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2018/05/20

vaporwaveを装うチリのDIYジャズ・ロック/フュージョン系マルチプレイヤー Varra



 ある日、bandcampで「progressive rock」タグで検索すると、vaporwaveめいた装いのチープなアルバムジャケットが出現。軽い悪ふざけかと思いきや、聴いてみるとこれが実にイイ感じのジャズ・ロック/フュージョンで見事にしてやられてしまった。制作者はチリ出身のVarraというマルチプレイヤー。彼がYouTubeで活動を開始したのは2015年5月。一番最初に投稿した楽曲が、ストリートファイターIIのサガットのテーマのカヴァーというあたりも印象的なものがある。その後、数曲のフュージョンデモ曲を皮切りに、瞬間芸、「Dat Boi」(2016年ごろに流行ったインターネットミーム。一輪車に乗ったカエル)やvaporwaveをネタにした小品、Smash Mouth「All Star」のジャズ・ロックアレンジ、ゼルダの伝説 神々のトライフォーストワイライトプリンセスの楽曲のプログレアレンジなどを好き放題に投稿している。オリジナル曲はコンパクトな習作と見せかけてメロディが光る瞬間がそこかしこにあり、CGアニメーションと独自のセンスを駆使した珍妙なMV(楽器がレースをしていたり、骸骨がドラムを叩いていたり、変なオッサンが踊っていたり、アライグマの雑コラがギターソロを弾いたりetcetc)といい、隠しきれない才能がジットリにじみ出ている。楽曲はこれまでに2枚のコンピレーションアルバム『Varra』『Varra II』にまとめられているほか、今年5月には4曲入りのEP『ROCC music (音乐摇滚) 』を投げ銭でリリースしている。生暖かく追いかけたい。patreonのアカウントもあり、サポーターを常時受けつけている。








https://www.youtube.com/user/penegordo666/
https://www.facebook.com/musicofvarra
http://www.patreon.com/varra

2018/04/19

トルクメニスタンの超絶ジャズ・ロック・バンド Гунеш(GUNESH)のデビューアルバムが初の再発



  Гунеш(GUNESH)は、1970年にトルクメニスタンの首都アシガバートで結成されたグループ。当初は国営テレビ/ラジオ局所属のヴォーカル・グループだったそうですが、次第に若手のスタジオミュージシャンが多数出入りするようになり、70年代中期より凄腕パーカッショニスト/ドラマー リシャド・シャフィ(Rishad Shafi)を中心とするアンサンブルへ変貌。ジャズ・ロックと中央アジアの民族音楽、そして濃厚なヴォーカルを融合させたパワフルなスタイルのサウンドでソ連周辺の音楽フェスなどに出演し、活動範囲を広げてゆきます。1stアルバム『Гунеш』に先駆けて、ソ連のMelodiyaレーベルより二枚のシングルがリリースされたのですが、それはなんとABBAとのスプリットシングルでした。1984年にはキーボーディストのオレグ・コロレフ(Oleg Korolev)をバンドリーダーに迎えた2ndアルバム『Вижу Землю(I See Earth)』をリリース。シンセサイザーやヴァイオリンをフィーチャーすることによりアンサンブルのスピード感と強靭さはさらに増し、超絶技巧に裏打ちされたモダンなエスニック・フュージョンを志向した一枚になっています。この時期のバンドの演奏は映像で観るとなおのこと凄いです。ニコニコしながら手数を繰り出すリシャド氏のパフォーマンスは痛快で、一度観たら忘れられないインパクトがあります。





Richard Shafi Presents Gunesh
Richard Shafi Presents Gunesh
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Gunesh
Boheme (2015-12-27)
売り上げランキング: 610,646


Forty-Five Degrees in a Shadow: Rishad Shafi Plays with Gunesh
Rishad Shafi
Boheme (2000-10-24)
売り上げランキング: 559,002



