2012年12月20日木曜日

MOON SAFARI『THE LOVER'S END TRILOGY』(2012)

ラヴァーズ・エンド・パート3ラヴァーズ・エンド・パート3
(2012/12/19)
ムーン・サファリ

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 2010年に発表された『Lover's End』が各方面で大きな話題を呼び、2012年には初のライヴアルバム『The Gettysburg Address』をリリース。また、翌年1月に開催されるヨーロピアン・ロック・フェスティバルでの来日も決定したことでそのパフォーマンスに大きな期待が寄せられているスウェーデンのプログレッシヴ・ロック/ポップス・バンド ムーン・サファリ。かくいう自分にとっても、『Lover's End』は2010年最大の衝撃でありました。

 そして今年、『Lover's End』の続編にして完結編となる楽曲を収めたEPが満を持して登場しました。輸入盤やiTunes Storeでは9月~10月あたりにリリースされておりましたが、そこではあくまでタイトル曲1曲のみというものでありました。先ごろリリースされたこの国内盤はタイトルを『THE LOVER'S END TRILOGY』とし、1曲目にボーナス・トラックとして「Lover's End Pt.1」のオルタネイト・カット・ヴァージョンを収録し、2曲目に前作のラストを飾った「Lover's End Pt.2」を再収録。最後が新曲「Lover's End Pt.3」と、日本独自編集の3曲入りEPになっております。……ぶっちゃけこの2曲は前作を持っている向きにとってはあまり意味がない……と言ってしまえばそれまでなんですが、楽曲のコンセプトを汲んで、三部作の一連の流れを1枚で味わえるという趣向は粋なもので、思わず「マーキーさんグッジョブ!」と言いたくなりました。来日記念盤としても申し分のないアイテム。

 さて、「Lover's End Pt.3 - Skelleftea Serenade」は、24分半という長さの大曲。1st、2ndアルバムの頃の大作志向に回帰しつつも、3rdアルバムで鮮やかに開花したコンパクトでキャッチーなセンスを存分に発揮した、これまでのバンドの総決算と呼んで何ら差し支えのない仕上がり。極上のいいとこどりサウンドです。清涼感のある煌びやかなイントロに導かれ、さっぱりと爽やかなギターの爪弾きと暖かなシンセ/ピアノの旋律、そしてメロウなギターソロ、甘酸っぱいメロディラインと厚みのあるコーラスワーク、前作の様式美でもって、めくるめくドラマを見せてくれます。後半は前作を聴き込んだファンへのサービスがたっぷり。馴染みのフレーズが次々とリプライズし、泣きのギターを伴ったシンフォニックなフィナーレへのお膳立てを整えます。なだらかな楽曲展開の中に心地の良いうねりと何度もハッとする瞬間が封じ込められた、珠玉の大曲。もうかれこれ100回以上聴いておりますが、何度聴いても楽曲の鮮やかな印象が色褪せません。中毒を通り越して完全に楽曲の虜になってしまいました。この曲で初めてムーン・サファリを知ったという人は、是非ともアルバム『Lover's End』も聴いていただきたい!単体で聴いても非常に素晴らしい仕上がりですが、前作の味わいを知っているのと知らないのとではやはりその感動の度合いに大きな違いがあります。



MOON SAFARI『Lover's End』(2010)
MOON SAFARI:公式