2018/05/20
vaporwaveを装うチリのDIYジャズ・ロック/フュージョン系マルチプレイヤー Varra
ある日、bandcampで「progressive rock」タグで検索すると、vaporwaveめいた装いのチープなアルバムジャケットが出現。軽い悪ふざけかと思いきや、聴いてみるとこれが実にイイ感じのジャズ・ロック/フュージョンで見事にしてやられてしまった。制作者はチリ出身のVarraというマルチプレイヤー。彼がYouTubeで活動を開始したのは2015年5月。一番最初に投稿した楽曲が、ストリートファイターIIのサガットのテーマのカヴァーというあたりも印象的なものがある。その後、数曲のフュージョンデモ曲を皮切りに、瞬間芸、「Dat Boi」(2016年ごろに流行ったインターネットミーム。一輪車に乗ったカエル)やvaporwaveをネタにした小品、Smash Mouth「All Star」のジャズ・ロックアレンジ、ゼルダの伝説 神々のトライフォースやトワイライトプリンセスの楽曲のプログレアレンジなどを好き放題に投稿している。オリジナル曲はコンパクトな習作と見せかけてメロディが光る瞬間がそこかしこにあり、CGアニメーションと独自のセンスを駆使した珍妙なMV(楽器がレースをしていたり、骸骨がドラムを叩いていたり、変なオッサンが踊っていたり、アライグマの雑コラがギターソロを弾いたりetcetc)といい、隠しきれない才能がジットリにじみ出ている。楽曲はこれまでに2枚のコンピレーションアルバム『Varra』『Varra II』にまとめられているほか、今年5月には4曲入りのEP『ROCC music (音乐摇滚) 』を投げ銭でリリースしている。生暖かく追いかけたい。patreonのアカウントもあり、サポーターを常時受けつけている。
https://www.youtube.com/user/penegordo666/
https://www.facebook.com/musicofvarra
http://www.patreon.com/varra
2018/04/19
トルクメニスタンの超絶ジャズ・ロック・バンド Гунеш(GUNESH)のデビューアルバムが初の再発
Гунеш(GUNESH)は、1970年にトルクメニスタンの首都アシガバートで結成されたグループ。当初は国営テレビ/ラジオ局所属のヴォーカル・グループだったそうですが、次第に若手のスタジオミュージシャンが多数出入りするようになり、70年代中期より凄腕パーカッショニスト/ドラマー リシャド・シャフィ(Rishad Shafi)を中心とするアンサンブルへ変貌。ジャズ・ロックと中央アジアの民族音楽、そして濃厚なヴォーカルを融合させたパワフルなスタイルのサウンドでソ連周辺の音楽フェスなどに出演し、活動範囲を広げてゆきます。1stアルバム『Гунеш』に先駆けて、ソ連のMelodiyaレーベルより二枚のシングルがリリースされたのですが、それはなんとABBAとのスプリットシングルでした。1984年にはキーボーディストのオレグ・コロレフ(Oleg Korolev)をバンドリーダーに迎えた2ndアルバム『Вижу Землю(I See Earth)』をリリース。シンセサイザーやヴァイオリンをフィーチャーすることによりアンサンブルのスピード感と強靭さはさらに増し、超絶技巧に裏打ちされたモダンなエスニック・フュージョンを志向した一枚になっています。この時期のバンドの演奏は映像で観るとなおのこと凄いです。ニコニコしながら手数を繰り出すリシャド氏のパフォーマンスは痛快で、一度観たら忘れられないインパクトがあります。
Gunesh
Boheme (2015-12-27)
売り上げランキング: 610,646
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Rishad Shafi
Boheme (2000-10-24)
売り上げランキング: 559,002
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その後、リシャド氏はロシア圏のみならず世界各国をツアーするなど着々とキャリアを積み重ね、確固たる地位を確立。2000年前後にはモスクワのBoheme Musicより『Rishad Shafi Presents Gunesh』『45° In A Shadow』がリリースされました。前作は1stアルバムから選曲された6曲と2ndアルバムの全曲をカップリングで収録した(ほぼ)2in1アルバムであり、後作は1984年から1990年にかけてアシガバート、タシュケント、モスクワの三か国三都市で録音された音源をまとめたコンピレーションアルバム。『Rishad Shafi Presents Gunesh』はプログレ系のディスクガイドでもちょくちょく名前の挙がる一枚であります。リシャド氏は2009年11月に56歳で亡くなりましたが、パフォーマンスは晩年においても快活そのもので、衰え知らずであったことがうかがえます。
そして今年、2018年3月1日にオーストリアの「Presch Media GmbH」から『Гунеш』が、LP・CD・デジタルの各フォーマットで再発リリースされました。『Rishad Shafi Presents Gunesh』ではカットされていた3曲目の「Акжа Кепдери」と6曲目の「Ялан」を、これでようやく聴くことができます(といっても2曲ともホーンセクションを前面に押し出したムーディーな歌ものなので、カットされた理由もうなづけるものがあるのですが)。まずは4曲目の「Восточный Сувенир」の一聴を是非オススメしたいところ。ブラス・ファンク・ジャズ・ロックの極致です。なお『Вижу Землю(I See Earth)』も、今年に入ってサンクトペテルブルグのSoviet Grailより再発LP盤が出ています(配信リリースは今のところありません)。
http://www.gunesh.net/
http://www.rishad-shafi.ru/
2017/12/03
GROUP 87『Group 87』(1980)
http://isham.com/
http://www.imdb.com/name/nm0006142/
「ネバー・クライ・ウルフ」(1983)を皮切りに、「リバー・ランズ・スルー・イット」(1992)、「ブレイド」(1998)、「ブラック・ダリア」(2006)、「ミスト」(2007)、「ザ・コンサルタント」(2016)など、数々の映画劇伴を手がけるコンポーザーであり、1990年にリリースしたソロアルバム『Mark Isham(幻想秘夜)』で1991年にグラミー賞のニューエイジアルバム部門を、テレビドラマ「EZ Streets」のメインテーマ音楽で1997年にプライムタイム・エミー賞を受賞しているトランペット奏者/シンセサイザープログラマーのマーク・アイシャム。彼が1980年にレコーディングしたバンド「グループ87」のアルバムが、11月末にソニーミュージックのジャズ/フュージョン1000円シリーズで期間限定再発しました。かつて2000年に一度だけ海外でリマスター再発がされましたが、その後長らくプレミア化していただけあって、今回の日本初CD化はまたとないチャンスであります(音源自体は2000年のリマスター音源を使用)。
Group 87
SMJ (2017-11-29)
売り上げランキング: 3,457
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DEVOのマーク・マザーズボウ、Pop Will Eat Itselfのクリント・マンセル、Apparat Organ Quartetのヨハン・ヨハンソン、RED HOT CHILI PEPPERSのクリフ・マルティネスなど、バンドマンから本格的に映画音楽の道に進み、ひとかどのポジションを築くミュージシャンは今となってはそう珍しくないですが、アイシャムの場合はウィンダム・ヒルやECMレーベルとのかかわりや、アート・ランディやファラオ・サンダース、ヴァン・モリソンやデヴィッド・シルヴィアン、デヴィッド・トーンらとの共演など、単一ジャンルで括ることのできない活動があり、なかなかにユニークな立ち位置であります。このGROUP 87も、パトリック・オハーン(bass)、ピーター・マウニュ(guitar, keyboard, violin)、テリー・ボジオ(drums)、ピーター・ウルフ(piano)といった、フランク・ザッパやビリー・コブハムのバンドで鳴らした錚々たるメンバーで構成されています。ただ、基本メンバーはアイシャム、オハーン、マウニュの三人であり、ボジオとウルフはあくまでサポートメンバーとしての参加だったようです(レコード会社の思惑としては五人組としてデビューさせたかったようですが、そうは問屋がおろさなかった模様)。
インスピレーションとなったのはブライアン・イーノやテリエ・リピダル、TALKING HEADSやWEATHER REPORTとのことですが、プログレッシヴ・ロックが下火となり、ジャズ/フュージョンがさらなる台頭をみせはじめる1980年といういわゆる端境期であることもポイントでしょう。「Magnificent Clockworks」「Moving Sidewalks」におけるポップなフュージョン・プログレ感。「Sublime Feline」のヘヴィ・ジャズ・ロック路線。さらに「Frontiers: 1856」「While The City Sleeps」ではニューエイジミュージックの肌触りもあり、かなり絶妙なバランスで成り立ったアルバムであることがわかりますし、本作から数年後にアイシャムがウィンダム・ヒルからソロアルバムをリリースする布石にもなっているともいえます。ジャンルが多様化し、細分化した今なら、より広く受け入れられるサウンドではないでしょうか。そういう意味でも、本作は「買い」です。