 その後、リシャド氏はロシア圏のみならず世界各国をツアーするなど着々とキャリアを積み重ね、確固たる地位を確立。2000年前後にはモスクワのBoheme Musicより『Rishad Shafi Presents Gunesh』『45° In A Shadow』がリリースされました。前作は1stアルバムから選曲された6曲と2ndアルバムの全曲をカップリングで収録した(ほぼ)2in1アルバムであり、後作は1984年から1990年にかけてアシガバート、タシュケント、モスクワの三か国三都市で録音された音源をまとめたコンピレーションアルバム。『Rishad Shafi Presents Gunesh』はプログレ系のディスクガイドでもちょくちょく名前の挙がる一枚であります。リシャド氏は2009年11月に56歳で亡くなりましたが、パフォーマンスは晩年においても快活そのもので、衰え知らずであったことがうかがえます。








 そして今年、2018年3月1日にオーストリアの「Presch Media GmbH」から『Гунеш』が、LP・CD・デジタルの各フォーマットで再発リリースされました。『Rishad Shafi Presents Gunesh』ではカットされていた3曲目の「Акжа Кепдери」と6曲目の「Ялан」を、これでようやく聴くことができます(といっても2曲ともホーンセクションを前面に押し出したムーディーな歌ものなので、カットされた理由もうなづけるものがあるのですが)。まずは4曲目の「Восточный Сувенир」の一聴を是非オススメしたいところ。ブラス・ファンク・ジャズ・ロックの極致です。なお『Вижу Землю(I See Earth)』も、今年に入ってサンクトペテルブルグのSoviet Grailより再発LP盤が出ています(配信リリースは今のところありません)。





http://www.gunesh.net/
http://www.rishad-shafi.ru/

2018/02/18

DEZOLVE『PORTRAY』(2018)




 近年の日本のテクニカル・フュージョン・バンドだと、元カシオペアの熊谷徳明氏と元T-SQUAREの須藤満氏を中心とする“ハイパーテクニカルコミックフュージョンサービス団体”こと「TRIX」や、熱帯JAZZ楽団など数々のバンドで活動する平川象士氏、MONACA楽曲の常連ギタリストである後藤貴徳氏、Lowland Jazzなどの小林修己氏による「Gravitational Force Field」。藤岡幹大氏、BOH氏、前田遊野氏といったBABYMETALのバックバンドの元/現プレイヤーからなる「仮BAND」などがありますが、さらにぐっと若いメンバーが気を吐くバンドというと、間違いなくこの「DEZOLVE(ディゾルヴ)」になるでしょう。ジャズ、フュージョンのみならず、ロック、ポップス、ゲームミュージックやアニメでのレコーディング/セッション経験にも富んだ平均年齢23歳のバンドです。


DEZOLVE
DEZOLVE
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DEZOLVE
ベガ・ミュージックエンタテインメント株式会社 (2016-02-09)
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SPHERE
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DEZOLVE 北川翔也 友田ジュン 小栢伸五 山本真央樹
ベガ・ミュージックエンタテインメント (2017-02-25)
売り上げランキング: 22,122


 山本真央樹氏(drums)、友田ジュン氏(keyboard)、小栢伸五氏(bass)といった、バークリー音楽大学やメーザーハウスで学んだプレイヤーによって2014年に結成されたディゾルヴは、ベガ・ミュージック・エンタテインメントから2016年に『DEZOLVE』でアルバムデビュー。洗練のなかにもチップチューンを織り込むなどの遊び心も感じさせるセンス、真央樹氏の父であるBOWWOWの山本恭司氏、有形ランペイジやTRIX(2017年に正式加入)の佐々木秀尚氏、平木LAGGY宏隆氏、北川翔也氏、加部輝氏、林洋輔氏といったゲスト陣のサポートも光る内容でした。その後、最年少メンバー(1996年生まれ)の北川翔也氏がバンドのギタリストに正式加入し、現在のラインナップが完成。四人のメンバーがそれぞれ2~3曲ずつ持ち寄った2ndアルバム『SPHERE』を2017年にリリース。ほぼ同時期に北川氏は1stアルバム『The New Day』もリリースし、ソロギタリストとしてもデビューを果たしております。


PORTRAY(ポートレイ)
PORTRAY(ポートレイ)
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DEZOLVE(ディゾルブ)
キングレコード (2018-02-07)
売り上げランキング: 1,757



