2017年2月28日火曜日

リリース情報・備忘録 2017年2月






















































































2017年2月25日土曜日

東京ゲーム音楽ショー2017: 中潟憲雄氏LIVE、菊田裕樹氏LIVE 覚え書き


http://www.88nite.com/tgms2017/

 ゲームミュージックの祭典として毎年の恒例になりつつある「東京ゲーム音楽ショー」。今年は途中で会場入りして途中で会場を後にしたので滞在時間は三時間ほどだったのですが、今回も濃密な時間を過ごすことができました。以下は買ったものと、中潟憲雄氏のライヴと菊田裕樹氏のライヴの覚え書きです。


▼買ったもの

①中潟憲雄氏による「仮免ライダークロノス」のサントラ
②川田宏行氏の1stミニアルバム『hinemosu yomosugara』
 ③菊田裕樹氏率いるANGELICFORTRESSの最新作『TRISMEGISTUS』
④山田一法氏率いるSENSORSのミニアルバム『戯楽惑溺症候群』




▼中潟憲雄 / AQUAPOLIS LIVE
(2/25 15:15~)

 素晴らしかった。中潟氏が80年代に活動していたプログレッシヴ・ロック・バンド「アクアポリス」のメンバーが勢揃いしていてさらにビックリ。バンドメンバーはAQUAPOLISの歴代メンバー+αで、中潟氏(kbd)、桜井良行氏(b)、三苫裕文氏(g)、竹迫一郎氏(ds)、川上達朗氏(ds)、菅野詩郎氏(ds)、なかやまらいでん氏(vo)。ドラムが三人入れ替わるという変則的ライヴでした。

 1曲目は「サンダーセプター」メドレー。竹迫氏が数十年前に使っていたというシモンズのドラムも登場。2曲目の"Day Break"はなんと新曲。ドラムはアクアポリスの二代目ドラマーの川上氏に交代。共にバリバリのインストハードフュージョンでした。3曲目は、フォークシンガー志望だったというナムコの小野浩(Mr.ドットマン)氏に中潟氏が曲を書き、弓達公雄氏(ワンダーモモのプログラマー)が歌詞を書いたというフォーク・ソング(タイトル失念)。一転して70年代ムードに。当初は小野氏本人がステージに立って歌う予定だったそうですが、本日は仕事の都合により来られないとのことで、なかやまらいでん氏が代役としてヴォーカル参加。なかやま氏、さすがの美声でした。ラストの4曲目は、1988年のラジアメ企画でのライヴ以来となる 「源平討魔伝」メドレー。三人目のドラマーはなんと、ネガスフィアやKBBなど数々のプログレバンドでプレイされている菅野詩郎氏。非常にパワフルな長尺メドレーでした。




 そして、スーパースィープの人から、源平討魔伝30周年記念CDがリリースされ、今度刊行される徳間書店の〈GAMEgene〉第三号に中潟憲雄氏と高橋由起夫氏の対談が収録されるとのアナウンスがあり、また、会場で配布されていたフライヤーには「作曲家・中潟憲雄によるバンド「AQUAPOLIS」によるアレンジバージョンが収録決定!」とあり、さらに衝撃でした。アクアポリス復活!

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 会場で購入した中潟氏のCD『仮免ライダー クロノス ORIGINAL FICTION PICTURE SOUNDTRACK』は、お蔵入りになったというスマホ用ゲームのBGMが収録された一枚。源平討魔伝や超絶倫人ベラボーマンで聴かせた中潟節はもちろん健在で、地続きであり地平の先のサウンド。ヴォーカル入り主題歌もふくめて再構成した「完全版」を出す予定があるとのことなので、楽しみです。

 ちなみに、中潟氏のアクアポリスの80年代の活動については、以前ブログに書きました。
『源平討魔伝』『暴れん坊天狗』の中潟憲雄氏が80年代に率いたプログレッシヴ・ロック・バンド「AQUAPOLIS」の軌跡

  アクアポリスの80年代の楽曲が唯一CDで収録されているコンピレーションアルバム『伝説の彼方~東京シンフォニック・シンドローム』 (1994)に同じく収録されていたバンド GREENのドラマーが菅野氏でした。また、竹迫氏、三苫氏、桜井氏はアクアポリスの活動休止後にNOAというジャズ・ロック・バンドでしばらく活動されていたのですが、こちらも近年、復活を果たしております。再編NOAには、PRISMの現キーボーディストであり、作編曲家の渡部チェル氏もメンバーとして名を連ねております。




▼菊田裕樹 / ANGELICFORTRESS LIVE
(2/25 17:15~)


