2016年6月26日日曜日

「J・G・バラード短編全集」を待ちながら

ハイ・ライズ (創元SF文庫)
J・G・バラード
東京創元社
売り上げランキング: 7,704


 今なお読み手を惹きつけてやまない、J・G・バラード。彼が70年代に立て続けに発表した〈テクノロジー三部作〉のひとつ『ハイ・ライズ』が、ベン・ウィートリー監督、トム・ヒドルストン主演で今年映画化。1980年に早川書房より『ハイ―ライズ』として刊行されて以後、長らく復刊が望まれていた原作小説も、8月の日本公開にあわせて7月に東京創元社から復刊を果たすわけですが、さらに同社からは全五巻の「J・G・バラード短編全集」の刊行予定もアナウンスされました。ということは、長らく絶版状態にある〈ヴァーミリオン・サンズ〉の一連の作品や、1976年にNW-SF社から刊行され、現在はかなりのプレミアアイテムとなっている『死亡した宇宙飛行士』の収録作も読めるというわけです。


“〈破滅三部作〉、『ハイ・ライズ』などの黙示録的長編で、1960年代後半より世界的な広がりを見せたニュー・ウェーブ運動を牽引し、20世紀SFに独自の境地を拓いた英国きっての鬼才作家バラード。その生涯に残した97の短編を執筆順に収録する、決定版全集。全五巻。 ”
http://e6.wingmailer.com/wingmailer/backnumber.cgi?id=E434


 ここでふと、英米では全集がいつごろ刊行されたのか、気になったので調べてみました。まず、イギリスのハーパー・コリンズのインプリントであるFlamingoから2001年に『The Complete Short Stories』が出ています。ハードカバー1189ページで、96編を収録。その後、2006年と2014年にはハーパー・コリンズの別のインプリントであるHarper Perennial4th Estateから二分冊版がそれぞれ出ています(後者はebook版もあり)。そしてアメリカでは、2009年にW. W. Norton & Companyからハードカバー一冊版が刊行。マーティン・エイミスによる序文がつき、1199ページ、98編を収録。新たに追加された二編は、「J・G・バ***の秘められた自叙伝 (The Secret Autobiography of J.G.B.)」(1981)、「死の墜落 (The Dying Fall)」(1996)でした。翌2010年にはペイパーバック一冊版が刊行されています。収録作の98編のタイトルは以下のとおり。せっかくなので、日本でこれまで刊行された選集にどの短編が収録されているのかも調べてみました。


『時の声』(吉田誠一訳/東京創元社)
『時間都市』(宇野利泰訳/東京創元社)
『永遠へのパスポート』(永井淳訳/東京創元社)
『時間の墓標』『終着の浜辺』(伊藤哲訳/東京創元社)
『溺れた巨人』(浅倉久志訳/東京創元社)
『ヴァーミリオン・サンズ』(浅倉久志・村上博基・永井淳訳/早川書房)
『死亡した宇宙飛行士』(野口幸夫訳/NW-SF社)
『ザ・ベスト・オブ・J・G・バラード』(星新蔵訳/サンリオ→筑摩書房)
『残虐行為展覧会』(法水金太郎訳/工作舎)
『ウォー・フィーバー』『第三次世界大戦秘史(飯田隆昭訳/福武書店)
その他(雑誌掲載、アンソロジー収録など)


【参考】
翻訳作品集成 - J・G・バラード
ISFDB - Summary Bibliography: J. G. Ballard


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The Complete Stories of J. G. Ballard
J. G. Ballard
W W Norton & Co Inc
売り上げランキング: 107,356

『The Complete Short Stories』
(2009/W. W. Norton & Company)
http://books.wwnorton.com/books/detail.aspx?ID=12255

《収録作》

“Prima Belladonna”
○■「プリマ・ベラドンナ」

“Escapement”
◎「逃がしどめ」☆「タイム・チャンネル」

“The Concentration City (Build-Up)”
○「大建設」☆「無限都市」*「強制収容都市」

“Venus Smiles (Mobile)”
○「モビル」■「ヴィーナスはほほえむ」

“Manhole 69”
●☆「マンホール69」*「六九型マンホール」

“Track 12”
◎「十二インチLP」☆「トラック12」

“The Waiting Grounds”
●「待ち受ける場所」*「待つための根拠」

“Now: Zero”
○「最後の秒読み」

“The Sound-Sweep”
●「音響清掃」*「音を取りのける男」

“Zone of Terror”
●「恐怖地帯」

“Chronopolis”
○「時間都市」*「クロノポリス(時間都市)」

“The Voices of Time”
●☆「時の声」*「時間が語りかけてくる」

“The Last World of Mr. Goddard”
▲「ゴダード氏最後の世界」

“Studio 5, The Stars”
○「アトリエ五号、星地区」■「スターズのスタジオ5号」

“Deep End”
●「深淵」

“The Overloaded Man”
●「重荷を負いすぎる男」*「負担がかかり過ぎた男」

“Mr. F is Mr. F”
(『The Disaster Area』[1967]収録)

“Billenium (Billennium)”
○「至福一兆」

“The Gentle Assassin”
○「静かな暗殺者」

“The Insane Ones”
○☆「狂気の人たち」

“The Garden of Time”
○「時間の庭」

“The Thousand Dreams of Stellavista”
◎■「ステラヴィスタの千の夢」

“Thirteen to Centaurus”
◎「アルファ・ケンタウリへの十三人」

“Passport to Eternity”
◎「永遠へのパスポート」

“The Cage of Sand”
◎☆「砂の檻」

“The Watch-Towers”
◎「監視塔」

“The Singing Statues”
■「歌う彫刻」☆「歌う彫像」

“The Man on the 99th Floor”
◎「九十九階の男」

“The Subliminal Man”
▲「識閾下の人間像」☆「無意識の人間」

“The Reptile Enclosure (The Sherrington Theory)”
△「爬虫類園」

“A Question of Re-Entry”
◎「地球帰還の問題」

“The Time-Tombs”
▲「時間の墓標」

“Now Wakes the Sea”
▲「甦る海」

“The Venus Hunters (The Encounter)”
▲「ヴィーナスの狩人」

“End-Game”
▲「ゲームの終わり」

“Minus One”
▲☆「マイナス1」

“The Sudden Afternoon”
▲「ある日の午後、突然に」

“The Screen Game”
△■「スクリーン・ゲーム」

“Time of Passage”
△「うつろいの時」

“Prisoner of the Coral Deep”
☆「深層珊瑚の囚人」

“The Lost Leonardo”
☆「消えたダ・ヴィンチ」

“The Terminal Beach”
▲☆「終着の浜辺」

“The Illuminated Man”
(『The Terminal Beach』[1964]収録)

