レイク&パーマー エマーソン
ビクターエンタテインメント (2010-06-23)
売り上げランキング: 542,055
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先日、遂に紙ジャケット化された、エマーソン、レイク&パーマーの92年作品。90年代の再結成後のEL&Pのアルバムは解散前の最終作『Love Beach』以上に語られてないような気がするんですが、過去の栄光がデカ過ぎるだけにまあそれも致し方ないのでしょうか。そういうわけでアルバムの存在が黒歴史扱い気味ですが、個人的には結構気に入っていて、今でもたまに聴きたくなります。映画劇伴作曲家のマーク・マンシーナのプロデュースの元制作された14年ぶりのオリジナルアルバムとなる本作は、キース、グレッグがソロ用に書き溜めていた楽曲に、書き下ろし新曲を加え構成。グレッグのヴォーカルに全盛期ほどの艶がなかったり (「Better Days」では途中で咳き込んでたりもする…さすがに演出? ってことはないよなあ)、捨て曲もいくつかあるものの、なかなか充実した内容になっています。
不穏な空気、風雲急を告げるピアノ、ヘヴィなリズムの中厳めしいシンセが印象的な冒頭曲「Black Moon」に象徴されるように、冒頭数曲はモダンな重々しさを感じさせる仕上がり。ミドルテンポの曲調、颯爽と鳴り響くハーモニカ、ローリングするハモンド、そこにレイクのヴォーカルがドスンと決まる「Paper Blood」(頓挫に終わった、ASIAのジェフ・ダウンズとレイクのプロジェクト Ride the Tigerの「Money Talks」という曲のリメイク)は文句なしにカッコ良いナンバーだし、プロコフィエフの"ロメオとジュリエット"をEL&P風に料理した「Romeo and Juliet」は原曲のコミカルさを失っていない良アレンジ。グレッグのバラード「Farewell to Arms」「Burning Bridge」や、ジェフ・ダウンズと共作した「Affairs of the Heart」はしみじみとした味わいで、どちらも後半の盛り上がりがなかなか泣かせてくれます。そして本作のハイライトと言えるのが派手なインストナンバー「Changing States」。チャーチオルガンのイントロから煌びやかなファンファーレ調のシンセパッセージへと展開する躍動的なEmerson,Lake&Powell風インストで、エマーソンらしいエネルギッシュな勢いをたっぷりと感じさせてくれるのが堪らない。さあこれから盛り上がっていくか!?というところで寸止めを食らわされるような終盤のさっぱりした曲構成は少々残念ですが、ともあれ手堅い内容です。今回の紙ジャケット化で再評価されて欲しいですね。
●「Black Moon」:Wikipedia
●Emerson,Lake&Palmer:Wikipedia
●Emerson,Lake&Palmer:公式