2015年7月25日土曜日

多種多彩多国籍なサウンドで追体験する〈ヘルサレムズ・ロット〉 ― 岩崎太整『血界戦線 オリジナルサウンドトラック』 (2015)

TVアニメ「血界戦線」オリジナル・サウンドトラック
岩崎太整
東宝 (2015-07-15)
売り上げランキング: 66

http://kekkaisensen.com/products/music/ost.html

 内藤泰弘氏による異世界クロッシングドンパチングアクションコミックをボンズがアニメ化した「血界戦線」のサウンドトラック。インストゥルメンタル・トラックで構成されたDISC1、ヴォーカル・トラックで構成されたDISC2のヴォリューミーな二枚組です。コンポーザーは、〈SR サイタマノラッパー〉シリーズや「モテキ」「ジョーカーゲーム」など、映画を中心に、CM、舞台劇伴なども手がける岩崎太整氏。アニメの劇伴を手がけるのは今回が初となります。《NewType》2015年5月号の岩崎氏へのミニインタビューによると、実写映画を手がけることが多かっただけに、これまでのつくり方とはまったく違うスタンスで挑まれたようで、“絵の表現としても幅が広い” ゆえに、“「アニメは許容してくれる音楽の幅が広いな」という印象”と、コメントされております。松本理恵監督との打ち合わせを経て “自然と生まれた曲を作品に当てはめていったという感じに近い” “曲ごとに主張が強いというか、「何じゃこれ?」と思うような曲が並んでいるのがいいかな、と” というスタンスになったとのこと。歌ものを入れるという構想は松本監督も岩崎氏も持たれていたようです。レコーディングは日本、ニューヨーク、ボストン、エルサレムと、複数の拠点で行われ、現地のアーティストやセッション・ミュージシャンを多数迎えて制作されております。「血界戦線」の舞台である〈ヘルサレムズ・ロット〉が異界と交わったニューヨークだということもあり、岩崎氏は早い段階で海外レコーディングを思い立たれていたようです。





 おなじく内藤氏原作である「トライガン」「ガングレイヴ」の今堀恒雄氏や、「カウボーイビバップ」などの菅野よう子さん、「バッカーノ!」の吉森信氏など、スタイリッシュなスコアのアニメ作品はパッと思いつくだけでもいくつもありますが、それらの先行作品に負けずとも劣らずな内容です。ホーンセクションをフィーチャーしたビッグバンドジャズによる“動”のスコア、ストリングスと打ち込みを組み合わせた“静”のトラックをメインに、AOR、R&B、ファンク、ヒップホップ、タンゴ、エレクトロニカ、オルタナティヴ・ロックなどの多彩な方向性の楽曲が脇を彩ります。サウンドトラックを漁っていると、ときたま埋め草のような無味無臭のスコアに出くわしたりしますが、本作にはそういった楽曲は一切ありません。ちなみに、岩崎氏は脚本家やジャズ・ギタリストを志していた時期もあったそうですが、紆余曲折あって劇伴コンポーザーの道に入ったという経歴の持ち主。作品のイメージのみならずシーンや演出にマッチしたスコアが多いのは、そういった氏のバックグラウンドも活きております。本編シーンに絶妙なタイミングで挿入されていたヴォーカル曲は英語詞中心ですが、"It's Magic"はヘブライ語詞、"Epi fèmen dife a"はアフリカ言語のスキャット/コーラスをフィーチャーしています。それぞれにクッキリとしたカラーを持ち合わせた抜群の内容ですが、個人的には、ヴォーカルもアンサンブルも軽やかで楽しげにスウィングする"Catch Me If You Can"と、第六話のエピソードと演出に相乗的なハマり具合をみせたウェットなバラード"On My Own"二宮愛さんヴォーカルの二曲、Ben Lorentzenの滋味あふれるヴォーカルが染み渡るAOR"The Land Of Nod"(ちなみに、同曲の編曲者である辻理恵さんはビヨンセのツアーサポートメンバー&アレンジャーを務める方でもあります)をとくに推したいところです。また、コ・プロデュース/編曲で、ボストンを拠点としたジャズ&ヒップホッププロジェクト〈monolog〉のマルチ・インストゥルメンタリストであるYuki Kanesakaこと金坂征広氏が参加されているのもポイントでしょう。折り紙つきの仕上がり。〈ヘルサレムズ・ロット〉のイメージが、多種多彩多国籍なサウンドとして結実しております。

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INTERVIEW:岩崎太整インタビュー - HogaHolic
RIP SLYME SHOCK THE RADIO ARCHIVE|ゲスト:岩崎太整 (2015.3.20 ON AIR)

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『血界戦線 オリジナルサウンドトラック』
[THCA-60055|2015.7.15|TOHO animation RECORDS]

【Disc 1】

01. Theme of Blood Blockade Battlefront
02. Footloose/Run for Cover/Footloose
03. Sidewinder
04. Libra
05. Victim
06. Snap Out
07. Call You Later
08. Presage
09. Oblivion
10. Attack The System
11. Keep On The Sunny Side
12. Look Daggers
13. Toy Blues
14. The Urge
15. Hands On
16. Starbow
17. There Will Be A Day
18. United
19. Fate
20. Traffic Man
21. Under Pressure
22. A Funeral
23. Early Train
24. White Gloves (Reprise)