 菊田氏の朗読による楽曲コンセプト・ポエムのあとにバンド(ANGELICFORTRESS)の演奏が繰り広げられるという構成。リハーサルはほとんどなしのぶっつけ本番だったそうですが、技巧派メンバーによるバンド演奏の醍醐味たっぷり、恐ろしい強度と熱量を誇る手に汗握るパフォーマンスでした。ラインナップは菊田氏(poem)、佐々木秀尚氏(g)、小林修己氏(b)、大沼あい氏(kbd)、今井義頼氏(ds)。最新アルバム『TRISMEGISTUS』からの選抜メンバーです。

 今井義頼氏は数々のアーティストやバンドのセッションに参加されているほか、佐々木秀尚氏と共に「有形ランペイジ」のメンバーでもあります。小林修己氏はグルーヴィーな技巧派バンド GRAVITATIONAL FORCE FIELDでも活動中。2014年にミニアルバムを出されています。大沼あいさんはツインキーボード・デュオ NEO-ZONKで2015年にアルバムを出されており、軽やかで変幻自在なセンスが味わえます。

 演奏曲は"Dark Schizopherenia" "Energy Blaster"の二曲。朗読されたイメージポエムは、前者が「孤島」「天然の要害」、後者が「血のさだめ」といった感じでした。前回の東京ゲーム音楽ショー2016での菊田&佐々木デュオでのパフォーマンスも凄まじかったのですが、今回さらに技巧派揃いのフルバンドライヴになったことでさらに手に汗握る醍醐味がアップ。今井氏のドラムは手数が多い上に一音一音が重くて、生で聴いてとんでもなくパワフルでした。"Energy Blaster"での各パートのソロの応酬も圧巻の一言。



『ANGELICFORTRESS TRISMEGISTUS』は2083オンラインショップで販売中。また、ANGELICFORTRESSの1stアルバム『Angelicfortress』(2015)と、2ndアルバム『DOUBLE HELIX』(2016)は先ごろ菊田氏の公式bandcampアカウントでデジタル配信が開始されています。


2017年2月23日木曜日

トボけたユーモアとゴッタ煮感のフレンチ・サイケ・ポップ集団 ― AQUASERGE『Laisse Ça Être』(2017)




 フランスのアクアセルジュは、フォーク・ポップ・シンガー フレデリック・ジーンのバンド HYPERCLEANのメンバーであった ベンジャミン・ギルバート (guitar)、ジュリアン・ガスク (keyboard) 、ジュリアン・バルバッガロ(drums)の三人によって2005年に結成されたサイケデリック・ポップ・グループ。ライヴではトリオのみならず、その時々によってクインテット、オクテットと編成を変えることも多々あり、バンドというよりはミュージシャンの集合体という立ち位置での活動を行っています。2009年に、それまでリリースしたEPやシングルの楽曲をまとめたアルバム『Un & Deux』をリリース。その後、オードリー・ジネステット(bass)と、ベンジャミンの血縁であるマノン(clarinet)が合流。2010年発表の2ndアルバム『Ce Très Cher Serge - Spécial Origines』では、ACID MOTHERS TEMPLEの河端一氏(彼らとは旧知の仲)やBen's Symphonic Orchestraのベノワ・ラルト、ベルギーのDAAUのブニ・レンスキらをゲストに迎え、そのスタイルにも多様性が見られ始めます。2014年にはマキシシングル『Tout arrive』と、3rdアルバム『A L'Amitié』を発表。ここにきてさらにヘヴィさを増し、レコメン/チェンバー・ロックの様相すら成してきました。




  クラシックなジャズやフレンチ・ポップ、映画音楽や電子音楽のエッセンスを特有のユーモアでくるんだ曲調やアレンジは、一見耳ざわりがよいようでどこか屈折していて、懐の広さが知れないたたずまい。セルジュ・ゲンズブールのアレンジャーでもあったアラン・ゴラゲールジャン=クロード・ヴァニエにも通じるしたたかなセンスも感じさせます。ちなみに、ジュリアン・ガスクはかのSTEREOLABのメンバーでもあり、ジュリアン・バルバッガロはオーストラリアのTAME IMPALAのライヴメンバーとして2012年から活動もしています。メンバーそれぞれの越境的な活動もまた見所でしょう。AKSAK MABOULのマーク・ホランデル主宰のレーベル「Crammed Discs」を通じて世界流通もされている『Laisse Ça Être』は、2016年のEP『Guerre』に続く4thフルアルバム。前作と比べると焦点をやや絞った内容ながら、軽やかにうねるブラス・ジャズ・ロック"Tour du monde"、カンタベリー・ジャズ・ロック風味な"Virage Sud"を皮切りに、ブイブイに歪ませたヘヴィ・サイケとラウンジ・ポップを気ままに行き来するかのような"Tintin on est bien mon loulou"や、かと思えば瀟洒な風が吹き込むミニマル・チェンバー・ポップチューン"Si loin si proche"が顔を出すなど、佳曲多し、です。




