ゲーム・ミュージック
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シミュレーションRPGの嚆矢となった〈ファイアーエムブレム〉シリーズ(FE)第一作目であり、1990年4月にファミコン用ソフトとしてリリースされた「ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣」は、昨年、発売から25周年を迎えました。1990年5月には『ファイアーエムブレム G.S.M. NINTENDO 3』(ポニーキャニオン/サイトロン)、6月にはアキハバラ・エレクトリック・サーカス(松武秀樹/入江純)の編曲・演奏による『Toy Music 2: Fire Emblem』(東芝EMI)、9月には林有三氏のアレンジによる『ファイアーエムブレム ~キャラクターテーマ集~』(日本コロムビア)と、同作の関連CDが三つのレーベルをまたいで立て続けにリリースされているのも興味深いところです。今回取り上げる『ファイアーエムブレム G.S.M. NINTENDO 3』は、馬場由佳(現 辻横由佳)さんのオリジナル曲を、マックス・アレックス氏と、『R-TYPE II G.S.M. IREM 2』『ゲームボーイミュージック G.S.M. NINTENDO 2』なども手がけられた高西圭氏のお二人がアレンジしたもの。最後に収録されている1トラックメドレー"エンディング・オムニバス編〈オリジナルバージョン〉"のみオリジナル音源です。四曲を手がける高西氏のアレンジはシンセサイザーによる打ち込みで、原曲のイメージをオーソドックスにグレードアップさせた仕上がり。マップBGM1と戦闘BGM2をビートが効いたアレンジでトリッキーにつなげた"反撃!!"が特に聴きものです。一方、七曲を手がけるマックス・アレックス氏のアレンジは、生演奏が主体。荘厳なチャーチオルガンアレンジで聴かせる"マルスの決意"や、アコースティック・ピアノソロによる"戦線布告!!"のほか、"決死の突撃" "選ばれし者たち"では思いっきりロック/フュージョンに振り切っています。80年代以降のKING CRIMSONやYESというか、エイドリアン・ブリューやトレヴァー・ラビンに感化されたような部分もあり、アレンジャーのプログレ趣味がどこか微笑ましい。当のマックス氏のプロフィールは全くわからないのですが、本作以外でマックス氏がクレジットされた作品も見当たらないため、誰かの変名である可能性が高そうです。
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『ファイアーエムブレム G.S.M. NINTENDO 3』
CT [PCTB-00007 |ポニーキャニオン|1990.05.21]
CD [PCCB-00029|ポニーキャニオン|1990.05.21]
01. 遙かなるアリティア (オープニング)
02. マルスの決意 (各マップの始まり)
03. 戦線布告!! (マップBGM2)
04. 反撃!! (マップBGM1~戦い2)
05. 決死の突撃 (マップBGM3~戦い3~戦い1)
06. 解放~ウイニング・マーチ〈歓喜〉 (勝利~勝利の歌)
07. 選ばれし者たち (最終マップBGM・プレイヤー側)
08. 恐怖のしもべたち (最終マップ・コンピュータ側)
09. メディウス〈猛り狂うドラゴン〉(戦い4)
10. 英雄ロードマルス (勝利の会話)
11. 人々の祈り (エンディング)
12. エンディング・オムニバス編〈オリジナルバージョン〉
COMPOSED by 馬場由佳
②③⑤⑥⑦⑨⑩
ARRANGED by MAX ALEX
RECORDED at KANNONZAKI MARINE STUDIO, Mar. 1990
ENGINEERED by 三上義英
ASSISTANT ENGINEERED by HIROKAZU FUNAHASHI
PLAYER:
MAX ALEX (Keyboards & Programming)
鶴来正基 (Acoustic Piano)
成田真也 (Guitars)
KENJI SHOW (Manipulator)
①④⑧⑪
ARRANGED by 高西圭
SOUND OPERATED by TATSUO YAMAGUCHI
RECORDED at LIGHT STUDIO, Mar. 1990
ENGINEERED by HIROKI MURAOKA
ASSISTANT ENGINEERED by KOH-ICHI HOMMA
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ゲーム・ミュージック
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プログレといえば、『ファイアーエムブレム 新・暗黒竜と光の剣』のサントラのライナーノーツに掲載されている、成広通氏(FEシリーズプロデューサー)と辻横由佳さんの対談のなかで、興味深いくだりがあります。前々から感じていた辻横さんの楽曲から感じるプログレっぽさに合点がいった次第。以下、引用。
辻横: そうですね。『ファイアーエムブレム』のサウンドは、よく、オケものみたいって言われてるんですけど、実は『暗黒竜』のジャンルとしては、オーケストラでは決してなくて、基本的にはプログレッシブロックがルーツです。
成広: なかなかわからないよね。聞いた人は。
辻横: 学生のときにプログレが好きで、たくさん演奏していました。オーケストラぽく、というのは、当時のゲームが壮大なイメージの方向になっていった時代でもあるんですけど、同じく『ファイアーエムブレム』のプロデューサー、ゲームデザイナーの強い推しもあってオーケストラっぽいもの、壮大なものをという注文があったのでそういう方向を目指しました。キレイなもの=本当に美しく、お姫様=お城の上でか細く座っている、というような美しい世界観を、色でたとえるなら白や水色のイメージを求められていたんですが…それに対して私が書くものは、ジャズロックとか、ロック系で決して上品なお姫様ではなく、『暗黒竜』の色は、紫だ、と。色々な色が混ざっているというイメージで“紫”言われたのだと思います。何々風~とくくれない、ごちゃ混ぜな印象だったのかな。
――
辻横: …あの、プログレは、好きな音楽というわけではないんです。やってたというだけで…。
成広: え!? 好きでやってたんじゃないの?
辻横: 学生時代は軽音の人たちと、いかにカッコよく弾けるとか、早く演奏できるかとか、割とテクニックをみんなに披露しあうような演奏をやっていたんですよ。必然的にキーボードでもより複雑なものとか、電子楽器で新しい音を作るとかそういうところにいたのを活かしたので、まぁ好きなのは好きなんですけど。
成広: それは好きでしょ!
辻横: 今も好きと思われるとちょっと…。ここであんまりプログレって言うと、「辻横さんはプログレが好き」っていうのが定着しちゃうと思って。
成広: 新境地だ(笑)。
「新・暗黒竜」でも"侵略の徒"(SFC版"危機"のリメイク)や、"奪還への戦い" "激突!二つの正義"(新規追加曲)あたりを聴いてみると、それっぽさは感じていただけるのではないかと。
▽辻横由佳『スペースバズーカ』『メタルコンバット』(SFC/1993)
インテリジェントシステムズ開発によるガンシューティング。こちらでの辻横さんの楽曲はFEシリーズとは一味違ったハードでトリッキーなものが多く、興味深いです。