2014年12月3日水曜日

ZABADAK『iKON~遠い旅の記憶~』(2000)


IKON~遠い旅の記憶~IKON~遠い旅の記憶~
(2000/01/20)
ザバダック

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ザバダックの通産15thアルバム。鈴木光司氏の小説『楽園』に着想を得たそうですが、一方では吉良知彦氏の音楽的源流のひとつであるプログレッシヴ・ロックに立ち返ったアルバムでもあります。ヴァイオリンとギターがアグレッシヴにキレの良い絡みを繰り広げるエモーショナルなトラッド・チューン"PACO"、コーラスの波へと飲み込み扇情的なギターが突き抜ける"風の巨人"、途中のハモンドオルガンのプレイが実にEL&Pしている、起承転結を備えたプログレ・チューン"赤い鹿の伝説"(柚楽弥衣さんのコーラスも印象的)、と、オープニングから既に並々ならぬ気合が伺えます。新居昭乃さんのヴォーカルによるささやかな小品"城"から続くタイトル曲"遠い旅の記憶"は、本作のハイライトとなる全三部、トータル13分の大曲。残響のようなギター/コーラスによって奥へといざなわれ、辿り着いた先で吉良氏のヴォーカルが朗々と決まる(ⅰ)旅の予感、ピアノとマリンバの軽快なフレーズにどことなく季節感を感じさせる(ii)北の回廊、マリンバがより躍動的に打ち鳴らされ、ストリングスも交えて展開が徐々にスケールアップしていく(iii)新しい場所、そして最高潮のラストを迎えるという天晴れな大曲。また、旅の予感にはkircheのみとせのりこ嬢がコーラスで参加しております。コーラスがゴツイ骨太のギターロック"BELIEVE"、枯れた印象のようでまろやかで優しく含み込んだアコースティックな小品"蒼の部屋"を挟んで、再びトラッド・ロック路線へ。ジャキジャキしたギターの響きがヴォーカル共々フレッシュに迫ってくる"DEIR PAIDER"。ヴァイオリンとシタールがせめぎ合い、多国籍な色合いを鮮やかに映しだす"収穫祭"はもうひとつのハイライトナンバー。ラストは吉良氏の息子さんもコーラスで参加し、微笑ましい大団円を迎えるポップス・ナンバー"DREAMER"で締め。新世紀の幕開けを飾るにもふさわしい一枚であり、傑作アルバムです。



http://www.zabadak.net/

〈関連〉
服部克久、M.I.D.、吉良知彦、かしぶち哲郎 他『無限のリヴァイアス キャラクターソング・コレクション あしたから』(2000)
『iKON』の数ヶ月前にリリースされたキャラソンアルバム。吉良氏が保志総一朗氏へ提供したプログレッシヴなトラッド・ロック曲"Sacred Sacrifice"を収録。