2013年8月10日土曜日

前口渉、早見沙織 他『God only knows ‐Secrets of the Goddess‐(『神のみぞ知るセカイ 女神篇』オープニングテーマ)』(2013)

God only knows -Secrets of the Goddess-God only knows -Secrets of the Goddess-
(2013/07/31)
Oratorio The World God Only Knows

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アニメ『神のみぞ知るセカイ』第三期「女神篇」のオープニングテーマ「God only knows -Secrets of the Goddess-」を収録したシングル。2010年に放送された第一期のオープニングテーマ「God only knows」は、六部構成+α(「集積回路の夢旅人」)でトータル10分に及ぶものであり、数名のコンポーザーが分担する形で制作した各パートのトラックが次々と繋がっていくというリレー形式の展開もさることながら、これでもかと耳を惹く大仰なアレンジの数々にとてつもない衝撃を受けましたが、今回の"Secrets of the Goddess"はさらにスケールを押し広げ、全八部構成&トータル13分という、もはや他の追随を一切許さないシンフォニック・ロック・オラトリオと化しており、思わず開いた口が塞がらなくなりました。コンポーザー/アレンジャーも増員し、サウンドユニット「eyelis」の面々(前口渉/川崎里実/増田武史)、作詞担当の西田恵美さん、ギタリストの木村香真良氏、楽曲制作ユニット「mixakissa(ミキサキッサ)」が引き続き参加されている他、新たにMAGIC PARTY本田光史郎氏、江並哲志氏、青山シゲル&薫ル石塚玲依氏といったJ-POP/アニソン界隈で活躍されている方々が参加。また、一期、二期でヴォーカルを担当されたELISAさんに代わり、今回はハクア・ド・ロット・ヘルミニウム役の早見沙織さんがヴォーカルを務められております。

一期の「God only knows」では、各パートには「第○幕」という名称がつくのみでしたが、今回は"God(神)"を冠した序章を皮切りに、作中に登場する「ユピテルの姉妹」"ウルカヌス" "ディアナ" "アポロ" "ミネルヴァ" "マーズ" "メルクリウス"の名を冠した六つの章(詞の内容も、各キャラクターの心情を書いたものです)を経て、"Love And Revival(愛と復活)"を掲げた最終章で幕を閉じるというもので、トータル・コンセプトな部分にもさらなるこだわりを見せています。各パートのおおまかなタイムラインは以下の通り。

0:00~2:00 序章「神」
2:00~3:30 第一章「ウルカヌス」
3:30~4:40 第二章「アポロ」
4:40~6:00 第三章「ディアナ」
6:00~7:10 第四章「ミネルヴァ」
7:10~8:00 第五章「マーズ」
8:00~9:15 第六章「メルクリウス」
9:15~12:52 最終章「愛と復活」


打ち込みとストリングスを主軸に、壮麗なヴォーカル/コーラスとロック的なギターが要所で彩を添え、随所で叩き込まれるオーケストラ・ヒットがさらにテンションを高めてゆくという贅沢な趣向は一期とほぼ同じものですが、楽曲から感じる印象は少し違うものになりました。一期は、QUEENからの影響も少なからず感じさせた楽曲展開の派手さやめまぐるしさで耳を惹いた分、各パート間の切り替わりでちょっと苦しいなと感じるところもあったのですが、今回は前回と比べると格段にパート間の繋ぎが自然なものになっており、スケールの大きさはそのままに、最初から最後まで聴き手を包み込むかのような柔らかさとトータル感のあるシンフォニック・ロックに仕上がっております。また、今回はクラスタシアCMBなどの活動でも知られる室屋光一郎氏率いる"大先生室屋ストリングス"がストリングスパートを担っているのも見逃せないところです。朗々たるコーラス/ヴォーカルを2分間に渡ってたっぷりと聴かせる荘厳かつアップテンポな序章(ちなみに、序章のラスト1分から第一章冒頭部分までを抜粋したものがTVサイズとしてアニメのオープニングに使用されております)。アカペラパートに重点を置いた第二章。細やかで軽やかなドラムとアコースティック・ギターのカッティングに導かれ、6拍子/5拍子の展開が続いてゆく第五章。3拍子のリフレインが煌びやかにこだまし、静かな感動を呼ぶ最終章。トドメのダメ押しとばかりに「God only knows 第三幕」のイントロが登場し、回帰を予感させる趣向の幕切れなど、その妥協のない仕上がりにただただ脱帽です。

くどういようですが、まごうことなきシンフォニック・ロックの大作であり、これはもうプログレと言わずして何と言うかというくらいアイデアが詰め込まれた渾身の内容になっています。公式サイトのCD紹介文にも「次々と展開していくプログレ的なスタイル―」とあったり、音楽ディレクターである甲克裕氏が「プログレの域を遙かに超えた歌劇」とインタビューで語っているように、制作側もやはりプログレ的なものを意識したところはあったようです。また、「神のみぞ知るセカイ」の原作者であり、アニメ版楽曲への作詞提供もされている若木民喜先生はプログレ好きだそうで、氏の意向も少なからず反映されたところもあったのではないかと思います。それらを考えると、「God Only Knows」は出来るべくして出来た楽曲なんだなあと思わず納得してしまいました。菅野よう子さんやElements Gardenなどの活躍もあり、90年代、00年代と時代が進むにつれてプログレ/シンフォニック・ロック的なアプローチを見せるアニソンが増えてきましたが、その中でもある種の極みをこの曲は見せてくれました。公式サイトの謳い文句には"新たなる「神のみ曲」の金字塔になるであろう"とあるのですが、シンフォニックなアニソンの金字塔と言ってもいいのではないかと思います。それほどに、この曲に満ち溢れている外向きのエネルギーは並々ならぬものがあります。素晴らしいものを聴かせていただきました。



神のみぞ知るセカイ - アニメ公式サイト
神のみぞ知るセカイ - Wikipedia
God only knows~集積回路の夢旅人 - Wikipedia
Eyelis - Wikipedia

【アニメイトTV独占】『神のみぞ知るセカイ 女神篇』OPテーマについて、
作品プロデューサー&音楽ディレクターが語る!

http://www.animate.tv/news/details.php?id=1374564581

【アニメイトTV独占】『神のみぞ知るセカイ 女神篇』OPテーマの歌唱者がついに判明!
その歌姫に独占インタビュー!!

http://www.animate.tv/news/details.php?id=1374822238&p=1