2017年12月8日金曜日

峰岸透、藤井志帆、永松亮『Splatoon2 ORIGINAL SOUNDTRACK -Splatune2-』(2017)

Splatoon2 ORIGINAL SOUNDTRACK -Splatune2-
スプラトゥーン2
株式会社KADOKAWA (2017-11-29)
売り上げランキング: 32


 任天堂のWiiU用ソフト「スプラトゥーン」の続編であり、2017年7月にNintendo Switch専用ソフトとして発売された「スプラトゥーン2」のサウンドトラック。BGMは、前作の峰岸透氏、藤井志帆さんに、今回新たに永松亮氏(「New スーパーマリオブラザーズ Wii」「Nintendo Land」「ゼルダの伝説 神々のトライフォース2」)が加わった三人体制。それぞれが担当されたユニット曲は、峰岸氏はWet Floor(12曲)、Cala Marley(1曲)、テンタクルズ(13曲)、OCTOTOOL(8曲)。永松氏はFrom Bottom(3曲)、カレントリップ(2曲)、DJ Real Sole(1曲)、クマサン商会(6曲)、ω-3(3曲)、OCTOTOOL(3曲)、DJ Octavio(2曲)、シオカラーズ(1曲)。藤井さんはテンタクルズ(1曲)、OCTOTOOL(1曲)、DJ Octavio(2曲)、シオカラーズ(2曲)といった割合。永松氏が本作に新風を運んだのは間違いありません。

https://itou190.amebaownd.com/
http://www.alice-official.club/

 ライナーノーツにはWet Floorのメンバーとテンタクルズのイイダのそれぞれのインタビュー記事を収録。前作でもイカにも「それっぽい」凝り方をしていましたが、本作でも同様のノリです(ちなみに、イイダのインタビューでシオカラーズの"イマ・ヌラネバー!"はSquid Squadの"Now or Never!"のカヴァーだということがシレっと明かされています。てっきりSquid Squadがシオカラーズをカヴァーしたものだと思っていたのですが、逆だったという)。MC&ヴォーカルのヒメと、DJ&トラックメイカー&ヴォーカルのイイダの二人によるテンタクルズは、その編成とスタイルから こしじまとしこ&中田ヤスタカのエレクトロポップユニットであるcapsuleを思い起こす人も多いのではないかと。シオカラーズの"イマ・ヌラネバー!"のカヴァーをふくめ、アッパーチューンからchillなナンバーまで充実しています。ヒメのCV&ヴォーカルを担当されている いとうりなさんは、元GRAPEVINEの西原誠氏率いるバンド RINA & THEFREAKSのヴォーカルであり、イイダのCV&ヴォーカルを担当されているAliceさんもシンガーソングライターとして活動されている実力派であります。





 OCTOTOOLとDJ Octavioは前作から引き続き登場。前作ではロシア・アヴァンギャルドとクラフトワークを足したようなヴィジュアルイメージだったOCTOTOOLは、今回はYMOの『増殖 - X∞Multiplies』のパロディヴィジュアルを打ち出しております。Wet Floorは、短めのトラックやジングルのほか、7月にタワーレコード限定で発売されたEP『Inkoming!』にも収録された"Inkoming!" "Rip Entry" "Endolphin Surge"に、七拍子のリフで押す"Don't Slip"、ブレイクが気持ち良い"Undertow"、そして"Inkoming!"のデモヴァージョン(Cloud Demo)と、前作のSquid Squadの"Now or Never!"のカヴァーに、短めのトラックやジングルを収録。先のEPではペンギンラッシュやエドガー・サリヴァン、Pollyannaなどのインディーズバンドからの選抜メンバーで構成された「Wet Floor Shibuya」によるスタジオライヴヴァージョンが収録されてもいましたが、サントラ版のレコーディングバンドはLIV MOONの黒田晃年氏(guitar)のCube-rayのIKUO氏(bass)、Venomstripの山崎慶氏(drums)。リズム隊はそのままT.M.RevolutionやBREAKERZのサポートメンバーでもあります。