All Produced, Arranged And Composed:岩崎太整

【Disc 2】

01. Catch Me If You Can
(作詞・ヴォーカル:二宮愛/作編曲:岩崎太整)
02. A Way Out
(作詞・ヴォーカル:Shayne Holland/作曲:岩崎太整/編曲:Yuki Kanesaka〈monolog〉)
03. World Goes Round
(ヴォーカル:Hannah Macklin aka MKO/作詞:二宮愛/作曲:岩崎太整/編曲:平野“Bigyuki”雅之)
04. On My Own
(作詞・ヴォーカル:二宮愛/作編曲:岩崎太整)
05. In The City
(作詞・ヴォーカル:Saucy Lady/作曲:岩崎太整/編曲:Yuki Kanesaka〈monolog〉)
06. The Land of Nod
(ヴォーカル:Ben Lorentzen/作詞:二宮愛/作曲:岩崎太整/編曲:辻利恵)
07. Dust
(作詞・ヴォーカル:Toft Whillingham/作曲:岩崎太整/編曲:Yuki Kanesaka〈monolog〉)
08. Just A Game
(作詞:二宮愛/作編曲:岩崎太整/編曲:辻利恵)
09. BCCGS
(プログラミング:岩崎太整)
10. It's Magic
(作詞・ヴォーカル:Shira Z.Carmel/作編曲:岩崎太整/編曲:辻利恵)
11. At The Gates
(プログラミング:岩崎太整)
12. Epi fèmen dife a
(ヴォーカル:Deborah Pierre/編曲:Yuki Kanesaka〈monolog〉)
13. Epigraph
(ヴォーカル:土屋絢子/プログラミング:岩崎太整)
14. World Goes Round (Reprise)
(ヴォーカル:Hannah Macklin aka MKO/編曲:平野“Bigyuki”雅之)
15. White Gloves
(作詞・ヴォーカル:二宮愛/作曲:岩崎太整)
16. Hello,world! 〔TV size version〕
(作詞・作曲:藤原基央/編曲:BUMP OF CHICKEN & MOR)


《レコーディングメンバー》

岩崎太整(synth, programming, etc)
金坂征広/Yuki Kanesaka〈monolog〉(Co-produce, arrange, etc)
平野“Bigyuki”雅之(Co-produce, arrange, etc)
Rozhan Razman(Co-produce, programming, etc)
辻利恵(Co-produce, arrange, piano etc)
U-key(programming)
二宮愛(vocal)
Toft Whillingham(vocal)
Deborah Pierre(vocal)
Ben Lorentzen(vocal)
Shayne Holland(vocal)
小澤篤土(trumpet)
川上鉄平(trumpet)
真砂陽地(trumpet)
田沼慶紀(trumpet)
川原聖仁(trombone)
半田信英(trombone)
松尾直樹(trombone)
佐々木匡史(bass trombone)
古田儀左ェ門(horn)
西倫未(horn)
海野貴裕(horn)
若木曜(horn)
庵原良司(flute, tenor sax)
竹村直哉(clarinet, baritone sax)
辻野進輔(alto sax)
安藤康平(alto sax)
村瀬和広(tenor sax)
石川周之介(tenor sax)
〈岡村美央ストリングス〉(strings)
岡村美央(violin)
伊勢三木子(violin)
Amiko Wadabe(viola)
笠原あやの(cello)
常田大希(cello)
Yusuke Chikita(A.bass)
古田尚樹(E.bass)
Akos Forgacs(bass)
服部正嗣(drums)
吉川昭仁(drums)
安齋拓磨(drums)
Justin Tyson(drums)
原ゆうま(E.guitar)
Randy Runyon(E.guitar)
Joe Young(guitar)
山口周平(guitar)
佐藤ひろのすけ(piano, organ, clavinet)
Nobumasa Kobayashi(percussions, turntable)
大久保かおり(bandoneon)
朝川朋之(harp)

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【追記】海外版サウンドトラックについて

Blood Blockade Battlefront - O.S.T.
Taisei Iwasaki
Milan Records (2016-08-12)
売り上げランキング: 1,049,236


 その後、2016年8月12日にサウンドトラックの名門レーベル「Milan Records」より、北米・ヨーロッパ版サントラがリリースされました。岩崎氏のブログによると、Milan Recordsのエライ人であるジャン・クリストフ氏が「音楽がいいから」という理由だけでアニメ放送前に岩崎氏に直接コンタクトをとり、会いにきてくれたとのこと。いやー、すごい話だなと思いつつ、ジャン氏の嗅覚の確かさにうならされます。こちらのサントラはCD一枚組のため、必然的に収録曲は日本盤より少なくなりますが、インストゥルメンタル、ヴォーカルトラックがまんべんなくチョイスされた全25曲。なお、Milan Recordsのsoundcloudで"Sidewinder" "Footloose/Run for Cover/Footloose"の二曲が試聴できます。

Blood Blockade Battlefront – original music by Taisei Iwasaki
アニメ『血界戦線』のオリジナルサウンドトラックが北米とヨーロッパで発売されます。
(from Taisei Iwasaki Blog|2016.07.30)




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『BLOOD BLOCKADE BATTLEFRONT Original Soundtrack』

●は日本盤サントラDISC 1収録曲
▼は日本盤サントラDISC 2収録曲


●01. Theme of Blood Blockade Battlefront
●02. Footloose / Run For Cover / Footloose
▼03. Catch Me If You Can
▼04. A Way Out
▼05. World Goes Round
▼06. On My Own
●07. Snap Out
●08. Sidewinder
●09. Toy Blues
▼10. BCCGS
●11. Keep On The Sunny Side
●12. White Gloves (Reprise)
●13. Call You Later
●14. Traffic Man
▼15. Epi fèmen dife a
▼16. It's Magic
▼17. In The City
●18. There Will Be A Day
●19. Presage
●20. Attack The System
▼21. Dust
●22. Oblivion
▼23. The Land Of Nod
▼24. World Goes Around (Reprise)
▼25. White Gloves

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