2015年12月25日金曜日

2015年を振り返る ― 個人的20曲選

まずはベストアルバム二十選とは別に、曲単位で印象に残ったものを20曲挙げるという趣旨で毎年やっておるのですよ。今年もやるのです。


▼Stig「Velocity, part one」


イングランドのコンポーザーがロシアのチップチューンレーベル「Ubiktune」からリリースした全二曲の大作アルバム『Velocity』より、前半パート。エレクトロ/アンビエント、ミニマル・ミュージック、プログレッシヴ・ロック、ゲーム・ミュージック、フュージョンがバランスよく溶け込み、入れかわり立ちかわりで高揚感をもたらしてくれます。



▼Moonfall 「Verglas」


骨の髄まで日本のヴィジュアル系にどっぷり浸かった、ニューヨークのエモいプログレッシヴ・メタル・トリオのデビューEPからの一曲。この憧れとガムシャラさが一体になったようなクッソエモいミクスチャーサウンドはすげえ忘れ難いものがある。あまりにもクサ過ぎるギターソロで全てが収束した感もある。ちょっと今後が楽しみではありませんか。



▼サテライトヤング 「Dividual Heart」


折からのシンセウェイヴブームにも呼応しつつ、80年代アイドル歌謡からの影響を強く反映させたエレクトロ・ポップを展開する日本のユニットの5thシングル曲。エレクトロ歌謡は時空を越える。



▼Sithu Aye「Senpai, Please Notice Me! (先輩、私に気付いて下さい!) 」


スコットランドが誇るハイパーオタクギタリスト Sithu AyeがSenpaiへの愛と友情のパワーをしたためてリリースした3曲入りコンセプトEP『Senpai EP』は非常にリピータビリティの高い好作でした。Sithu AyeパイセンはTwitterやインタビューでProg-chanの設定を垂れ流し続けているのですが、みていて心底楽しそうです。根っからの設定おじさんだなと、微笑ましく思いました。これが愛と友情のパワーの成せる業ですよ。



▼group_inou「EYE」


今年はやたらとgroup_inouを聴いていた。終盤の「できない気がしていた できると思っていた」の「思 っ て い た」のワンフレーズのみ渾身のシャウトをぶっこんでくる瞬間湯沸し行為、激エモすぎる。PVもまた素晴らしい。



▼Ghost「Cirice」


パパ・エメリトゥスII世からIII世に交代、バックバンドのネームレス・グールの面々もろとも大幅イメチェンを図ったスウェーデンの教皇ポップメタルバンドの新作アルバム『Meliora』から。ドゥームポップと思わせておいて泣きのソロが繰り出されるという、じつに慈悲深い流れ。



▼五五七二三二〇「ポンパラ ペコルナ パピヨッタ」


ココナッツサブレ50周年記念企画ユニットにして、私立恵比寿中学の覆面ユニットの2ndデジタルシングル曲。前回はマスロック調だったけど、今回は菅野よう子作編曲でQUEENやらMEATLOAFばりのハデハデなプログレッシヴ・ハード・ロックをブチかましていた。演奏メンバーがKenKen(b)、 青山英樹(ds)、今堀恒雄(g)の練達の面々をガッツリ揃えていてなおさら笑いが止まらない。



▼アースシェイカー「夕星の芒野と消ゆ」


アースシェイカーの今年リリースのアルバム『BIRD』の収録曲であり、「GITADORA Tri-Boost」への提供曲であり、作詞:あさき/作曲:96(黒沢ダイスケ)のコラボレーション曲。ストロングスタイルのプログレッシヴ・ハード・ロック・チューンですよ。



▼Armonite「Insert Coin」


今年、16年ぶりに復活を果たした、多国籍ヴァイオリン・プログレッシヴ・ロック・バンド Armonite。切れ味と柔軟性を兼ね備えたユニークな復活作となった『The Sun is New each Day』に収録されているこの曲は、スウェーデンのチップチューナー Goto80がゲスト参加したプログレ×チップチューン。“ゲームソフトの歴史”的な趣のPVもつくられているのだけれども、ソフトのチョイスにちょくちょく趣味が入っている感じ。



▼Pope Francis 「Wake Up! Go Go Forward」


 第266代ローマ教皇フランシスによる初のロック/ポップスアルバム『Wake Up!』の先行トラック。もはやプログレだと思っていたら作編曲でLE ORMEの元メンバーが関与していた。“Pope is Pop”