「Squid Squad」「Wet Floor」はニューウェイヴ・ロック、「Hightide Era」はピアノ・エモ、「ABXY」はチップチューン・パンクとカテゴライズするなら、アップデートで新たに追加されたバトルBGMのバンドである「From Bottom」「カレントリップ」「ω-3」はいずれもよりテクニカル&クロスオーヴァーな方向性を強めたものになった感があります。「From Bottom」はヴァイオリンをフロントに据えたフォーキーなミクスチャーロックサウンドであり、まさに一気呵成と呼ぶにふさわしいパンキッシュな疾走感で貫通しています。演奏はジャンルクロスオーヴァーなヴァイオリニストである真部裕氏。また、前作のSquid SquadではドラムスにHi-STANDARDやチャットモンチーの恒岡章氏が起用されていましたが、From Bottomではロックバンド すかんちの小畑ポンプ氏が起用されていて驚きました。CMでROLLY氏がナレーションを担当されているがゆえの縁なのか、それとも企画の中の人にすかんち好きがいるのか。





「カレントリップ」はピアノとトランペットが強力な主張を繰り広げるブラス・ジャズ・ロック・バンド。湯本淳希氏が速いパッセージで激しい高音を吹きまくっており、非常にエキセントリックな印象。インタビューによると、永松氏はあえてトランペットらしくない表現をたくさん取り入れ、「演奏の奥に人が見えそうで見えないように」心掛けたとのこと。さらに「ω-3」はチェロ(演奏は徳澤青弦氏)&ティンパニ&DJという変則的スタイルのトリオというところもユニークなのですが、16分の31拍子の"竜穴"に度肝を抜かれました。プログレ、ジャズ・ロックやレコメン系のバンドもかくやといった変拍子(例えばビル・ブルーフォードの「Hell's Bells」は16分の19拍子、上原ひろみの「Alive」は16分の27拍子です)であり、一層の異彩を放っております。「前作から2年後」のイカ世界のシーンの進化と変化が、三者三様のバンドのサウンドで思いきり示されており、スリリングな面白味を見事に付加しているといえます。




「ヒトを感じさせないイカらしさ。『スプラトゥーン2』アップデートの新曲に迫るサウンドスタッフインタビュー。新曲入りのサントラトラックリストも公開!」
(from ファミ通.com|2017.11.24)

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『Splatoon 2 ORIGINAL SOUNDTRACK -Splatune2-』
[EBCD-10004-5|2017.11.29|KADOKAWA/entarbrain]

《Composed by》
峰岸透:
【Disc1】Track 1~11、17~23、33、34
【Disc2】Track 1~13、15~20、24、25、48

永松亮:
【Disc1】Track 12~16、24~32
【Disc2】Track 14、22、23、26~28、47

藤井志帆:
【Disc1】Track 33
【Disc2】Track 13、21、26~29

《Sound Effects by》
山本高久:【Disc1】Track 33/【Disc2】Track 30、31、33~39、44、46
木田充洋:【Disc1】Track 20
安田拓朗:【Disc1】Track 20/【Disc2】Track 32
辻勇旗:【Disc2】Track 40~43
郷原繁利:【Disc2】Track 45

《Performers》
竹内浩明(vocal)【Disc1】Track 2~7
渡部沙智子(vocal)【Disc1】Track 2~7
いとうりな(vocal & voice [ヒメ])【Disc1】Track 33/【Disc2】Track 1、3~6、8、44
Alice(vocal & voice [イイダ])【Disc1】Track 33/【Disc2】Track 1、3~5、44
keity.pop(vocal & voice [アオリ])【Disc2】Track 25~29
菊間まり(vocal & voice [ホタル])【Disc2】Track 27~29
黒田晃年(electric guitar)【Disc1】Track 1~7、9、11、17
IKUO(electric bass)【Disc1】Track 1~7、9、11、17
山崎慶(drums)【Disc1】Track 1~7、9、11、17
小畑ポンプ(drums)【Disc1】Track 12~14
MIZUKI(drums)【Disc1】Track 15、16
真部裕(violin)【Disc1】Track 12~14
徳澤青弦(cello)【Disc1】Track 27~29
湯本淳希(trumpet)【Disc1】Track 15~16
桑原あい(piano)【Disc1】Track 15~16


