2014年12月31日水曜日

2014年を振り返る~個人的ベストアルバム二十選

昨年は年末二十選企画をやっていませんでした (お茶濁し的なエントリは書きましたが)。しかし、今年はやります。こちらになります。どのアルバムも全力でオススメしたい作品です。

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■A.C.T『Circus Pandemonium』
CIRCUS PANDEMONIUMCIRCUS PANDEMONIUM
(2014/02/19)
アクト

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待ちに待った新作。そして、デビューからの十数年間の総決算と言うべき仕上がり。八年分の説得力も最後の最後まで伝わってきました。曲・構成・コンセプトそしてアレンジと、細部に至るまでじっくり丁寧に練り込まれたそのこだわりには頭が下がりますし、素晴らしいアルバムでもって示したバンドの鮮やかな復活劇を改めて喜びたいと思います。



■SCAR SYMMETRY『The Singularity (Phase I - Neohumanity)』
シンギュラリティ-フェーズI:ネオヒューマニティシンギュラリティ-フェーズI:ネオヒューマニティ
(2014/10/01)
スカー・シンメトリー

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化けっぷりに脱帽。中心メンバーが抜けてもなおこれだけのものをつくってしまうというのには恐れ入りました。単なるマンネリ打破以上の堅牢なハードSFコンセプトアルバム。この勢いで三部作貫徹していただきたい。



■Dave Bainbridge 『Celestial Fire』
Celestial FireCelestial Fire
(2014/11/25)
Dave Bainbridge

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この人がこんなにガチンコなプログレッシヴ・ロック作品を作り上げるとは思いもしなかったです。しかもめちゃくちゃ出来がいい。ダテにIONAのフロントマンは張っていないなという。



■茜 -AKANE-『茜道中譚 / Journey』




「AZEL -パンツァードラグーンRPG-」「パンツァードラグーンオルタ」「Crimson Dragon」のコンポーザーである小林早織さんと、十代のころから民謡の素養を育んできたというヴォーカリストでマルチクリエイターの高橋由美子さんによる“エストロニック・ミュージック”ユニット。民謡とエレクトロ・ミュージックの幸福な融合がなされており、ゲームミュージックのフィールドから登場したというところも興味深いと思います。ワールドワイドな作品発信に力を入れているレーベル「Brave Wave Production」とともに、今後に注目したいです。



■FreddeGredde『Brighter Skies』



二作目のジンクスという言葉がありますが、この人はそれも才能でねじ伏せてしまいました。マルチ・ミュージシャンによる現代型プログレッシヴ・ポップソングを見せつけた鮮烈なデビューアルバム以上にパワフルさに磨きのかかった一枚です。JOLLYのドラマーという強力な相棒も得て、ますます頼もしい存在になりました。




■The Osiris Club『Blazing World』
Blazing WorldBlazing World
(2014/06/17)
Osiris Club

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メンバー全員ペストマスクと黒衣を着用しているという、ヴィジュアル的にもインパクトのあるバンドが、怪奇小説の本場であるイギリスから登場いたしました。17世紀の作家マーガレット・キャヴェンディッシュを特に偏愛し、彼女の作品世界を現代にアプローチしようとしているというコンセプトも含めて、いろいろとガチ過ぎるバンドです。



■FORZA ELETTRO MOTRICE『Sulla Bolla Di Sapnone』



活きのよい新鋭バンドの登場に事欠かないイタリアのプログレッシヴ・ロック・シーンですが、今年はこのバンドが見事なフルアルバムでデビューしました。黎明期SFの父といわれるクルト・ラスヴィッツのファンタスティックなSF作品を題材にとったあたりもピッタリといったところです。



■Lu7『Azurite Dance』
Azurite DanceAzurite Dance
(2014/07/26)
Lu7

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メンバー二人のヴィジュアルが初めて前に出た都会的なイメージのアルバムジャケットにも表れているように、過去三作を一区切りとして、これまでになくシンフォニック・ロック/プログレッシヴ・ロックに接近した内容でありました。さらなる進化を求めるユニットの姿勢がしっかりと伝わってきたのもよかったですね。