その後、ボジオが在籍するMissing Personsに参加するためにグループからオハーンが脱退、アイシャムと同様にヴァン・モリソンのアルバムでプレイしていたドラマーのピーター・ヴァン・フックを新メンバーとして迎え、1984年に二枚目のアルバム『A Career In Dada Processing』をリリース。こちらはよりストレートなニューウェイヴ/シンセポップに寄せた内容でしたがヒットにはつながらず、ほどなくしてグループはその活動を終えます。その後、ピーターはMike + The Mechanicsに加入。このあたりも時代を感じさせます。
Group 87
One Way Records Inc (1994-01-10)
売り上げランキング: 319,193
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GROUP 87解散後のアイシャムの活動には、自らのミュージシャンキャリアの出発点ともいえるRubisa Patrolのアート・ランディ(70年代後半にECMからリリースされた『Rubisa Patrol』『Desert Marauders』の二作にアイシャムは参加しています)と連名で発表した『We Begin』(1987)。また、デヴィッド・トーンがECMよりリリースしたソロアルバム『Cloud About Mercury』(1987)にトニー・レヴィン、ビル・ブルーフォードと共に参加しています。ECMのカタログは先ごろストリーミング配信が一斉解禁されたこともあり、この機会にぜひ聴いてみてください。
2017/12/01
Michael Mantler『The Hapless Child And Other Inscrutable Stories』(1976)
ECMといえば、言わずと知れたジャズや現代音楽の名門レーベルですが、11月17日より同レーベルのカタログが一挙にspotifyなどの配信サイトで聴けるようになりました。近年になって違法アップロードが増加してきたこともあり、少しでも権利的にクリアーなかたちで聴いてほしいというのが、今回の解禁に至った理由のようです。すでにあちこちのサイトでレコメンドアルバムをピックアップした記事もあがっております。
https://www.ecmrecords.com/
「ヨーロッパの名門=ECMレーベルがストリーミング・サービスをスタート!」
(from Universal Music Japan)
http://www.universal-music.co.jp/jazz/news/2017-11-17-streaming/
膨大にして充実のカタログ群へのアクセスが可能になったということはつまり、今ではなかなか入手が難しくなった作品に触れられる機会がグッと身近になったということでもあるので、みんなもっと思い思いのECMのオススメアルバムを推しまくるといいのではないでしょうか。というわけで、自分からも一枚、トランペット奏者/コンポーザーのマイケル・マントラーのプロデュースによる超強力なアヴァンギャルド・ジャズアルバム『The Hapless Child And Other Inscrutable Stories』を推したいと思います。
マイケル・マントラーはオーストリア・ウィーン生まれ。1964年にニューヨークに移り、トランペッターのビル・ディクソンによって設立された「Jazz Composer's Orchestra」に参加し、そこで後に伴侶となるカーラ・ブレイ(1991年に離婚)や、スティーヴ・レイシー、ロズウェル・ラッド、アーチー・シェップ、セシル・テイラーらといった面々と知り合い、1965年に『Communication』を録音・発表。1966年にはレイシー、ブレイとの連名アルバム 『Jazz Realities』を発表し、ヨーロッパでツアーも行っています。その後、Jazz Composer's Orchestraは協会(Jazz Composers Orchestra Association Inc.)となり、ドン・チェリー、ラリー・コリエル、ファラオ・サンダース、ガトー・バルビエリらをフィーチャーした二枚組のセルフタイトルアルバムを第一弾作品としてリリースしています。1972年にマントラー/ブレイ夫妻はECM傘下のレーベルとして「WATT Works」を立ち上げ、以降、二人の作品は同レーベルを中心に発表されてゆくことになります。
『The Hapless Child And Other Inscrutable Stories』は、そんなWATTの初期のカタログのひとつとして1976年にリリースされた作品。『うろんな客』や『ギャシュリークラムのちびっ子たち』などで知られる異色の絵本作家エドワード・ゴーリーのイラストと詩に題をとった、いわゆるイメージアルバムでもあります。オリジナル盤のインナーやジャケット裏にはゴーリーによるアートワークもあしらわれていました。ちなみに、本作より前の1974年には、ドン・チェリー、ジャック・ブルースを迎え、サミュエル・ベケットの作品に題をとった『No Answer』。本作より後の1977年には、ロバート・ワイアットやケヴィン・コイル、クリス・スぺディングを迎え、ハロルド・ピンターの作品に題をとった『Silence』をそれぞれ発表しており、マントラーの文学・アート作品への関心の高さを如実にうかがわせます(その後、2001年発表の『Hide and Seek』では、ポール・オースターを題材にしています)。
録音は1975年7月から1976年1月にかけて行われ、マントラー/ブレイ夫妻を筆頭に、傑作ソロアルバム『Odyssey』を発表したばかりのテリエ・リピダル(guitar)、当時ゲイリー・バートンと共演していたスティーヴ・スワロー(bass)、Directions結成前夜のジャック・ディジョネット(drums)を擁する超強力なアンサンブルが編成されています。さらにロバート・ワイアットがヴォーカル、ワイアット夫人のアルフレダ・ベンジがナレーターでそれぞれ参加し、PINK FLOYDのニック・メイスンもマスタリングとナレーションで名を連ねているのもポイント。ダイアローグとヴォーカルの境界を行くようなワイアットの不敵な声の響き、ブレイの冷ややかなシンセサイザーが「うろんな」雰囲気を醸し出し、変拍子を刻むリズムの上をリピダルのギターがヘヴィにすすり泣く、半ばプログレといっても遜色のないアヴァンギャルド・ジャズロック・サウンドは今なおスリリング。全編にわたってほの暗い闇が広がり、凄味がほとばしっています。
補足。アルバム1曲目の「The Sinking Spell」は、雑誌《ミステリマガジン》の1978年2月号に「降りてくる魔力(もの)」として邦訳掲載されたことがあります。また、アルバム5曲目の「The Remembered Visit」は、2017年10月に河出書房新社から『思い出した訪問』として邦訳刊行されています。図らずもタイムリー。
マントラーは2017年11月に最新アルバム『Comment C'est』をリリースしたばかり。ピーター・マドセンに師事し、エルメート・パスコアルとの共演でも知られる若手のデヴィッド・ヘルボックによるピアノ、MAGMAなどでの活動でも知られるヒミコ・パガノッティのヴォイスをフィーチャーした作品でもあります。
https://www.ecmrecords.com/
「ヨーロッパの名門=ECMレーベルがストリーミング・サービスをスタート!」
(from Universal Music Japan)
http://www.universal-music.co.jp/jazz/news/2017-11-17-streaming/
膨大にして充実のカタログ群へのアクセスが可能になったということはつまり、今ではなかなか入手が難しくなった作品に触れられる機会がグッと身近になったということでもあるので、みんなもっと思い思いのECMのオススメアルバムを推しまくるといいのではないでしょうか。というわけで、自分からも一枚、トランペット奏者/コンポーザーのマイケル・マントラーのプロデュースによる超強力なアヴァンギャルド・ジャズアルバム『The Hapless Child And Other Inscrutable Stories』を推したいと思います。
マイケル・マントラーはオーストリア・ウィーン生まれ。1964年にニューヨークに移り、トランペッターのビル・ディクソンによって設立された「Jazz Composer's Orchestra」に参加し、そこで後に伴侶となるカーラ・ブレイ(1991年に離婚)や、スティーヴ・レイシー、ロズウェル・ラッド、アーチー・シェップ、セシル・テイラーらといった面々と知り合い、1965年に『Communication』を録音・発表。1966年にはレイシー、ブレイとの連名アルバム 『Jazz Realities』を発表し、ヨーロッパでツアーも行っています。その後、Jazz Composer's Orchestraは協会(Jazz Composers Orchestra Association Inc.)となり、ドン・チェリー、ラリー・コリエル、ファラオ・サンダース、ガトー・バルビエリらをフィーチャーした二枚組のセルフタイトルアルバムを第一弾作品としてリリースしています。1972年にマントラー/ブレイ夫妻はECM傘下のレーベルとして「WATT Works」を立ち上げ、以降、二人の作品は同レーベルを中心に発表されてゆくことになります。
Universal Music LLC (2000-11-16)
売り上げランキング: 69,059
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『The Hapless Child And Other Inscrutable Stories』は、そんなWATTの初期のカタログのひとつとして1976年にリリースされた作品。『うろんな客』や『ギャシュリークラムのちびっ子たち』などで知られる異色の絵本作家エドワード・ゴーリーのイラストと詩に題をとった、いわゆるイメージアルバムでもあります。オリジナル盤のインナーやジャケット裏にはゴーリーによるアートワークもあしらわれていました。ちなみに、本作より前の1974年には、ドン・チェリー、ジャック・ブルースを迎え、サミュエル・ベケットの作品に題をとった『No Answer』。本作より後の1977年には、ロバート・ワイアットやケヴィン・コイル、クリス・スぺディングを迎え、ハロルド・ピンターの作品に題をとった『Silence』をそれぞれ発表しており、マントラーの文学・アート作品への関心の高さを如実にうかがわせます(その後、2001年発表の『Hide and Seek』では、ポール・オースターを題材にしています)。