《DISC 1》

01.Opening / Wet Floor
02.Inkoming! / Wet Floor
03.Rip Entry / Wet Floor
04.Undertow / Wet Floor
05.Don't Slip / Wet Floor
06.Endolphin Surge / Wet Floor
07.Now or Never! / Wet Floor
08.バトル 勝ちジングル / Wet Floor
09.Turf Master / Wet Floor
10.バトル 負けジングル / Wet Floor
11.Ink Another Day / Wet Floor
12.Shipwreckin' ~沈まばもろとも~ / From Bottom
13.Fins & Fiddles ~深海の喜劇~ / From Bottom
14.Seafoam Shanty ~荒波ロデオ~ / From Bottom
15.可憐なタクティクス / カレントリップ
16.不意打ちのセオリー / カレントリップ
17.Inkoming! (Cloud Demo) / Wet Floor
18.ハイカラスクエア 初回入場
19.ハイカラスクエア チュートリアル
20.ハイカラスクエア
21.Without a Dop Doubt
22.イカッチャ
23.Ika Jamaica(DIY Remix) / Cala Marley
24.New You / DJ Real Sole
25.カガヤクンデス・マーチ / クマサン商会
26.サーモンラン オープニング / クマサン商会
27.膏肓 / ω-3
28.囂々 / ω-3
29.竜穴 / ω-3
30.サーモンラン 成功ジングル / クマサン商会
31.サーモンラン 失敗ジングル / クマサン商会
32.キット・モット / クマサン商会
33.ハイカラニュース / テンタクルズ
34.フェス お題発表 / テンタクルズ


《Disc2》

01.ウルトラ・カラーパルス / テンタクルズ
02.フェスマッチ オープニング / テンタクルズ
03.フルスロットル・テンタクル / テンタクルズ
04.リップル・リフレイン / テンタクルズ
05.レッド・ホット・エゴイスト / テンタクルズ
06.イマ・ヌラネバー! / テンタクルズ
07.フェスマッチ 勝ちジングル / テンタクルズ
08.フェスティバル・ゼスト / テンタクルズ
09.フェスマッチ 負けジングル / テンタクルズ
10.パーティーズ・オーバー / テンタクルズ
11.フェス 最終結果発表 / テンタクルズ
12.ゲットジングル
13.スミソアエの朝
14.タコツボキャニオン / OCTOTOOL
15.Eighteen-Legged Concerto / OCTOTOOL
16.The Girl from High-Color / OCTOTOOL
17.Buoyant Boogie / OCTOTOOL
18.Shooting Starfish / OCTOTOOL
19.Tentacular Circus / OCTOTOOL
20.Cephaloparade / OCTOTOOL
21.Tacozones Rendezvouz / OCTOTOOL
22.戦略タコツボ兵器 登場 / OCTOTOOL
23.Octarmaments / OCTOTOOL
24.ヒーローモード つづく! / OCTOTOOL
25.ヒーローモード Miss!! / OCTOTOOL
26.トキメキ☆ボムラッシュ / DJ Octavio feat. AORI
27.ボムラッシュの夜 / DJ Octavio feat. AORI vs ホタル
28.濃口シオカラ節 / シオカラーズ
29.あさってColor / シオカラーズ
30.SE: スプラマニューバー
31.SE: スプラチャージャー
32.SE: パラシェルター
33.SE: ロボットボム
34.SE: マルチミサイル
35.SE: インクアーマー
36.SE: ハイパープレッサー
37.SE: ジェットパック
38.SE: スーパーチャクチ
39.SE: イカスフィア
40.SE: 声(ボーイ)カモン
41.SE: 声(ボーイ)悦び
42.SE: 声(ガール)カモン
43.SE: 声(ガール)悦び
44.SE: 声(テンタクルズ)キメ台詞
45.SE: ガチヤグラが往く
46.SE: 金イクラ奉納
47.Get The Shining Future!(クマサン商会 バイト募集ビデオBGM) / クマサン商会
48.2017.1 PV SoundTrack


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噛むほどに味が出る、イカ世界のスルメ盤 ― 峰岸透、藤井志帆『Splatoon O.S.T -Splatune-』(2015)

シオカラーズファンへの「スルメ盤」 ― 『SPLATOON LIVE IN MAKUHARI ―シオカライブ―』(2016)

現実のインディーズシーンともクロスする、タワレコ×スプラトゥーンコラボ企画 ― Wet Floor『Inkoming!』(2017)