2014年12月16日火曜日

六三四Musashi、高梨康治、刃-yaiba-、藤澤健至...「ニンジャスレイヤー」サントラへと続く和楽器ハード・ロックの太き血脈

ニンジャスレイヤー キョート・ヘル・オン・アース 【上】(ドラマCD付特装版)ニンジャスレイヤー キョート・ヘル・オン・アース 【上】(ドラマCD付特装版)
(2014/10/14)
ブラッドレー・ボンド、フィリップ・N・モーゼズ 他

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多岐に渡るメディアミックスを展開し、その勢いますます衰えるところ知らずなサイバーパンクニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」。そのシリーズ第二部の第七巻目となる物理書籍『キョート・ヘル・オン・アース(上)』の特装版に付属した、オーディオドラマ版ニンジャスレイヤーのサウンドトラックは、和太鼓、尺八/篠笛、三味線といった和楽器群をフィーチャーしての颯爽としたハード・ロックや壮大なシンフォニック・スコアあり、骨太のテクノ/エレクトロニカあり、キュートかつストレンジなアイドル・ポップありと、作品世界よろしく多彩な(カオスな)聴き応え十二分の内容でありました。......という感じで、当初は書籍発売直後に詳しくサウンドトラックを紹介しようと思っていたのですが、そうこうしているうちに二ヶ月経ってしまったので、時遅しに失した感があります。なおかつ「ニンジャスレイヤーWiki」における当該サウンドトラックの記事がまさにワザマエ! な圧倒的情報量で構成されており、濃厚なアトモスフィアをつくりあげたニンジャヘッズ有志の熱意にただただ感服の極みだったため、全力でそちらの記事をレコメンドさせていただきます。

「ニンジャスレイヤー オリジナル・サウンド・トラック」 - ニンジャスレイヤーWiki



というわけで、こちらは趣旨を変更し、「忍殺」の劇伴を手がけるサウンドチームの面々について掘り下げていくことにいたしました。作曲者の藤澤健至氏をはじめ、演奏メンバーのキャリアについて、ザックリとですがご紹介していきたいと思います。ほとんどのメンバーは音楽制作集団Team-MAXに所属するコンポーザー/アレンジャー/プレイヤーであるというのはご存知かと思われますが、Team-MAXの面々が関連しているバンドが〈刃-yaiba-〉そして〈六三四Musashi〉。まず、藤澤氏は六三四Musashi、刃-yaiba-のギタリストである飯塚昌明氏(現在ではGRANRODEOのe-ZUKAとしてもお馴染みですね)と、同じく六三四Musashi、刃-yaiba-のキーボーディスト/コンポーザーである高梨康治氏のお弟子さんでもあります。和太鼓奏者の茂戸藤浩司氏は、六三四Musashiのオリジナル・メンバーのひとり(現在は六三四Musashiから脱退しておりますが、刃-yaiba-のメンバーです)。また、尺八奏者の き乃はち(旧名:佐藤康夫)氏、三味線奏者の-KIJI-(旧名:西元)氏も、六三四Musashiのメンバーとして名を連ねております。

大和 YAMATO大和 YAMATO
(2000/12/16)
六三四

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ギターの“六”弦、三味線の“三”弦、ベースの“四”弦から命名された和楽器ハードロックバンド〈六三四(Musashi)〉は、竜童組の元メンバーである小針克之助氏のプロデュースのもと、'91年に結成。初期のメンバーは小針克之助(ギター/プロデュース)、松浦金時(ヴォーカル)、茂戸藤浩司(和太鼓)、大塚宝(和太鼓)、木下伸市(三味線)、浅井慎一(ギター/シンセサイザー)、川嶋一久(ベース)、佐藤英史(尺八)、宮内健樹(ドラム)。その後、木下氏に代わって、のちにソロプレイヤーとして名を馳せる上妻宏光(三味線)を迎え、'92年にテイチクのBAiDiSレーベルより1stアルバム『MUSASHI』をリリース。和楽器の響きを大々的に取り入れたプログレッシヴ・ハード・ロックな作風で、シーンに新風を吹き込みます。その後数年間は外部のイベントでのパフォーマンスを中心として展開し、その間に飯塚昌明氏がギタリストとして加入、また、ベーシストがARK STORMの瀧田イサム氏に、キーボーディストがJ.D.K.BAND~PLANET EARTHの高梨康治氏に、尺八奏者が佐藤英史氏の実弟である佐藤康夫氏にそれぞれ交代するなど、ラインナップが大きく変わっています。'98年に2ndアルバム『Far East Groove』をクラウンレコードよりリリース。同作収録の"鳳凰"は、翌年にK-1 JAPANのテーマ曲としても取り上げられ、バンドの知名度をさらに高めることとなります。



