2007年1月22日月曜日

Steven Anderson『Gypsy Power』(1994) / 『Missa Magica』(1996)

ジプシー・パワージプシー・パワー
(1994/10/19)
スティーヴン・アンダーソン

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 今は亡きHR/HM系レーベル ゼロ・コーポレーションが世に送り出したアーティストの中でも屈指の技量を誇り、現在もひそかに語り継がれているスウェーデン出身のギタリスト スティーヴン・アンダーソンの1stアルバム。泣きの速弾きギターをジプシー・ミュージックと融合させたインスト作品であります。速弾き特有のストイックさは感じますが、ギタートーンが鋭角的なものではなく、やや丸みと太さを兼ね備えているためか耳に優しく、聴きやすいです。何より曲調が一辺倒ではなく、北欧の哀愁もたっぷり含みこんだカラフルなものであることもかなりポイントが高い。エスニックなムードを匂わせた中で繰り広げられる「Dance Of The Fortune Teller」。ゆったりとした展開の中でこれでもかと泣きに泣きまくる「The Child Within」。"狂い弾き"という表現がピッタリな「Gypsy Fly」。列車が発車する一連の動作をギタースクラッチ等で再現してみせるという離れワザを冒頭でやってのける「Orient Express」。9分間に渡り情緒のあるプレイを聴かせる、本作のハイライト「Paw-Kwa And The Great Monade」。ラストは、2拍子のリズムとクラシカルなフレーズの融合した「The Scarlet Slapstick」。全6曲、収録時間35分と、この手のアーティストにしてはヴォリュームが少ないものの、個人的にはこれぐらいがしつこくなくてちょうどいい。各曲のユニークさもさることながら、粒の揃い具合も見事で、まさにジャケットのような鮮やかなイメージが広がっています。今となってはすっかり古典となった感のあるネオ・クラシカル系ですが、彼のサウンドは今なお評価されてしかるべきでしょう。この後、96年にスティーヴンは大作主義を打ち出した2ndアルバム『Missa Magica』を発表するものの、以降はとんと音沙汰がなく、シーンから姿を消してしまいます。




ミサ・マジカミサ・マジカ
(1996/09/26)
スティーブン・アンダーソン

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 スウェーデンのギタリスト スティーヴン・アンダーソンの、事実上の最終作となった2ndアルバム。凡百のテクニカル系ギタリストとは一線を画す形でネオ・クラシカル・サウンドをアプローチしていた彼が、何故本作を最後にシーンから姿を消してしまったのか、本作を聴くと、そうなってしまったのもなんとなく納得できるものがあります。エキゾチックなムードを押し出すことに重点を置くようになった楽曲は、大作志向になったことも相まって完全にプログレッシヴ・ロック的な方向性にどっぷりと浸っています。奔放なセンスと抜群のテクニックの相乗的な狂い咲きでインパクトを残した前作とは完全に趣を異としており、ジプシー・ミュージックとネオ・クラシカルの融合をもう一歩進めにかかったというのが伺える一方で、悟りを開いてアッチの世界へ旅立ってしまったという印象も。それが如実に伺えるのは五部構成の一大組曲「Missa Magica」の最終楽章「Missa Magica Part V」。ストリングスやチェロが奏でる甘美なメロディーに呼応するかのように、世を儚むような泣きのロングトーンが9分間に渡って鳴り続ける、美しさとやるせなさをこの上なく味わえる渾身の名曲です。これだけ行くとこまで行ってしまったらそりゃもう現世に帰ってこれないな、と。悟りの世界を垣間見たギタリストというのは数多くいますが、本作を以って彼はそんな悟り系ギタリストの系譜にひっそりと名を刻んだのではないでしょうか。