“The Delta at Sunset”
△「たそがれのデルタ」

“The Drowned Giant (Souvenir)”
△☆「溺れた巨人」

“The Gioconda of the Twilight Noon”
△「薄明の真昼のジョコンダ」

“The Volcano Dances”
☆「火山の舞踏」

“The Beach Murders (Confetti Royale)”
「浜辺の惨劇」

“The Day of Forever”
△「永遠の一日」

“The Impossible Man”
△「ありえない人間」

“Storm-Bird, Storm-Dreamer”
△「あらしの鳥、あらしの夢」

“Tomorrow is a Million Years”
☆「夢の海、時の風」

“The Assassination of John Fitzgerald Kennedy Considered as a Downhill Motor Race”
※「下り坂自動車レースとみなしたジョン・F・ケネディの暗殺」
☆「下り坂カーレースにみたてたジョン・フィッツジェラルド・ケネディ暗殺事件」

“Cry Hope, Cry Fury!”
■「希望の海、復讐の帆」

“The Recognition”
☆「認識」

“The Cloud-Sculptors of Coral D”
■☆「コーラルDの雲の彫刻師」

“Why I Want to Fuck Ronald Reagan”
※「どうしてわたしはロナルド・リーガンをファックしたいのか」

“The Dead Astronaut”
☆「死亡した宇宙飛行士」

“The Comsat Angels”
「通信衛星の天使たち」

“The Killing Ground”
☆「殺人競技場」

“A Place and a Time to Die”
「死ぬべき時と場所」

“Say Goodbye to the Wind”
■「風にさよならをいおう」☆「風にさらばを告げよ」

“The Greatest Television Show on Earth”
「地上最大のTVショー」

“My Dream of Flying to Wake Island”
「ウェーク島へ飛ぶわが夢」☆「ウェーク島へ飛ぶ夢」

“The Air Disaster”
★「航空機事故」

“Low-Flying Aircraft”
「低空飛行機」

“The Life and Death of God”
「神の生と死」

“Notes Towards a Mental Breakdown (The Death Module)”
★「精神錯乱にいたるまでのノート」

“The 60 Minute Zoom”
(『The Venus Hunters』[1980]収録)

“The Smile”
(『Myths of the Near Future』[1982]収録)

“The Ultimate City”
「最終都市」

“The Dead Time”
(『Myths of the Near Future』[1982]収録)

“The Index”
(『Re/Search: J. G. Ballard』[1984 ※インタビュー・評論集]収録)
(『War Fever』[1990]収録)

“The Intensive Care Unit”
(『Myths of the Near Future』[1982]収録)

“Theatre of War”
(『Myths of the Near Future』[1982]収録)

“Having a Wonderful Time”
(『Myths of the Near Future』[1982]収録)

“One Afternoon at Utah Beach”
☆「ユタ・ビーチの午後」

“Zodiac 2000”
☆「ZODIAC2000」

“Motel Architecture”
(『Myths of the Near Future』[1982]収録)

“A Host of Furious Fancies”
☆「妄想のとりこ」

“News From the Sun”
☆「太陽からの知らせ」

“Memories of the Space Age”
★「宇宙時代の記憶」

“Myths of the Near Future”
☆「近未来の神話」

“Report on an Unidentified Space Station”
★「未確認宇宙ステーションに関する報告」
☆「未確認宇宙ステーションに関する報告書」

“The Object of the Attack”
★「攻撃目標」

“Answers to a Quesionnaire”
★「尋問事項に答える」

“The Man Who Walked on the Moon”
★「月の上を歩いた男」

“The Secret History of World War 3”
★「第三次世界大戦秘史」

“Love in a Colder Climate”
★「エイズ時代の愛」☆「愛は慄えて」

“The Enormous Space”
★「巨大な空間」

“The Largest Theme Park in the World”
★「世界最大のテーマ・パーク」

“War Fever”
★「ウォー・フィーバー」

“Dream Cargoes”
★☆「夢の積荷」

“A Guide to Virtual Death”
☆「ヴァーチャルな死へのガイド」

“The Message from Mars”
☆「火星からのメッセージ」

“Report from an Obscure Planet”
(「Leonardo」issue 1992 April ※雑誌)

“The Secret Autobiography of J.G.B.”
☆「J・G・バ***の秘められた自叙伝」>

“The Dying Fall”
☆「死の墜落」

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 ほとんどが翻訳されて日本に紹介されていますが、それでも未訳のものが11編ほどあるみたいです(“Mr. F is Mr. F” “The Illuminated Man” “The 60 Minute Zoom” “The Smile” “The Dead Time” “The Index” “The Intensive Care Unit” “Theatre of War” “Having a Wonderful Time” “Motel Architecture” “Report from an Obscure Planet”)。そしてそのほとんどは1982年に刊行された短編集『Myths of The Near Future』に収録されていたものであるようです。

Myths of the Near Future
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2016年6月25日土曜日

Hans Zimmer&Richard Harvey『The Little Prince(リトルプリンス 星の王子さまと私)OST』(2015)

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 サン=テグジュペリの『星の王子さま』の後日談を少女の視点から描いた、マーク・オズボーン監督によるアニメーション映画「リトルプリンス 星の王子さまと私」のサウンドトラック。コンポーザーはハンス・ジマーリチャード・ハーヴェイの共作。ジマーはオズボーン監督が参加した「カンフーパンダ」(2008)のスコアも手がけております(シリーズ二作目以降はオズボーン監督は関与していないものの、ジマーは二作目(2011)、三作目(2016)も担当しています)。リチャード・ハーヴェイはイギリスの古楽プログレッシヴ・ロック・バンドGRYPHONのフロントマンとして70年代に活動し、同バンド解散後は劇伴コンポーザーに活動の場を移したマルチミュージシャン。初期には「火星年代記」(1980/TVミニシリーズ)、「ロアルド・ダール劇場/予期せぬ出来事」(1979~1988)の一部劇伴や、「地球防衛軍テラホークス」(1983)、「ダーティ・ヒーロー/地獄の勇者たち」(1985)のスコアなどを手がけています。ジマーとのつきあいはこのころからあり、90年代以降はジマーの主宰するプロダクションの周辺メンバーのひとりとして、「ハリーポッターとアズカバンの囚人」(2004)や「ダ・ヴィンチ・コード」(2006)などのサントラにアレンジや演奏などに参加し、「インターステラー」(2014)では、オーケストラコンダクターを担当。本サントラではリコーダーや撥弦楽器の演奏も担当しています。