 そして今年、キングレコードから3rdアルバムとなる『PORTRAY』で、バンドは満を持してメジャーデビューを果たしました。バンドが一体となってキメにキメまくった展開が心地よい「Disasters」(小栢作編曲)と「Endless Colors」(北川作編曲)をそれぞれアルバムのオープニングとエンディングに据え、箏奏者の馬場千年[馬場千井寿]さんをフィーチャーして和のイメージでグイグイと広げゆく「Ancient Capital」(山本作編曲)や、さながら爽やかな海風を運ぶかのようなギターのドライヴ感に富んだ「Shaping the Future」「Chronostasis」(山本作編曲)。アダルト・コンテンポラリーなムードと瀟洒なグルーヴで軽快に躍る「Jamin' and Crammin'」(北川作編曲)、「Insomnia」(山本作編曲)。アコースティック・ピアノとクライン・ベースがまろやかな情感で魅せる「Autumn Island」(小栢作編曲)。アコースティック・ギターとシンセのメロディがリードする「Egoist」(友田作曲/友田&山本&北川編曲)。パット・メセニー・グループへの深い敬愛と、胸に迫る牧歌的郷愁を感じさせる「After the Rainy Season」(小栢作曲/小栢&山本&友田編曲)。北川氏のコンテンポラリージャズのエッセンスが堪能できる「November Snow」の、全11曲。ジャパニーズ・フュージョンの様式美を叩き込みつつ、各メンバーの音楽的素養とフレッシュなイメージで彩っていく持ち味はそのままに、アルバムジャケットにも表れているように、絵画的なイメージを喚起させる楽曲が増えた印象があります。前々作から前作に至るまでに格段の成長と洗練を遂げた彼らですが、メジャー感を得たことでまた一段とギアを上げたことが如実にうかがえる内容になっており、目下急成長中のノリにのったバンドのエネルギーに非常に頼もしさを感じさせます。3月にはレコ発ツアーを控えており、脂ののったパフォーマンスが期待できること間違いなしでありましょう。




https://www.dezolve.net/
https://www.youtube.com/channel/UCxEMu-7-iya7mu-iP-Il0lQ


【関連】
NEO RESISTANCE QUARTETTO『NEO』(2016)
山本真央樹氏参加。

2017/12/03

GROUP 87『Group 87』(1980)


http://isham.com/
http://www.imdb.com/name/nm0006142/

「ネバー・クライ・ウルフ」(1983)を皮切りに、「リバー・ランズ・スルー・イット」(1992)、「ブレイド」(1998)、「ブラック・ダリア」(2006)、「ミスト」(2007)、「ザ・コンサルタント」(2016)など、数々の映画劇伴を手がけるコンポーザーであり、1990年にリリースしたソロアルバム『Mark Isham(幻想秘夜)』で1991年にグラミー賞のニューエイジアルバム部門を、テレビドラマ「EZ Streets」のメインテーマ音楽で1997年にプライムタイム・エミー賞を受賞しているトランペット奏者/シンセサイザープログラマーのマーク・アイシャム。彼が1980年にレコーディングしたバンド「グループ87」のアルバムが、11月末にソニーミュージックのジャズ/フュージョン1000円シリーズで期間限定再発しました。かつて2000年に一度だけ海外でリマスター再発がされましたが、その後長らくプレミア化していただけあって、今回の日本初CD化はまたとないチャンスであります(音源自体は2000年のリマスター音源を使用)。


