2018年12月7日金曜日

汝、我が民に非ズ『つらい思いを抱きしめて』(2018)

つらい思いを抱きしめて
つらい思いを抱きしめて
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汝、我が民に非ズ
インディーズ (2018-09-26)
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 INU、至福団、町田町蔵+北澤組、ミラクルヤングなど、いくつものバンドやユニットで活動を展開してきたミュージシャンであり作家のマーチダさんこと町田康の新プロジェクト「汝、我が民に非ズ」の初の吹込盤。結成は2014年にさかのぼり、2016年の本格的な活動開始から音楽フェスへの出演やワンマンライヴを順調にこなし、満を持してのリリースとなった本作、思わぬダークホースだった。こういうサウンドで来たかと思わずポンと膝を打ちました。バンドメンバーは町田康(vocal)、中村敬治(guitar)、大古富士子(piano, keyboards)、瀬戸尚幸(bass)、浅野雅暢(sax, percussion)、高橋結子(drums)の6人。アルバムの作曲は中村氏と大古氏の2人が手がけ、編曲はバンド名義。

http://www.parade-co.jp/jizo/nanji_wagataminiarazu.html

 2010年に町田康名義で発表した前作『犬とチャーハンのすきま』は、NATSUMENのAxSxE(プロデュースも兼任)、PANICSMILEの石橋英子、Hi-STANDARDの恒岡章、PHEWWHOOの赤坂ミチルとともに東京都内の聖浄な場所で録音され、鋭くヒリついた独特の間合いを持つパンクサウンドでうどんへの偏愛や酒、おっさんなどを歌っていましたが、本作『つらい思いを抱きしめて』ではジャジーなアレンジもきいた艶のある歌ものをじっくりと聴かせてくれます。鴨南蛮うどんダシの如く、艶のあるポップ&ロック・サウンド。





「RB」の歌い出しの一節〈最近は 私は快調 金も稼いでる 働いて 娘らにパンを買って帰る だけどいま ときどき響く君のその声が 気持ちがよすぎて 心がくるうよ〉や、「いろちがい」における〈涙でできた社会の掟 君、スタバでひとりで巻き鮨食べる〉のなんともいえぬ良さ。どこか醒めたようなグルーヴ感にジワリとした高揚感や幽趣をおぼえる「だから君は今日も神を見る」「リターン」「風のなかで君は」では、さながらQUEENがうどんを茹でた如き壮大なコーラスでどっしりと展開され、アルバムの最後を飾る「スピンク」は、2008年から2017年まで足かけ10年にわたって連載されたマーチダさんのエッセイ〈スピンク日記〉シリーズの愛犬スピンクへの想いを切々と綴ったスローバラードで滋味深い余韻が残ります。




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