Little Prince
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 また、本サントラには、ジマーの近作のレコーディングに参加しているほか、ロックやブルーグラス界隈のミュージシャンとの共演も多いヴァイオリニストのアン・マリー・シンプソンや、マイケル・ナイマンとの共演歴もあるクラシック・ピアニストのジョン・レネハンのほか、2009年に再結成したGRYPHONの再編メンバーでもあるグラハム・プレスケットがアコーディオンで参加。ちなみにグラハムもジマーとは80年代以来からの盟友であり、映画「愛に迷った時」(1995)のスコアの共作も行っております。本作ではまた、フランスのポップスシンガー カミーユ(Camile)を迎え、"Turnaround" "Equation" "Le Tour De France En Diligence"の三曲の挿入歌や、スコアのバックコーラスで彼女のコケティッシュな歌声を聴くことができます。フランス語歌唱版も併録。優雅なフレンチポップスのムードをまといつつ、スコアはアコースティック楽器の響きとしっとりとしたオーケストラを主体とするアレンジ。リコーダーの響きも印象的な"Preparation"や、"The Life Plan" "Driving" "Plan B"など、ときたまミニマル/フォークっぽくなるあたりは、リチャード・ハーヴェイのカラーが強く出ているように感じます。



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『The Little Prince Original Motion Picture Soundtrack』
[WATERTOWER MUSIC|WTM39707]
http://www.hans-zimmer.com/index.php?rub=disco&id=1319

01. Preparation
02. Turnaround (vocal: Camille)
03. The Life Plan
04. Driving
05. Equation (vocal: Camille)
06. The Interview
07. Le Tour De France En Diligence (vocal: Camille)
08. Plan 8
09. Getting On With It
10. Amongst The Coins
11. Top Floor Please
12. Ascending
13. Parachutes
14. Draw Me A Sheep
15. Stars
16. The Fox
17. The Journey
18. The Absurd Waltz
19. Turnaround Repreise (vocal: Camille)
20. Recovery
21. Trapped Stars
22. Farewell
23. Escape
24. Finding The Rose
25. Growing Up
26. Suis-moi (vocal: Camille)
27. Equation (vocal: Camille)
28. Suis-moi Reprise (vocal: Camille)


Music By Hans Zimmer & Richard Harvey
featuring. Camille

Synth Programming Hans Zimmer

Soloists:
Ann Marie Simpson (violin)
John Lenehan (piano)
Graham Preskett (accordion)
Richard Harvey (recorder, plucked strings)
Gabriel Kuti (solo choirboy)

Album Produced By: Stephen Lipson
Music Wragler: Bob Badami
Music Production Services: Steven Kofsky
Music Edition: Catherine Wilson

Additional Music by:
Ed Buller, Dominic Lewis, Nathan Stornetta, Czarina Russell, Benjamin Wallfisch

Additional Programmmed by: David Fleming

Conductor and Music Consultant: Nick Glennie-Smith
Technical Score Engineers: Stephanie McNally, Alex Lamy
Digital Instrument Design: Mark Wherry
Orchestrator: Bill Connor
Additional Orchestrators:
Adam Langston, Philip Klein, Stephen Coleman, Andrew Kinney, Richard Harvey
Orchestral Leader: Thomas Bowes

"Turnaround"
Music by Hans Zimmer & Camille
Lyrics: Camille
Arranger: Crement Ducol
Camille (vocal, body percussion)
Heitor Pereira (acoustic guitar)
Ann Marie Simpson, Christelle Lassort (violin)
Pierre-Francois Dufour (alto / cello)
Christophe Minck (double bass)
Clement Ducol (body percussion)


"Le Tour De France En Diligence"
Music by Hans Zimmer & Camille & Nathan Stornetta
Lyrics: Camille
Arranger: Crement Ducol
Camille (vocal)
Christelle Lassort (violin)
Pierre-Francois Dufour (alto / cello)
Christophe Minck (double bass)


"Equation"
Music by Hans Zimmer & Camille & Crement Ducol
Lyrics: Camille
Camille (vocal)
Clement Ducol (piano, prepared piano)


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http://www.hanszimmer.com/
http://www.hans-zimmer.com/

Richard Harvey - IMDb

Richard Harvey(GRYPHON)『Terrahawks(地球防衛軍テラホークス)』(1983)
Hans Zimmer Early Works ― スタジオミュージシャン時代のハンス・ジマーの足跡をたどる


 ちなみに、GRYPHONのアルバム四タイトル『Gryphon (鷲頭、獅子胴の怪獣)』(1973)、『Midnight Mushrumps (真夜中の饗宴)』(1974)、『Red Queen to Gryphon Three (女王失格)』(1974)、『Raindance (レインダンス)』(1975)が、6月25日にマーキー/ベル・アンティークより再発しました。古楽の響きをもったフォーク・プログレの傑作であるのはもちろんですが。ハーヴェイ氏のルーツを知る上でもマストアイテムです。

http://www.marquee.co.jp/label/gryphon.htm

 バンドは2009年6月に再結成コンサート後、2015年5月にはコンサートツアーを行っていますが、2016年4月にハーヴェイ抜きでの活動継続の意向をアナウンスしています。本業が多忙であり、チャリティ活動も行っているハーヴェイのスケジュール調整はやはり難しいようです。バンドは後任として、キース・トンプソン(oboe, crumhorn, oboe)、ローリー・マクファーレン(bass)の二人のミュージシャンを迎えています。

「Gryphon to continue without Richard Harvey」
(from teamrock.com|2016.04.25)


http://www.gaudela.net/gryphon/
https://www.facebook.com/Gryphon-32198493447/


鷲頭、獅子胴の怪獣
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真夜中の饗宴
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女王失格
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レインダンス
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2016年6月23日木曜日

Hans Zimmer Early Works ― スタジオミュージシャン時代のハンス・ジマーの足跡をたどる



 ハンス・ジマーが初期のモーグの巨大なモジュラー・シンセサイザー(通称 タンス)と一緒に写っている1970年の写真が、tumblrやTwitterで以前より出回っております(バズったキッカケはATP Festivalのtumblrアカウントの模様)。1970年というとジマーが13歳のころであり、どういう経緯で撮られた写真なんだろうかと、気になって調べてみたのですが、そのあたりの詳しいことは何もわからずじまい。とはいえ、この写真はかつて存在したファンサイト「Hans Zimmer Worship Page」に2000年初頭から載っていたものだということはわかりました(Internet Archiveのログ

 今でこそ映画音楽の大家として知られるジマーですが、そんな彼にも下積み時代があります。1970年代半ばごろに、ジマーは渡英してスタジオミュージシャンとして活動しはじめるのですが、そのころに関わったアルバムにはどんなものがあるのか、1985年ごろまでのものを調べてみました。

