2013年6月8日土曜日

Jens Johansson『Fjäderlösa Tvåfotingar(飛べない創造物)』(1991)

Fjaderlosa TvafotingarFjaderlosa Tvafotingar
(2008/05/06)
Jens Johansson

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 SILVER MOUNTAIN、DIO、YNGWIE MALMSTEEN'S RISING FORCE、STRATOVARIUSといった数々のハード・ロック/ヘヴィ・メタル・バンドでキャリアを磨いてきたスウェーデン出身のキーボーディスト、イェンス・ヨハンソンが1991年に発表した1stソロアルバム。玄人好みのカタログを80年代末から90年代にかけて多数リリースしていたJIMCOレコードの日本支社から1992年に国内盤が出ていました。その時付いていた邦題は『飛べない創造物』。兄でドラマーのアンダース・ヨハンソン(彼も元RISING FORCE、現在はHAMMERFALLのメンバー)の全面的協力の元、ジャズ・ロックやプログレッシヴ・ロックへの強い志向を示した作品になってます。とにかく縦横無尽にシンセを弾きまくるイェンス、時に獰猛な面を見せつつ、ひたすら冷徹に叩き続けるアンダース、二人のプレイはその音数手数の多さに反してどこか醒めた感触もあり、サイバーパンクSFにも通じるクレバーな世界を創出しています。また、再編MAHAVISHNU ORCHESTRAの髭面ベーシスト ヨナス・エルボーグがベースをプレイしており、彼が生み出す太いグルーヴ感も聴きもの。デジタリーなフレーズの連続が疾走感を伴って徐々にボルテージを高めていく「A Mote In God's Eye」。ベースにテクノやファンク的な要素も絡めてトリッキーでスタイリッシュに展開してゆく、フュージョン・テイスト強めの「In Transit」。アラン・ホールズワースやロバート・フリップを思わせるネジれたプレイや独特の浮遊感のあるトーンをシンセで再現しつつ、変拍子を伴ったダンサブルなビートの跳ねも心地良い「Megiddo」。拍手・歓声や車のブレーキ音、牛や犬や赤ん坊の鳴き声など、殆ど楽器で再現したと思しき数々のSEを交えた実験的音空間で繰り広げられるエレクトリック・ジャズ「Semaphores」。複雑に構築された楽曲のスリリングな緊張感に酔いしれることが出来る全4曲46分。ラストまで息つく暇のない、研ぎ澄まされたハイテク・アヴァン・ジャズ・ロックの極致がここにあります。リリース当時はヘヴィメタル専門誌であるBURRN!で30点台の点数がつけられたのですが、ヨハンソン兄弟のディープな音楽的側面を知る上でも欠かすことの出来ない作品なので、アルバムを見かけたり手にする機会があるならば、是非聴いて欲しいと思います。


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 また、ヨハンソン兄弟は、名うての技巧派ギタリスト達と共演したアルバムも発表しています。アラン・ホールズワースと共演した『Heavy Machinery』(1996)や、ショーン・レーンマイク・スターンと共演した『Fission』(1997)は、共に聴き応えバツグンの刺激的な内容なのでオススメいたします。

Heavy MachineryHeavy Machinery
(2002/01/08)
Anders、Allan Holdsworth Jens Johansson 他

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FissionFission
(2002/01/08)
Jens Johansson

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 最後に。せっかくなので、イェンスがSTRATOVARIUSのツアーの際にブダペストのトイレを爆破した有名な動画も貼っておきます。ガンコな汚れは、こすらず落とす(発破)