い眉毛の書かれた競走馬や、ブタの貯金箱をダストボックスとして導入するなどといったしょうもないニュースをやる気なく読み上げる男女のニュースキャスターの生々しい一幕が展開されたのち、10分以上にわたってバンドの即興パートが繰り広げられる超フリーフォームな内容。前提からしておかしな状況ですが、そこからさらにおかしな状況へと導かれるかのような、まことに「混沌」と呼ぶにふさわしい長丁場なのですが、テルミンがあちこちに乱れ飛び、各パートがノイジーな軋みをあげる間あいだのふとした瞬間に差し挟まれるピアノの旋律が非常に美しかったりして、不思議な感慨をおぼえながらも投げっぱなしで幕を閉じます。

 ボーナス・トラックには今回も各曲のインスト・トラックが収録されており、「歌や楽器を重ねて加工した状態であれば、動画サイトへのアップロードは自由」とのこと。……しかし、どうカヴァーすればいいんでしょうか(笑)


https://www.facebook.com/pacchirihitsuji

ぱっちりひつじ:公式
ぱっちりひつじ - Twitter
空間想庫 - 空間金魚web直販店 -(←アルバムの購入はコチラから)

ぱっちりひつじ『ゆめにっき1』(2012)
ぱっちりひつじ『ぽぷぺぴぱ』(2013)

2015年5月3日日曜日

過剰と洗練を併せ持つボストン気鋭のプログレッシヴ・メタル・バンド、華麗にデビュー ― Native Construct『Quiet World』(2015)



 名門バークリー音楽大学に在籍したプレイヤーたちによって2011年に結成されたアメリカはボストンのプログレッシヴ・メタル・バンド Native Construct。現行メンバーはRobert Edens(Vocals)、Myles Yang(Guitar)、Max Harchik(Bass)の三人。ミクスチャーな作曲センスと確かなテクニックで以前より動向が気にかかっていたバンドのひとつなのですが、2014年にめでたくMetal Bladeレーベルと契約を交わし、先日デビューアルバムをリリースいたしました。本国での反応はなかなかのようで、リリース直後にハード・ミュージック部門と新人部門にそれぞれチャートインしたとのこと。ちなみに、来たる5月20日にはMARQUEE/AVALONから国内盤でも出ます。こちらはMetal Blade盤よりボーナストラックが1曲追加収録されるそうですよ。

 コンセプト・ストーリーに基づく本作は、バンドのセルフ・プロデュース。また、共同エンジニアにはBETWEEN THE BURIED AND MEやCANVAS SOLARISなどでの仕事で知られるJamie Kingの名前があります。楽曲は2011年から2013年にかけて制作されております。方向性はユニークかつ多彩で、プログレッシヴ・メタルの器にミュージカル、シンフォニック、ジャズ、ラテンのフレーバーがあらん限りに投げこまれております。一見混沌としているようですが、華麗なコーラスワークと可変の効いたアレンジがしっかりと(時には過剰に)加えられているため、雑食性以上に洗練されたイメージを感じさせてくれるのがポイント。オーケストレーション全開のシンフォニックな曲調のなかで思いっきりブラストビートをかます展開に度肝を抜かれる"The Spark of the Archon"や、爽やかなピアノとラテン/フュージョン・タッチのギターをフィーチャーした、アルバムのラストを飾る12分半のド派手に込み入った大曲"Chromatic Aberration"は出色です。以前デモ版がbandcampで公開されておりましたが、ともにきっちりとビルドアップされて本作に収められております。アレンジの妙と絢爛な曲調の一方で、三人編成ゆえのサウンドのパワー不足を感じる場面や、曲の出来のムラもあるのですが、それは今後に期待しましょう。バンドもその点はわかっているようで、現在ドラマーとセカンドギタリストを探しているようです。



https://www.facebook.com/NativeConstruct
http://www.metalblade.com/nativeconstruct/

PICK UP ARTIST + PREMIERE: “MUTE” 【NATIVE CONSTRUCT】 - Marunouchi Muzik Magazine

2015年5月2日土曜日

ゲーム音楽、フュージョン、プログレの折衷をより推し進めた、コディ・カーペンターの二作目 ― Ludrium『Pleasure of a False Past』(2015)



 コンポーザー/ミュージシャンであり、近年は父であるジョン・カーペンターの右腕的存在としても腕をふるう若き才能 コディ・カーペンターが主導するプログレッシヴ・ロック・ユニット Ludrium。2012年にリリースされたデビューアルバム『Zeal』から、約二年半ぶりとなる新作フルアルバムが先ごろリリースされました。今回も全曲の作曲とほとんどの演奏はコディによるものです。また、"Constellation" "Savior Dance"の二曲にベースで参加しているJason Choは、日本に仕事で長期滞在していた時期に現地で編成したバンドのメンバーであった人物。そして"Constellation"は、日本滞在中のライヴで披露された楽曲でもあるのです。



2014年6月にアンスティチュ・フランセ(仏語学校)のコンサートで"Constellation"を演奏した際の映像。演奏メンバーは、Cody Carpenter(kbd), David Rambeau(g), Jason Cho(b), 印南俊太郎(ds)の四名。それぞれ出身がアメリカ、フランス、カナダ、日本ということで、多国籍バンドでもあったわけです。

 前作がプログレッシヴ・ロックを柱に、フュージョンやゲーム・ミュージックのテイストを盛り込んだインストゥルメンタル作品だとすれば、本作はゲーム・ミュージックを柱に、プログレやフュージョン、エレクトロのテイストを盛り込んだ方向性になっていると言えます。構成もコンパクトにまとまっており、エレクトロなバッキングに奔放なギターソロがのる"Spaceport 30"や、ライトなフュージョン調の"Touch" "Longing for Angels"、ネオプログレな"Gyrocopter Love"のほか、村のイメージを想起させる牧歌的でささやかな小品"Tales"や、広大なフィールドを感じさせるテーマ"Thanks for Playing"など、そのままRPG作品に使ってもなんら遜色のない楽曲も見受けられます。彼はYouTubeでは「F-ZERO」「アクスレイ」「ストライダー飛竜」などの楽曲をカヴァー/アレンジして投稿しているのですが、そちらの活動に寄った内容とも言えますね。いずれにしても、少し古めかしさを感じるメロディアスなサウンドのたたずまいは依然として80年代のそれです。"Neon Sludge" "Tracker"は、彼の80年代シンセサイザー・ミュージックへの愛が滲む楽曲。もちろんそこには、父であるジョンの影響もあるでしょう。ここ数年、盛り上がりを見せているシンセウェイヴ・シーンとも合流した感もあります。

https://www.facebook.com/ludrium

Cody Carpenter - YouTube Channel
Cody Carpenter - soundcloud

Interview: Cody Carpenter - NEONVICE
 今年の3月に行われたコディへのインタビュー記事。GENESISやEmerson Lake&Palmer、「トランスフォーマー:ザ・ムービー」のコンポーザーであるヴィンス・ディコーラから多大な影響を受けているということ。Dixie Dregs/スティーヴ・モーズやLevel 42を愛聴していること。幼少のころからファミコン、スーパーファミコン、メガドライブ、アーケードゲームなどに親しんでいたこともあって、ゲーム・ミュージックからの影響も非常に大きいということ。また、父であるジョンのソロアルバム『Lost Themes』の制作に参加した際のことなど、色々と興味深い話が述べられています。

Cody Carpenter - IMDb
Ludrium『Zeal』(2012)

John Carpenter『Lost Themes』(2015)
John Carpenter: 新たな世界 - Resident Advisor