グループ87(期間生産限定盤)
Group 87
SMJ (2017-11-29)
売り上げランキング: 3,457


 DEVOのマーク・マザーズボウ、Pop Will Eat Itselfのクリント・マンセル、Apparat Organ Quartetのヨハン・ヨハンソン、RED HOT CHILI PEPPERSのクリフ・マルティネスなど、バンドマンから本格的に映画音楽の道に進み、ひとかどのポジションを築くミュージシャンは今となってはそう珍しくないですが、アイシャムの場合はウィンダム・ヒルやECMレーベルとのかかわりや、アート・ランディやファラオ・サンダース、ヴァン・モリソンやデヴィッド・シルヴィアン、デヴィッド・トーンらとの共演など、単一ジャンルで括ることのできない活動があり、なかなかにユニークな立ち位置であります。このGROUP 87も、パトリック・オハーン(bass)、ピーター・マウニュ(guitar, keyboard, violin)、テリー・ボジオ(drums)、ピーター・ウルフ(piano)といった、フランク・ザッパやビリー・コブハムのバンドで鳴らした錚々たるメンバーで構成されています。ただ、基本メンバーはアイシャム、オハーン、マウニュの三人であり、ボジオとウルフはあくまでサポートメンバーとしての参加だったようです(レコード会社の思惑としては五人組としてデビューさせたかったようですが、そうは問屋がおろさなかった模様)。

 インスピレーションとなったのはブライアン・イーノやテリエ・リピダル、TALKING HEADSやWEATHER REPORTとのことですが、プログレッシヴ・ロックが下火となり、ジャズ/フュージョンがさらなる台頭をみせはじめる1980年といういわゆる端境期であることもポイントでしょう。「Magnificent Clockworks」「Moving Sidewalks」におけるポップなフュージョン・プログレ感。「Sublime Feline」のヘヴィ・ジャズ・ロック路線。さらに「Frontiers: 1856」「While The City Sleeps」ではニューエイジミュージックの肌触りもあり、かなり絶妙なバランスで成り立ったアルバムであることがわかりますし、本作から数年後にアイシャムがウィンダム・ヒルからソロアルバムをリリースする布石にもなっているともいえます。ジャンルが多様化し、細分化した今なら、より広く受け入れられるサウンドではないでしょうか。そういう意味でも、本作は「買い」です。

 その後、ボジオが在籍するMissing Personsに参加するためにグループからオハーンが脱退、アイシャムと同様にヴァン・モリソンのアルバムでプレイしていたドラマーのピーター・ヴァン・フックを新メンバーとして迎え、1984年に二枚目のアルバム『A Career In Dada Processing』をリリース。こちらはよりストレートなニューウェイヴ/シンセポップに寄せた内容でしたがヒットにはつながらず、ほどなくしてグループはその活動を終えます。その後、ピーターはMike + The Mechanicsに加入。このあたりも時代を感じさせます。


Career in Dada Processing
Career in Dada Processing
posted with amazlet at 17.12.03
Group 87
One Way Records Inc (1994-01-10)
売り上げランキング: 319,193


 GROUP 87解散後のアイシャムの活動には、自らのミュージシャンキャリアの出発点ともいえるRubisa Patrolのアート・ランディ(70年代後半にECMからリリースされた『Rubisa Patrol』『Desert Marauders』の二作にアイシャムは参加しています)と連名で発表した『We Begin』(1987)。また、デヴィッド・トーンがECMよりリリースしたソロアルバム『Cloud About Mercury』(1987)にトニー・レヴィン、ビル・ブルーフォードと共に参加しています。ECMのカタログは先ごろストリーミング配信が一斉解禁されたこともあり、この機会にぜひ聴いてみてください。




2016/11/02

TAUK『Sir Nebula』(2016)




 2012年結成のニューヨークの四ピース インストゥルメンタル・バンド TAUK。2013年に五曲入りミニアルバム『Pull Factors』、1stフルアルバム『Homunculus』でデビューし、2014年に2ndアルバム『Collisions』をリリース。その前後にはデジタルリリースで五枚分のライヴアルバムをリリースし、2015年には総決算ともいえるCD二枚組のライヴアルバム『HEADROOM』で、デビューから数年間の成果を示しました。彼らのサウンドの性質からみると、ライヴ感にこだわりを持っているのも非常に納得がいきます。フュージョン、ファンク、プログレ、マスロック、エレクトロを吸収してグリグリ展開していく聴き応え抜群のジャム・サウンド。全編に艶っぽいグルーヴがまぶしこまれており、ダンサブルでありながら独特の浮遊感をもたらしてくれるのがたまらない。3rdアルバムとなる本作『Sir Nebula』は、ジャック・ジョンソンやTHE MARS VOLTA、OZOMATLIなどを手がけ、四度のグラミー賞に輝いたプロデューサー/ミキサー/エンジニア ロバート・カランツァとのコラボレーションによって生み出された一枚。また、往年の〈メタル・ユルラン〉誌(フランスのSF/ホラーマガジン)の遺伝子を受け継ぐ Kilian Engによるジャケットイラストも、バンドのみせる方向性にバッチリとハマっております。スウェーデン出身、1982年生まれの氏はシンセウェイヴ系アーティストのアートワークも数多く提供されている気鋭のイラストレイター。画力も色彩感もとにかくハンパなく、圧倒されます。






