【その1 80年代編】
【その2 90年代編】
【その3 00年代~】
【番外編】
(続き) ヴィンス氏は2001年に、元TRAPEZE~DEEP PURPLEのグレン・ヒューズのソロアルバム『Building The Machine』の一部楽曲でキーボーディストとして参加しています。2002年には、グレンと元DEEP PURPLEのジョー・リン・ターナーの二人が中心となって結成されたハード・ロック・バンド Hughes Turner Projectの1stアルバムに参加。キーボーディストとしてだけでなく、アルバムのラストに収録されている「On The Ledge」の作編曲で関わっており、迸るキーボード・アレンジが、楽曲をダイナミックに盛り上げています。また、同年にはダウンロード・オンリーのピアノ・ソロ・アルバムや、自身のこれまでのキャリアを総括したベスト・コレクション『IN-VINCE-IBLE』をリリース。第二回でも言及いたしましたが、スティーヴ・ウォルシュ、ドーン・ペリーとのトリオ編成による幻のデモ音源"Only Time Will Tell"も収録されています。
■TDRS MUSIC - 『IN-VINCE-IBLE』
http://www.tdrsmusic.com/vince.html#IN-VINCE-IBLE
この後、再び映画音楽の仕事を受けており、2004年に「Sci-Fighter」というB級SFカンフー映画(ちなみにこの作品、2009年に「DRAGON BATTLE EVOLUTION」というタイトルに変えて日本版DVDが出ているのですが、同年に公開されたハリウッド版ドラゴンボールこと「DRAGONBALL EVOLUTION」のタイトルパロディなあたり、日本の配給会社のヤケクソ感が伝わります)の劇伴に関与。その時の楽曲の一部は、同年にリリースされたソロアルバム『Falling Off a Clef』に収録されています。また、2006年には「Soft Target(Crooked)」というアクション映画に"Take Me"という曲を提供しているようです。
■Sci-Fighter - The Internet Movie Database
http://www.imdb.com/title/tt0390463/
■Soft Target - The Internet Movie Database
http://www.imdb.com/title/tt0441035/
2006年には、ドーン・ペリー(dr)、元TIN MACHINEのリーヴス・ゲイブレルス(g)、ポール・イル(b)、ヴィンセント・ケンダール(vo)との5人編成でジャム・セッションを行い、1曲42分に及ぶ楽曲を録音、ダウンロード限定で販売しています。演奏の密度も高く、かなりの聴き応えです。この時のレコーディングメンバーのうち、ヴィンス、ペリー、ポールの3人によるインスト・トリオDPI(Vince DiCola/Doane Perry/Paul Ill)に発展し、10~20分の長尺曲を3曲収録したアルバム『Found Objects』をリリースします。
2008年には、プレイステーション3用ソフト「グランツーリスモ5 プロローグ」にアレンジャーとして参加。T-SQUAREの安藤まさひろ氏が作曲し、GTシリーズを象徴するテーマ曲である"Moon Over the Castle"を、元デヴィッド・カヴァーデイル・バンドのダグ・ボッシと共同でアレンジしています。ヴィンス氏のキーボード・アレンジが加わると、派手さを増したプログレ・ハード調に。
ヴィンス氏とT-SQUAREのコラボレーションはこの時が初めてではなく、安藤まさひろ氏(g)、伊東たけし氏(ewi)が2001年に編成した"T-SQUARE Plus"に、ヴィンス、ダグの両氏が参加しています。さらに元オジー・オズボーン・バンドのフィル・スーザン(b)、元GUNS N'ROSESのマット・ソーラム(dr)も加わった豪華なメンツにて、"TRUTH"や"THE FACE"をリ・レコーディングしています。メンツがメンツだけに、ハードロック/プログレ/フュージョンの三味が程よく味わえる仕上がり。同年の9月にはフルアルバムもリリースされました。
■T-SQUARE Plus / Truth 21c 紹介ページ
http://www.fujitv.co.jp/f1gp/music/21c_main.html
2009年にはオーストラリアのミュージシャン/俳優であるリック・スプリングフィールドのアルバム『My Precious Little One: Lullabies for a New Generation』に参加、また、同年に公開されたマイケル・ベイ監督による映画「トランスフォーマー/リベンジ」に呼応する形で、"Bound&Gagged"という壮大なロック・チューンをバンド編成で録音します。メンバーはヴィンス(kbd/dr)、STORMING HEAVEN時代の盟友リック・リヴィングストーン(vo)、前述した映画「Sci-Fighter」「Soft Target」でもヴィンス氏と共にコンポーザーとしてクレジットされているケニー・メリーデス(g)、かのボブ・ディランに見出された女性ヴァイオリニスト スカーレット・リヴェラ(vln)。結局、マイケル監督監修による映画のロック・コンピレーションCDには、この楽曲は選ばれませんでしたが、YouTubeにPart.1、Part.2という形で公開されております。この並々ならぬ気合の入った内容は必見であります。
2010年には遂に「ロッキーIV」の完全版スコアがリリース。これまでのサントラには、ヴィンス氏のスコアは「Training Montage」「War」の2曲しか収録されておりませんでしたが、こちらはその2曲も含め、彼が作編曲した15曲のスコアをリマスタリングの上で収録しております。「Up The Mountain」や、「Apollo’s Death And Funeral」、"ロッキーのテーマ"(オリジナル:ビル・コンティ)のシンセサイザー・アレンジなど、素晴らしい内容です。
2011年にはMighty Rabbit Studios制作の「Saturday Morning RPG」というiPhoneアプリゲームのBGMを担当されます。ボス戦の楽曲がYouTubeにありましたが、キース・エマーソン リスペクテッドなド直球のキーボード・プログレ路線で微笑ましいのです。
■たのしいiPhone! AppBank
「Saturday Morning RPG: ゆけゆけMartyくん!拳とノートとシールとその他モロモロで夢を切り開け!」
http://www.appbank.net/2012/06/09/iphone-application/421778.php
2012年には、マイケル・フライシュマンとコンビを組み、アルバム『Asylum 9』をリリースしています。また、アメリカのプロレス団体である「Chikara」に、イベント用のオフィシャル・テーマ曲を提供されております。ド派手なイントロに明快なテーマが鳴り響く、痛快な仕上がりです。
●Vince DiCola - Wikipedia
●TDRS Music - Vince DiCola
●Vince DiCola - AllMusic
●Talking Music with Vince DiCola - seibertron.com
※トランスフォーマーシリーズの大手ファンサイトであるseibertron.comに掲載されている、2000年代半ば頃のヴィンス・ディコーラのインタビュー。YESとEL&Pから音楽的に影響を受けたという発言もここから。
●Melodic Net: Vince DiCola Interview[2004.12.09]