1975年に発表された『アーサー王と円卓の騎士たち (The Myths and Legends of King Arthur and the Knights of the Round Table)』は、イギリスのキーボーディスト、リック・ウェイクマンの代表作のひとつとして挙げられるタイトルであり、ナンシー・モリソンの著作に着想を得た1973年作『The Six Wives of Henry VIII(ヘンリー八世の六人の妻)』、ジュール・ヴェルヌの同名作をコンセプトとする1974年のライヴアルバム『Journey to the Centre of the Earth(地底探検)』とあわせて「文芸三部作」として初期のキャリアを成しております。このうち『地底探検』は1999年に「完結編」と題した続編が、2012年にはオリジナル版に新規パートを追加した再録盤がそれぞれ出ておりました。そして、今度は『アーサー王と円卓の騎士たち』に白羽の矢が立ちました。
そもそも、本作は二枚組アルバムとして構想されていたものの、当時のレコードの収録時間の都合からカットをせざるをえなかったようです。オリジナル版からじつに四十年もの時を経ての「完全版」プロジェクトは、2016年2月にPledgeMusicで出資キャンペーンが立ち上げられ、ほどなくして目標を達成。その後、6月19日にロンドンのO2アリーナで開催された「Stone Free Festival」のプログラムの一環として、オーケストラとコーラス隊を帯同してお披露目もなされました。新たにロジャー・ディーンによるジャケットも付された本盤『The Myths & Legends of King Arthur 2016』は現在のところ公式通販のみでの流通であり、Amazonなどでは取り扱っておりませんが、ただの再録で終わっていない見事な内容であることを保証いたします。ぜひとも入手をオススメする次第。 goo.gl/PgF8GQ
当時のスタイルで制作された、5曲の新曲"Morgan le Fay" "Princess Elaine" "Camelot" "The Holy Grail" "Percival the Knight"に、ピアノやコーラスを中心とする小品/ブリッジが追加されたことで楽曲数は7曲から20曲にまで膨れ上がり、CD二枚組、トータル88分の内容になりました。2016年版のコーラスアレンジはリックの手によるものですが、2016年版のオーケストレーションは新規追加パートもふくめて、オリジナル版を手がけたガイ&アン・プロセローが再び担当しています。ヴォーカルは、オリジナル版に参加したアシュレー・ホルトと、2012年再録版『地底探検』と同作に伴うツアーに参加した女性シンガー/サックス奏者のハーレイ・サンダーソンの二人。アシュレーの加齢を感じさせない朗々たる歌唱も素晴らしいのですが、一連の新曲におけるハーレイの時に伸びやかで、時にたおやかなるパフォーマンスが、再録&拡張版たる本作の豊かなイメージに大きく貢献していますし、ソウルフルなヴォーカルを聴かせるロックチューン"The Holy Grail"や、堂々たるシンフォニック・ロック・バラードな"Princess Elaine"は特に推したい曲です。また、全体のパフォーマンスでは、華やかなコーラスワークと多幸感あふれるバンドサウンドに彩られた9分半におよぶ長曲"Percival the Knight"が白眉。ドラムスはSTRAWBSのメンバーであり、リックの数多くのアルバムにも参加している盟友トニー・フェルナンデス。ベースはPROCOL HARUMのマット・ペグ。ギターのデイヴ・コルクハウンは、近年のウェイクマンのライヴサポートのほか、PROCOL HARUMやフランシス・ダナリーのツアーなどにも参加歴のあるプレイヤーであります。
【The Myths and Legends of King Arthur and the Knights of the Round Table】(1975)
01. Arthur (アーサー王)
02. Lady of the Lake (湖の妖精)
03. Guinevere (王妃グィネヴィア)
04. Sir Lancelot and the Black Knight (湖の騎士ラーンスロットと黒騎士)
05. Merlin the Magician (魔術師マーリン)
06. Sir Galahad (騎士ガラハド)
07. The Last Battle (最後の戦い)
Rick Wakeman (kbds)
Gary Pickford Hopkins (vo)
Ashley Holt (vo)
Geffery Crampton (g)
Roger Newell (b)
Barney James (ds)
John Hodgson (perc)
New World Orchestra
English Chamber Choir(choir)
Terry Taplin(narration)
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【The Myths & Legends of King Arthur 2016】(2016)
※赤字は新曲
《DISC 1》
01. The Choice of King(イントロ)
02. King Arthur 03. Morgan le Fay
04. Lady of the Lake(小品)