http://www.taukband.com/
http://www.facebook.com/taukband
https://soundcloud.com/tauk

2016/02/18

コンポーザーとギタリスト、阿吽のテクニカル・フュージョン・デュオ ― 菊田裕樹&佐々木秀尚『ANGELICFORTRESS』(2015)


http://shop.2083.jp/?pid=97646687

『聖剣伝説2』『聖剣伝説3』『双界儀』『シャイニング・ハーツ』など、多数のタイトルの楽曲を手がけるコンポーザーであり、自身のサークル「メタファジックチャイルド」でのオリジナル作品リリースも精力的に展開されている菊田裕樹氏と、ジャズ・ギタリストであり、ギターインストラクター/ライター、sasakure.uk氏が主宰するバンド「有形ランペイジ」のメンバーでもある佐々木秀尚氏が組んだデュオ・ユニット ANGELICFORTRESSのデビューアルバム。全曲の作編曲を菊田氏、ギターを佐々木氏が担当した全5曲のインストゥルメンタル集です。




 メタファジックチャイルドでの近年の作品は、「人狼」ゲームの場へ供したイメージアルバム『人狼伴奏音楽集』(2013)。ミニマルミュージックへの追究により生み出されたアコースティック・インストゥルメンタル『スティーブ・ライヒの主題によるインテグラルポリフォニー』(2014)。JH科学のカードゲーム「真空管ドールコレクション」の世界観を40分越えのオーケストラルな大曲で表現した『女子真空管交響楽』(2014)。エピック/シンフォニックなインストゥルメンタル『死者の代弁者』(2014)、泉鏡花の同名作品に題をとった幻想コンセプトアルバム『夜叉ケ池』(2015)と、“攻め”のリリースが続いているのですが、そんな菊田氏が次に目指したコンセプトはズバリ、プログレッシヴ・ロックとフュージョンのミックス。





 ファンタジーRPG調の雰囲気を漂わせつつ、抜群のセンスとテクニックを兼ね備えた佐々木氏のギタープレイを主軸に構築されております。テーマ・メロディの反復の上を佐々木氏が縦横無尽にプレイする"Angelic Fortress"は、ユニットの方向性を象徴する一曲でもあります。"Neo Pragmatism" "Mission Field"は伸び伸びと開放感のあるオルガン・フュージョンを、"End of Assault"では、シリアスに引き締まったプログレッシヴ・ロックをそれぞれ展開。よりハードエッジな方向性の"Dark Schizophrenia"では、複雑かつトリッキーなフレーズがゴリゴリと仕込まれており、マゾヒスティックなまでの高密度の音空間におけるコンポーザーとギタリストの切り結びを聴いてとることができます。それだけにギターレコーディングは非常に難航していたようですが、見事やってのけた佐々木氏に頭が下がります。また、同曲は過日開催された東京ゲーム音楽ショー2016におけるANGELICFORTRESSのライヴでもプレイされておりましたが、これまた飛びぬけた安定感でガッツリと弾きこなされており、聴いていてとにかく気持ちよく、ただただ圧倒された次第。すごいものを目の当たりにしたという感嘆の一方で、この方向性で今度はリズム隊を迎えたバンドスタイルでも聴いて/観てみたいなという気持ちも頭をもたげてきました。実現はより大変なものになるでしょうが、今後のさらなる展開に期待したいです。

http://hirokikikuta.com/
https://www.youtube.com/channel/UCy6_LDI2edFlRCn9rlG7YQw
https://hirokikikuta.bandcamp.com/
http://hidehisa.syncl.jp/