録音は1975年7月から1976年1月にかけて行われ、マントラー/ブレイ夫妻を筆頭に、傑作ソロアルバム『Odyssey』を発表したばかりのテリエ・リピダル(guitar)、当時ゲイリー・バートンと共演していたスティーヴ・スワロー(bass)、Directions結成前夜のジャック・ディジョネット(drums)を擁する超強力なアンサンブルが編成されています。さらにロバート・ワイアットがヴォーカル、ワイアット夫人のアルフレダ・ベンジがナレーターでそれぞれ参加し、PINK FLOYDのニック・メイスンもマスタリングとナレーションで名を連ねているのもポイント。ダイアローグとヴォーカルの境界を行くようなワイアットの不敵な声の響き、ブレイの冷ややかなシンセサイザーが「うろんな」雰囲気を醸し出し、変拍子を刻むリズムの上をリピダルのギターがヘヴィにすすり泣く、半ばプログレといっても遜色のないアヴァンギャルド・ジャズロック・サウンドは今なおスリリング。全編にわたってほの暗い闇が広がり、凄味がほとばしっています。
『The Hapless Child And Other Inscrutable Stories』
Michael Mantler
WATT Works・ECM Records/1976
01. The Sinking Spell(「降りてくる魔力」)
02. The Object-Lesson(未訳)
03. The Insect God(『蟲の神』)
04. The Doubtful Guest(『うろんな客』)
05. The Remembered Visit(『思い出した訪問』)
06. The Hapless Child(『不幸な子供』)
補足。アルバム1曲目の「The Sinking Spell」は、雑誌《ミステリマガジン》の1978年2月号に「降りてくる魔力(もの)」として邦訳掲載されたことがあります。また、アルバム5曲目の「The Remembered Visit」は、2017年10月に河出書房新社から『思い出した訪問』として邦訳刊行されています。図らずもタイムリー。
Michael Mantler
Ecm Import (2017-11-10)
売り上げランキング: 216,487
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マントラーは2017年11月に最新アルバム『Comment C'est』をリリースしたばかり。ピーター・マドセンに師事し、エルメート・パスコアルとの共演でも知られる若手のデヴィッド・ヘルボックによるピアノ、MAGMAなどでの活動でも知られるヒミコ・パガノッティのヴォイスをフィーチャーした作品でもあります。
2017/08/17
ボトムズシリーズの作曲家が、ボトムズ以前に手がけたジャズ・ロックアルバム、本邦初CD化 ― 乾裕樹 & TAO『砂丘』(1979)
Hiroki Inui & TAO
ワーナーミュージック・ジャパン (2017-07-19)
売り上げランキング: 109,023
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https://wmg.jp/artist/hiroki-inui-tao/WPCL000012658.html
2017年はカシオペアが結成40周年、PRISMと松岡直也のアルバムデビュー40周年ということで、ワーナーミュージックが国内フュージョンの廉価盤再発キャンペーン「J-FUSION 40th ANNIVERSARY SHM-CD COLLECTION 1300」を4月から7月にかけて四か月連続で展開しておりました。その第四弾にはヴァイオリニストの篠崎正嗣氏の『NASA=MASA』(1980)や、四人囃子の元キーボーディスト 茂木由多加氏の1980年の『フライトインフォメーション』(1980)などの初CD化作品がラインナップされております。この『砂丘』も本邦初CD化タイトルの一つ。70年代に『Sony Sound Adventure』『Space Fantasy』などのシンセサイザーのデモンストレーションアルバムに参加し、80年代にフュージョンバンドのカリオカに加入。EPOや谷山浩子などの編曲や、アニメ『まいっちんぐマチコ先生』『装甲騎兵ボトムズ』『蒼き流星SPTレイズナー』などの主題歌や劇伴を手がけたキーボーディスト/作編曲家の故・乾裕樹氏が、「TAO」との連名名義で1979年に発表したアルバムです。
このTAO、ワーナーのサイトやCDの帯のインフォメーションには「『銀河漂流バイファム』を手掛けるTAO~」とあり、その記述をうっかり信じてしまったのですが、調べてみるとそのTAOとはまったく別であることがわかりました。……というのも、1983年に『銀河漂流バイファム』の主題歌「HELLO, VIFAM」「NEVER GIVE UP」を手がけたヴァイオリン・ロック・バンド TAOが結成されたのは70年代ではあるのですが、デヴィッド・マン、関根安里、岡野治雄、野澤竜郎の四人のメンバーの名前は本作のクレジットのどこにもありません。本作の演奏者にはシュガー・ベイブやバイバイ・セッション・バンドの上原裕(drums)、鈴木茂&ハックルバックの田中章弘(bass)、パラシュートの今剛(guitar)、そして本田俊之(sax)、村上秀一(drums)、佐藤正美(acoustic guitar)、ペッカー(percussion)、ヴァイオリン奏者、チェロ奏者などがクレジットされています。このTAOというのは、あくまでゲストミュージシャンも含めてのレコーディングバンドに便宜的につけられたものだったのでしょう。ワーナー側からはこの情報的な大ポカに対して今のところ特に何もアナウンスがないのですが、誤認させたままでは色々とマズいのではないでしょうか……。
ともあれ、アルバムの内容はまことに素晴らしいの一言。ドビュッシーの「En Bateau(小舟にて)」のアレンジや、ピアノ&シンセサイザーによる透明感あふれる小品「砂丘」も含めた六曲の楽曲は、エキゾチックなムードをたたえたインストゥルメンタルの傑作です。カリオカのスムース・ジャズのテイストにももちろん通じますし、プログレッシヴなジャズ・ロックとしてもスリリングに仕上がっています。シンセサイザープログラミングに松武秀樹氏のクレジットが確認できるところもポイントでしょう。『Space Fantasy』(1978)収録の「エンジェルダスト」(「カンツォネッタ」原曲)や、カリオカの『DUSK』(1983)収録の「Never Ending」(「いつもあなたが」原曲)など、乾氏が別のところで手がけた楽曲がボトムズの楽曲としてリメイクされることがあるのですが、本作の一曲目「Solar Plexus」もそのケースに当てはまります。同曲は、ボトムズの「クメン編」の劇伴「Jungle Ride」の原曲でもあります。廉価盤とはいうものの、完全限定盤ゆえ、再プレスの可能性はほぼないといっていいでしょう。最低野郎はこの再発の機を逃さないように。
2016/11/20
アドレナリン沸騰型ブリティッシュヘヴィジャズ― WorldService Project『For King & Country』(2016)
Worldservice Project
Rarenoise Records (2016-04-29)
売り上げランキング: 856,277
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ジャンルを三つ四つ軽々と飛び越えてしまうアーティストやバンドは昨今珍しくないですが、鍵盤奏者/コンポーザーのデイヴ・モアクロフトを中心とし、テナーサックス、トロンボーン奏者を擁するイギリスの五人組ジャズ・ロック・バンド ワールドサービス・プロジェクト (WSP)もそのなかの一つといえます。00年代末期に結成され、2010年に4曲入りEPと、フルアルバム『Relentless』でデビュー。コンテンポラリー・ジャズにとどまらず、へヴィネスとグルーヴも存分に追求した作風は、2013年にリリースされた2ndアルバム『Fire In A Pet Shop』からさらに顕著になり、その攻めのミクスチャーサウンドは、ストラヴィンスキー、チャールズ・ミンガス、フランク・ザッパ、ハリソン・バートウィッスル、WEATHER REPORT、LOOSE TUBES(ジャンゴ・ベイツ)、MESHUGGAHなどが引き合いに出され、「Punk Jazz」「Post-Prog Funk」と評されることが多くなりました。また、世界各国で武者修行のごとく精力的なライヴを行うことでメキメキと実力を蓄えた彼らは、今年9月に初来日も果たし、東京JAZZ 2016やJAZZ ARTせんがわへ参加したほか、単独来日公演も行っています。
今年、イギリスのRare Noise Recordsからリリースされたアルバムが本作『For King and Country』。同レーベルは辣腕プレイヤーのボビー・プレヴァイトやデヴィッド・フュージンスキー、メルツバウ/灰野敬二/バラズ・パンディのセッショントリオや、イタリアのアヴァン・ドゥーム・メタル・バンド OBAKE、プログレッシヴ・ジャズ・バンド MUMPBEAKなどのカタログも抱えるユニークなカラーのレーベルであり、ここにWSPが名を連ねるのもさもありなんといったところ。威勢のいいヴォーカル/コーラスで大胆に乗り込んでくる"Flick The Beanstalk"、ヘヴィなグルーヴの一体感、叙情的なブラスセクション、軽やかなリズム隊が巧みにスイッチングされる"Fuming Dusk"を筆頭に、ホーンがたゆたい、徐々にダイナミックな表情をみせていく人力ドラムンベース・ジャズ"Murano Faro"、バルカン・トラッド+メシュガーといった感のある"Son Of Haugesund"、激しいストップ&ゴーを伴いながら疾駆する"Go Down Ho'Ses"など、度重なるライヴで鍛え上げてきたものがそのまま濃厚に反映されたような楽曲づくし。狂気と歓喜が一体になった「どうかしている」サウンドがまことに楽しいです。こりゃライヴでより一層ブチ上がることは必定でしょう。フィンランドのALAMAAILMAN VASARATやアルメニアのティグラン・ハマシアンと共鳴する部分も多く、それらを好む向きにはなおオススメです。