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 Rusty Butlerというプログレッシヴ・ロック・バンドが1970年初頭に活動していました。後にニューウェイヴ・パンク・バンド The Stranglersに加入するデイヴ・グリーンフィールドが在籍していたバンドなのですが、同バンドのベーシストだったデイヴ・ポクソンは解散後にKRAKATOA (1975~1979)というハード・ロック・バンドの結成に関わります。このKRAKATOAこそが、スタジオミュージシャンとして活動間もないころのハンス・ジマーが途中加入したバンドであり、ここにはTOYAHやSAXONに加入する前のナイジェル・グロックラーも在籍していました。KRAKATOAの残したデモ音源は、バンドのmyspaceでいくつか聴くことができます。ファンク要素も強いプログレッシヴ・ハード・ロックといった印象です。

https://myspace.com/krakatoa1975/music/songs


「Spaceward Studios 1972 - 1988」
http://www.spaceward.co.uk/spaceward-studios/krakatoa.htm

 在りし日のKRAKATOAの面々。左から一番目がナイジェル・グロックラー、二番目がハンス・ジマー、四番目がデイヴ・ポクソン、ちなみにデイヴはこの後、SAXONのマネージャーを務めることになります。ナイジェルの後のSAXONへの加入は、このときの繋がりもあってのことだったのでしょうね。


■Chromium『Star to Star』(1979)


ジマーはBUGGLESの面々とともに仕事をしていたことで知られていますが、本作はBUGGLESを結成する前のトレヴァー・ホーンとジェフ・ダウンズの両人がプロデュースしたディスコ・ファンク・プロジェクトの唯一作。サウンド的にもバグルスのカラーが濃く、非常に興味深いです。ジマーはエレクトロニクスでクレジットされています。ちなみに、若きハンス・ジマーの姿はバグルスの"ラジオスターの悲劇"のPVでも確認できます。(2:50あたりから注目)




■Sally Oldfield『Easy』(1979)
EASY / CELEBRATION
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SALLY OLDFIELD
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マイク・オールドフィールドの実姉であるサリーの2作目のソロアルバム。ジマーはアルバムB面の4曲("Sons OfThe Free" "Hide And Seek" "Firstborn Of The Earth" "Man Of Storm")にシンセサイザーでクレジットされています。


■Krisma『Cathode Mamma』(1980)
Cathode Mamma
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Krisma
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マウリツィオ・アルシエリ、クリスティーナ・モーザーの夫婦によるエレクトロユニット Crismaが名義をKrismaに変えてリリースした、3作目のアルバム。ジマーはシンセサイザー/プログラミングでクレジット。


■The Damned『The Black Album』(1980)
The Black Album
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セックス・ピストルズやザ・クラッシュと並ぶ三大パンクバンドのひとつ ザ・ダムドの4作目のアルバム。ジマーは"History Of The World Part 1"の一曲のみ、共同プロデュース/シンセサイザーで参加。アルバムに「Overproduced」と記載されてしまうほど、ダムドらしからぬ強度のあるサウンドプロダクションが施されております。




■Kevin Ayers『That's What You Get Babe』(1980)
That's What You Get Babe
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Kevin Ayers
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SOFT MACHINEのオリジネイターであり、ブリティッシュ・サイケ/カンタベリー・シーンの「自由人」ケヴィン・エアーズの9作目であり、Harvestレーベルでの最後のアルバム。ジマーはシンセサイザー/プログラミングでクレジット。


■Zaine Griff『Ashes and Diamonds』(1980)
Ashes And Diamonds
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Zaine Griff (2011-11-28)

ニュージーランド出身のデンマーク人シンガーソングライターにして、80年代のニュー・ロマンティック・ブームを彩ったザイン・グリフのデビューアルバム(邦題『灰とダイヤモンド』)。デヴィッド・ボウイなどを手がけたトニー・ヴィスコンティのプロデュース。ジマーはシンセサイザー/プログラミングでクレジットされています。


■Michel Polnareff『Bulles』(1981)
Bulles
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Michel Polnareff
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「シェリーに口づけ」で知られるフレンチ・ポップスの大家 ミッシェル・ポルナレフの81年作。邦題『シャボンの中の青い恋』。ジマーはキーボードでクレジット。


■Miguel Bosé『Más Allá』(1981)
Mas Aila
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Miguel Bose ミゲルボゼ


スペインの俳優でありシンガーのミゲル・ボセのソロ5作目。ジマーはシンセサイザーでクレジット。


■Mocedades『Desde que tú te has ido』(1981)
スペイン・ビルバオのフォークポップスグループの12作目のアルバム。ジマーはシンセサイザーでクレジット。


■Video Kids『Never Too Young To Dance!』(1981)
ディスコポップユニットのおそらく唯一作。ジマーはシンセサイザーでクレジット。


■Zaine Griff『Figvres (Figures)』(1982)
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YMOの高橋幸宏、ケイト・ブッシュ、ULTRAVOXのウォーレン・カンらを迎えて制作されたザイン・グリフの1982年のアルバム。ジマーは共同プロデュース/アレンジで参加。ちなみに、同作にはフォーク・ロック・バンドGRYPHONのリチャード・ハーヴェイ(現在は脱退)とグラハム・プレスケット(2009年に加入)も参加しているのですが、この二人とジマーは関係が深く、リチャードは近年では「インターステラー」(2014)のスコアでオーケストラ・コンダクターを担当しているほか、「リトルプリンス 星の王子さまと私」(2015)ではジマーとスコアを共作しています。グラハムは前述のケヴィン・エアーズやミゲル・ボセ、Mocedadesのアルバムに参加しているほか、映画「愛に迷った時」(1995)のスコアをジマーと共作し、「ダ・ヴィンチ・コード」(2006)のサントラにもアレンジャーとしてクレジットされています。




■Stanley Myers、Hans Zimmer『Moonlighting』(1982 ※Bootleg)
映画「ムーンライティング」(イエジー・スコリモフスキ監督)のサントラ。「ディア・ハンター」(マイケル・チミノ監督)のスコアで知られるスタンリー・マイヤーズがメインコンポーザーで、ジマーは追加スコアで関与していたのですが、サントラはブートレッグでのリリースだった模様(全8曲、10分にも満たない収録内容)。以降、「マリリンとアインシュタイン」「マイ・ビューティフル・ランドレット」(1985)、「悪魔のサバイバル」(1986)、「ペーパーハウス/霊少女」(1988)など、ジマーとマイヤーズのタッグは80年代末にかけて数々のスコアを手がけております。ところで、「マイ・ビューティフル・ランドレット」における、ジマー作編曲の挿入歌"My Beautiful Laundrette"(ヴォーカル:リタ・ウルフ)は「オペラ座の怪人」のフレーズを援用した秀逸なエレポップチューンでオススメです。