2014/08/24

さらなる世界観の広がりを求めて邁進する、プログレッシヴ・フュージョン ユニットの四作目 ― Lu7『Azurite Dance』(2014)

Azurite DanceAzurite Dance
(2014/07/26)
Lu7

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古くはタカラのチョロQ3、近年はロックマンZEROやZXシリーズ、ぎゃる☆がん といったインティ・クリエイツのゲーム作品の楽曲に携わられているコンポーザーの梅垣ルナさんと、ロック・バンドEUROXのメンバーであり、セッション・ミュージシャンとしてインティ作品をはじめ様々なレコーディングに参加されているギタリストの栗原務氏の二人を中心としたフュージョン・ユニット Lu7の四年ぶり四作目となるアルバム。前作『Bonito』でも全面的に参加されていた岡田治郎氏(b / PRISM)嶋村一徳氏(ds)の両氏による安定感たっぷりのリズム隊のほか、パーカッショニストやヴァイオリニストなどのゲスト・ミュージシャンを迎えて制作されたのが本作。同じく多くのゲストを迎えた二作目『L'esprit de l'exil』(2005)にも参加された糸賀徹氏(vo.chorus)や、徳島由莉さん(vln)はインティのサウンドトラック作品でも名前が見られるので、いわばお仕事仲間でもあるわけですね。

梅垣さんのクラシカル/ニューエイジ的センスも織り込んだクリアーなアレンジや、アラン・ホールズワースからの影響を強く感じさせる栗原氏のテクニカルで輪郭のハッキリしたギタープレイがLu7の特徴です。前作ではハードなプログレッシヴ・フュージョン/ジャズ・ロックにグッと踏み込んだシャープな楽曲を中心に展開しており、これまでのアルバムの路線に一区切りをつけた仕上がりにもなっていました。今回は冒頭のタイトルチューンや、スタイリッシュなたたずまいでゆるやかな時間の流れるピアノ・ジャズ・ロック"One Screw Short"などでユニットの持ち味は継承しつつも、さらなる世界観の広がりを求めているという印象を感じました。栗原氏の伸びやかなギターに呼応するかのように糸賀氏が力強いヴォイス・パフォーマンスを聴かせるデジタリーなフュージョン"Raw Ore"や、ヴァイオリンやマリンバをフィーチャーし、曲名さながらの牧歌的な光景(インスピレーションはクロード・モネの一連の絵画からでしょうか)をイメージさせる"積みわらの歌"、そしてストリングスとクラリネットも迎えたラストのアコースティック・インスト"おかえり"と、いずれも暖かみと情緒を感じさせてくれます。

ギター主体の"Rim Light"、シンセサイザー主体の"Dunes in Ancient Times"といった小品やインタールードがアルバム中間部にいくつも差し挟まれているのも本作の特徴ですが、それは後に控える12分に及ぶLu7史上最長の楽曲"トキヲコエテソラニカエリ"への布石といったところでしょうか。同曲はこれまでになくシンフォニック・ロック/プログレッシヴ・ロックに接近したかなりの意欲的な大曲であり、チャーチ・オルガン、モーグ、ピアノが入れかわり立ちかわり登場するキーボード・プログレ曲でもあります。構成の込み入り具合も随一。四ピース・バンドとしての側面もあるLu7が持てるポテンシャルを存分に引き出したガチンコの演奏がギュッと詰め込まれています。アルバム恒例となっている近代クラシック音楽のカヴァーですが、本作はクロード・ドビュッシーの"雨の庭"と、フィリップ・ゴーベールの"Berceuse"(子守唄)をカヴァーしています。前者はガットギターとピアノが息もつかせず併走するスリリングなアレンジ、後者はピアノとフルートに代わり、メロディオンとパーカッションを主体にしたラウンジ調のまったりとしたアレンジです。

