中国のHR/HMバンドといったら十数年ほど前は黒豹(BLACK PANTHER)や唐朝(TANG DYNASTY)といったバンドくらいしかなかなか名前が挙がらなかったものですが、ここ10年で中国のHR/HM事情も大分様変わりしたようで、Youtubeを見ているとハードロックからプログレメタル、ハードコア、デスメタル/メロデス、果てはグラインドコアまで、数多くのバンドが登場してきている模様。今回紹介するこのバンドもその一つ、中国は重慶のメロディックスピードメタルバンド バークー・オブ・ダンテ(但丁之舟)の1stアルバム。バンド結成は05年、女性ヴォーカルとヴァイオリン担当のメンバーを擁する5人組。ウォーターハウスの「シャーロットの乙女」を使ったジャケットはいささかメロスピとミスマッチな感がありますが、05年のデモ音源ではバンド名の由来となったドラクロワの「ダンテの小舟」を使っているので彼らなりのこだわりがあるのかもしれません。
サウンドのほうはSONATA ARCTICAやNIGHTWISH、HEAVENLYといったバンドから影響を受けているのがよくわかるいかにもなメロスピっぷりで、東洋的メロディを織り込んだ「Intro」からタイトル曲の疾走チューン「Final Victory」へと雪崩れ込む流れはホントもう王道。男性ヴォーカルはお世辞にも線が太いというタイプじゃないので危なっかしいのですが、その辺はクワイアコーラスで補強しているのであんまり気にならないです。選任キーボーディストやドラマーがいないので、煽りまくるギターソロに比べてキーボードソロがショボかったり、リズム隊が打ち込み臭かったりするのは流石にどうにもならんのですが、楽曲の勢いが勝ってるんでこれも無問題かなと。バラードナンバーはヴァイオリンパートと女性ヴォーカルを生かしたしっとりしたつくりで、男性ヴォーカルとのいい感じのデュエットを展開しております。しかしながらこのアルバムのハイライトはラストに収録されているDRAGONFORCE「My Spirit Will Go On」のカヴァーかなあと。カヴァー曲がハイライトってのもなんだか妙なものですが、かなりの健闘ぶりを見せるカヴァーなので驚きました(さすがに原曲の超速ギターソロパートはちょっと誤魔化してますが)。というかこのバンドの曲をカヴァーしようと思うあたりが豪快というか何というか(笑)。DRAGONFORCEにとっては良い弟分バンドが出来たんじゃないでしょうかね。
●The Barque Of Dante:Myspace
●CHINESE ROCK DATABASE:但丁之舟楽隊 THE BARQUE OF DANTE
●The Barque Of Dante:Encyclopaedia Metallum