 「Interview – Audrey Ginestet from Aquaserge」
(from SFSONIC|2017.02.02)

http://aquaserge.com/
https://aquaserge.bandcamp.com/

2017年2月20日月曜日

新居昭乃&保刈久明コンビとともに創りあげられた大傑作コンセプトアルバム ― 三重野瞳『23.4』(1999)

 近年は「赤尾でこ」名義でアニメの脚本家・シリーズ構成でおもに活躍されている三重野瞳さん。彼女の1995年のデビューアルバム『Ki Ra Ri Pi Ka Ri』については少し前にブログに書きましたが、その後のアルバムについても触れたいと思います。1stからわずか七ヶ月後にリリースされた2ndアルバム『All Weather Girl』は、引き続き根岸貴幸氏が全曲の編曲を担当し、前作とほぼ同じ演奏メンバーのもとに制作された作品。manzoこと坂下正俊氏によるハードポップチューンが二曲収録されてもいます。1997年リリースの3rdアルバム『ドラムカンサラダ』は、谷脇仁美、和田弘樹、高田耕至、立花瞳、中野礼翔、三保理を作曲陣に迎えた作品。1stの路線を踏襲したメロディック・ハード・ポップ・チューンであり、アニメ「超魔神英雄伝ワタル」のオープニングテーマとなった"ひとつのハートで"や、三重野さん自ら作詞作曲に挑戦した"バイバイ☆ダーリン"が収録されています。演奏では、過去二作でも参加されていた松原正樹氏とエルトン永田氏が本作では全面的に参加。1998年リリースの4thアルバム『ベリー☆ロール』では、三重野さんの作詞曲が四曲収録。作曲陣は高田耕至、水野雅夫、中野礼翔、谷脇仁美、立花瞳、Love Palette、泉川そら。ギタリスト陣は松原正樹、増崎孝司、土方隆行、梶原順、松下誠といった強力な顔ぶれが揃いました。そして、1999年にリリースされた5thアルバム『23.4』が、今回ご紹介する作品です。


23.4
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三重野瞳
ビクターエンタテインメント (1999-07-23)
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 初のコンセプトアルバムであり、全曲ノンタイアップ(先行シングル「ガリレオの夜」は自身のラジオ番組のテーマソングではありましたが)。通常盤と、三重野さんの絵と文がしたためられたミニ仕掛け絵本カード「それは甘い甘いつくり話」付き初回限定盤の二種でリリースされた本作。この仕掛け絵本もかなり凝ったつくりになっており、力の入りようがうかがえます。さらに、彼女が敬愛する新居昭乃さんが、保刈久明氏とともに作編曲や演奏で全面的に参加され、ガッチリとタッグ(トリオ)を組まれているところも本作の大きなポイントです。演奏陣では今堀恒雄、堀越信泰、鈴木智文(guitar)、宗秀治、渡辺等(bass)、佐野康夫、宮田繁雄(drums)、鶴来正基(organ)、坂元俊介(synthesizer operation)、桑野聖カルテットと、新居さんや菅野よう子さん/シートベルツ周辺メンバーが多数参加した、これまた超強力な布陣。




 アルバム冒頭を飾る"ウソの日"の詞は、三重野さんが高校三年のころに書いたものとのこと。能天気なようで闇を感じるキャラクターをドライヴ感のあるサウンドにのせて演じています。たっぷりとリードするファズギターと抜けと歯切れのよいドラムスとがヴォーカルと絶妙にマッチする"ドライブ ドライブ"は、「それは甘い甘いつくり話」に登場するキマグレ姫とワガママ王子のストーリーに基づく一曲。しっとりとした幻想的ポップ"花かんむり"のどこかアンニュイなムードや、"ビーシュ" "君を着て"のオルタナ・ポップ感など、新居さんが翌年に発表される傑作アルバム『降るプラチナ』に通じるところが多いのも興味深いところです。また、オルゴールアレンジ、リプライズをふくめて都合3ヴァージョンが収められる"ガリレオの夜"は、のちに新居さんのアルバム『Blue Planet』(2012)でセルフカヴァーされます。三重野さんの朗読が保刈氏の演奏/コラージュの上で淡々と進行するタイトルトラック"23.4"は、冒頭の「ごめんなさい、ずれてしまいました」の印象的な一文に導かれるように、甘やかで秘めやかで、そしてちょっぴり残酷な顛末が描かれた奇妙な味わいのストーリー。三重野さんのセンスが静かに滲み出ており、忘れ難い染みとなってこびりついてきます。ラストは桑野聖カルテットが物悲しい旋律を奏でる"最後の蜜"で幕を閉じます。コンセプト、楽曲、演奏、いずれもスキがなく、間違いなく彼女の最高傑作でありましょう。