メンバー二人のヴィジュアルが初めて前に出た都会的なイメージのアルバムジャケットにも表れているように、さらなる進化を求めるユニットの姿勢が伝わってくるアルバムになっています。11月はじめには六本木でレコ発ライヴもあるとのこと。



Lu7 - Official Site
Music Production CRYSTA Inc.(お二人が在籍されている音楽制作会社)
Luna Umegaki - VGMdb
Tsutomu Kurihara - VGMdb

2014/07/14

確かな技巧と音楽性が織り成す、グルーヴィーな技巧派フュージョン・トリオ ― Gravitational Force Field『ZERO』(2014)

ZEROZERO
(2014/07/12)
Gravitational Force Field

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熱帯JAZZ楽団や、向谷実氏率いるチャージ&バックス、中路英明氏率いるオバタラ・セグンドなどへ参加する平川象士(ds)、「アイドルマスター」や「アイカツ!」、「エースコンバット」「ニーア ゲシュタルト/レプリカント」などの数多くのアニメやゲーム作品の楽曲にレコーディングメンバーとして参加している後藤貴徳(g)、VOCALOID楽曲をジャズアレンジで演奏するビッグバンドLowland Jazzの一員でもある小林修己(b)。それぞれ活動フィールドの微妙に異なる三者のセッション・ミュージシャンによって2012年に結成されたインストゥルメンタル・ジャズ・ロック・トリオ Gravitational Force Fieldの6曲入りデビュー・ミニアルバム。楽曲はジャズ/フュージョンをルーツとしつつ、ラテン、ファンク、メタル、プログレといった要素が混ぜ込まれたフレキシブルな方向性を感じさせる内容です。作曲の要は後藤氏であり、ほとんどの楽曲にクレジットされています。

冒頭を飾る"Zero"はメンバー三人による共作曲で、ファンキーなギターカッティングとコンパクトなリズム隊を主軸にした爽やかな1曲。続く"Evolutional Theory" "Massive Spear"は、シブめのグルーヴと、それをつんざくかのようなクキっとしたギタープレイが聴きもの。小気味良く歌い上げるベースラインと共にスウィングする"Second Swing"、スムーズな聴き心地の中にさりげなく織り込まれた軽やかなまでのテクニックがまたたまらない、小林氏作曲の"Chase"を経て、ラストの"Heavirogre"は、「Heavy」+「Progressive」を組み合わせたものであろうタイトルが象徴するように、ハードエッジなリフと変拍子で押しに押しまくるプログレッシヴ・フュージョンでダイナミックに締め。それまでの5曲と明らかに趣向が異なるので、完全に意表を突かれました。そういえば、女児向けアニメの楽曲でガッツリとプログレッシヴ・メタルをやったということで一部で話題になったアイカツ!の"硝子ドール"や、アイドルマスター シンデレラガールズの星輝子のヘヴィ・メタリックなキャラクターソング"毒茸伝説"で存在感バツグンのギターを弾いているのは後藤氏なんですよね。この曲を聴いてふと、そのことを思い出しました。三者の確かなテクニックと多様な音楽性を堪能できる秀逸なデビューアルバム。今後はフルアルバムもリリース予定だとのことなので、そちらにも期待したいです。





Gravitational Force Field

2014/02/12

maigoishi『Encounter』(2013)

EncounterEncounter
(2013/12/04)
maigoishi

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ユニークで魅力的なエレクトロニカ系アーティストの作品をリリースしているレーベル「elegantdisc」から昨年アルバムデビューした、若干22歳の新人コンポーザー/トラックメイカー maigoishiの1stアルバム。両親譲りというジャズ、エレクトロニカ嗜好に、光田康典氏や植松伸夫氏などの90年代ゲーム・ミュージックからの影響も取り込んだ颯爽としたエレクトロニック・フュージョンを展開しており、そのハイブリッドなサウンドはとにかく気持ち良くツボにハマってきます。各ジャンルの美味しい部分を選りすぐり、巧みにミックスして独自のサウンドを作り上げていくセンスの冴えはなるほど新世代的。

