2014年12月5日金曜日
FROST*、MOON SAFARIに比肩する北欧の新世代マルチ・メロディメイカー、待望の二作目 ― FreddeGredde『Brighter Skies』(2014)
スウェーデンのマルチ・ミュージシャン Fredrik Larsson。数年前よりゲーム音楽やポピュラー曲を様々な楽器をひとりで演奏/多重録音したカヴァー動画をYouTubeに投稿し、演奏・アレンジのクオリティの高さで一連の演奏動画はいずれも数百万再生という驚異的な数字を叩き出し、一躍スウェーデンのみならず世界中の注目の的に。また、ソングライティング能力にも長けており、2011年にはプログレ系の新興レーベル White Knight Recordsよりデビューアルバム『Thirteen Eight』もリリース。ドラムス以外のパートは全て彼がこなすというほぼソロ体制での録音で、甘いヴォーカル/コーラスと楽曲構成の力強さ、そしてゲーム音楽からの影響も盛り込んだドリーミーなシンフォニック・ロックの世界を遺憾なく展開。新人離れした内容で、アルバムが耳に届いたFROST*のジェム・ゴドフリーが彼を激賞するという誉れまで頂戴しました。
学業に専念するためにしばらくは活動を縮小していましたが、三年のインターバルを経て、今年ついに二作目のアルバムが完成。レーベルも移籍し、RIVERSIDEやKristoffer Gildenlow、Paatosのカタログを抱えているGlassville Recordsからのリリースとなっています。前作ではDavid Schleinという人が叩いていましたが、今回はアメリカのヘヴィ・プログレ・バンド JOLLYのドラマーであるLouis Abramsonが全面参加。数年前からラーションのゲーム音楽カヴァーメドレーの演奏にも加わっているところをみると、ゲーム音楽好き同士での縁なのかもしれません。JOLLYも近年勢いのあるバンドだけに、彼の強力なプレイは本作において非常に頼もしいものになっております。また、5曲目の"The Tower"に、Zuzana Vanekovaなるフルート奏者を迎えております。それ以外のパートは全てラーションによるもの。
演奏はもちろん、甘口なメロディセンスもさらにパワーアップしており、変拍子を多用したトリッキーなめまぐるしさ、得意の多重録音コーラスやアコースティック楽器を中心とした気持ちのよい装飾の施された構成の妙が冴え渡ります。数年間の雌伏の時を吹き飛ばすかのように序盤から高いテンションを見せており、2曲目の"The Autotelic Self"ではテクニカル・アンサンブルからアコースティック・パートへのよどみのないスイッチングが何度も繰り返され、11分という広めのキャンパスを鮮やかに彩色しています。北欧エレクトロ/ポスト・ロック・サウンド特有の夢心地へといざなう"Your Life" "Shining"といった小品の魅力も健在。ラストは今回も15分を越える大曲"Ocean Mind"。この1曲でアルバム一枚分の展開が詰め込まれたと言ってもいいほどに凝縮されています。あのメロディもこのメロディも喰らえといわんばかりの激流のような展開には思わず変な笑いが出てしまいました。90年代以降のセンスがてらいなく発揮され、煌びやかな空間が贅沢に演出された傑作です。サウンドの傾向として、引き合いに出そうと思えばFROST*やMOON SAFARI、MEWやEFTERKLANGの名前を出すことはできますが、決してそれらのフォロワーに堕していはいないとはっきりと言っておきます。むしろそれらに比肩すると言ってもいいくらいです。音楽的影響を昇華してさらに肉付けまでやってのけてしまうほどに、本人のメロディセンスに非凡なものを感じます。だからこそ、より強く推していきたい人ですね。
http://freddegredde.com/