■Sally Oldfield『Strange Day In Berlin』(1983)
ストレンジ・デイ・イン・ベルリン(紙ジャケット仕様)
サリー・オールドフィールド
ストレンジ・デイズ・レコード (2007-03-21)
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ソロ5作目。ジマーは共同プロデュース/シンセサイザーでクレジット。


■HELDEN『Holding On』(1983 ※Single)
http://www.hans-zimmer.com/index.php?rub=disco&id=305
ULTRAVOXのドラマー ウォーレン・カンとのシンセ・ポップ・デュオ「ヘルデン」は、ジマーのミュージシャンとしてのキャリアでも非常に興味深いものです。ヴォーカルにザイン・グリフ、BUGGLESのアルバムにバッキングヴォーカルで参加したリンダ・ジャーディムを迎え。『Spies』という12曲入りアルバムをリリースする予定だったもののそれは叶わず、後年になってブートレッグでリリースされています。なお、ジマーとカンは84年から85年にかけて、スペインのニューウェイヴ・ロック・バンド MECANOのツアーに帯同しており、ライヴアルバム『Mecano: En Concierto』でそのパフォーマンスを聴くことができます。そしてなんと、映像も残っています。




■Zdravko Čolić『Šta Mi Radiš (What Are You Doing To Me?)』(1983)
1973年にユーロビジョンへの出場歴もある、ユーゴスラヴィアのシンガーソングライター ズドラヴコ・チョリッチの5作目。レコーディングはロンドンのスタジオで行われており、ジマーはシンセサイザー/プログラミングで参加。


■Evelyn Thomas『High Energy』(1984)
High Energy
High Energy
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Evelyn Thomas
Essential Media Afw (2015-01-19)
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80年代に隆盛したディスコ/シンセミュージック Hi-NRG(ハイエナジー)の代表的アーティスト イヴリン・トーマスのディスコヒットアルバム。ジマーはプログラミングで参加。後述のバーバラ・ペニントン(本作ではバッキング・ヴォーカルで参加もしています)や、リンダ・テイラー、MIDNIGHT SUNRISEなど、ジマーは80年代末期にかけて、Hi-NRG系アーティストの楽曲のアレンジ/プログラミングを多数手がけています。





■Barbara Pennington『Out of The Darkest Night』(1985)
Out of the Darkest Night
Out of the Darkest Night
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Barbara Pennington
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シカゴ出身、イギリスをメインに活動したHi-NRG系シンガー バーバラ・ペニントン。ジマーは一部の楽曲のシンセサイザー/プログラミングでクレジット。


■Who Cares『Doctor In Distress』(1985 ※Single)
ポップストリオ Tight Fitのメンバー デニーズ・ジンゲルとジュリー・ハリスのふたりによるHi-NRG系ユニットの唯一のシングル。ジマーは演奏で参加。


■Claudio Baglioni『La Vita È Adesso』(1985)
La Vita E' Adesso
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Claudio Baglioni
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カンタトゥーレの大御所 クラウディオ・バリオーニのソロ10作目。ジマーはシンセサイザーでクレジット。


■Shriekback『Oil And Gold』(1985)
Oil And Gold
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Shriekback
Lemon (2011-08-29)
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元 League of Gentlemen、XTCのバリー・アンドリューズや、元GANG OF FOURのデイヴ・アレンらが組んだポストパンクバンド シュリーバックの3作目。ジマーはプログラミング/エンジニアのほか、一部の演奏にも参加しています。
http://shriekbackmusic.tumblr.com/post/102631586862/shriekback-go-to-the-movies




■Duffo『Gonna Send The Boys Around』(1985 ※Single)
オーストラリア生まれのシンガーソングライター Duffoことジェフ・ダフのシングル。プロデュース/ドラムスはウォーレン・カン。同じくULTRAVOXのビリー・カーリーも参加。ジマーはシンセサイザーでクレジット。実質、HELDENのサポートを受けた作品といえます。

 
■V.A『Shape Of The Universe: A Souvenir Of Insignificance』(1985)
ZTTレーベルよりリリースされた、コメディ映画「マリリンとアインシュタイン」のサウンドトラック。ロイ・オービソン、テレサ・ラッセルのヴォーカル曲に、スタンリー・マイヤーズのスコア、ジマーのスコア"Remember Remember" "B-29 (Shape Of The Universe)" "World Of Theory (Explode)"を収録。

■Evelyn Thomas『Standing At The Crossroads』(1986)
Programmed By Hans Zimmer (tracks: B1 to B4)

■Linda Taylor『Every Waking Hour』(1986 ※Single)
Written-By, Arranged By Hans Zimmer

■Earlene Bentley『Don't Delay』(1986 ※Single)
Written-By, Arranged By Hans Zimmer

■Midnight Sunrise With Nellie 'Mixmaster' Rush Featuring Jackie Rawe『On The House』(1986)
Arranged By Hans Zimmer

■Midnight Sunrise Featuring Jackie Rawe『In At The Deep End』(1986)
Arranged By Hans Zimmer

■Darryl Pandy『Animal Magnetism (The Chicago House Remix)』(1986)
Arranged By Hans Zimmer

■Croisette『Nothing But Blackmail』(1986 ※Single)
Arranged By Hans Zimmer

■Richard Myhill『Don't Talk - Dance』(1986)
Programmed By Hans Zimmer

■Paloma San Basilio『Grande』(1987)
Arranged By Carlos Gomez, Graham Preskett, Hans Zimmer

■Carol Jiani『Such A Joy Honey』(1987 ※Single)
Arranged By Hans Zimmer, Ian Levine

■Midnight Sunrise With Nellie 'Mixmaster' Rush『This Is A Haunted House』(1987 ※Single)
Arranged By, Written-By Hans Zimmer

2016年6月22日水曜日

硬質なサウンドでダブリンから宇宙を抉る、肉食系スペース・ロック・トリオ ― YURT『YURT III - Molluskkepokk』(2016)