▽WorldService Project Interview
(from bluenotes|2016.04.27)
▽WorldService Project Interview
(from what son live|2016.04.28)
http://www.worldserviceproject.co.uk/
https://www.youtube.com/user/worldserviceproject
https://soundcloud.com/worldserviceproject
2016/06/18
モスクワの地で繰り広げられる、ジャズとロックのプログレッシヴなせめぎ合い ― M-ARTel『War and Peace, ep7』(2013)
60年代ロック/ポップスにルーツと憧憬をもつサックス奏者のミハイル・イヴァノフを中心として活動していたバンド Old wine in a new bottleが改名する形で2010年に始動した、ロシア・モスクワのフュージョン インストゥルメンタル・バンド M-ARTel。2011年に1stアルバム『The Assemblage Point』、2013年に2ndアルバム『War and Peace, Episode VII』(↑)、2015年にライヴアルバム『Озорные Панкушки (Merry Punks)』をリリース。バンド自ら「チャーリー・パーカーがレッドツェッペリンとジャムり、ジョン・コルトレーン・カルテットにジミヘンが加入したような」サウンドと形容している通り、ライヴ感に富むオールドスクールな魅力と、サックスとエレピ/シンセサイザーをガッツリを前面に押し出したジャズロック。スムースジャズ、ブルーズ、ファンク、ハードロックと歯切れよく表情を変えていくさまはじつに痛快です。「ラスト・オブ・モヒカン」の酋長チンガチュックと「スター・ウォーズ」のダースベイダーの抗争(!?)を、たっぷりととられたスリリングなソロ回しでとともに描いた10分越えのジャズロック"Chingachgook vs. Darth Vader"は圧巻の一言。
http://www.m-artel.com/
https://www.facebook.com/martelproject/
https://soundcloud.com/m-artel
http://www.progarchives.com/artist.asp?id=9671
2016/05/05
折り目正しく、静かに熱い、ノルウェーのプログレッシヴ・ジャズロック新鋭 ― MOTHMAN『Mothman』(2016)
MOTORSYCHO、SHINING、Elephant9、Jono El Grande、Krokofant、Grand Generalなど、プログレッシヴ/アヴァン・ジャズの層が厚いノルウェーからまたも骨太なジャズ・ロック勢が登場。それが、アメリカで目撃されたという未確認生命体の名を冠するこのMOTHMANです。ドラマーのマルティン・ウルヴィンと彼の学友を中心として2009年にスンド・フォーク大学で結成されたバンドは、スタヴァンゲルでライヴパフォーマンスを磨き、アイスランドのジャズギタリスト ヒルマー・イェンソンのゲストサポートを得て、同地の国際的ジャズフェスティバルであるMaijazzでデビューを飾ります。その後、メンバーはスタヴァンゲルとオスロに散るのですが、オスロを拠点に活動を展開。2012年春にはノルウェーツアー、2013年夏にはヨーロッパツアーを成功させており、気鋭のバンドのひとつに躍り出ました。そんな彼らのデビューアルバムが本作。ジャズ、プログレッシヴ・ロック、コンテンポラリー・ミュージックをミックスさせたサウンドは、ラフというよりはストイックな印象。インプロヴィゼーションともども全体的にカッチリと詰め込まれており、ヘヴィメタリックな加速度を伴って段階的にギアを上げていくようなスタイル。堅実に、着々と増やされてゆく音数が、内に秘めた熱さを静かに物語っています。
https://www.facebook.com/mothmanorchestra
https://www.youtube.com/channel/UCxv20eKAGp1PMaUSGChI7eQ
2016/02/28
燃える招き猫、火を噴くヘヴィ・ジャズ。凄腕ぞろいのハイパーインストバンド ― MUMPBEAK『Mumpbeak』(2013)
Mumpbeak
Rarenoise Records (2013-12-03)
売り上げランキング: 611,543
Rarenoise Records (2013-12-03)
売り上げランキング: 611,543
イギリス生まれ、現在はオスロに在住するキーボーディスト/コンポーザーのロイ・パウエル。彼はパット・マステロット(Drums / ex.KING CRIMSON)とロレンツォ・フェリシアーティ(Bass)らとのジャズ・ロック・バンド NAKED TRUTHや、ヤコブ・ヤング(Guitar)らとのオルガン・トリオ InterStaticでフェンダーローズやハモンドオルガン、プリペアードピアノを弾き倒し、これまでに数枚のアルバムをリリースしております。そんな彼が中心となって近年に新たに立ち上がったバンドが、このMUMPBEAK。招き猫が燃え上がるインパクト十分なジャケットからもうかがえるように、こちらはより強くヘヴィ・プログレに傾倒したサウンドを展開。とくにKING CRIMSONからの影響は顕著です。本作にはマステロットとフェリシアーティ(1曲のみ参加)のほか、トニー・レヴィン、ビル・ラズウェル、ジョン・ゾーンとのMASADAやABRAXASでも知られるシャミア・エズラ・ブルーメンクランツら凄腕ベーシストが参加。ラズウェルはアルバムのプロデュースとミキシングも買って出ております。ギンギンに歪ませたクラヴィネットはときに鋭角的トーンのギターサウンドも創出、ジェフ・ベックやアラン・ホールズワースのような唸りを上げるプレイの再現も果たしております。そこにインプロヴィゼイション込みのズ太いボトムが支え、時に激突する様はじつにスリリング。火を噴くインストゥルメンタルアルバムとして申し分のない内容です。
現在、バンドは二枚目のアルバムのレコーディングを進めており、マステロットやフェリシアーティ、レヴィンのほか、チャド・ワッカーマンやトルステン・ロフトゥス(SHINING、Elephant9 etc)が参加するとのことで、これはまた一層白熱の度を増す予感がビンビンいたします。
http://www.mumpbeak.com/
https://www.facebook.com/mumpbeak
2016/01/26
音を操り、音に遊ぶ、北欧のネオ・ダダイスト― Jono El Grande『Melody Of A Muddled Mason』(2015)
Jono El Grande
Rune Grammofon (2015-10-30)
売り上げランキング: 302,373
Rune Grammofon (2015-10-30)
売り上げランキング: 302,373
ノルウェーのコンポーザー/ギタリスト ジョノ・エル・グランデことJon Andreas Håtunの通産6作目となる新作ソロアルバム。即興詩とノイズを組み込んだポスト・パンク・バンド Mannes Fatalesのヴォーカリスト/作詞家としての活動など、いくつかのバンドを渡り歩いたのち、1999年に1stアルバム『Utopiske danser』でソロデビュー。以後、北欧プログレ/アヴァン・ジャズの層が厚いことで知られる「Rune Grammofon」レーベルを拠点として活動を展開。フランク・ザッパ、キャプテン・ビーフハート、KING CRIMSON、GENTLE GIANT、MAGMA、HENRY COWなどのバンドや、ショスタコーヴィチやストラヴィンスキー、バルトークなどの作曲家からの影響を、ダダイズムからの影響も汲んだ(2009年にリリースした3rdアルバムのタイトルは『Neo Dada』でもありました)パフォーマンスやヴィジュアルとともに独自に昇華しております。2000年には大編成オーケストラ「The Jono El Grande Orchestra」(後にJono El Grande & The Luxury Bandに改名)を立ち上げるという豪快な手腕も発揮。まさに奇才と呼ぶにふさわしい存在であります。マリンバ/ヴィブラフォン奏者、サックス奏者、数名のヴァイオリン/チェロ奏者によるアコースティック楽器隊を擁する編成を擁して彼が紡ぎあげる室内楽 meets ジャズ・ロックなサウンドは、優雅で朴訥としているようでシレっととんでもないところに足を踏み入れてしまう愉快なもの。ジャンルの枠にはめ込みたがる聴き手の追求を軽々とかわしてしまうしたたかさもあります。今やすっかり陳腐化した定型句とはいえますが「おもちゃ箱をぶちまけた様な」という形容は、この人の作風に対してはかなりしっくりハマる、といったところ。
http://www.jonoelgrande.no
https://www.facebook.com/NorwegianComposer
http://www.runegrammofon.com/artists/jono_el_grande/rcd2175-jono-el-grande-melody-of-a-muddled-mason-cd-lp/
2016/01/06
層厚きノルウェーのジャズ・ロック・シーンを活気づかせる、エネルギー大発散系パワートリオ ― Krokofant『II』(2015)
Rune Grammofon (2015-11-16)
