2010年7月17日土曜日

Peridot Foresta (Sei-Peridot【SeikoP】)『Trees Of Origin』(2010)

ニコニコ動画においては"SeikoP"の名でも知られているSei-Peridotさんによる、VOCALOID(巡音ルカ)を使ったオリジナル楽曲を収録した8曲入りアルバム。彼女の音楽性に惹きこまれる人は多く、CD-R版は委託販売店において販売開始直後に即在庫切れとなったということからもその人気ぶりが伺えます(現在はオンラインによるダウンロード配信で販売中)。作風は主にトラッド/ニューエイジでまとめられておりますが、彼女自身がスティーヴ・ライヒ、マイク・オールドフィールド、RENAISSANCE、ASTURIAS(大山曜)、菊田裕樹といったバンド/コンポーザーからの影響を強く受けているということで、ミニマル・ミュージックやプログレッシヴ・ロック、そしてゲーム・ミュージックといった要素もハッキリと伺える魅力的なハイブリッド・ミュージック。個人的には光田康典氏の作風やアルトネリコシリーズのアレンジアルバム(ヒュムノスコンサート)の雰囲気にも近いものを感じました。

 そしてその音楽性もさることながら、VOCALOIDの調声技術も目を見張るものがあり、さながら肉声顔負けのニュアンスで歌い上げられる巡音ルカの声が楽曲に自然に溶け込んでいます。他にも、SeikoP自身のコーラスも交えて作り上げられる透き通るようなコーラスワークや、架空言語も取り混ぜた詞世界、そして彼女自身によるファンタジックなイラストレーションも、楽曲を彩る欠かせない要素でありましょう。さて、本作は8曲入りの作品で、うち4曲はニコニコ動画で公開済みの楽曲、残り4曲は初収録曲。煌びやかな展開、透明感、異国的情緒と幻想性といった彼女の楽曲の美味しいところが4分間にギッシリ詰まった「Blue Amber」。凛としたヴォーカルと躍動感溢れるフレーバー、後半へ進むにしたがってどこまでも広大なフィールドを駆け抜けるかのような盛り上がりを見せていく「Ancient Ring」。ハープとストリングスが優しく、そして静かな盛り上がりを見せる小品「Cristal Clear」。聖剣伝説シリーズにおける菊田裕樹氏の作風からの影響を伺わせる音使いと、スティーヴ・ライヒ的なミニマリズムが箱庭的イメージも想起させるインスト曲「Lime Pothos」。まさにシンフォニック・ニューエイジと言えそうな「Caoin」は、叙情性たっぷりのメロディとコーラスが非常に美しく、また、彼女の代表曲のひとつ「Queen Nereid」のフレーズが登場するあたりは感慨深いものがありますし、渾然一体となって奏でられる瑞々しくも壮大な世界観には素直な感動を覚えます。そして本作のハイライトといえるのが、Part.I Part.IIと銘打たれた「Dyras」二部作。Part.Iでは思わず飲み込まれてしまいそうな奥行きを感じさせる多重コーラス、そしてPart.IIではメロトロンの音色を交えて、それぞれファンタジックなムードと構築美で見せる力作。ラストは、さざ波の音を取り入れたさっぱりと、そして静かに余韻を残す小品「Hotarubi」で幕を閉じます。つらつらと書き連ねて参りましたが、魅力はまだまだ語り尽くせません。是非ともアルバムを聴いていただきたいですし、ニコニコ動画やYouTubeで実際に動画を見て、聴いて欲しいです。かくいう自分も、「Queen Nereid」を初めて聴いたときの鮮烈な衝撃が未だに忘れられません。オリジナル曲以外にも、「アメイジング・グレース」「フニクリ・フニクラ」といった海外のポピュラー・ミュージックのカヴァーや、世界樹の迷宮の楽曲アレンジなども発表されており、そちらでも素晴らしい調声/アレンジを披露されているので一聴をオススメいたします。




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