一方でジャニーズのアイドルグループ「忍者」のアルバムのプロデュースや演奏に参加したり、'98年には山田風太郎の『柳生忍法帖』を原作とした映画『くノ一忍法帖 柳生外伝』の主題曲を担当しており、何かとこの頃から忍者には縁がありました。ちなみに同映画のテーマ曲"Monster Man"(↓)でヴォーカルをとるのはSHOW-YAの寺田恵子さん。作詞は同映画のスーパーバイザーも務めた寺沢武一氏、演奏・作編曲は六三四Musashi/高梨康治となっており、極上のメンツによる極上のキラーチューンに仕上がっています。また、同作の主題歌"柳生外伝"は、'00年発表の3rdアルバム『大和YAMATO』に収録されています。



'01年には宇崎竜童氏とのコラボレーションを行っており、NHK「地域伝統芸能祭り」のテーマ曲や鳥取民謡、沖縄民謡のダイナミックなアレンジを収録した4thアルバム『六三四 with 宇崎竜童』をリリース。その後、三味線奏者が上妻氏から西元氏に交代し、'02年にはWAOレーベルより5thアルバム『宮本武蔵』をリリース。また、同時期より放映が始まった「NARUTO」のアニメ版の劇伴を〈六三四プロジェクト〉名義で担当し、以降シリーズの劇伴を増田俊郎氏と共に制作していくこととなります。この頃より、バンド〈六三四Musashi〉としての活動は、各メンバーのスケジュールが多忙なこともあって難しくなるのですが(公式サイトの更新も'05年ごろから途絶えています)、一部のメンバーは他のサウンドトラック作品などで顔を合わせることも多く、その流れも受けて高梨康治氏は新たに別働隊として和ハード・ロック・プロジェクト〈刃-yaiba-〉を立ち上げます。同名義での初の作品は、'03年に発表されたOVA「新・北斗の拳」のサウンドトラック。その後、'07年より放送を開始したアニメの第二シリーズである「NARUTO -ナルト- 疾風伝」の劇伴を、現在まで手がけております。両作品とも、高梨氏、飯塚氏、瀧田氏、茂戸藤氏が参加。また、「NARUTO -ナルト- 疾風伝」のサウンドトラックでは、藤澤健至氏がギターで参加しています(高梨氏の右腕的存在としての活躍が増え始めるのもこの頃からではないかと)。'09年に、バンドの創設者であり、〈六三四Musashi〉の方針を決定付けた小針克之助氏が逝去。現在は無期限休止状態となっている六三四ですが、高梨氏いわく「解散宣言はしていない」とのことなので、いつの日かの再結成を今は願うばかりです。



ちなみに「新・北斗の拳」のサウンドトラックは『音楽集 壱』と銘打って出ましたが、『弐』は結局リリースされることはありませんでした。「NARUTO」のサウンドトラックCDは、TVシリーズ、劇場版も含めると、第一期で〈六三四プロジェクト〉がクレジットされているものは計五枚リリースされています。また、第二期で〈刃-yaiba-〉がクレジットされているものは、今月リリースされた劇場版作品『THE LAST -NARUTO THE MOVIE』のサウンドトラックも含めると計九枚。共作とはいえ、かなりの枚数が出ています。


〈第一期「NARUTO」〉 []内はサントラ発売日

『NARUTO-ナルト- オリジナルサウンドトラック』[2003.3.19]
『NARUTO オリジナルサウンドトラック II』[2004.3.10]
『劇場版 NARUTO-ナルト- 大活劇!雪姫忍法帖だってばよ!! 木ノ葉の里の大うん動会』[2004.8.18]
『NARUTO オリジナルサウンドトラック III』[2005.4.27]
『劇場版 NARUTO -ナルト- 大激突!幻の地底遺跡だってばよ』[2005.8.24]

※『劇場版 NARUTO-ナルト- 大興奮! みかづき島のアニマル騒動だってばよ』[2006.8.23]は、増田俊郎氏のみのクレジット



メインテーマは小針克之助氏の作編曲によるものです。

〈第二期「NARUTO-ナルト- 疾風伝」〉 []内はサントラ発売日

『劇場版 NARUTO-ナルト- 疾風伝』[2007.8.01]
『NARUTO-ナルト- 疾風伝 オリジナル・サウンドトラック』[2007.12.19]
『劇場版NARUTO-ナルト- 疾風伝 絆』[2008.7.30]
『劇場版NARUTO-ナルト- 疾風伝 火の意志を継ぐ者』[2009.7.29]
『NARUTO-ナルト- 疾風伝 オリジナル・サウンドトラック II』[2009.12.16]
『劇場版NARUTO-ナルト-疾風伝 ザ・ロストタワー』[2010.7.28]
『劇場版NARUTO-ナルト- ブラッド・プリズン』[2012.7.27]
『ROAD TO NINJA -NARUTO THE MOVIE-』[2012.7.25]
『THE LAST -NARUTO THE MOVIE-』[2014.12.03]