 また、1999年は三重野さんにとって一つの節目の年でもありました。3月にはシングルコレクション『真空パック』がリリースされ、『23.4』のリリースと同月には主婦の友社からオフィシャル・ガイドブック『三重野本』が刊行されています。この『三重野本』はデータ面でもパーソナリティ面でも非常に充実した内容であり、彼女のバイオグラフィーやディスコグラフィー、デビュー前後のことなども含む語り下ろしのインタビューなど、彼女の多岐に渡る活動が俯瞰できる良書です。


三重野本―HITOMI MIENO VISUAL ARTIST BOOK
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――シングルコレクションアルバムを作り終わって、なんとなく一段落っていうか。さぁ、次に何をしましょうかっていう時に、『ガリレオの夜』があって。それは去年録ったんだけど、そのレコーディングをした時に、その世界がすごく気に入っちゃったのね。それが新居昭乃さん作詞・作曲だったんだけど、昭乃さんの歌も前からすごい好きで、私、妖精とか妖怪とか鬼とか好きだから、昭乃さんの世界って結構そっち寄りだなと。だから実際、自分がその昭乃さんの世界に片足突っ込んだような感じの歌を歌うことが、すごい自分の中でピッタリはまったっていうか。“ああ、なんかちょっと、私の今、妖怪だとかなんとか言ってる世界に近いかも”っていうので、この曲の延長線上のアルバムが作りたいなぁと思い始めたのね。結構初めて、しっかりしたコンセプトで、企画っぽい、思いきりどこかの世界にドップリ浸かった感じのアルバムを作りたいなぁと思って。――

主婦の友社刊『三重野本』
三重野瞳ロングインタビュー「過去 現在 未来」より


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三重野瞳『23.4』


初回限定盤[VIZL-40|1999.07.23|ビクターエンタテインメント]
通常盤[VICL-60396|1999.07.23|ビクターエンタテインメント]


01. ウソの目
(作詞:三重野瞳/作編曲:新居昭乃)
新居昭乃(program)
坂元俊介(program & synthesizers operation)
佐野康夫(drums)
宗秀治(bass)
堀越信泰(guitar)
三重野瞳(backing vocal)


02. ビーシュ
(作詞:三重野瞳/作曲:新居昭乃/編曲:保刈久明)
保刈久明(program, guitar)
坂元俊介(synthesizers operation)
佐野康夫(drums)
宗秀治(bass)
堀越信泰(guitar)
新居昭乃、三重野瞳(backing vocal)


03. ガリレオの夜 (Orgel)
(作曲:新居昭乃)


04. ガリレオの夜
(作詞・作編曲:新居昭乃)
新居昭乃(program, piano, backing vocal)
坂元俊介(synthesizers operation)
宮田繁男(drums)
渡辺等(bass)
鈴木智文(guitar)
鶴来正基(organ)


05. 23.4 (Story)
(文:三重野瞳)
三重野瞳(sample materials)
保刈久明(all other instruments)


06. ドライブ ドライブ
(作詞:三重野瞳/作編曲:新居昭乃)
新居昭乃(program)
坂元俊介(program & synthesizers operation)
佐野康夫(drums)
宗秀治(bass)
堀越信泰(guitar)
三重野瞳(backing vocal)


07. 花かんむり
(作詞・作編曲:新居昭乃)
新居昭乃(program, keyboard, backing vocal)
坂元俊介(synthesizers operation)
佐野康夫(drums)
宗秀治(bass)
今堀恒雄(guitar)
三重野瞳(backing vocal)


08. 君を看て
(作詞:三重野瞳/作編曲:新居昭乃)
新居昭乃(program, keyboard)
坂元俊介(synthesizers operation)
宮田繁男(drums)
宗秀治(bass)
今堀恒雄(guitar)
保刈久明(backing vocal)