▼Loszeal「Freak Outsider」


演劇実験室◎万有引力の演者を擁するプログレッシヴ・メタル・バンド LOSZEAL。骨のあるサウンドと存在感抜群のヴォーカル、申し分のない存在感です。




▼THE PINBALLS「劇場支配人のテーマ」


「ニンジャスレイヤーフロムアニメイシヨン」とのタイアップも果たした一曲。「アイエエエエ!!」のシャウトも飛び出すストレートなガレージ・ロックンロール。寂れた劇場の人々をテーマとした詞から滲み出る「もう後に退けない焦燥感」が素晴らしく、これがまた忍殺世界との絶妙なマッチングをみせています。



▼CONFRONTATIONAL「To Live And Die On The Air (Feat. Cody Carpenter) 」

イタリアのインダストリアル/ノイズ・バンド Recs of the fleshのマッシモ・ウザイ率いるエレクトロ・ユニット。甘口のメロディーとミステリアスなムードが支配する初期MINISTRYばりのニューロマンティックチューンを得意とする。この曲はジョン・カーペンターの息子にして右腕的存在のコディとのコラボレーション曲。



▼Jono El Grande「Bach's Beach」


ノルウェーの奇才ギタリスト ジョノ・エル・グランデ。軽々とジャンルを越境するユーモラス極まるジャズロックサウンドで、シレっととんでもないところに足を踏み入れてしまうしたたかさというか、ナチュラルボーンで狂ってる感が最高なのです。陳腐化した定型句だけど「おもちゃ箱をぶちまけた様な」という形容は、この人の作風に対してはかなりしっくりハマる。



▼Native Construct「The Spark of the Archon」


「過剰」と「洗練」を併せ持った、気鋭と呼ぶにふさわしいボストンの新人バンド。オーケストレーション全開のシンフォニックな曲調のなかで思いっきりブラストビートをかます展開に度肝を抜かれる。あとは一刻も早くバンドメンバーが揃ってほしいところ。



▼Neo Resistance Quartetto 「ロッキーメドレー」


才気あふれるガテン系ピアニストの天平氏、ドラマーの山本真央樹氏、ヴァイオリニストのYuiさん、チェリストの村中俊之氏擁するクロスオーヴァー・インストゥルメンタル・バンド Neo Resistance Quartettoによる華麗なるロッキーメドレー。「ロッキーIV」の"War"と"Training Montage"が組み込まれているのも嬉しい。バツグンの強度を誇るインストバンドであり、今後アルバムもリリースされる予定なので非常に楽しみです。
http://www.neoresistance.net/



▼David Hasselhoff「True Survivor」


スウェーデン発サイバーカンフーアクションムービー「Kung Fury」のテーマソング。本編もろとも徹底した80'sアレンジに、ハッセルホフおじさんの美声がこだまする。ちなみに彼はいま80年代路線の新曲やカヴァー含む新コンピレーションアルバムのクラウドファウンディングを開始。デジタル/CD版の各プレオーダーを受付中。



▼ELDRITCH 「Danger Zone」


キャリア20年を越えるイタリアのプログレッシヴメタルバンドの通産10thアルバムより。ギッシリと詰まった音のなかでキャッチー極まるサビが光るシブいキラーチューン。まさに鍛え上げられたバンドならではの「Prog Power」の理想を体現したような一曲だと思いますよホントに。



▼GOBLIN REBIRTH「Back In 74」

GOBLINのリズム隊 ファビオ・ピニャテッリとアゴスティノ・マランゴロを擁するGOBLINスピンアウトバンド。本家のサウンドをもちろん意識しつつも、軽い足回りが魅力。ちなみに、本家GOBLIN、クラウディオ・シモネッティ主導のGOBLIN、ピニャテッリとマランゴロのGOBLIN REBIRTH、さらに前身バンドであるCHERRY FIVEが四十年ぶりに復活したので、GOBLINはいま四形態が並行して存在している。クソッ、なんて時代だ!



▼筋肉少女帯人間椅子「地獄のアロハ」


「君は千手観音」以来となるエクスペンダブルズ的コラボレーション。PVはTAB譜付き。カップリングの“ダイナマイト”筋肉少女帯版カヴァーと“少年、グリグリメガネを拾う"人間椅子版カヴァーもよかった。予定調和という以上に業が深くて笑ってしまう。