05. Arthur's Queen(小品)
06. Guinevere
07. Lancelot and The Black Knight 08. Princess Elaine 09. Camelot
《DISC 2》
10. The King of Merlins(小品)
11. A Wizards Potion(小品)
12. Merlin the Magician
13. The Chalice(小品) 14. The Holy Grail
15. The Best Knight(小品)
16. The Contest(小品)
17. Sir Galahad 18. Percival the Knight
19. Excalibur(小品)
20. The Last Battle
Rick Wakeman(kbds)
Ashley Holt(vo)
Hayley Sanderson(vo)
Tony Fernandez(ds, perc)
Dave Colquhoun(g, banjo)
Matt Pegg(b)
The Orion Orchestra
The English Chamber Choir(choir)
The Nottingham Festival Male Voice Choir(choir)
Ian Lavender(narration)
今年はキム・ニューマン『ドラキュラ紀元』イヤーではないかというくらいに『ドラキュラ紀元』がらみの刊行が続くということを以前お伝えしましたが、ポール・マキャフリー作画によるオリジナル・コミカライズ「Anno Dracula 1895: Seven Days in Mayhem」についての続報を記しておきます。3月22日に刊行されるチャプター1は、ポール・マキャフリー画の通常カバー(タイプAとします)に加えて、複数のイラストレーターによるカバー絵のバリアントが五種あります。そして、4月19日に刊行されるチャプター2のカバーは四種。5月24日に刊行されるチャプター3のカバーは三種。いずれもFORBIDDEN PLANETのサイトでプレオーダーを受付中です。
声優、歌手、「帝王」、森川智之氏が1997年にリリースした2ndソロアルバム『ガーデン オブ エデン』は、今年の3月1日で20周年を迎えます。97年というとアニメ版「金田一少年の事件簿」での明智役や、「剣風伝奇ベルセルク」でのグリフィス役などを演じておられたころですね。1994年のデビューアルバム『HEAVEN'S DOOR』から一貫してストレートなハード・ロックを志向している森川氏ですが、この二作目では作編曲面でも演奏面でも大幅な増強が図られています。本作のプロデューサーは、前作のメインコンポーザーでもあった「230」こと柳沢二三男氏、元ザ・ガーデン/ブルー・トニックの広瀬充寿氏、元ヘヴィメタルアーミー/イースタン・オービットの中島優貴氏の三人が務められているところもポイント。三人がそれぞれ書き下ろした新曲("Chance!" "GARDEN OF EDEN" "Last Telephone call/Dear…")が収録されています。
230氏の作編曲による"Naughy Boy"は、ラフなドライヴ感あふれるバッキングに、ややぶっきらぼう気味なヴォーカルがマッチした一曲。また、"In The SKY"は、BOSTONの"More Than A Feeling"にクリソツなアルペジオのイントロがある意味印象的なアコースティック・バラードです。広瀬氏の作編曲による"Endless Dream"は、森川氏がパーソナリティーをつとめた「宇宙海賊 宝船組!」(原作:秋月こお)のドラマCDの挿入歌であり、これでもかとオケヒを連発するアレンジが強烈なハード・ポップ・チューン。また、中島氏の作編曲による"TRUE" "Precious Love ~この地球の者たちへ~" "TELL ME WHY" "天翔"は、森川氏が主役キャラクターを演じた「黄龍の耳」(原作:大沢在昌)のOVAやドラマCDの主題歌や挿入歌であり、いずれもアルバム収録に際してリミックスが施されています。派手なキーボードアレンジもさることながら、JET MAYBEの小森晴美氏(guitar)、コンチェルト・ムーンの島紀史氏(guitar)、UP-BEATの水江慎一郎氏(bass)がバックを固めており、中島氏の得意とするプログレッシヴ・ハード・ロックに思いっきり寄っています(ちなみに、コンチェルト・ムーンも当時バップに所属しており、翌年にメジャーデビューを果たします)。ジャパメタ筋の人にもオススメしたいところ。
ちなみに、坂本英三 with 文京楽団の『Another』(1998)では、本作の"TRUE"がカヴァーされております。森川氏と坂本氏との縁は深く、練馬絶叫倶楽部のアルバム『壱』(1997)に森川氏がゲスト参加していますし、逆に森川氏の3rdアルバム『JOLLY ROGER』(2003)では、坂本氏が楽曲提供("Cuttin' Out")をしています。また「ルパン三世」トリビュートアルバム『You's Explosion』(1999)では、森川&坂本デュオによる"銭型マーチ"を聴くことができます。そうそう、近年では「帝王森川とボイトレ男子」の音楽プロデューサーを坂本氏が担当されていますね。
------------------------------------ 森川智之『Garden of Eden』
[VPCG-84628|VAP|1997.03.01]