09. ガリレオの夜 (Reprise)
(作編曲:新居昭乃(mono))
新居昭乃(piano)
三重野瞳(scat)


10. 最後の蜜
(作曲:三重野瞳、新居昭乃/編曲:新居昭乃)
三重野瞳(cassette tape)
桑野聖Quartet(quartet)


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http://hitodama.info/

2017年2月15日水曜日

高経験値に裏打ちされた、骨太の歌ものメロディック・ロック ― SEMISTEREO『Trans Earth Injection』(2017)

Trans Earth Injection
Trans Earth Injection
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FREIA Music (2017-02-09)


 古くよりファン活動が盛んであり、イギリスのネオ・プログレの薫陶を受けて多くのメロディック・ロック系バンドがデビューし、マルチな才能を発揮するポップ・ミュージシャンも次々と輩出。また、アルイエン・ルカッセン率いるAYREONはいまや本国で圧倒的な人気を誇り、世界的に押しも押されぬプログレッシヴ・メタル・プロジェクトにまで成長するなど、オランダのシーンは長きに渡って活況を呈しております。同国の中堅であるKNIGHT AREAやTHE AURORA PROJECT、ネオ・プログレ影響下にあるチリのバンド AISLES、セバス・ホーニングやジュースト・マグレヴといったマルチミュージシャン、ゲスト大量招聘型のプロジェクト ALARIONなどを抱える「FREIA MUSIC」は、そんな同国のシーンで最近グイグイきているレーベルのひとつ。そして、同レーベルと最近契約を交わしたバンドが、今回紹介するセミステレオです。2006年に結成され、これまでにレッチリやリヴィング・カラー、MARILLIONやRIVERSIDEなどの前座を務めてきたほか、『As The Pressure Drops』(2007)、『Re-Ignite』(2015)の二枚のEPと、『Welcome, You Knight!』(2009)、『Semistereo』(2012)の二枚のアルバムをリリースしています。

 SEMISTEREOのサウンドはポストロック、ポストメタルからの影響を昇華したオルタナ・プログレであり、アメリカのA Perfect CircleやイギリスのOCEANSIZE、ポーランドのRIVERSIDEなどが引き合いに出せそうですが、各メンバーはミクスチャーバンド T-NailedやTree Funk Concept、ロックバンド Salty Cheek、プログレッシヴ・メタル・バンド A Day's Work、テクニカル・デスメタルバンド Apophysなどでも活躍しており、各人の経験値の高さもポイントでしょう。ヴォーカルのポール・グランドルフはアルイエン・ルカッセンのライヴメンバーでもあります。ロケットエンジンを大写しにしたジャケットも鮮烈な本作『Trans Earth Injection』は、前作から曲数をさらに絞った全7曲。インストパートも充実した10分越えの"The Search" "Sin"、シネマティックな演出やホーンセクションを交えたポストロックチューン"35 Dollar Special"を配しつつ、じっくりとした作り込みの歌ものに磨きをかけた一枚。"Loneliness At The Door" "Your Drama"は丁寧に塗り重ねていくかのような展開で静かなるドラマを味わわせてくれる、本作の精髄ともいえる骨太の楽曲です。ミキシング/マスタリングはTEXTURESの元ギタリストであり、EPICAやCIRRHA NIVAやIzegrimなど、本国の数多くのバンドを手がけるヨッヘム・ジェイコブズによるもの。







http://semistereo.nl/
https://www.facebook.com/Semistereo
https://semistereo.bandcamp.com/
http://www.youtube.com/semistereochannel

2017年2月12日日曜日

鮮やかなる音のピュアイリュージョン ― TO-MAS(伊藤真澄&ミト&松井洋平)『フリップフラッパーズ オリジナルサウンドトラック』(2017)

フリップフラッパーズ 1 [Blu-ray]
Happinet (2017-01-06)
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 2016年10月から12月にかけて放送された、Studio 3Hz制作、押山清高監督によるオリジナルアニメ「フリップフラッパーズ」のサウンドトラック。アニメ本編は万難を排して全話一気見しました。めちゃくちゃ素晴らしかったです。うかつなことを書くとネタバレになるので書きませんが、オリジナル作品でここまでやってくれるのか! と。メインキャラクターのココナとパピカそしてヤヤカの関係性、怒涛の展開と情報量そして贅沢な音楽と何もかも極上であり、六話以降から最終話まで完全に釘付けになり、掛け値なしに大傑作という結論に至り、息を引き取ることをお約束いたします。数多のピュアイリュージョニストたちによる「とにかく第三話まで観てくれ」という言葉はまったく正しいのだけれども、個人的にはその倍欲張って「とにかく六話まで観てくれ」と、言いたくなります。六話を以ってアナタの感情は静かに爆発し――からの七話で背負い投げを食らわされ、アナタは最後まで視聴を止めることができなくなります……とにかく観てくれ、とにかく。
http://www.b-ch.com/ttl/index.php?ttl_c=5405
https://www.youtube.com/channel/SWrf_vKIW_JAs