売り上げランキング: 24,256
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MOTORSYCHO、SHINING、Elephant9、Jono El Grande、Grand Generalなど、プログレッシヴ/アヴァン・ジャズの層がことにブ厚く、キレッキレのバンドがひしめくノルウェー。同国のロックとジャズのボーダーラインを積極的に攻めていく総本山的レーベル「Rune Grammofon」が抱える強力な新鋭ジャズ・ロック・バンド Krokofantの2ndアルバム。2012年に本国のジャズ・フェスティヴァルでデビューし、2014年にアルバムデビューしたギター、ドラムス、サックスのトリオで、率直に言って、超イイです。ワニ(Crocodile)とゾウ(Elephant)のキメラなバンド名もさることながら、レーベルのインフォメーションには、「ハードボイルド・インプロヴィゼーション」だの「70年代ジャズ・ロックとの邪悪な婚姻」だのといった愉快な文言が並んでおり、フリー・ジャズ/インプロヴィゼーション/プログレッシヴ・ロックを熱量ほとばしる演奏のもとにガチンコ融合させています。引き合いに出されているバンドやアーティストは、MAHAVISHNU ORCHESTRA、KING CRIMSON、HENRY COW、テリエ・リピダル、レイ・ラッセル、ペーター・ブロッツマン。また、サックスのJørgen Mathisenは、Trondheim Jazz OrchestraやThe Coreなど、数多くのバンドでプレイしてきたキャリアの持ち主。勢いを殺す瞬間が一切ないバンドアンサンブルの持続力、突貫力たるやピカイチで、シーンに熱風を吹き込むハードコアなパワートリオであるのは間違いありません。まずは一曲。
http://www.runegrammofon.com/artists/krokofnt/rcd2177-krokofant-krokofant-ii-cd-lp/
https://nb-no.facebook.com/krokofantmusic/
2015/11/28
ドイツ産重量級バカテクメタリックジャズ炸裂弾 ― Panzerballett『Breaking Brain』(2015)
ドイツ・ミュンヘンのジャズ・ロック・バンド パンツァーバレット。ギタリスト ヤン・ツェアフェルトによって2004年に結成され、サックス奏者を擁する五人組である同バンドは、思いのままに可変し切り返していく圧倒的テクニックの裏打ちとともにぶっ放される痛快な「ジャズ・メタル」サウンドを標榜。エンターテインメント性も高いパフォーマンスでファンを獲得していったキレッキレの実力派です。かのランディ・ブレッカーやドゥイージル・ザッパらも、彼らに賞賛の言葉を贈っています。影響元として挙げられているバンドは、MESHUGGAHやTribal Tech、MATS/MORGAN BANDと、いずれも常軌を逸した手合いばかり。ジャズ・フェス、ロック・フェスへの出演はもちろんのこと、バルト諸国のプログレ系音楽フェス「Baltic Prog Fest」や、毎年ドイツで開催されている、フランク・ザッパへ捧げられた音楽フェス「Zappanale」への出演も過去に果たしているほか、自ら「Jazz Metal Festival」を主宰するなど、ジャンルを股にかけたアグレッシヴなライヴ活動を展開しています。
オリジナル曲もさることながら、カヴァーもただものならざるセンスが爆裂しており、いい意味で「ぶっ壊れ」ています。これまで料理してきた楽曲は「シンプソンズのテーマ」、WEATHER REPORT"Birdland"、ABBA"Gimme, Gimme, Gimme"、フランク・ザッパ(メドレー形式でカヴァー)など多数。彼らのライヴではジャズスタンダードの"Take Five"や、「ピンクパンサーのテーマ」のメタリック・ジャズ・カヴァーが定番となっており、抱腹絶倒のパフォーマンスをイヤと言うほど見せつけてくれます。近年はFREAK KITCHENのハイパーギタリスト マティアス・エクルンドをフィーチャーした"The IKEA Trauma"でPVを制作するなど、外部とのコラボレーションにも余念がありません。「IKEAのトラウマ」という人を喰った曲名もまたイカスのです。
タイトルで人を喰うのはこのバンドの伝統芸ですが、通産5thフルアルバムとなる本作『Breaking Brain』も、一曲目でEurobeatならぬ"Euroblast"をぶちかましております。リフのみじん切り。二曲目"Typewriter II"ではタイプライターの打鍵音をザクザクのギターリフと同期させるという一発ネタのようなアイデアを実にカッコよく料理しており、してやられた! の一言。ガワはジャズなのに中心部で否応なくヘヴィなグルーヴが渦巻いている"Der Saxdiktator" "FrantiK Nervesaw"。ファンク、ブギー、フュージョンをヘヴィネスで連結してじっくりと煮込んだような"Smoochy Borg Funk"もスルメな味わい。"Shunyai/Intro" "Shunyai"では、インドの名パーカッション奏者 トリロク・グルトゥがゲスト参加。ヴォイスパフォーマンス込みの細やかな超絶パーカッションプレイがセクシィなサックスのブロウとヘヴィなアンサンブルに絡むことでさらなる化学反応が生まれております。ラストは、『Starke Stücke』(2008)以来二度目となる"Pink Panther (ピンクパンサーのテーマ)"のカヴァー。しょっぱなからヘヴィなグルーヴで圧倒してはいますが、今回はどちらかというとジャズに寄せた印象です。ケッタイなメタリック・ジャズ・ロックですが、ストイックさを感じさせない親しみやすさたっぷりの彼らのケッタイさは、独特のミクスチャー感覚ともども貴重な存在です。ホント、強みですよ。
http://www.panzerballett.de/
なお、『Breaking Brain』は、来月にマーキー/ベル・アンティークから国内盤仕様(輸入盤に帯・解説を付けたもの)で流通するそうです。五作目にして日本初紹介。「パンザーバレット」だとなんだか締まらない気もするのですが、入手しやすくなるのは誠にめでたい。あわよくばさらに知名度が上がって、来日してくれれば言うことありませんね!
★NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PANZERBALLETT : BREAKING BRAIN】
(from Marunouchi Muzik Magazine)
http://sin23ou.heavy.jp/?p=6122
Jan Zehrfeldへのインタビュー(日本語)
https://www.facebook.com/Panzerballett-Official-FB-177186085648197/
http://www.progarchives.com/artist.asp?id=2906
オリジナル曲もさることながら、カヴァーもただものならざるセンスが爆裂しており、いい意味で「ぶっ壊れ」ています。これまで料理してきた楽曲は「シンプソンズのテーマ」、WEATHER REPORT"Birdland"、ABBA"Gimme, Gimme, Gimme"、フランク・ザッパ(メドレー形式でカヴァー)など多数。彼らのライヴではジャズスタンダードの"Take Five"や、「ピンクパンサーのテーマ」のメタリック・ジャズ・カヴァーが定番となっており、抱腹絶倒のパフォーマンスをイヤと言うほど見せつけてくれます。近年はFREAK KITCHENのハイパーギタリスト マティアス・エクルンドをフィーチャーした"The IKEA Trauma"でPVを制作するなど、外部とのコラボレーションにも余念がありません。「IKEAのトラウマ」という人を喰った曲名もまたイカスのです。
Panzerballett
Soulfood (2015-11-20)
売り上げランキング: 78,071
Soulfood (2015-11-20)
売り上げランキング: 78,071
タイトルで人を喰うのはこのバンドの伝統芸ですが、通産5thフルアルバムとなる本作『Breaking Brain』も、一曲目でEurobeatならぬ"Euroblast"をぶちかましております。リフのみじん切り。二曲目"Typewriter II"ではタイプライターの打鍵音をザクザクのギターリフと同期させるという一発ネタのようなアイデアを実にカッコよく料理しており、してやられた! の一言。ガワはジャズなのに中心部で否応なくヘヴィなグルーヴが渦巻いている"Der Saxdiktator" "FrantiK Nervesaw"。ファンク、ブギー、フュージョンをヘヴィネスで連結してじっくりと煮込んだような"Smoochy Borg Funk"もスルメな味わい。"Shunyai/Intro" "Shunyai"では、インドの名パーカッション奏者 トリロク・グルトゥがゲスト参加。ヴォイスパフォーマンス込みの細やかな超絶パーカッションプレイがセクシィなサックスのブロウとヘヴィなアンサンブルに絡むことでさらなる化学反応が生まれております。ラストは、『Starke Stücke』(2008)以来二度目となる"Pink Panther (ピンクパンサーのテーマ)"のカヴァー。しょっぱなからヘヴィなグルーヴで圧倒してはいますが、今回はどちらかというとジャズに寄せた印象です。ケッタイなメタリック・ジャズ・ロックですが、ストイックさを感じさせない親しみやすさたっぷりの彼らのケッタイさは、独特のミクスチャー感覚ともども貴重な存在です。ホント、強みですよ。
http://www.panzerballett.de/
なお、『Breaking Brain』は、来月にマーキー/ベル・アンティークから国内盤仕様(輸入盤に帯・解説を付けたもの)で流通するそうです。五作目にして日本初紹介。「パンザーバレット」だとなんだか締まらない気もするのですが、入手しやすくなるのは誠にめでたい。あわよくばさらに知名度が上がって、来日してくれれば言うことありませんね!
★NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【PANZERBALLETT : BREAKING BRAIN】
(from Marunouchi Muzik Magazine)
http://sin23ou.heavy.jp/?p=6122
Jan Zehrfeldへのインタビュー(日本語)
https://www.facebook.com/Panzerballett-Official-FB-177186085648197/
http://www.progarchives.com/artist.asp?id=2906
2014/08/31
エンニオ・モリコーネも在籍した即興サイケデリック・ジャズ・ロック・グループ ― The Group『Feed-Back』(1970/2014 Remaster)
| Feedback (2014/07/29) Group 商品詳細を見る |
エンニオ・モリコーネといえば、『荒野の用心棒』などのマカロニ・ウエスタン作品でキャリアの一時代を築き、『遊星からの物体X』 『海の上のピアニスト』など数多くの映画音楽を手がけた言わずもがなの巨匠でありますが、映画音楽制作の一方で演奏家としても活動しておりました。それが今回ご紹介する、The Group。正式なグループ名はGruppo di Improvvisazione di Nuova Consonanza(直訳すれば即興新協和音集団というところでしょうか?)という長いものですが、海外リリースの際には省略されて前述のThe Groupや、Il Gruppoなどと表記されたりもします。現代音楽方面で活動したコンポーザーのフランコ・エヴァンジェリスティ(Franco Evangelisti/1926-1980)を中心として'64年に結成されたThe Groupは、'66年にアルバム『Nuova Consonanza』(北米盤では『The Private Sea Of Dreams』というタイトルでリリース/共に未CD化)でデビュー。主要メンバーはフランコと、トランペット/フルート担当のモリコーネ、パーカッション/チェレステ/ストリングス担当のエジスト・マッキ(Egisto Macchi/1928-1992)の三人であります。ちなみに、エジストもモリコーネと同様に映画音楽家であり、マカロニものの『バンディドス』(1966)や、アラン・ドロンが主演した『暗殺者のメロディ』(1972) 『パリの灯は遠く』(1976)などの劇伴や、いくつかのライブラリー音楽を残しております。また、グループにゲストとして参加した面々の中には、ポーランド系ピアニストのフレデリック・アンソニー・ジェフスキーや、現代音楽作曲家のマリオ・ベルトンチーニといった名前もあります。
'70年の10月に発表された本作『The-Feed Back』は、'68/'69年にドイツのグラモフォンよりリリースされた『Improvisationen』に続く三枚目のアルバム。時期的にはモリコーネが『シシリアン』や『狼の挽歌』 『真昼の死闘』などのスコア制作の合間を縫って録音されたものと言えましょうか。収録曲は7分、6分、15分の三曲からなり、いずれもサイケデリック・ロック、ファンク、フリージャズ、ノイズが渾然となった非常にフリーフォームな内容。左右にチャンネルを振りまくるファズギターやシタール、瀕死の象のように引きずるトランペット、タイトなビートをカクシャクと刻み続けるドラムが三者三様に展開され、そこに軋んだ旋律を奏でるヴァイオリンや、咳き込み、呻き、舌なめずりも挿入されるという、あまり体調のよろしくないときに聴くと、そのままダウナーな方向にズルズルと引っ張られかねないパワーもある(実際、聴いてて体調を崩しかけました)アヴァンギャルドな暴れっぷりを堪能できます。本作のゲストメンバーは五人ほどおりますが、ドラムスのヴィンチェンツォ・レストルシア(Vincenzo Restuccia)は、モリコーネの『続・夕陽のガンマン』のスコアや、ルシオ・バッティスティやファブリツィオ・デ・アンドレといったカンタトゥーレの諸作、コアなところではイタリアン・キーボード・プログレの隠れ名盤として名の挙がるサンジュリアーノのアルバムなどにも参加するヴェテランです。グループの前衛ジャズ/現代音楽的な作風は同時期にモリコーネが手がけたいくつかのスコアにも反映されていたようで、グループがスコアを演奏したサスペンス映画『冷酷なる瞳』(監督:エンツォ・G・カステラッリ/1970)や、『怪奇な恋の物語』(監督:エリオ・ペトリ/1969)で垣間見ることができます。
『冷酷なる瞳(Gli occhi freddi della paura)』のスコア
本作の後には『Nuova Consonanza』(1975) 『Musica su Schemi』(1976)の二枚のアルバムが出ており、後者はAREA/デメトリオ・ストラトスをはじめ、数々のイタリアン・ロック・アーティストや前衛音楽家のカタログを擁したことでも知られるCramps Recordsからのリリースでありました(後年、ストレンジデイズレーベルから国内盤も出ています)。このまま順調な活動が続いていくはずでありましたが、'80年にリーダーのフランコが逝去したことにより、グループは自然消滅の道を辿ることになります。解散から既に数十年以上経っておりますが、グループの名前は同名の現代音楽フェスティバルに引き継がれ、現在も定期的に開催されております。また、彼らのアルバムはサンプリングのネタやコレクターズアイテムとしても人気が高く、オリジナルLP盤は今なお高値で取引されているようです。そういう流れもあってか、リイシューや発掘の動きも近年とみに活発になってきており、2006年には未発表音源収録の二枚組CDとドキュメンタリーDVDをセットにしたBOX『Azioni』(ライナーノーツにはジョン・ゾーンも寄稿しています)が、2010年には『Niente』、2011年には『Eroina』という発掘音源集がそれぞれリリースされております。本作も、今年に入ってめでたくイタリアのSchemaレーベルより再発LPとCDがリリースされました。帯に書かれていたアルバムの説明は、音楽系ブログで書かれたレビューの引用というのも時代の流れを感じます。そこではCANやNEU!といったクラウト・ロック・バンドのも引き合いに出されていましたが、確かにユルユルのサイケデリック性という側面もあるので、それも頷けるものがありますね。
ドキュメンタリー映像の一部
●Gruppo di Improvvisazione di Nuova Consonanza - Discogs
●Gruppo di Improvvisazione di Nuova Consonanza - Wikipedia
●エンニオ・モリコーネ - Wikipedia
●Associazione Nuova Consonanza
2014/06/21
「ゴーメンガースト」に因む、英国のブラス・ジャズ・ロック・バンドが残した唯一の作品 ― TITUS GROAN『Titus Groan』(1970)
| タイタス・アウェイクス (ゴーメンガースト4) (創元推理文庫) (2014/06/21) マーヴィン・ピーク&メーヴ・ギルモア 商品詳細を見る |
イギリスの作家 マーヴィン・ピークの「ゴーメンガースト」シリーズは、広大さと無秩序さを誇る巨大建造物ゴーメンガースト城を舞台に、グローン伯爵家の幼い跡継ぎタイタスや、彼を取り巻く人々を描いたゴシック・ファンタジー作品。ピーク氏の逝去により未完に終わってしまうものの、生前に発表された『タイタス・グローン』『ゴーメンガースト』『タイタス・アローン』の三作品は、今なおファンタジーノベル界に屹立する、重厚極まる大作であります。先ごろ、東京創元社からシリーズ三部作が全てカヴァーを新装して復刊されたことに加え、遺されたわずかな断片をもとにメーヴ・ギルモア夫人が書き継いだ幻のシリーズ四作目『タイタス・アウェイクス』も刊行され、改めて注目が集まっております。
| Titus Groan (2010/11/01) Titus Groan 商品詳細を見る |
というわけで、今回はそんなゴーメンガーストに因んだバンドについて取り上げたいと思います。マーヴィン・ピークは1968年に亡くなるのですが、その翌年 ― 1969年に、イギリスでTITUS GROANな るバンドが誕生します。さながら『タイタス・グローン』で、父セパルクレイヴの死により当主の座を引き継ぐ幼きタイタスのように。サイケデリック・ロック 界隈で活動していたメンバーたちによる四人編成のブラス・ジャズ・ロック・バンドであり、サックス/フルート/オーボエを担当するTony Priestlandとドラムス担当のJim Toomeyの二人は、ショック・ロックの祖 アーサー・ブラウンがThe Crazy World Of Arthur Brownの結成以前に率いていたブラス・ロック・バンドでもプレイしていたという経歴の持ち主であります。そして、今なおカルト的なファンの多いイギリスのDawn Recordsから1970年にリリースされたアルバムが、この『Titus Groan』。プロデュースは、同レーベルの筆頭だったポップ/ロック・バンド MUNGO JERRYを手がけていたBarry Murray。ちなみに彼は翌年、アシッド・フォーク・バンド COMUSの怪作『First Utterance』のプロデュースも手がけます。オリジナル盤の収録曲は全5曲で、後にシングル盤に収録されていた3曲(うち1曲はボブ・ディラン"Open The Door Homer"のカヴァー)が追加収録されます。