 アイルランド・ダブリンのストーナー・ロック・バンド YURTは、ギター/ヴォーカル/エレクトロニクス担当のスティーヴン・アンダーソン、“Yurtstick”(ベース)&エレクトロニクス担当のボズ・ムガベ、ドラムスのアンドリュー・ブシェのトリオとして2006年に結成。2009年にデビューアルバム『Ege Artemis Yurtum』、2011年に第二作『Archipelagog』、そして今年、第三作『Molluskkepokk』をリリース。ソニック・エルダー“YURT”の宣託にしたがって活動を続ける彼らのサウンドは、ストーナー/エクスペリメンタル・ロックに陣取りつつ、プログレッシヴ・ロックの境界を派手に侵食していくスタイル。HAWKWINDやBLACK SABBATHといったバンド、70年代サイケデリック・ロック、スペース・ロック、クラウトロック シーンからの濃厚な影響を反映しつつも、酩酊感でズルズルと引きずるよりも、むしろドライヴ感で抉り取ってやろうという肉食系。大半の楽曲が10分を越え、終始ぶっといサウンドでギチギチに満たされています。一方で、2010年ごろよりエレクトロ/アンビエントグループ ROGUE SPOREでも並行して活動を展開。両グループのデロデロと融解したようなアルバムアートワークはどちらもボズ・ムガベの手によるものです。


http://yurtattack.com/

2016年6月20日月曜日

マルチな才能がさらに開花した、元Big Big Trainのドラマーのソロ二作目 ― Steve Hughes『Once We Were, Part One』(2016)

ONCE WE WERE-PART ONE
ONCE WE WERE-PART ONE
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STEVE HUGHES
JFK (2016-06-24)


 The Enid(1993~1998)や、Big Big Train(1991~1998、2002~2009)、ジョン・ミッチェルのKINOにも一時在籍していたこともあるイギリスのドラマー スティーヴ・ヒューズ。バンドを脱退後、2015年3月に『Tales From The Silent Ocean』でソロデビュー。長年の友人であるJ・C・ストランドや、元Big Big Trainのショーン・フィルキンス、CITIZEN CAINのスチュワート・ベルらのサポートのもと、躁鬱に苦しむジャーナリストをテーマとしたコンセプト作を創り上げました。それから一年を経て、早くもリリースされた二作目が本作。二部作の前半パートとなるアルバムであり、前作にも参加したポーランド人ヴァイオリン奏者のマチェイ・ゾロウスキや、サックス奏者、DARWIN'S RADIOのデック・バークら複数のギタリストが参加。ショーン・フィルキンスもそうですが、元Big Big Train組は爆発力のあるモダンプログレチューンをつくるのがめちゃくちゃ上手い。聴き手をいっさい飽きさせないリズムパターンの変幻自在ぶりはさすがドラマーであり、TOTOやRUSH、IT BITESやFROST*にも通じる芯の太いメロディック・ロック/モダン・プログレチューンを創り上げています。本作では冒頭から33分もの大曲"The Summer Soldier"を配しており、楽曲へのすさまじい自信の現れを感じさせます。一方で、"Kettering Road" "That Could've Been Us"、ピアノ/シンセやストリングス中心の小品"Propaganda Part 1" "Second Chances"などの甘いメロディをもつポップスナンバーが多いのも、TEARS FOR FEARSやSCRITTI POLITTIをフェイバリットに挙げる彼らしい。男女デュオで歌い上げられるラストナンバー"Saigo Ni Moichido"は、なぜか日本語タイトルのハートウォーミングなバラードです。マルチ奏者/コンポーザーとしての才がさらに開花した、充実の一作といえます。





Steve Hughes: Interview
(from Official Site)

『Once We Were, Part One』 - progstreaming
全曲ストリーミング試聴(期間限定)

http://www.stevehughesmusic.co.uk/
https://www.facebook.com/spaceinsubs/
https://www.youtube.com/channel/UC4ibwOr4hCzaxg9lIB55g7A

2016年6月18日土曜日

モスクワの地で繰り広げられる、ジャズとロックのプログレッシヴなせめぎ合い ― M-ARTel『War and Peace, ep7』(2013)



 60年代ロック/ポップスにルーツと憧憬をもつサックス奏者のミハイル・イヴァノフを中心として活動していたバンド Old wine in a new bottleが改名する形で2010年に始動した、ロシア・モスクワのフュージョン インストゥルメンタル・バンド M-ARTel。2011年に1stアルバム『The Assemblage Point』、2013年に2ndアルバム『War and Peace, Episode VII』(↑)、2015年にライヴアルバム『Озорные Панкушки (Merry Punks)』をリリース。バンド自ら「チャーリー・パーカーがレッドツェッペリンとジャムり、ジョン・コルトレーン・カルテットにジミヘンが加入したような」サウンドと形容している通り、ライヴ感に富むオールドスクールな魅力と、サックスとエレピ/シンセサイザーをガッツリを前面に押し出したジャズロック。スムースジャズ、ブルーズ、ファンク、ハードロックと歯切れよく表情を変えていくさまはじつに痛快です。「ラスト・オブ・モヒカン」の酋長チンガチュックと「スター・ウォーズ」のダースベイダーの抗争(!?)を、たっぷりととられたスリリングなソロ回しでとともに描いた10分越えのジャズロック"Chingachgook vs. Darth Vader"は圧巻の一言。



http://www.m-artel.com/
https://www.facebook.com/martelproject/
https://soundcloud.com/m-artel
http://www.progarchives.com/artist.asp?id=9671

2016年6月15日水曜日

トリッキーな可変性とメンバー同士の化学反応がきらめく、期待のハイブリッドサウンド ― siraph『siraph』(2016)

siraph
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siraph
Victor Music Arts, Inc (2016-05-18)
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 ブエノスアイレス出身のシンガー Annabel蓮尾理之(kbd /SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER、ex. school food punishment)、山崎英明(b /scope、ex. school food punishment、scope)、照井順政(g / ハイスイノナサ)、山下賢(ds / Mop of head、Araska Jam)の五人(ライヴではさらにVJで齊藤雄磨氏が参加)によるバンド siraphのデビューミニアルバム。同人音楽活動から出発し、やなぎなぎさんらとのbinariaや、bermei.inazawa氏とのanNinaなどを経てソロアーティストとしてメジャーデビューした経歴のAnnabelさんと、いずれも実力派で鳴らすバンドの面々が活動をともにするというのもじつに興味深いのですが、出てくるサウンドもまた魅力的なものでした。siraphが立ち上がるきっかけは今から二年ほど前。Annabelさんが2014年にリリースした2ndアルバム『TALK』に蓮尾氏が"未完成な星の住人"、照井氏が"カラのなか"の作編曲でそれぞれ参加。その後、Annabel(band set)としてレコ発ツアーを展開し、2015年春のM3でAnnabel名義でリリースされた2曲入りシングル「然う然う、の雨」が、実質的にsiraphとしての作品でした。六曲を収める『siraph』の楽曲は、"時間は告ぐ" "thor" "カーテンフォール"を蓮尾氏、"in the margin" "linotype" "想像の雨"を照井氏が担当。"想像の雨"は「然う然う、の雨」に収録されていた楽曲でもあります。ポストロック、マスロック、エレクトロニカを消化しつつトリッキーに可変するバンドサウンドと、そこに溶け込むようなAnnabelさんのヴォーカルが素晴らしい化学反応をみせており、バンドとしての今後の発展にますますの期待をしたくなります。