 本作の劇伴を手がけるのは、90年代から数々のアニメ劇伴作品を手がけられている大御所 伊藤真澄さん、スリーピースバンド クラムボンのフロントマンであり、「スペース☆ダンディ」「心が叫びたがってるんだ。」など、アニメ劇伴方面での活躍も近年著しいミト氏、「ウィッチクラフトワークス」「トリニティセブン」などの劇伴を手がけてきたTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDのメンバーであり、作詞家としても活躍されている松井洋平氏、以上の三人からなるユニット、TO-MAS (TO-MAS SOUNDSIGHT FLUORESCENT FOREST)。同ユニットでの担当作品は「ももくり」(2015)、「彼女と彼女の猫」(2016)に続いて三作目となります。前二作はともにショートアニメであり、スコアもストリングスやピアノ主体の静かめのものでしたが、本作はユニット初の長編テレビシリーズかつ、動きに動きまくる活劇アクションモノで、「ピュアイリュージョン」といういわばなんでもアリの世界観であるため、楽曲のジャンルやヴァリエーションはこれまで以上に多岐に渡っており、三人の音楽的エッセンスをふんだんに投入した内容です。


TVアニメ『フリップフラッパーズ』オリジナルサウンドトラック
TO-MAS Chima
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 二枚のディスクはそれぞれ《Pure Side》 《Illusion Side》と銘打たれ、各楽曲には英語・イタリア語・フランス語・ドイツ語・チェコ語・ヒンディー語・フィンランド語・エスペラント語のサブタイトルが付されています。シンガーソングライターのChimaさんをフィーチャーしたエンディングテーマ"FLIP FLAP FLIP FLAP"も同ユニットが全面プロデュースを手がけており。伊藤さんの大本領といえるど真ん中のシンフォニック・ポップスが花開いた一曲。ストリングスアンサンブルを贅沢に使っているので、ヴォーカル入りで聴いても、インストヴァージョンで聴いても美味しい。「メビウスの輪」をイメージしたという同曲は、サントラではピアノソロによるスロウヴァージョンも収録されており、また違った表情を聴くことができます。同様に、"Serendipity"(オープニングテーマ)は"Serendipity (Emotion)"で、"OVER THE RAINBOW"(第十三話挿入歌)も、"虹の彼方へ" "側に…"で、それぞれアコースティック・アレンジがなされております。


TVアニメ『フリップフラッパーズ』OP主題歌「Serendipity」
ZAQ
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TVアニメ『フリップフラッパーズ』ED主題歌「FLIP FLAP FLIP FLAP」
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 伊藤さんのスコアは、バッハ"ゴルドベルク変奏曲 BWV988"のアレンジや、"寂しさ"などのピアノスコア。本編にたびたび登場する「あるシーン」で耳にすることになる、寂寥に満ちた"遠い呼び声"。クライマックス感をこの上なく演出する"絶体絶命" "悲しき争い" "暴走"。ふんわりした曲調の"穏やかな朝" "空飛ぶ期待感" "ピュアイリュージョン"。軽い脱臼感のあるチェンバー・ポップな"ユクスキュル" "照れ笑い"など、21曲。また、メインテーマである"フリップフラッパーズ"や、"おしゃべりの時間"でのトイピアノの演奏は、伊藤真澄さん、良原リエさん、 コトリンゴさん、Babiさんの四人からなるグループ「toi toy toi」によるものです。

 松井氏のスコアは9曲。シリアスでシャープな"時の逆流" "別世界"、コミカルな"へんてこおばかさん"、テクノポップ、デジロックな"おかしな実験" "一進一退"など、エレクトロタッチなものが中心。また、作詞も手がけられた"LET'S FLIP FLAPING!"(第八話挿入歌)は、往年の特撮テーマソングよろしくド直球にヒロイックな一曲。川村ゆみさんのしなやかでパワフルなヴォーカルのアツさといい、そのインパクトたるや絶大で、本編での使われ方も(いろんな意味で)絶妙でしたし、サントラのなかでもこの曲の存在は(いい意味で)浮いています。