"It Wasn't For You"のようなブルージーなギターとサックスが絡む小粋なサイケデリック・ロックや、10分を越えるフォーク・ロック組曲"Hall Of Bright Carvings"、厚いコーラスワークを聴かせるビート・ロック/ポップ"Fuschia"と いった楽曲を、管楽器の素朴な響きやバタバタしたリズムセクションも交えて、どこを切ってもいなたいサウンドで聴かせます。基本的に軽快なので、原作のイ メージをダブらせて聴くのはちょっと難しいかもしれませんね。これをシブくて味わい深いと感じるか、ゴッタ煮でまとまりがないと感じるかというところも意 見が分かれるところでしょうが、未分化の魅力とでも言いましょうか、そういうものを強く感じます。バンドとしての活動期間はごくごく短く、結局アルバムを 1枚出して解散してしまうのですが、アート・ロックからプログレッシヴ・ロックへという、過渡期にあったブリティッシュ・ロック・シーンにひっそりと痕跡 を残したカタログとして、今なお愛される作品なのは間違いありません。海外では幾度となく再発が繰り返されていることからも、それが伺えましょう。ちなみ に最新のリイシューは、英国のESOTERIC RECORDINGSから2010年に出たリマスター盤です。日本国内では、1999年にビクター、2007年にストレンジデイズレーベルからそれぞれ紙 ジャケット仕様で出ていました。
TITUS GROAN解散後、メンバーはそれぞれセッション・ミュージシャンとしての活動にシフト。ギタリストのStuart Cowellはオーストラリアで音楽活動を続けた後、現在はアイルランドのKinvara Area Musicという音楽系プロダクションに携わっているようですし、Jim Toomeyは70年代後半にTHE TOURISTS (アニー・レノックスとデイヴ・スチュワートがEURHYTHMICSを結成する前に活動していたバンド) に参加したことで成功を収めます。
●Titus Groan | 60s/70s英国ロック・データベース:
●ゴーメンガースト - Wikipedia
●Dawn Records - Wikipedia
■「究極の幻想文学。読書人必読の書〈ゴーメンガースト〉三部作復活!2014年6月刊行」 ‐ 東京創元社
| タイタス・グローン―ゴーメンガースト三部作 1 (創元推理文庫 (534‐1)) (1985/04) マーヴィン・ピーク 商品詳細を見る |
| ゴーメンガースト (創元推理文庫―ゴーメンガースト3部作) (1987/02) マーヴィン ピーク 商品詳細を見る |
| タイタス・アローン (創元推理文庫―ゴーメンガースト三部作) (1988/01) マーヴィン ピーク 商品詳細 |
2013/10/12
チリのテクニカル・ジャズ・フュージョン・バンド FULANOのライヴ映像(2012年)
80年代半ば頃に結成され、現在までに4枚のスタジオ・アルバムと1枚のライヴ・アルバムを残しているチリのジャズ・ロック/フュージョン・バンド FULANO。彼らの2012年のライヴ動画(約40分)をYouTudeで見つけた。
こっちは現地の音楽番組の映像なのかしら。ライヴとメンバーへのインタビュー、併せて約1時間。
ちなみに、FULANOの87年発表の1stアルバム『Fulano』と、89年発表の2ndアルバム『En El Bunker』はiTunesで買える。CDは多分廃盤。
『Lo Mejor(Fulano)』

https://itunes.apple.com/jp/album/lo-mejor/id595037172
『En El Bunker』

https://itunes.apple.com/jp/album/en-el-bunker/id594252450
●FULANO - ProgArchives
こっちは現地の音楽番組の映像なのかしら。ライヴとメンバーへのインタビュー、併せて約1時間。
ちなみに、FULANOの87年発表の1stアルバム『Fulano』と、89年発表の2ndアルバム『En El Bunker』はiTunesで買える。CDは多分廃盤。
『Lo Mejor(Fulano)』
https://itunes.apple.com/jp/album/lo-mejor/id595037172
『En El Bunker』
https://itunes.apple.com/jp/album/en-el-bunker/id594252450
●FULANO - ProgArchives
2013/06/09
GRAND GENERAL『Grand General』(2013)
| Grand General (2013/03/26) Grand General 商品詳細を見る |
国内のイキのいいジャズ/サイケデリック/エクスペリメンタル系ミュージシャンのカタログをリリースしている、ノルウェーのRune Grammofonレーベル。MotorpsychoやSupersilent、Shining、Elephant 9、Panzerpappaといった刺激的で野心的なサウンドを持ったバンドを多数輩出しており、個人的に近年注目しているレーベルのひとつであります。
そんなRune Grammofonから近頃登場した新たなバンドが、Rune Grammofonに所属するいくつかのバンドのメンバーから成るGRAND GENERAL。母体となったのは、北欧随一のサイケ&ヘヴィ・ロックンロールの雄 MOTORPSYCHOのKenneth Kapstad(dr)のリーダー・バンド。メンバーとの数回のギグを経て確かな感触を掴み、グループの改名に至ったとのことです。Kenneth以外のメンバーは、ヘヴィ・プログレ・バンド El Doom&The Born ElectricのTrond Frønes(b)、サイケデリック・ジャズ・ロック・バンド Bushman's RevengeのEven Helte Hermansen(g)、アコースティック・ジャズ・バンド The CoreのErlend Slettevoll(kbd)、チック・コリアやパット・メセニーとの共演歴もあるTrondheim Jazz Orchestraの一員であり、2010年に発表したソロアルバムがノルウェー版グラミー賞のジャズ部門を受賞したというヴァイオリニスト Ola Kvernbergの5人で構成されています。
ジャズ・ロックをベースに、70年代プログレッシヴ・ロック/ハード・ロックのエッセンスをまぶしこみ、なおかつ現代的なセンスでアレンジしたハイブリッドなサウンドからは、メンバーがそれぞれのバンドで培ってきたものも伺い知ることができます。KING CRIMSONやBLACK SABBATH、MAHAVISHNU ORCHESTRAあたりのバンドからの影響を感じさせつつも、いたずらにフォロワーに堕したところは一切なく、影響を昇華した上で自分達のサウンドを存分に鳴らしているのが非常に心強い。各パートがしっかりと主張しており、ほぼ対等の力関係を保っているのもまたポイントでしょう。常に醒めたようなテンションをキープしつつも、ひとたび触れればむせ返るような熱気が噴き出してきます。同郷のジャズ・ロック・バンドであり、バンドの成り立ち方にも多分に似通ったところがあるelephant 9が展開している一触即発の凶暴な演奏とはまた違った魅力があり、同じ国でこうもバンドの性格が違うのかという驚きもありました。
アルバムは、最初と最後に10分を越える楽曲を配し、間に4~6分の楽曲を4つ挟んだ全6曲の構成。楽曲はベースのTrondとヴァイオリンのOlaが中心となって作曲されており、オープニングを飾る「Antics」は、饒舌なプレイでラストまでリードしてゆくベース、ジャン=リュック・ポンティばりに啖呵を切ったヴァイオリンのプレイが長さを感じさせない心躍るジャズ・ロック・チューンに仕上がっています。続く「The Fall Of Troy」は、モクモクと煙ってくるかのような、たっぷりとファズの効いたヘヴィなストーナー・ロック・チューン。「Clandestine」ではスロウなエレクトリック・ジャズ寄りの演奏を展開していますが、緩やかな中にも一定の緊張感をキープしています。メロディアスなシンセを中心に、各パートが脇を手厚く固めた「Tachyon」は、メロディの爽快感も際立った1曲。即興性の強い「Ritual」を経て、「Red Eye」はヴァイオリンとギターが先導するブルージーなテイストの長尺曲。熱気と疾走感をまといながら突き進み、一体感のあるラストを迎えます。
Rune Grammofonレーベルが抱えるバンドの層の厚さを知る上でも格好のアルバムであり、ノルウェーのジャズ・シーンとロック・シーンのフレッシュな才能を刺激的に繋いだ会心のアルバムだと思います。各メンバーがそれぞれメインとなるバンドでの活動があるので、今後活動を続けて行くとしても今まで通り不定期なものになりそうですが、何かの機会にまたアルバムを出していただきたいところですね。