■吉河順央『AND DIAMOND』



アイドルグループ「STAR☆ANIS」のメンバー〈すなお〉として、アニメ「アイカツ!」の紫吹蘭・風沢そらの初代ヴォーカルを担当されていた吉河順央さんの1stソロアルバム。気鋭のトラックメイカー陣と水島精二監督の企画協力を得て制作された多幸感と疾走感に溢れるキラーチューン揃いのガールズ・ポップアルバムという攻めに攻めた内容でぶったまげました。イベントや一部のショップでの販売のみだったため一般流通しておらず、現在は(ほぼ)完売してしまったことが非常に惜しまれます。


■maigoishi『Encounter』
EncounterEncounter
(2013/12/04)
maigoishi

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若干22歳の新人コンポーザー/トラックメイカー。両親譲りというジャズ、エレクトロニカ嗜好に、90年代ゲーム・ミュージックからの影響も取り込んだ颯爽としたエレクトロニック・フュージョンとにかく気持ち良くツボにハマってきます。各ジャンルの美味しい部分を選りすぐり、巧みにミックスして独自のサウンドを作り上げていくセンスの冴えはなるほど新世代的だと思います。



■Vince DiCola & Kenny Mariedeth『Saturday Morning RPG Original Soundtrack』



80年代に『ロッキー4』や『トランスフォーマー・ザ・ムービー』のスコアを手がけたことで一躍有名になり、自ら率いるプログレッシヴ・ロック・バンドでの活動や、グレン・ヒューズなどの他アーティストのアルバムへの参加、映画やゲーム・ミュージックへの楽曲提供・アレンジなどで精力的に活動を続けるアメリカのキーボーディスト/コンポーザーの待望の新作。フルアルバムの形でヴィンス氏の作品が聴けるのは実に十数年ぶりでしたが、その期待に見事に応えてくれました。ロシアのUbiktuneレーベルが輩出するコンポーザーを筆頭に、ヴィンス氏の影響を受けた若手の人たちが近年続々と登場してきているということも含めて、たいへんに意義深いリリースであったと思います。



■Terrible Thing『Journey to the Centre of Zorn』



カナダの謎の変人コンポーザー。今年、個人的にいちばん夢中になったインディーズアーティストが彼です。フランク・ザッパ的なポップセンスと、その他もろもろの面白おかしなエッセンスを絶妙に取り込んだジャンクで雑多で、それでいてどうしようもなく魅力的な音楽性に惹かれないわけがありません。年末になってもう一枚新作アルバムをリリースしており、そちらも好内容。バンドメンバーも明らかにされましたが、たぶん全員架空のメンバーなんじゃないかと思います。未だに謎が多いことには変わりなく、それだけこのおじさんは喰えない存在なのです。



■Mike Oldfield『Man On The Rocks』
Man on the RocksMan on the Rocks
(2014/02/04)
Mike Oldfield

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近年のアルバムの内容から考えて、正直なところ期待していなかったのですが、フタを開けてみれば粒揃いのポップス・アルバムでありました。リゾート地でのレコーディングや、若手メンバーも迎えることでうまい具合にリフレッシュが図られており、それもいい方向に作用したのだなあと。「メタルギアソリッドV」のプロモーション映像にこのアルバムからの楽曲が使われたのも驚きでした。



■Jean Claude Vannier『Salades de filles』
Salade De FillesSalade De Filles
(2014/08/19)
Jean Claude Vannier ジャンクロウドバニエ

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セルジュ・ゲンズブールやエリス・レジーナ、シルヴィ・バルタンやブリジット・フォンテーヌなど、名だたるシンガーとの作編曲仕事や数々の映画音楽を手がけてきたフレンチ・シャンソン界の大御所が、三人の若いオネーチャン(ひとりは実娘)をフィーチャリングして作り上げた歌ものアルバム。御歳七十歳を越える爺さんですが、なおこれだけの毒と切れ味と諧謔にまみれた猥雑なポップスアルバムをこさえてしまうのはやはり重鎮。老いてなお壮健、老いてなおストレンジ。かくありたいものです。



■Mark Mothersbaugh『The Lego Movie: Original Motion Picture Soundtrack』
The Lego Movie: Original Motion Picture Soundtrack (+ 2 Bonus Tracks)The Lego Movie: Original Motion Picture Soundtrack (+ 2 Bonus Tracks)
(2014/06/17)
The Lego Movie