 mito氏のスコアは、キュートなポップ/ロックチューン"通学路" "愉快な日々"、アコーディオンとアコースティックギターによる"小さな友情"、アコギとパーカッションによる"素敵な思い出"、ブラスとエレクトロのハリのあるマッチングも楽しい"フリップフラッピング!"や、通称「勝利BGM」である"大逆転"などの躍動感たっぷりのポジティヴなものから、東京混声合唱団による荘厳で焦燥感のあるクワイアコーラスをフィーチャーした"悪夢"、ミニマルなピアノスコア"造られた友情"など、まさに八面六臂な19曲。第三話のマッドマックス&北斗の拳オマージュ回で流れたハード・ロック/ヘヴィ・メタル調のスコア"荒れ果てた広野" "ならず者"でのバリバリにエッジの効いたギタープレイは、ZIGGYの森重樹一氏のサポート、プロデュース、各アーティストのライヴサポート、最近では「コンクリート・レボルティオ~超人幻想~」の劇伴やEDテーマを手がけたことも記憶に新しい山本陽介氏によるもの。またとない人選です。

「ももくり」のサントラではヴォカリーズの入ったスコアがありましたが、本作では"あわてんぼ"「ズムズムズムズム……」というストレンジなスキャットや、"砂漠の村"でホーミーを聴くことができます。ホーミーの歌い手はヴォイスパフォーマンスユニット「倍音S」の尾引浩志氏、岡山守治氏のお二人によるもの。また、押山監督が口琴やディジュリドゥの音を入れて欲しいなどのオーダーをされていたとのこと。"亡霊"に参加されているディジュリドゥ奏者のアンディ・ベヴァン氏はジャズシーンで活躍されているオーストラリア出身のミュージシャンです。


TVアニメ『フリップフラッパーズ』ED主題歌「FLIP FLAP FLIP FLAP」 
TO-MAS インタビュー Vol.1&2 |リスレゾ
http://www.lisres.jp/0000003584/
http://www.lisres.jp/0000003606/


 ワクワク感を最大限に演出し、引き出してくれる、盛りだくさんの素晴らしいスコア。まさに、音による極上のピュアイリュージョンを体現した内容です。また、上記のリスレゾによるTO-MASインタビュー記事は、制作時における三者のケミストリーの絶妙さなど、いろいろと興味深い話が出てきており、必見です。「20~30代前半の子がこのスペックのプログラムを投げられたら、多分自爆すると思います。たまたま私たちみたいな中堅だからできる、無茶振りの遊びなんですよね」というミト氏のコメントが印象的です。それと、まさかミト氏の口から『宇宙海賊ミトの大冒険』の名前が出てくるとは。


http://www.flipflappers.com/
http://www.lantis.jp/artist/tomas/



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『フリップフラッパーズ オリジナルサウンドトラック

Welcome to Pure Illusion』』
LACA-94849485|ランティス|2017.01.18

DISC 1Pure Side》】

01Serendipity (Emotion) 
(作曲:ZAQ/編曲:伊藤真澄・mito

02.フリップフラッパーズ ~FLIP FLAPPERS
(作曲:伊藤真澄/編曲:伊藤真澄・松井洋平)

03.穏やかな朝 ~Rauhallinen aamu
(作編曲:伊藤真澄)

04.通学路 ~Route de l'école
(作編曲:mito

05.ちょっと憂鬱 ~Un peu mélancolique
(作編曲:mito

06.ゴルドベルク変奏曲 BWV988 ~Goldberg-Variationen BWV988
(作曲:Johann Sebastian Bach/編曲:伊藤真澄)

07.寂しさ ~Malinconia
(作編曲:伊藤真澄)

08.空飛ぶ期待感 ~Flying expectations
(作曲:伊藤真澄/編曲:伊藤真澄・松井洋平)

09.あわてんぼ ~Étourdi
 (作編曲:伊藤真澄)

10.アゼンボーゼン ~Il est décontenancé
(作編曲:mito

11.へんてこおばかさん ~Funny silly
(作編曲:松井洋平)

12.ユクスキュル ~Uexküll
(作編曲:伊藤真澄)

13FLIP FLAP FLIP FLAP (Slow-motion) 
(作編曲:伊藤真澄)

14.照れ笑い ~Le sourire embarrassé
(作編曲:伊藤真澄)

15.おしゃべりの時間 ~Temps pour bavardage
(作編曲:伊藤真澄)

16.愉快な日々 ~Ihana päivää
(作編曲:mito

17.優しい気持ち ~Sensazione di calore
(作曲:mito/編曲:伊藤真澄)

