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ミシェル・ウエルベックの処女作である『H・P・ラヴクラフト 世界と人生に抗って』がつい最近めでたく邦訳刊行されたのでホクホクしながら読んだということを前回のエントリに書きました。一方で、ウエルベックが2000年に発表した唯一のオリジナルソロアルバム『Présence humaine』が2016年6月に本国でLPとCDで再発していたこともホクホクするニュースでした。リリース元は今回もTRICATEL。送料込で約4000円。長らく中古市場で万単位のプレミアがついていた作品であることを思えば、めちゃくちゃ安いです。海外レーベル直販でありながら、ポチって一週間足らずで届いたのもうれしい。しかも今回は、CD盤の方に2曲のボーナストラックが追加収録されているというところもポイント(くわしくは後述)。付属の24ページブックレットには、『H・P・ラヴクラフト~』を含むウエルベックのこれまでのノンフィクション、エッセイからの引用が並べられてもいます。
エレクトリック・スタイルのバンドサウンドに、ウエルベックのモノローグが乗るというスタイルは、ロックの皮をかぶったシャンソンで、シャンソンの皮をかぶったロックという「食えない」印象。メインコンポーザーは、TRICATELのオーナーであり、コンポーザー/プロデューサーのベルトラン・ブルガラ。ウエルベックの『プラットフォーム』のオーディオブックの音楽も彼が担当していました。また、プログレッシヴ・ロック・バンド HELDONのリシャール・ピナスがタイトル曲にギターで参加しています。ドゥルーズやリオタールに学び、ロバート・フリップを師とし、シャンソンやアヴァンギャルド・ミュージックへの造詣が深い彼が参加しているというのは本作のちょっとしたトピックでしたが、2016年再発盤ではジャン・クロード・ヴァニエが2曲のボーナストラックを提供しております。セルジュ・ゲンズブールやエリス・レジーナ、シルヴィ・バルタンやブリジット・フォンテーヌなど、名だたるシンガーとの作編曲仕事や数々の映画音楽を手がけてきたフレンチ・ポップス界の大御所であり、近年も実験音楽家として旺盛な活動を展開し、三人の女性を迎えての官能的で尖ったポップスアルバムなどをリリースしている彼の参加によって、さらに花が添えられました。
Tricatel (2016-06-17)
2007年に『Etablissement D'Un Ciel D'Alternance』で、実験音楽家のジャン・ジャック・バージと再度コラボレーションし、2014年にフレンチ・ロック・バンド Telephoneの元メンバーであるジャン・ルイス・オベールとコラボレーションしてきたウエルベックですが、2016年にはイギー・ポップとコラボレーションを果たしています。『H・P・ラヴクラフト~』と同年の1991年に発表されたウエルベックのエッセイ「To Stay Alive」がオランダで「To Stay Alive: A Method」としてドキュメンタリー映画化(2017年2月に劇場公開)され、両者がそれぞれ出演し、エッセイの朗読を行っています。 ウエルベックはストゥージズの熱烈なファンであり、イギーはウエルベックの『ある島の可能性』にインスパイアされて、2009年にアルバム『Preliminaires』を制作しており、両者が出会ったのはある種「必然」だったといえます。
EMI France (2009-05-25)
売り上げランキング: 158,485
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「When Iggy Pop met Michel Houellebecq: They admitted that they were die-hard fans of one another」
(from INDEPENDENT|2016.11.22)
「インタビュー:“ロック・ヒーロー”という虚飾を脱ぎ捨てたイギーが、全裸で語ったジャズ/シャンソン作!」
(CDJournal com|2009.05.15)
▼ミシェル・ウエルベックの唯一のソロアルバム ― Michel Houellebecq 『Présence humaine』(2000)
旧盤についてのエントリ(2016年1月)。