「デジタル・デビル物語」~女神転生 (1987/04/25) 不明 商品詳細を見る |
1987年に発表された第一作目から20年以上経た今もなお、続編や派生作品が発表されている人気ゲームタイトル『女神転生』シリーズ。その基となったのは、西谷史 原作のSFファンタジー小説『デジタル・デビル・ストーリー』シリーズであるのはファンにはよく知られているところですが、今回ご紹介する1枚は、その原作シリーズの一作目である『女神転生』をベースにして1987年に発表されたOVA作品『デジタルデビル物語 女神転生』のサウンドトラックでございます。
本作の総合プロデュース(&作曲)を手がけるのは、サポート・ミュージシャン/コンポーザー/アレンジャーとして数多のバンドやアルバムに携わる仕事人にして、自らが率いるプログレッシヴ・ロック・バンドSENSE OF WONDERのリーダー、また、SF作家としての顔も持つ多彩にして多才なキーボーディスト 難波弘之氏。そして、難波氏と分け合う形で作曲を担当されている「うさぎ組」は、シンセサイザー音楽の大家 冨田勲氏の門下である後藤慶一氏と竹内加寿子さんの二人による音楽ユニット。冨田氏の作品への参加歴もある他、TV番組への劇伴提供などで活動されております(ちなみに、88年にリリースされた『MUSIC FROM SUPER魂斗羅&A-JAX』に、アレンジャーとしてクレジットされております)。主題歌はヴォーカリストの杉本誘里さん率いるロック・バンド YOURI with the CASH。いかにもな泣きのギターソロやシンセのアレンジが耳を惹く、往年の歌謡曲といったところです。また、イメージ・ソングとして収録されている「Deja-Vu」は、原作者である西谷史氏が作詞と作曲(難波氏との共作)で参加されています。こちらのヴォーカルも杉本さんです。
アニメ本編の楽曲はシンセサイザーによる打ち込み/多重録音で制作されており、シリアスでミステリアスなムードで一貫した仕上がり。また、プログレッシヴ・ロックのエッセンスも強く押し出されており、変拍子も交えて複雑に構築された楽曲は、本編の黙示録的なストーリーを存分に演出する劇伴としての役割を十二分に果たしつつも、スリリングで聴き応えのあるインストとしても成立させております。難波氏とうさぎ組の共作による「伝説I・II」は、本作を象徴するシンセサイザー・プログレの佳曲です。「予兆」はイントロから執拗にアルペジオが繰り返されるということもあって、マイク・オールドフィールドの「Tubular Bells」を彷彿とさせられる楽曲。同様に「悪夢」「危機 II」はEmerson,Lake&Palmerの「Tarkus」を意識したのではないかと思われるオスティナートがあります。「ロキの誕生I・II」は、ホルストの「火星」を思わせる導入部から、一転してシンセサイザーの派手なテーマへと展開するという、SENSE OF WONDERの作風に通じる1曲。ちょうどサントラの制作時期の少し前に活動していたEmerson,Lake&Powellを意識しているところも多分にありそうです。「ケルベロス」はゲーム版の戦闘曲にも通じる様式美ハード・ロック調で、難波氏がアツいキーボード・ソロを弾いています。
アニメとプログレを繋ぐ劇伴作品の隠れた名盤でもありますが、20年以上に渡って廃盤状態であり、再発される可能性は限りなくゼロに近いと思われます。ちなみにアニメ本編は、2002年と2007年にDVD化されており、2007年にハピネットから「TOKUMA Anime Collection」としてリリースされたものは現在でも入手可能です。
TOKUMA Anime Collection『デジタル・デビル物語 女神転生』 [DVD] (2007/01/26) 水島裕、島津冴子 他 商品詳細を見る |
●デジタル・デビル・ストーリー - Wikipedia
●難波弘之 - Wikpedia
●うさぎ組 - Wikipedia