以上、かなりザックリとした形ですが、六三四Musashi、そして刃-yaiba-のバイオグラフィ/ディスコグラフィを追いました。そういったことも踏まえると、ニンジャスレイヤーのサウンドトラックに彼らが抜擢されているのもよりいっそう納得いただけるのではないでしょうか。和ハード・ロックの血脈は、今なお脈々と続いております。サウンドトラックが付属した『キョート・ヘル・オン・アース(上)』特装版は、現在も絶賛発売中です(ここで最初に戻る)。

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『ニンジャスレイヤー オリジナルサウンドトラック』
(『ニンジャスレイヤー キョート・ヘル・オン・アース(上)』特装版付属CD)
nin.jpg


01. プレリュード・ゼン
ニンジャスレイヤー:ナラクウィズイン
02. エッジ・オブ・ザ・ストラグル
03. チェイス・オブ・シャドウズ
04. ア・ガール・フロム・キョート・リパブリック
05. アンダーグラウンド・ビズ・アブナイ
06. レイン・オブ・ニンジャ・ブルタリティ
07. ラスト・ガール・スタンディング
08. ゴジュッポ・ヒャッポ
09. ドラゴン・インストラクション
10. ア・シンプトム・フロム・ディープ
11. トドメオサセ
12. ノー・ワン・バット・ニンジャ・ノウズ
13. デス・リーパー666km/h
14. ソウカイ・ヤクザ・シンジケート
15. ア・ガール・フロム・キョート・リパブリック~ABE RYUDAI Remix ver.~
16. メナス・オブ・ダークニンジャ
17. ファイナル・ハイク・オブ・オールド・ドラゴン
18. ラブ王侯~toku Remix ver.~
19. タイム・トゥ・シー・ホワット・イズ・ダン
20. ほとんど違法行為
21. スワンソング
22. ウェン・ザ・ライト・ゴーズ・アウェイ
23. ニンジャスレイヤー:ナラク・ウィズイン
24. マイティ・バリキボーイ・フロム・ヨロシサン・ファーマ!
25. ラブ王侯


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[2014.10.14]

MUSIC by 藤澤健至
Composed and Arranged 藤澤健至/片山修志

藤澤健至(Guitar&Other)
茂戸藤浩司(太鼓)
き乃はち(尺八&篠笛)
-KIJI-(三味線)
片山修志(Keyboards)

「ラブ王侯」(マチ〔CV.松井恵理子〕)
(作詞:本兌有/杉ライカ/作編曲:片山修志)

「ほとんど違法行為」(ネコネコカワイイ〔CV.五十嵐裕美/内山夕実〕)
(作詞:本兌有/杉ライカ/作編曲:片山修志)

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六三四Musashi オフィシャルサイト
「俺と六三四Musashi」
故.小針克之助氏がバンド結成に至るエピソードを綴ったコラム

【参考資料】劇伴倶楽部『劇伴倶楽部 Vol.8 作曲家 高梨康治の世界』
http://www.gekiban.soundtrackpub.com/archives/gekiban/gekiban08.html

高梨康治氏や飯塚昌明氏との絡みで藤澤健至氏のキャリアをもっと盛り込みたかったのですが、そこまで含めるとキリがなくなってしまうので、それはまたの機会にできればいいなと思います。高梨氏や飯塚氏の音楽的キャリアは非常に興味深いですし、手がける作品の多彩さと多作ぶりには驚くべきものがあり、今回のエントリで触れた部分はほんの一角にしか過ぎないのです。

高梨氏についての研究本では、上記リンク、「劇伴倶楽部」の腹巻猫氏が発行されている個人誌『劇伴倶楽部 Vol.8 高梨康治の世界』(高梨氏本人のインタビューもたっぷりと掲載されており、今回のエントリを書くにあたってでもたいへん参考にさせていただきました)と、プリキュアシリーズの劇伴を中心とした研究本を発行されているサークル「SHOWTIME」の個人誌がオススメであります。

〈当ブログの高梨康治氏関連エントリ〉
Metal Service「YELLOW METAL ORCHESTRA」(1998)
石渡太輔 (編曲:高梨康治)『ギルティ・ギア オリジナル・サウンド・コレクション』(1998)
LAMUSE、高梨康治 他「魔女っ子戦隊パステリオン」(1998)
高梨康治「FAIRY TAIL オリジナルサウンドトラック Vol.1」(2010)