18.小さな友情 ~Poco amicizia
(作編曲:mito

19.素敵な思い出 ~Buon ricordo
(作編曲:mito

20.側に… ~Vicino a te
(作編曲:mito

21NEXT FLIP FLAPPING!
(作編曲:伊藤真澄)


DISC 2Illusion Side》】

01.遠い呼び声 ~Malproksima alvoko
(作曲:伊藤真澄 編曲:伊藤真澄)

02SerendipityTV SIZE
(作詞・作曲・歌:ZAQ/編曲:RON

03.研究室 ~Laboratory
(作編曲:松井洋平)

04Dr.ソルト ~Dr.Salt
(作編曲:伊藤真澄)

05.おかしな実験 ~Mad science
(作編曲:松井洋平)

06.時の逆流 ~Backward flow of time
(作編曲:松井洋平)

07.フリップフラッピング! ~FLIP FLAPPING!
(作曲:伊藤真澄/編曲:伊藤真澄・松井洋平)

08.ピュアイリュージョン ~Pure Illusion
(作編曲:伊藤真澄)

09.砂漠の村 ~Vesnice v poušti
(作編曲:mito

10.あわてんぼ ~ चक्कर
(作曲:伊藤真澄/編曲:伊藤真澄・松井洋平)

11.荒れ果てた広野 ~Pustá země
(作編曲:mito

12.ならず者 ~Tulák
(作編曲:mito

13.亡霊 ~Přízrak
(作編曲:mito

14.悪夢 ~Noční můra
(作編曲:mito

15.絶体絶命 ~Verzweifelte situation
(作編曲:伊藤真澄)

16.一進一退 ~Seesawing
(作編曲:松井洋平)

17LET`S FLIP FLAPPING!
(作詞・作曲:松井洋平/編曲:TO-MAS feat. 川村ゆみ)

18.別世界 ~Jiný svět
(作編曲:松井洋平)

19.暗躍の夜 ~Nuit des manœuvres secrètes
(作曲:伊藤真澄/編曲:伊藤真澄・松井洋平)

20.造られた友情 ~Gebaut freundschaft
(作編曲:mito

21.計算された双子 ~Berechnete Zwillinge
(作編曲:松井洋平)

22.迫り来る恐怖 ~Peur imminente
(作編曲:mito

23.崇高な目的 ~Edles ziel
(作編曲:mito

24.不安 ~Anxiété
(作編曲:松井洋平)

25.ノスタルジー ~Nostalgia
(作編曲:伊藤真澄)

26.悲しき争い ~Triste lotta
(作曲:伊藤真澄/編曲:TO-MAS

27.圧倒的な力 ~Überwältigende macht
(作編曲:mito

28.決意 ~Determinazione
(作編曲:伊藤真澄)

29.暴走 ~Perdo de kontrolo
(作編曲:伊藤真澄)

30.大逆転 ~Trading Places
(作編曲:mito

31.虹の彼方へ ~Oltre l'arcobaleno
(作編曲:mito

32FLIP FLAP FLIP FLAPTV SIZE
(作詞:松井洋平/作曲:伊藤真澄/編曲:TO-MAS TO-MAS feat. Chima


All Music Produced by TO-MAS SOUNDSIGHT FLUORESCENT FOREST


Musicians

伊藤真澄(piano
mitobass
渡辺等(wood bass
高桑英世(flute
森川道代(piccolo
武井俊樹(fagotto
十亀正司(clarinet
遠山哲朗(electric & acoustic guitar
佐々木史郎、奥山晶(trumpet
河合わかば、佐藤洋樹(trombone
本間将人(alto sax
toi toy toi[伊藤真澄/良原リエ/コトリンゴ/Babi](toy piano
良原リエ(accordion & toy percussion
高田みどり(vibraphone
赤池光治、木村将之(contrabass
山本陽介(electric guitar
よしうらけんじ(percussion
尾引浩志、岡山守治(khoomei & karugura
アンディ・ベヴァン(didguridoo
東京混声合唱団(quire

真部裕ストリングス:

1st violin
真部裕、押鐘貴之、川口静華、石橋尚子、
森本安弘、漆原直美、石亀協子、亀田夏絵

2nd violin
執行恒宏、伊能修、納富彩歌、
城元絢花、梶谷裕子、高木祐香

viola
坂口弦太郎、城戸喜代、二木美里、金谷理絵

cello
堀沢真己、奥泉貴圭、村中俊之、友納真緒

Music Producer:佐藤純之介(Lantis
Music Director:萩原瑠唯(Lantis
Producer:吉江輝成(Lantis
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