マップ・オヴ・ザ・パスト (2012/07/25) イット・バイツ 商品詳細を見る |
ジョン・ミッチェル(g.vo)を迎えて見事再編を果たし、コンスタントに来日公演も行うなど、順調な活動を続けるイット・バイツ。2008年発表の『The Tall Ships』に続く、再編後2作目となるフルアルバム。今回はコンセプト・アルバムとなっており、今から1世紀ほど前の時代を生きた、とある英国家族の愛と情熱、嫉妬、悔恨などのストーリーが楽曲を通して語られます。CAMELが96年に発表した『Harbour Of Tears(港町コーヴの物語)』や、Pain of Salvationの97年のデビューアルバム『Entropia』など、「家族」をテーマにした作品というのはそう珍しいものではないですが、個人的には、このテーマを掲げたものはおしなべて良作・傑作が多いというイメージがあります。
本作もトータル・アルバムとしてのまとまりが非常に高く、3~6分のコンパクトな楽曲を緩急自在に配して、静かにドラマティックな起伏を生み出しております。時代を偲ばせる趣向のプロローグ「Man in the Photograph」、エピローグ「Exit Song」。サビのハーモニーが耳を惹いて離れない「Wallflower」。シンフォニックな盛り上がりを見せるバラード「Clocks」。前作の流れを汲むかのような厚みのある疾走チューン「Flag」。ジョン・ベックのオルガンが冴える「Cartoon Graveyard」。そしてそこから荘厳なアレンジを挟んで続く「Send No Flowers」「Meadow and the Stream」は、GENESISを想起させる叙情的なテイストも織り込んだ楽曲。この2曲は偉大なる先達に対するバンドの敬愛が感じられ、なんとも微笑ましい気持ちになりました。そしてしみじみとした感動が染み入るピアノ・バラード「The Last Escape」。終盤のこの一連の流れは本作のハイライトでもあると思います。前作ではサウンドや楽曲構成にややぎこちなさを感じる場面も少々ありましたが、今回はそれが全くなく、各曲に有機的で密接な繋がりを強く感じさせてくれます。ミッチェルが一層バンドに馴染んだというのもありましょう。味わいのあるヴォーカル、メロウなメロディセンスが全編を暖かく覆っており、コンセプトにも思いを馳せながら最後まで聴き通したくなるスルメ的な魅力が詰まっています。名実共に、第二の黄金期を迎えたと言っても過言ではないスキのない仕上がり。二枚目のジンクスなどどこへやら、ファンの期待に十分に応えてくれました。
◆IT BITES「The Tall Ships」(2008)
◆IT BITES 2010 3/20 渋谷 O-EAST ライブレポート
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