「SFP×ハイスイ×Annabelら実力派たちの初期衝動、siraph本格始動」
(ONE TONGUE MAGAZINE|2016.06.11)

http://www.siraph.com/

2016年6月11日土曜日

八年の歳月を吹き飛ばす、エレクトロ・プログレッシヴ・ロックの金字塔 ― FROST*『Falling Satellites』(2016)

Falling Satellites
Falling Satellites
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Frost
Inside Out U.S. (2016-05-27)
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http://www.insideoutmusic.com/newsdetailed.aspx?IdNews=16843&IdCompany=8

 ジェム・ゴドフリー率いるイギリスのプログレッシヴ・ロック・バンド フロスト*の、『Experiments in Mass Appeal』以来、実に八年ぶりとなるオリジナルフルアルバム。この間にジェムは結婚して四人の子のパパになり、本業もふくめて多忙を極めていたとのこと。まずは粘り強くレコーディングを続けたジェムへの感謝、そしてアルバムの完成を寿ぎたいです。ラインナップはジェム(keyboard, vocal, etc)、ジョン・ミッチェル(vocal, guitar)、ネイザン・キング(bass)、クレイグ・ブランデル(drums)。八年ぶりのスタジオアルバムとはいうものの、その間にはアメリカのプログレフェス「RoSfest」出演時の音源にスタジオ録音の新曲"The Dividing Line"をプラスした二枚組アルバム『The Philadelphia Experiment』(2010)、ウェールズのスタジオで行われたセッションに、ジェム氏の自宅スタジオでのアコースティック・セッションの映像と音源を収録したDVD&CD『The Rockfield Files』(2014)のリリースがあり、キレとダイナミズムの増したパフォーマンスで彼らの良好な「途中経過」をみせてくれましたし、バンド周辺ではジョン・ミッチェルが新たなソロプロジェクト LONELY ROBOTを立ち上げるなど、嬉しいニュースもありました。




 イントロダクション"First Day"からの"Numbers"は、待ちに待ったアルバムへの期待感に見事に報いてなお余りある、ダイナミックなキラーチューン。畳み掛けるコーラスのハーモニー、込み入っているようで、おそろしく抜けのよいアレンジ。この曲だけでも、本作が過去二作の延長線上ではないということを知らしめてくれます。続く"Towerblock"は、ジェム・ゴドフリーの音楽的嗜好とプロデューサー業のフィードバックを強く感じさせる一曲。ダブステップ/EDMをガッツリと組み込み、持ち前の太いサウンドがよりいっそう弾ける仕上がりです。ちなみに氏はTom Bellamy(ex. The Cooper Temple Clause)、Eddy Temple Morris、Paul Mullenによるエレクトロ・ロック・バンド LOSERSの2ndアルバム『...And So We Shall Never Part』(2014)のミックスとプロデュースに携わっており、そのことを思い出しました。ジェムとジョンの共作による"Signs"は、めくるめくバンドサウンドはそのままに、ジョン・ミッチェルのヴォーカルを存分にフィーチャーしたメロディック・ロック。"Lights Out"は2014年の夏ごろにジェムのsoundcloudアカウント(現在は消滅)で短期間こっそり公開されていた曲。トーリ・ビューモント(過去には小室哲哉『Digitalian Is Remixing』にバッキングヴォーカルとして参加しています)のコーラスを得た、しっとりとしたバラードです。




 そして、本作のハイライトとなる"Sunlight"へ。一曲二十五分の大曲だったデビューアルバムの"Milliontown"を意識しつつも、それとは別の方法論でつくりあげられた、六部構成/総尺三十二分にわたる大作組曲です。第一パートの"Heartstrings"は前述の『The Rockfield Files』にも収録されていた楽曲ですが、アレンジ/ミックスは別物。楽曲展開も一分半ほど長くなり、シンフォニックなブリッジで第二パート"Closer to the Sun"へ。そしてここではジョー・サトリアーニがギターソロで客演しています。2012年のG3ツアーのサポートキーボーディストをジェムが務めたことが縁となっての参加で、やはりというか、バンドのシャープなサウンドとサトリアーニの流麗なプレイは相性がバツグンです。第三パート"The Raging Against the Dying of the Light Blues in 7/8"、は、そのタイトル通り七拍子を基調としたプログレッシヴ・メタルチューン。ヴァイオリンで客演しているのは、ゲームミュージックコンポーザーでありヴァイオリニストのマーク・ナイト。ハイテンションで惜しげもなくアイデアを吐き出しつながら、シームレスに第四パート"Nice Day fot It"へ。"Heartstrings"のメロディラインもリプライズしながら高密度のソロパートで加速度的にグイグイと突き進み、カタルシスをもたらしてくれます。そして、丸ごとアンビエントな第五パート"Hypoventilate"と、ピアノとヴォーカルによるシンプルなバラード仕立ての第六パート"Last Day"で、たっぷりの情緒とともに締めくくります。圧巻の構成、圧巻の余韻。"Lantern" "British Wintertime"の二曲はボーナストラック。前者は『The Rockfield Files』のアコースティック・セッションに収録されていた楽曲のスタジオ版。後者はポストロック調のドリーミーな一曲。美しいオーケストレーションとコーラスがしみじみと味わい深いです。


フォーリング・サテライツ
フロスト*
マーキー・インコーポレイティド (2016-06-22)
売り上げランキング: 6,736



 6月22日にはマーキー・インコーポレイティド/AVALONからSHM-CD仕様の国内盤でのリリースもひかえています。これまでは同社のベル・アンティーク レーベルからの輸入盤帯・解説付き仕様でのリリースでしたが、国内プレスでの流通は今回が初。また、以前よりアナウンスされていましたが、バンドは三作目となる本作をもってInside Outレーベルとの契約を終えます。次作のリリースがどこからになるのかは未定ですが、現ラインナップによる過去作の再録の構想もあり、今後もまだまだお楽しみは尽きません。そうそう、今年の7月24日は、『Milliontown』のリリース10周年を迎えるのですよ。


http://www.frost.life/
http://www.facebook.com/Official-Frost-154098904622178
https://frost.bandcamp.com/


EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH JEM GODFREY OF FROST*!!
(from Marunouchi Musik Magazine|2016.05.12)
インタビュー記事(日本語)

