2014年2月5日水曜日
タケカワユキヒデ、浅野孝己 他『県立地球防衛軍 オリジナルアルバム』(1985)
週刊少年サンデー増刊号に1983年から1985年にかけて連載されていた安永航一郎氏のスラップスティックギャグ漫画『県立地球防衛軍』。同作品は86年にOVA化されるのですが、それに先駆けて、85年の8月に東芝EMIのアニメ専門レーベルであるフューチャーランド(ユーメックス)よりLPリリースされたのがこのイメージアルバム(※)。同年春に解散を発表したゴダイゴのタケカワユキヒデ氏と浅野孝己氏のお二人が全面的に参加されています。また、タケカワ氏は前年に光瀬龍原作のSF小説「百億の昼と千億の夜」の、萩尾望都によるコミカライズ版のイメージ・アルバムを手がけておられました。
アルバムは歌ものとインストを交互に配した構成で、全10曲。インスト曲はシンセサイザーによる打ち込みで、アルバムの始めと終わりではスペイシーかつ勇壮なテーマが聴けます(これだけ聴くとこのCDがギャグ漫画のイメージアルバムだとは到底想像がつきません)。それ以外のインストは全て「電柱組」関係の楽曲で、"念力イモとばし" "電柱組下部組織"はどこかトボけた印象も感じさせるコミカルなテクノ・ポップに仕上がっております。縦横無尽に弾きまくる浅野氏のギターに乗せて 「マッスル日本!」のコールがしつこく差し挟まれる"マッスル日本"はインパクト抜群のスピード・チューンで、マッスル日本のムチャクチャなキャラクターをイメージしたドライヴ感がまた素晴らしい1曲。
柿沢美貴さんのデビュー曲でもあるという"CHICK-A-BOON-BOON TIGER FEET -どうせ私はきれいです-"は、あどけなさの残る彼女の声質と煌びやかで躍動的なサウンドのマッチングが秀逸なテクノ歌謡。彼女はこのしばらく後「戦え!!イクサー1」の主題歌"戦え!!イクサー1"を歌われます。"ひとりぼっちのサイボーグ -カレーの国からきた男-"を歌うのは、70年代から活動を続けるAPRIL BANDのヴォーカリスト/ギタリスト 加藤隆之氏。リバーブ/エコーのかかったギターとヴォーカルがむわっとした空気感や胡散臭さをたっぷりと演出しております。"私思っているほど子供じゃない -バラダギのラブソング-"は、「おれは鉄兵」「パタリロ」の主題歌でも知られる藤本房子さんのコケティッシュな声がスロウなテンポの曲調にのせて運ばれる、思わずまどろみを誘う1曲。"ふれてもいいですか"は、奥土居祐子さんのアダルティーなヴォーカルを聴かせるソリッドなエレポップ。そして、"元旦が来た"は、奇人変人まみれの本編でも一二を争う人気を誇る(?)正月仮面のテーマ曲。元旦を祝い、世界平和を願う、おめでたさとユルさがポップに融合した屈指の名曲。毎年正月が来るとこの曲が聴きたくなります。また、ヴォーカルのマーチン氏は翌年に「マシンロボ クロノスの大逆襲」の主題歌"マシンロボ・炎"を歌われます。
ユニークなイメージアルバムとしてはもちろん、タケカワ氏のソングライティングの素晴らしさも味わえる名盤なのですが、OVA版サウンドトラックと同様、こちらも現在に至るまで一度も再発されておらず、プレミアアイテムと化しております。過去のアルバムとして埋もれたままというのは何とも勿体無いので、コミックスの完全復刻版の刊行の流れに乗って、こちらも再発してくれないかなあ、なんて思うのですよ。
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01. 県立地球防衛軍オープニング
02. CHICK-A-BOON-BOON TIGER FEET -どうせ私はきれいです- (作詞:小泉長一郎 - 歌:柿沢美貴)
03. 念力イモとばし
04. ひとりぼっちのサイボーグ -カレーの国からきた男- (作詞:ささだるい - 歌:加藤隆之)
05. 私思っているほど子供じゃない -バラダギのラブソング- (作詞:すぎむらひなこ - 歌:藤本房子)
06. マッスル日本
07. ふれてもいいですか (作詞:ささだるい - 歌:奥土居祐子)
08. 電柱組下部組織
09. 元旦がきた (作詞:ささだるい - 歌:マーチン)
10. 県立地球防衛軍エンディング
作編曲:タケカワユキヒデ(ゴダイゴ)
ギター:浅野孝己(ゴダイゴ)
[LD32-5002](1986.2.1)
(※)半年後の1986年2月1日に上の品番でCD盤もリリースされています。「やじきた学園道中記」「ファントム無頼」「炎の転校生」のイメージアルバムのCD盤もこの日のリリース。いずれもフューチャーランドより。
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●県立地球防衛軍 - Wikipedia
●タケカワユキヒデ - Wikipedia
●浅野孝已 - Wikipedia