2013年1月27日日曜日

古代祐三、森岡賢、藤巻靖人『ザ・スキーム (サウンド・ボードII・バージョン)』(1989)

ザ・スキーム~サウンド・ボードⅡ・バージョン~ザ・スキーム
サウンド・ボードⅡ・バージョン~
(1989)
古代祐三

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中古CD屋にて、『ザ・スキーム』のサウンドボードIIヴァージョンのサウンドトラック(1989年版)を入手。メジャーデビュー前のSOFT BALLETの森岡賢氏と藤巻靖人(藤井麻輝)氏が、それぞれ古代祐三氏との共同編曲でアレンジ・ヴァージョンを手がけられているほか、Shi-Shonenの故.塚田嗣人氏がギターで参加されております。当時のソフトバレエの担当プロデューサーが古代氏のプロデュースも担当していたからこそ、このコラボレーションが実現したとか。



The Scheme(25A2-8) - VGMdb

2013年1月24日木曜日

再生ハイパーべるーヴ『ぱんださんようちえん』(2002)




 長らく廃盤となっていたアルバムでありましたが、先日ダウンロード販売が開始されたとのことで、5年半前に旧ブログに書いたレビューを大幅に書き直して上げてみる。サイドプロテアみらゐ氏、studioCampanellabermei.inazawa氏、TOx2RO氏の三者が中心となって制作された、サークル「再生ハイパーべるーヴ」の2002年作品。ぐつぐつにゃーにゃー♪にゃーにゃーぐつぐつ♪のリフレインが頭にこびり付いて離れなくなってしまう、電波ソングの金字塔「猫鍋」(9thNight制作の同人ゲーム「ねこなべ」テーマソング)が収録されているのが本作であります。みらゐ氏とbermei氏による楽曲、TOx2RO氏による詞、そしてSakuraさん、園田まひるさん、茶太さん、霜月はるかさんをはじめとした多数のヴォイス/ヴォーカルが、三位一体となって心地良く脳みそを蕩かせるぱんださんワールドへ連れて行ってくれる、ユニークでハッピー極まりないアルバムです。

 のっけから幼女扮するSakuraさんと謎の外野(?)が微笑ましくもすっとぼけたやりとりを繰り広げる「PANDA-RIDE」と、キュートな曲調に"ぱんださんはにんげんおそうよ"と物騒な詞、バックでひたすら連呼される「にゃーにゃー♪」で、どんどん頭が沸いてくる「ぱんださんようちえん」、この2曲でいきなり聴き手はノックアウトされること必至。アッパーでへべれけな電波テクノ「かたつむりさん」、茶太さんのヴォーカルが素敵なポップス「嘘ツキ鏡」や、町でうわさのワイルドなじいさんについて歌った詞のヘンテコっぷりに思わず噴き出してしまう「ワイルドじいさん」、矢野顕子っぽいのほほんとしたテイストの「腹筋体操第一」や、オルガンの音色が心地良く転がるレゲエ調の「pink metallic crusaders」、霜月さんヴォーカルのシンフォニックなポップス「ウチュウのひと」、お洒落でスタイリッシュなエレクトロニカ/クラブ・ジャズ「berceau」「blue plastic resistance」と、ネタも交えつつ聴き応えも十分、聴き入ってしまいます。かと思えば「はじめてのぱんださん」「きもだめし」「P.Y.」など、随所で差し挟まれるスネークマンショーばりのショートコントなトラックが、アルバムの印象をカオスな方向に差し向けております。総じておかしなテンションなのがまた何とも言えない(笑)「もう限界」あたりは特にキマっております。高い完成度の楽曲と、電波とおふざけが炸裂しまくったコント、この月とスッポンもかくやという物凄いギャップに最初は困惑させられますが、慣れるとこの構成がしっくり来てしまうからなんとも不思議。中毒性高し。考えたら負けです。向こうも「ナニが面白いのか、ナニが寒いのか、ナニをやりたいのか、もうわからないです」とか楽曲中で言っちゃったりしているので、我々は頭をカラッポにしてサウンドに身を委ねるまでです。ほら、だんだんきもちよくなってきたでしょう…?まごうことなき怪作であり、愉快な迷作であり、愛すべきハッピーな名作。それがぱんださんようちえんなのです。



同人音楽.info ぱんださんようちえん
サイドプロテア
studioCampanella

2013年1月21日月曜日

イタリアン・ロックの様式と洗練されたセンスが融合した技ありの一枚― BAROCK PROJECT『Coffee In Neukolln』(2012)

Caffee in NeukollnCaffee in Neukolln
(2012/04/24)
Barock Project

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 2004年に結成されたイタリアのプログレッシヴ・ロック・バンド バロック・プロジェクトの3rdアルバム。いわゆるシンフォニック・ロック系バンドであり、YouTubeで"BAROCK PROJECT"と検索すると、彼らの音楽的ルーツであるEL&PやGENESIS、NEW TROLLSのレパートリーを達者にカヴァーしている動画を見ることができます。バンド名が示すようなバロック様式の曲調はもちろん、70年代イタリアン・プログレやジャズのフレイバーを現代的なセンスでミックスさせたサウンドには泥臭さ・野暮ったさが全くなく、非常に洗練された仕上がり。コーラスやストリングス・アレンジも大々的に盛り込みつつ、変拍子を絡めた複雑な楽曲展開もお手のものいったところ。トリオとは思えぬサウンドのうねりと厚みを生み出す、フロントマンのルカ・ザッビーニ(kbd)の巧みなアレンジ・センスは一目置くべきものがあります。

 タイトル曲はその好例であり、甘い耳ざわりのヴォーカルが耳を惹くウェットな質感のピアノ・バラードかと思いきや、中盤でドぎついシャウト入りのプログレ・ハードになるという意表を突いた展開を見せてくれます(ちょっとアメリカのMAGELLANに近いものがあるかも)。また、「Back To You」は、EL&PやPFMからの影響を巧く消化した1曲で、アコースティック・ギターの爽やかな響きが楽曲全体にフレッシュな印象を与えています。10分の長曲「Fool's Epilogue」は、NEW TROLLSの『Concerto Grosso』を思わせる前半部と、疾走感抜群のプログレ・ハードな後半部をバロック・クラシカルなムードで纏め上げた1曲。カラリとしたプログレ・ハード「Streets Of Berlin」「Starfull Jack」は、ポップなエッセンスもさることながらフルートやアコースティック・ギターが良いアクセントになっている佳曲。QUEENの「Bohemian Rhapsody」(の終盤)を思わせるリフで幕開けする「Inside My Dreamer's Eyes 1&2」は動と静の二部作。プログレ、クラシック、そしてジャズと、かなり込み入った楽曲ながら、それを微塵も感じさせない構築の妙が冴え渡っております。いやもう脱帽。そしてダメ押しとばかりに続く「The Lives Of Others」がまた素晴らしい。情緒を感じさせるヴォーカル/アレンジでしっとりと始まり、GENESISチックな展開となる中盤からはドラマティックなオーケストレーションやギターソロがこれでもかと盛り上げる、アルバムのフィナーレを飾るにふさわしい大曲。練りに練られた楽曲、巧みなアレンジがたっぷりと詰まっており、最後まで聴き手を飽きさせないお見事な良作です。昨年のうちに聴いておけばよかったなあと、今さらながら後悔しております。



BAROCK PROJECT:myspace