FROST*『The Rockfield Files』(2013)
FROST*『The Philadelphia Experiment』(2010)
FROST*『Experiments in Mass Appeal』(2008)
FROST*『Milliontown』(2006)
Lonely Robot『Please Come Home』(2015)
FROST*の前身バンド「FREEFALL」の楽曲が、元メンバーのsoundcloudにて多数公開中
FROST*のジェム・ゴドフリーも関与のLOSERSのアルバム『...And So We Shall Never Part』が4月4日にリリース

2016年6月7日火曜日

デンマーク発のクレズマー/チェンバー・フォークサウンドの魅力に酔いしれる ― AFENGINN『OPUS』(2016)

 クラリネット、マンドリン、ヴァイオリン、マリンバを主体にしたデンマークのクレズマー/チェンバー・フォーク系バンド アフェンジンの6thアルバムとなる『Opus』が、4月29日にリリースされました。ワールドミュージックの多様性と、ポスト・クラシカルのひんやりとした空気を兼ね備えたハイブリッドなフォークサウンドで全編が貫かれております。




 バンド名の「AFENGINN」は、古ノルド語で「酔い」と「強さ」を意味する語。ともにコペンハーゲンの大学で音楽理論を学んでいたキム・ラファエル・ナイベルグ(フィンランド出身)と、ルネ・コフォードの二人を中心として2002年に結成。ノルウェーのKaizers Orchestra、フィンランドのALAMAAILMAN VASARAT、イギリスのThe Tiger Lillies、アメリカのGOGOL BORDELLOなどのフォーク・ミクスチャー系のバンドの影響を取り込みながら、2003年にデモEP「Tivoli Invaliid」を制作し、翌2004年にアルバム『Retrograd』でデビュー。多くの管弦楽器奏者を迎えて制作された同作は本国の音楽賞のワールドミュージック部門を受賞。間を置かずして2006年に2ndアルバム『Akrobakkus』を発表し、バンドの知名度はさらに上がります。その後、ポーランド出身のベーシスト アンドレイ・クレジニウクが脱退し、セッションギタリストのアシュケ・ジャコビーが後任に加入。ニューヨークのクレズマー・ブラスロックバンド The Klezmaticsのコンポーザー/トランペッターであるフランク・ロンドンとの海を渡っての共演を経て、2008年に3rdアルバム『Reptilica Polaris』を発表。同作ではコーラス隊やヴォーカルを大々的にフィーチャーし、翌2009年の4thアルバム『Bastard Ethno』では室内楽的サウンドとポストロック色を強めるなど、意欲的なスタイルでの作品が続きました。その後、結成10周年記念ライヴをふくむ各国のツアーや、本国のバレエ団(Cross Connection Ballet Company)とのコラボレーションにしばらく注力し(その間、アシュケが自身の活動をメインにしたいとのことで脱退)、2013年に5thアルバム『Lux』を発表。大編成のコーラス隊とマリンバ/ヴィブラフォン奏者を帯同してのライヴ・コラボレーション「CHOIRNEVALE」も立ち上げています。リリース後、長年活動をともにしたルネが脱退するという大きな転機を迎えますが、最新作『Opus』では、ガンナー・ハル、サミュエル・ハルクヴィストといった北欧ジャズアーティストのレコーディングに参加していたクヌート・フィンスラッドと、ミクスチャーポップバンド Danjalのウルリク・ブロフウスのふたりのドラマーを後任に据え、ヤン・ティルセンとの仕事でも知られるオラヴァ・ヤクプソンをゲストヴォーカルに迎え、レコーディングが行われました。



http://www.afenginn.dk/
https://facebook.com/afenginn
https://www.youtube.com/user/AfenginnTube
最新作をのぞき、バンドのこれまでのカタログは公式YouTubeアカウントで全曲アップロードされています。

Afenginn: a RootsWorld interview

2016年6月5日日曜日

ダークなチップチューンサウンドに没入しつつ、井戸の底の底の底を目指せ ― Eirik Suhrke『Downwell OST』(2015)



http://www.downwellgame.com/

 Ojiro Fumoto(もっぴん)氏制作による、2Dローグライクアクションシューティングゲーム「Downwell」は、弾丸やビームを発射する「ガンブーツ」を履いた主人公が、自動生成マップの井戸の下へ下へと、障害物や敵を退けながら潜り続けていく、シンプルな操作性と驚異的中毒性を誇る一作。リリースされるやいなや世界中で爆発的反響を巻き起こし、5月末にはPS4/PS Vita版も配信されたばかり。同作の楽曲を手がけるのは、ノルウェー・オスロ出身のコンポーザー Eirik Suhrke。低音のグリグリと効いたダークなチップチューンサウンドもまた、プレイヤーをじわじわとトランス状態へと誘う仕上がり。サウンドトラックはリミックス/アレンジヴァージョン5曲をふくむ全14曲を収録しています。完全にコズミック・シンセサイザー・インストと化した"Gunboots"といい、ボソボソとした日本語のモノローグも入った"jpeg optimizer ver. 0.2 ~水中夢~"といい、アレンジヴァージョンではさらにディープな方向性が強まっています。また、アンビエントなリミックス"Limbo var. 1" "Limbo var. 2"は、エレクトロユニット Ilkae(イルカエ)が手がけています。





 Eirik Suhrke氏は1988年生まれ。disasterpeace(Rick Vreeland)氏とともに2007年にインディーズチップチューンレーベル「II(PAUSE)」を立ち上げ、2013年の運営終了までに数々のアーティストの楽曲を世に送りだしました。自らも「Phlogiston」名義でコンピレーションアルバムに参加しているほか、作曲を手がけた「Warlock Bentspine」(2010)、「Super Crate Box」(2010)、「Spelunky(XBOX 360版)」(2012)などのインディーゲームのサントラが同レーベルよりリリースされています。2013年には「Hotline Miami」のサントラに楽曲("A New Morning")を提供し、「Ridiculous Fishing」のサントラを担当。その後、各国のゲームミュージックコンポーザーが所属するBrave Wave Productionsのコンピレーションアルバム『World 1-2』 『Year One』 『In Flux』 『Miyajima』にも楽曲提供もされています。一方で、彼はチップチューン/プログレバンド Pajjamaのメンバーとしても活動しており、これまでに二枚のEP(『Starch』 『Jane Papaya』)と一枚のアルバム(『Karakasa』)をリリースしていることも付け加えておきます。かなりエクスペリメンタルな路線です。






「Downwell」クリエイターズインタビュー”前例があまりないから、開発を通して理解していった感じですね”
(from GAME・SCOPE・SIZE|2016.01.24)

PS4/PS Vita版「Downwell」が配信開始。井戸をひたすら落ちる2Dアクション
(from 4gamer.net|2016.05.26)

http://www.strotch.net/