●Grand General - Rune Grammofon
●Rune Grammofon
2013/06/08
Jens Johansson『Fjäderlösa Tvåfotingar(飛べない創造物)』(1991)
| Fjaderlosa Tvafotingar (2008/05/06) Jens Johansson 商品詳細を見る |
SILVER MOUNTAIN、DIO、YNGWIE MALMSTEEN'S RISING FORCE、STRATOVARIUSといった数々のハード・ロック/ヘヴィ・メタル・バンドでキャリアを磨いてきたスウェーデン出身のキーボーディスト、イェンス・ヨハンソンが1991年に発表した1stソロアルバム。玄人好みのカタログを80年代末から90年代にかけて多数リリースしていたJIMCOレコードの日本支社から1992年に国内盤が出ていました。その時付いていた邦題は『飛べない創造物』。兄でドラマーのアンダース・ヨハンソン(彼も元RISING FORCE、現在はHAMMERFALLのメンバー)の全面的協力の元、ジャズ・ロックやプログレッシヴ・ロックへの強い志向を示した作品になってます。とにかく縦横無尽にシンセを弾きまくるイェンス、時に獰猛な面を見せつつ、ひたすら冷徹に叩き続けるアンダース、二人のプレイはその音数手数の多さに反してどこか醒めた感触もあり、サイバーパンクSFにも通じるクレバーな世界を創出しています。また、再編MAHAVISHNU ORCHESTRAの髭面ベーシスト ヨナス・エルボーグがベースをプレイしており、彼が生み出す太いグルーヴ感も聴きもの。デジタリーなフレーズの連続が疾走感を伴って徐々にボルテージを高めていく「A Mote In God's Eye」。ベースにテクノやファンク的な要素も絡めてトリッキーでスタイリッシュに展開してゆく、フュージョン・テイスト強めの「In Transit」。アラン・ホールズワースやロバート・フリップを思わせるネジれたプレイや独特の浮遊感のあるトーンをシンセで再現しつつ、変拍子を伴ったダンサブルなビートの跳ねも心地良い「Megiddo」。拍手・歓声や車のブレーキ音、牛や犬や赤ん坊の鳴き声など、殆ど楽器で再現したと思しき数々のSEを交えた実験的音空間で繰り広げられるエレクトリック・ジャズ「Semaphores」。複雑に構築された楽曲のスリリングな緊張感に酔いしれることが出来る全4曲46分。ラストまで息つく暇のない、研ぎ澄まされたハイテク・アヴァン・ジャズ・ロックの極致がここにあります。リリース当時はヘヴィメタル専門誌であるBURRN!で30点台の点数がつけられたのですが、ヨハンソン兄弟のディープな音楽的側面を知る上でも欠かすことの出来ない作品なので、アルバムを見かけたり手にする機会があるならば、是非聴いて欲しいと思います。
●Jens Johansson - Official Site
●Jens Johansson - Wikipedia
また、ヨハンソン兄弟は、名うての技巧派ギタリスト達と共演したアルバムも発表しています。アラン・ホールズワースと共演した『Heavy Machinery』(1996)や、ショーン・レーンやマイク・スターンと共演した『Fission』(1997)は、共に聴き応えバツグンの刺激的な内容なのでオススメいたします。
| Heavy Machinery (2002/01/08) Anders、Allan Holdsworth Jens Johansson 他 商品詳細を見る |
| Fission (2002/01/08) Jens Johansson 商品詳細を見る |
最後に。せっかくなので、イェンスがSTRATOVARIUSのツアーの際にブダペストのトイレを爆破した有名な動画も貼っておきます。ガンコな汚れは、こすらず落とす(発破)
2012/12/21
elephant9 『Atlantis』(2012)
| Atlantis (2012/11/06) Elephant9 With Reine Fiske 商品詳細を見る |
SupersilentやSHININGのメンバーを擁するノルウェーのオルガン・ロック・トリオ エレファント9の3rdアルバム。ベース、ドラムス、キーボードの編成による即興重視のサイケデリックなジャズ・ロックという音楽性には依然ブレがなく、楽曲の長短に関わらず、各々がパワフルなパフォーマンスを存分に決めこんでいる。ハモンド・オルガンをメインに、フェンダー・ローズ、ミニモーグ、ピアノも駆使して縦横無尽に弾き倒すステイル・ストロッケンのプレイはやはり痛快。ハードコアな疾走感は前作と比べると大分抑え目になったものの、アンサンブルの厚み重みがグググっと増して、じっくり攻めていくタイプの曲構成と相まり、一触即発的ムードが終始充満しているのもエキサイティング、このテンションの持続力にはつくづく恐れ入る。さらに、今回はゲストでLANDBERK~DUNGENのギタリストであるレイネ・フィスケが4曲に参加していて、濃密なトリオの演奏の隙間を縫うようにして、さらなる刺激的ムードと切れ味をプラスしている。ファンキーなノリから一転して重戦車の如きゴツいボトムが腹にクる「Black Hole」、ハード・ドライヴィンで突っ走る「The Riddler」を皮切りに、静謐なアコースティック曲「A Foot In Both」や、「Atlantis」の序盤におけるアンビエントなムードなど一部でクールダウンを挟みつつも、勢いは微塵も冷めやらぬまま聴くものを熱狂的なトランスへといざない続ける。ラストの「Freedom's Children」の終盤は凄まじく、アンサンブルが徐々にボルテージと密度を高めてゆき、さながら全盛期のMAGMAを思わせるほどの凶暴性に息をのむばかり。
◆elephant9『Walk The Nile』(2010)
●ProgArchives:elephant9
2010/05/18
elephant9『Walk The Nile』(2010)
Elephant9
Rune Grammofon (2010-03-30)
売り上げランキング: 314,949
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ノルウェーのエクスペリメンタル・エレクトロニック・ジャズ・バンド Supersilentのキーボーディストであるステイル・ストロッケン(Stale Strlokken)率いるオルガン/キーボード・トリオ:エレファント・ナインの2ndアルバム。アルバムデビューは08年、前述のSupersilentや、Motorpsycho、SHININGも所属するRune Grammofonレーベルに在籍しているこのトリオには、SHININGのオリジナル・メンバー/ドラマーであるトルステン・ロフタス(Torstein Lofthus)がドラムスとして参加しております。Supersilentでは実験的で悪意すら感じさせるアヴァンギャルドなサウンドを展開していますが、こちらは演奏こそ即興性重視ながら、ベース、ドラムス、キーボードの編成にて、非常にストレートなサウンドを聴かせてくれます。録音こそ現代的ですが、60~70年代に隆盛したオルガン・アート・ロックやカンタベリー・ジャズ・ロックを現代的に味付けしたようなたたずまいで、キース・エマーソンがEL&P結成前に在籍していたThe Niceや、中期(特に『Third』の頃)のSOFT MACHINEを強く彷彿とさせられます。
反復性・即興性が強い楽曲の数々を、時に軽やかに、時に重々しくハモンド・オルガン弾き倒しを展開するステイルのプレイを軸に、リズム隊が反復の土台を築きつつも手数で埋めていくというスタイルはスタイリッシュでありながらパワフル。タイトル曲の「Walk The Nile」や、「Habanera Rocket」といった10分を越える長尺曲では若干バンドの演奏が垂れ流し気味に感じる部分がありますが、反面、3~4分のコンパクトな楽曲においてのアンサンブルの突進力は抜群。ハモンドがヘヴィに転がり縦横無尽に唸りを上げる、ちょっと御大エマーソンの姿もダブる冒頭曲「Fugl Fonix」、焦燥感を煽る展開がいつの間にかスペイシーな域に突入し収束していく様がまさにハードコアな「Hardcore Orientale」、そして三位一体の疾走感で全部持って行くラストナンバー「John Tinnick」は、トルステンのサクサク突き刺さるドラミングも心地良い、非常にカタルシス溢れる楽曲。トリオ編成の利点を活かしまくった小回りの良さと魅力がギュギュッと濃縮されております。現在進行形バンドながら、オールド・ジャズ・ロック好きにも十分アピールしうる新鋭。現代北欧バンド勢の懐の広さを感じさせられるとともに、今後の活動が楽しみなバンドであります。ハモンドオルガン最高!
●elephant9:myspace
●Rune Grammofon
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