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DEVOのフロントマン マーク・マザーズボウ。80年代からDEVOの活動と並行してTVドラマや映画などのサウンドトラックの仕事を手がけており、そちらのキャリアも相当に長いものがありますが、それだけにツボを押さえたスコア。オーケストレーションとコーラスを基調にしているとはいえ、エレクトロテイストも随所でギラギラさせており、そのユニークな味わいに往年の諧謔ぶりを少なからず見出せて嬉しく思いました。DEVOの人がダブステップに手を出していると考えると何とも隔世の感がありますが、面白いからいいのです。映画も素晴らしかったですが、スコアも、まさに「すべてはサイコー!」な楽しさたっぷりでした。



■上坂すみれ『革命的ブロードウェイ主義者同盟』
革命的ブロードウェイ主義者同盟【通常盤】革命的ブロードウェイ主義者同盟【通常盤】
(2014/01/08)
上坂すみれ

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デビューアルバムである本作を皮切りにして、今年の上坂お嬢のリリースには目を見張るものがありました。ライヴDVDはともかくとして、特撮、アーバンギャルド、サエキけんぞう、窪田晴男、谷山浩子、謎のロシア人、そして人間椅子の面々とそれぞれコラボレーションを果たしたシングルをリリースしただけでなく、トドメに本人セレクトによる80年代アイドル歌謡コンピレーションアルバム(菊池桃子のラ・ムーを選曲していたこともあってまんまとホイホイされました)のリリースという充実ぶり。今年一年でこれだけやってしまった。もう行くところまで行っていただきましょう。



■BRAM STOKER『Cold Reading』



まさかの復活を遂げるバンドはプログレッシヴ・ロック界隈には多いですが、このブラム・ストーカーは実に40年ぶりの復活というまさにドラキュラじみた存在。音楽性は刷新されたとはいえ、いなたいサイケデリック/ハード・ロックから80~90年代的なネオ・プログレッシヴ・ロックになったというイマイチ時代に追いついていないところも含めてとても萌えポイント。それでも中心人物は音楽シーンの裏方としてずっと活動を続けてきただけあって、現代的プロダクションが施されており、さすがの仕上がりです。今後はデヴィッド・クロスとのコラボレーションアルバムのリリースも考えているとのことなので、期待いたしましょう。



■Grailknights『Calling the Choir』
Calling the ChoirCalling the Choir
(2014/04/11)
Grailknights

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カルトメタル界隈でも一時期ちょっとだけ話題になった、ドイツが誇るカラフルなスーパーヒーローバンドですが、気がついたらオリジナルメンバーはひとりを残して全員いなくなっておりました。普通に考えれば未曾有の苦境でしかないのですが、バンドにとってはさしたる問題ではなかったようで、久々にリリースされたこの新作もまったく変わらない音楽性で愉しませてくれました。あちらのメタルフェスでも中堅どころの存在として確固たる地位を確立しているようですし、なんだかんだで、実はすごいバンドなんじゃ…。



■FENCE OF DEFENSE『digiTaglam 2 RING WORLD』
digitaglam 2  RING WORLDdigitaglam 2 RING WORLD
(2014/01/08)
FENCE OF DEFENSE

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あの『digitaglam』の実に23年ぶりとなる続編的作品。昨今のシーンにも目配せしつつも、全体的には年輪を経たアレンジでまとまっており、そこはもう好みを分けるとしか言いようがないですが、自分はしっくりきました。「あの頃」のエネルギーを呼び戻しつつ、円熟というフィルターを通して再度結実させた一枚。



■VALENSIA『Gaia III・Aglaea・Legacy』
アグライア(ガイアIII)~ザ・フェアウェル・アルバムアグライア(ガイアIII)~ザ・フェアウェル・アルバム
(2014/09/24)
ヴァレンシア

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QUEENやケイト・ブッシュなど、往年のロック/ポップ・ミュージックの遺伝子を受け継いだ音楽性で一世を風靡したオランダの才人、ヴァレンシアは、「ガイア」三部作のラストを飾る本作をもって音楽活動からの引退も表明いたしました。結果的に半生のライフワークとなりましたが、二十年の歳月をもってしても、デビューアルバムを越えることはできなかったというのは一抹の哀しみをおぼえます。過去の焼き直しとしか言いようのない内容で、彼が最後にオマージュしたのは自分自身だったというのはいささか皮肉めいていますが、悔しいかな、それでも傑作なんです。桁違いに極上のロック/ポップスアルバムとして最後まで光を放っていました。今はただ、彼が今後歩む新たなる道に幸があらんことを願うばかりです。