エレクトリック・ギターが切れ込むハード・フュージョンと軽快なピアノ・ジャズの二つのパートをクラブ・ジャズ・スタイルでまとめ上げたオープニング曲"Aftershock"は、氏の才気が如実に伺えるキラーチューンであります(ちなみに、シュレッドなギタープレイで客演しているのは、マーティー・フリードマンのアシスタントであるArise Enmi(延味有瀬)氏)。小気味良い変拍子をオリエンタルなムードと絡めて聴かせる"Dream Dancing"や、キース・エマーソン、というよりは松谷卓を思い起こさせる、プログレタッチのピアノ・フュージョン"Diastrophism"のしなやかな力強さも耳を惹きます。また、抜けの良さが光る"Midnight Vision"や、澄み切った夜空のようなイメージを湛えた"Zuan Wu"からは、maigoishi氏がフェイバリットに挙げている光田康典氏の作風に通じるものを感じました。彼のゲーム・ミュージック原体験には、光田氏の「クロノトリガー」や、デヴィッド・ワイズ氏の「スーパードンキーコング2」があるのだとか。そのことを踏まえると、情景が浮かぶようなサウンド作りも少なからず納得がいきます。

声明や笛、鼓などをバックに織り込み、厳かな情緒と風景を演出する"Shishi-Odoshi"、散りばめられた和のエッセンスとゆったりとしたメロディラインがさながら桃源郷のようなイメージを描き出す"Footprints of Giant Asian"、シューティングゲームで使用されてもおかしくない疾走ドラムンベース"Qinglong"など、耳馴染みの良さに特化しつつもイージーリスニングに堕することなく、一味二味とスパイスの効いたスタイリッシュな楽曲が目白押し。ピアノ・インストゥルメンタル、ゲーム・ミュージックなどを好むリスナーにも強くオススメしたいです。



maigoishi『Encounter』 - elegantdisc
maigoishi - soundcloud

2006/12/05

野獣王国『Sweet&The Beast』(1999)

スイート&ザ・ビーストスイート&ザ・ビースト
(1999/07/23)
野獣王国

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 是方博邦(g)、難波弘之(kbd)、鳴瀬善博(b)、東原力哉(dr)といった名うてのミュージシャン達によるハイブリッドなフュージョン・バンド「野獣王国」の3rdアルバム。バンド名の由来は、「四者のパフォーマンスの暴れっぷりが野獣のようだった」と、とあるファンが感じた印象が元になっているとか。フュージョンの洗練されたしなやかさはもちろん、ロックの野趣溢れる醍醐味も押し出した彼らのサウンドは、まさにパワー・フュージョンと呼ぶに相応しいものです。鳴瀬氏のチョッパー・ベースが跳ね回るハードなファンク・チューン「Three Funk Bears」を皮切りに、東原氏の豪快なドラミングと難波氏のオルガン&シンセ捌きが楽曲にヘヴィでプログレッシヴな趣をたっぷりと与えている「Hurricane-Z」。KING CRIMSONの代表曲をパロったタイトルのお遊びにニヤリとさせられつつも、バンド・アンサンブルが一体となってジワジワと密度を熱量を増してゆく展開が、まさに"ビースト・キング"のイメージに相応しい貫禄を感じさせてくれる「The Court of The Beast King」。難波氏の縦横無尽のプレイを中心に、コーラスも交えてドラマティックな楽曲構成で聴かせる「Violet Papillon」。これらのパワフルな楽曲の間あいだには、ボサノヴァ・テイストの「Ripplet」や、ヴィクター・ヤングのカヴァー「My Foolish Heart」、ブルージーでメロディアスなフレーズを味わえる「European Rats」といったまったりとした楽曲が挟まれています。ラストは「E.Tのテーマ」をしっとりとしたアレンジでカヴァー。ライヴでは他にも鉄腕アトムやゴジラのテーマ、スティーヴィー・ワンダーにCAMELなど、かなり手広くカヴァーしているようですね。【Beast】と【Sweet】のイメージをそれぞれ感じさせる楽曲群がバランス良く配された、フュージョンの枠に収まらない痛快で刺激的な1枚であります。



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